記事 - 北海道高等学校文化連盟新聞専門部

記事編
1
取材の方法
①
②
足を使おう
脱線した話がおもしろい
新聞記事は、事実の積み重ねと関係
初めて取材をするときには、事前に
者の証言、人々の声で構成されます。
用意した質問を聞くだけで精一杯かも
全文が書き手の考えや意見だった
しれません。記事を書いていて、「あ
り、関係者一人が話した内容のみだっ
のことも聞いておけば良かった」と思
たり、何かの資料を丸写ししたものだ
うことがあるかも知れません。そのと
ったとしたら、それは記事とはいいま
きは追加取材をして、必要な情報を集
せん。記事の内容に信憑性を持たせ、
めましょう。また、紹介記事の場合、
重みと奥行きを持たせるためには、多
質問内容からはずれた話のほうがおも
角的な取材を行ない、事実を様々な角
しろく、読者を引きつけるということ
度から眺めることが大切です。そのた
もあります。相手の話を聞き、返答に
めには足を使って、多くの人の意見と
よっては予定質問から脱線した話の方
資料、事実を集めましょう。
が、案外、面白い記事になるかもしれ
ません。
④
誠意を持って
事前に取材日時の約束や取材の了解を必
ずとりましょう。時には取材を断る人もい
③
ますが、悪態はつかないことです。
答えやすい質問を
相手が同じ高校生の場合には気楽に取材
質問をするときには、質問内容
しがちですが、そんな時こそ気を抜かない
をかみくだき、相手が答えやすい
で、誠意を持って取材にあたるようにしま
ように具体的な質問をするように
しょう。また、特定の個人や団体などを取
心がけることが大切です。抽象的
り上げる場合には、相手の経歴・業績・著
な質問をされると、非常に答えに
書などを事前に調べてから取材しましょ
くいのです。ポイントは、質問す
う。そして、借りた資料や写真はすみやか
る側が何を聞きたいのかです。例
に、確実に返却してください。新聞局の信
えば、「交通事故についてどう思
用問題にも係わってきます。
いますか」と聞かれても、どう答
えていいか困りますよね。「交通
事故」の何について聞きたいのか、
記事の構成を考えて質問するよう
にしましょう。
- 1 -
2
記事の書き方
結論から書く
生徒たちが授業で習う文章の書き方は、右の図のように「序
論」から始まって「本論」、「結論」へと至るものです。人によ
って「起・承・転・結」を求める場合もあります。
新聞記事の場合
結論→説明→補足の順
結
論
説
明
補 足
新聞の場合、左の図のよう
に結論を最初に書き、次に経
過や説明的なことを書く構造
になっています。それは、新
一般の文章の場合
序論→本論→結論の順
序 論
本
論
結
論
聞が、限られたスペース内で
伝えたいことを端的に表現しなければならないからです。一番
台切なことは、読者に記事のポイントを的確に伝えることです。
そのため、記事を書く上では、文章を簡潔にすることが約束事
になっています。
原則は6W2H
新聞記事を書く上での大原則は、次の5点です。
①
事実を確認する
「○○があったらしい」という新聞記事はありません。新聞は事実を
伝えるものです。必ず当事者や関係者に事実を確認することが基本です。
②
記事を正確に書く
記事を正確に書くためには、取材した内容を正確に記録しなければな
りません。そのためには、メモ用紙だけではなく録音機器を用意するこ
とが必要です。また、時間がないといって、電話の取材で済ませないこ
と。なぜなら、取材相手の表情や感情が電話ではわからないからです。
取材相手の様子を記事に入れると、記事に緊迫感や切迫感が出てきます。
③
、
両論を併記する
報道記事の取材や特集を企画する際、意見が分かれているような場合
は、必ず両方の意見を併記しましょう。片方の意見ばかり載せると不公
平になります。両方の意見を読んだ上で、判断を下すのは読者です。
④
個人的な主観を文章に入れない
報道記事を書く上での基本です。記事は事実の積み重ね、関係者のコ
メントで成り立っています。書き手は、記事の中では中立の立場を要求
されます。ただし、自分の考えと同じ人の声を文中に入れることは可能
です。書き手の個人的な意見は、「取材を終えて」として独立させたり、
一般新聞の「社説」に該当する箇所で堂々と論じることです。
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⑤
。
6W2Hの要素を入れる
記事を構成する最低限の要素は次の5W1Hです。
☆WHEN (いつ:日時)
☆WHERE (どこで:場所) ☆WHO (だれが:主人公)
☆WHAT (なにを:行為) ☆WHY (なぜ:目的)
☆HOW (どうなった:様子)
しかし、これだけでは無味乾燥すぎます。特に、紹介記事の場合は関係者の声
が必要です。そこで、次の2つの要素を加え、併せて6W2Hとなります。
☆HOW MUCH (どのくらいの:価値観)
☆SO WHAT (どうなる:未来)
5月22日(金)~24日(日)までの3日間、第50回はまなす祭が本校体育館を会場
と
WHEN
WHAT
WHERE
に開催された。その結果、3年1組が全部門で1位となり総合優勝した。3年1
WHO
WHY
HOW
組委員長の高田渉君(3-4)は、「完全優勝は今まで達成されたことがないので、
HOW MUCH
最初からクラスの目標としていました」と満足そうに話した。学校祭実行委員長
の吉田拓郎君(3-7)は、「3年1組は4月から企画を進めていた。下級生は来年
SO WHAT
度の参考にしてほしい」と語った。
3
アンケートの処理方法
多くの人たちの意向を知る最も簡便な方法は、アンケート調査を行
うことです。ただし、統計学的にいうと、百名以上のサンプル数が必
要になるらしいのですが。
実
施
上
の
注
意
①
アンケート用紙に主旨を明記する。
②
紙面が限られていることから、質問項目を絞る。
③
質問内容によって、「学年」、「性別」、「年齢」等を
選択回答できる欄を設置する。
④
選択式の場合、選択肢をいくつ選ぶのか明記する。
⑤
記述式の場合、答えやすい質問に心がける。
⑥
約束した期日に、必ず回収に行く。
処
理
上
の
注
意
※アンケート結果を掲載する場合、次にあげる点を明示します。
①
実施日と回収日
②
対象人数(質問内容によっては「学年」
、「性別」
、「年齢」等)
③
有効回答数
④
質問項目と回答項目
⑤
単位(人、パーセント等)
実施したアンケートは、全てをグラフ化する必要はありません。記事を書く上で必要な、特徴
のある項目をグラフ化します。グラフには円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフなど様々な種類が
あります。立体的にするなど、ビジュアル化に努める工夫も忘れないでください。
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5
専用の原稿用紙を
新聞記事の分量は、文字数ではなく行数で表します。なぜかとい
うと、400字詰原稿用紙1枚にまとめた原稿を新聞に掲載しようと
すると、その新聞の1行の字数に並び替えなければなりません。例
えば、1行10字の新聞だとすると、40行に相当し、400字詰め原稿
用紙1枚分です。しかし、実際には句読点や改行の関係で42行にな
ったり、もっと増えるかもしれません。行数が増えると、レイアウ
トも変更しなければなりません。見出しや写真のスペースを削った
りして、レイアウトがだんだんいびつになっていく原因ともなりま
す。そこで、右の例のような、自校の新聞の1行の文字数と同じ文字数にした原稿用紙を作っ
ておくと便利です。
4
記事の最終関門
新聞記事は、読みやすいことが第一です。そのため
に、次の点を確認しましょう。
句読点に注意
文が長く、息切れするほど一気に読ませている。
読点( 、 )がなく、別な意味に受け取れる。
記事を読み返してみると、句読点の付け方一つで読みやすくなったり、別の意味になったりす
ま
ることがあります。読点は意味の切れ目を示します。その他にも、息の切れ目や読みの間、語句
を並べたりするときに付けます。
句点(
。 )は、原則として文の終わりに付けます。しかし、新聞は限られた字数で表現す
ることから、文中で「
ん。また、「
」(カギ括弧)の記号を使う場合、後のカギ括弧の前に句点は付けませ
」内の言葉で一つの文が終わる場には、
「 」の後に句点を付けます。
(例)
香川選手は「頑張るだけです」と力強く語った。
(例)
香川選手は次のように語った。
「頑張るだけです」。
古い記事はリフレッシュ
「去る5月2日……」。
新聞は、最新の出来事を読者に届ける役割を担っています。そのため、『これは古い出来事で
す』と言っているような「去る……」という表現あまり使いません。しかし、高校生新聞の場合、
新聞発行時には古くなってしまった出来事を取り上げることもあります。その場合、
「去る……」
と表現しなくてもいいよう、記事をリフレッシュします。例えば、7月発行の新聞に、4月に異
動してきた先生方の「今後の抱負」や「生徒に望むこと」を掲載しても、タイムリーとはいえま
せん。では、「3か月経って変わった生徒の印象」とか「3か月間にやってみたこと」などの質
問と答えで記事を構成すると、読者に古い出来事という違和感を与えないですみます。
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短くコンパクトに
記事は「短く」、「コンパクト」にまとめた方が読者に伝わり
ます。写植新聞の1面トップ記事では、60~70行くらいの
長さが一つの目安です。特集や連載記事などで記事が長くなる
場合、70行を越える時には小見出しを付け、読みやすくする
配慮が必要です。また、1つの文節が長く続くと、読みにくく
なります。目安は、約10行で改行です。特に、人のコメント
を載せる場合には長くなりがちですので、注意が必要です。
文末で人柄を表現
取材した人のコメントをまとめる時、頭を悩ますのが文末の
表現です。『「……」と語る。』とか『「……」と話す。』式の終わ
り方が多くなり、文末が全て同じ表現になったり、似たような表現になることもあります。
取材した時の相手の表情を盛り込んで、『
「……」とにこやかに語る。
』とか『
「……」と力強く
話す。』とまとめると、文末の表現が多彩になるとともに、取材した人の人柄を紙面に表現する
ことができます。
誤字・脱字は致命的
「学校祭の準備は完壁で……」
うろ覚えで使うと、「完璧」を「完壁」と書くような間違えを
することがあります。ワープロソフトを使って原稿を書く場合で
も、わからない漢字、自信のない漢字は辞書で調べる習慣をつけ
ましょう。また、人名に関しては細心の注意を払います。実在し
ない人がコメントすることになるのですから、記事の信憑性にも
関わってきます。他にも学年、クラス名、肩書きなどに関しては、
必ず確認を繰り返しましょう。間違えると失礼に当たることはも
ちろんですが、記事に対する信頼度も低下します。
人名は、必ずフルネームで書きます。同一記事中に同じ人物が
複数回登場する場合は、一番最初に登場する時にフルネームで書き、二回目以降は姓だけにしま
す。同じ姓の人が複数名登場する場合は、カッコ書きで名前の一文字を入れ、区別します。また、
誤読の恐れがある場合は「・(中点)」を入れるか、一文字分の空欄を入れます。
(例)
斉藤佑樹先生
→ 斉藤(佑)先生
(例)
小樽市教育委員長谷川忠氏 →
斉藤明雄先生 → 斉藤(明)先生
小樽市教育委員長・谷川忠氏
→ 小樽市教育委員長 谷川忠氏
組織名も正確な名称で書き、省略はしません。名称が長く、同一記事中に同じ名称が複数回登
場する場合は、一番最初に登場する時に正式名称で書き、正式名称の後ろに(
称を記載します。二回目の登場からは略称の記載とします。
(例)
北海道教育委員会(道教委)
南かやべ漁業協同組合(南かやべ漁協)
- 5 -
)を付けて略
あいまい表現はNG
「この学校は様々な問題を抱えている」
、「○○君らが選ばれた」
この表現の前後に、「様々」な問題を取り上げていたら問題はあ
りません。「様々」という表記は、複数の出来事を指します。一つ
だけの例で一般化したり、
「様々」と表現するには無理があります。
新聞は正確さが基本です。抽象的な表現は極力避け、具体的な表
現に努めましょう。
受け身の表現もNG
『……と○○先生は語ってくれた。』
『優勝した○○君に書いてもらった。
』
「くれた」、
「もらった」という表現は、
「無理矢理に話をさせた」
とか、「お願いをして書いてもらった」かのような印象を読者に与
えます。また、『校長先生にお話をお伺いしました。』『町長の○○
氏にご質問させていただきました。』という敬語の乱発も避けます。
取材相手に敬意を表するのは理解できますが、他の記事、紙面全
体との整合性、統一性を欠きます。新聞では、原則として敬語を
使用しません。それは、先生方に対しても同様です。
記事は客観的に
「A君は見事、準優勝した」
「B君の素晴らしい活躍により……」
「C部は残念ながら予選落ちし……」
このような表現をしたくなるのは、心情的に理解はできます。しかし、
「事実を正確に伝える」
という新聞の役割には反します。準優勝したA君は、「見事」と思っているでしょうか。「優勝し
たかったのに、残念」と思っているかもしれません。B君の活躍
を周囲は、「素晴らしい」ではなく、「当たり前」とは思っている
かもしれません。C部の予選落ちは、
「初心者ばかりなので予想通
り」と思われているかもしれません。取材した人々の声でしたら、
大いに使います。それぞれの出来事に対する周囲の考え方として、
読者に感じてもらうことができるからです。
「私は○○だと思う」
「○○してもらいたいものだ」
この表現も同様です。取材を通して記者が感じたことは、「取材
を終えて」として独立させたり、一般新聞の社説に該当する箇所
で主張しましょう。記事の中に取材者の私的で個人的な主張が入
ってくると、記事の信憑性が低下してきます。
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論旨を明確に
「最初はAという考えで記事を書き始めたが、関係者の声を入れていくと内容がBという考え
方に近くなり、最後にはCという考え方に受け取れる内容で記事が終わっていた。結局、読者は、
この記事で何を伝えたかったのか理解できなかった」というようなことのないように、最初から
最後まで論旨が通っていることを確認します。論旨がぶれている場合には、書き直すべきです。
記事を客観的に書こうとして、「成り行きが注目される」とか「今後を見守りたい」などとい
う第三者的、傍観者的なまとめ方をするくらいなら、堂々と自分たちの主張や考え方を書きまし
ょう。特に、特集を企画した場合には、意図や取材した結果に対する感想を述べましょう。ただ
し、あくまでも自分たちは高校生新聞の制作者であり、○○高校の一員であるということを忘れ
ずに、節度と礼儀をわきまえた品位のある記事でありたいです。
最終チェックに挑戦
次の文は、5W1Hは入っていますが、新聞記事として掲載するには手直しが必要です。
どこをどのように直したらいいか、実際に赤を入れて校正してみましょう。
女子バスケットボール部が、去る6月25日(金)~27日(日)に札幌中
島体育館で行われた全道高等学校バスケットボール大会でみごと初優勝し、8
月1日(木)から広島で開催される全国大会に出場する事になったが、部長の
佐賀京子さん(3-1)は「全国大会でも頑張ります」と抱負を語って下さって
おり、全道大会でも絶好調だったらしいので、ぜひ全国大会でも頑張って、悔
いのない試合をしてきてもらいたいものだ。
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校 正 の 例
女子バスケットボール部が、去る6月25日(金)~27日(日)に札幌中
島体育館で行われた全道高等学校バスケットボール大会でみごと初優勝し、8
月1日(木)から広島で開催される全国大会に出場する事になったが、部長の
佐賀京子さん(3-1)は「全国大会でも頑張ります」と抱負を語って下さって
おり、全道大会でも絶好調だったらしいので、ぜひ全国大会でも頑張って、悔
いのない試合をしてきてもらいたいものだ。
下線部の主観箇所や不適切部分を取り除くと、次のようになります。
女子バスケットボール部が、6月25日(金)~27日(日)に札幌中島体
育館で行われた全道高等学校バスケットボール大会で初優勝し、8月1日(木)
から広島市で開催される全国大会に出場することになった。部長の佐賀京子さ
ん(3-1)は、「全国大会でも頑張ります」と 抱負を語った。
味気ないので関係者の言葉を入れ、6W2Hの記事にしました。
女子バスケットボール部が、6月25日(金)~27日(日)に札幌中島体
育館で行われた全道高等学校バスケットボール大会で初優勝し、8月1日(木)
から広島市で開催される全国大会に出場することになった。全道大会での様子
を副部長の山本佐知子さん(3-4)は、「みんな絶好調で、もしかすると優勝で
きるんじゃないかって言ってたんですよ」と嬉しそうに説明する。部長の佐賀
京子さん(3-1)は、「練習の成果を発揮できました。マネージャーを含めて、
全員で勝ち取った優勝です。全国大会でも頑張ります」と抱負を語っている。
体育館で一緒に練習をする卓球部の部長平林琢磨君(3-6)は、「練習時間は短
いけど、基本動作の繰り返しと、実戦を想定した練習が充実していた」と、優
勝の原因を分析する。女子バスケットボール部顧問の田島勤先生は「優勝でき
て嬉しい。後輩の励みにもなる。この調子なら、全国でも上位を狙えるのでは
ないか」と目を細める。
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