Anim. Eye Research 2010 29 abstract

Anim. Eye Res., 2010; 29:
比較眼科研究 Vol. 29(2010)
総説
Diagnosis and Treatment of Corneal Disease in Small Animals
Brian C. GILGER
Anim. Eye Res., 2010; 29: 1-6
原著
正常ビーグル犬の光刺激を用いた視覚誘発電位における散瞳状態の影響、刺激眼による応答
の差および再現性の検討
伊藤 良樹, 前原 誠也, 富田 沙織, 泉澤 康晴
Anim. Eye Res., 2010; 29: 7-12
目的:ビーグル犬の光刺激を用いた視覚誘発電位(fVEP)における散瞳状態による影響、左右の刺激眼による応
答の差、および再現性を検討した。方法:7 頭の健常なビーグルを対象とした。fVEP 記録にはポータブル VEP シ
ステムを用い、鎮静下で散瞳前後に記録を行った。電極には皿形電極を用い、記録電極を後頭結節、基準電極を
鼻根部正中、接地電極を側頭部に設置した。fVEP 記録は各対象の片眼ずつ薄暗い部屋で実施し、128 回の刺激
を加算平均した。刺激装置の刺激強度は 3.0cd·s/m2、刺激頻度は 1.5Hz の設定を用い、対象眼と刺激装置の距
離を 2cm にして白色光による刺激を行った。fVEP 記録結果における N2 および P2 を計測し、N2 潜時と P2 潜時、
および N2-P2 振幅を算出した。VEP 記録の再現性を評価するため、1 度目の測定から 7 日後に同様の対象で
fVEP 記録を実施した。結果:散瞳前後の fVEP 記録結果を比較すると、N2 と P2 潜時、および N2-P2 振幅には
有意差がみられた。散瞳後の N2 潜時は 32%減弱、P2 潜時は 19%減弱しており、N2-P2 振幅は 60%増加して
いた。右眼刺激より得られた応答と左眼刺激より得られた応答を比較すると、潜時および振幅に有意な差はみら
れなかった。また、N2 および P2 潜時において再現性が認められた。結論:本研究の結果より、我々の方法による
犬の fVEP 記録においては、散瞳後に記録を実施し、応答の評価には再現性の高い潜時を評価するべきである。
また、各眼を刺激して得られた応答を比較することで、視路における障害部位を推測するのに有用であると推察さ
れた。
原著
北海道盲導犬協会におけるラブラドールレトリバー213 頭についての若年白内障の発生状況調
査
久保 明, 余戸 拓也, 寺門 邦彦, 諏訪 義典, 古川 敏紀
Anim. Eye Res., 2010; 29: 13-18
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盲導犬とは視覚障害を持つヒトを誘導するための使役犬であり、そのため、盲導犬自身が視覚障害を生じること
は使役を果たすために重大な問題となる。本研究では視覚障害の原因となる白内障の発生を繁殖計画により制
御することを目指して、最初の段階として、盲導犬として訓練期間中のラブラドールレトリバーにおける若年白内障
の発生状況を調査したのでその概要を報告する。盲導犬として訓練中のラブラドールレトリバー213 頭について威
嚇瞬目反応、対光反射、眼圧測定、細隙灯生体顕微鏡検査を実施し、白内障が検出された個体ごとに白内障の
形成部位、年齢、性別、血縁について調査を行った。若年白内障は 12 頭 17 眼に認められ、白内障発生個体の平
均年齢は 1.24±0.24 歳、発生率は 5.63%であった。白内障発生個体 12 頭うち、水晶体後部に白内障が観察され
たのは 11 頭であった。血縁についての調査では、白内障発生個体で同じ両親から生まれた個体は 2 頭 1 組
(Group A)、父犬が同じである場合が 2 組(Group B, C)、母犬が同じである場合は 3 組(Group A, D, E)で認め
られた。本研究におけるラブラドールレトリバーの白内障の発生率は北米での調査においてコントロール群とされ
た雑種または交雑種の白内障発生率よりも高く、このことから本犬種における白内障の好発傾向が再確認された。
本研究における白内障発生率は英国やオランダにおける本犬種の白内障発生率よりもやや低い成績となった。こ
の原因としてはこれらの研究が全年齢を対象とした報告であったのに対して、本研究が盲導犬として訓練中の若
齢犬を対象とした研究であり、より高齢での白内障の発生を検出できなかったことが考慮された。よって、本研究
の対象犬については引き続き、追跡調査の必要があると考えられた。白内障の形成部位についての検討では検
出された白内障のほとんどが水晶体後部に存在し、この傾向は既報でのラブラドールレトリバーの白内障所見と
同様な傾向であった。白内障発生個体の血縁関係の調査では明らかな血縁関係が認められ、遺伝性素因が強く
関連していると考えられた。よって、盲導犬の選定においては白内障個体を避けるべきであり、また、今後は更に
白内障発生の危険を回避できるような繁殖計画の策定とその改善に努める必要があると考えられた。
原短報
犬における 2 種類の眼底カメラの比較
寺門 邦彦, 余戸 拓也, 印牧 信行, 根津 欣典, 原田 恭治, 原 康, 多川 政弘
Anim. Eye Res., 2010; 29: 19-24
クリアビューと GENESIS-Df の眼底撮影像を比較したところ,その撮影範囲はクリアビューでは、縦径が視神経乳
頭の 5.13±0.42 倍、横径が視神経乳頭の 4.99±0.45 倍であった。GENESIS-Df では縦径が視神経乳頭の
2.99±0.33 倍、横径が視神経乳頭の 3.54±0.36 倍であった。クリアビューと GENESIS-Df の縦径および横径とも
に p<0.01 で有意差が認められた。またパノラマ画像作製にはクリアビューでは 4.63±0.32 視野、GENESIS-Df
では 11.26±1.93 視野必要であった。クリアビューと GENESIS-Df のパノラマ画像作製枚数の間には p<0.05 で
有意差が認められた。両方の眼底カメラ共に撮影した画像は鮮明であり、診断に供するに十分な画質であった。
クリアビューは 1 枚の眼底写真で広範囲の撮影が可能であるためスクリーニング検査に適しており、
GENESIS-Df は撮影範囲が狭いものの解像度が高いため詳細の観察に適していると考えられた。
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症例報告
Crl:CD(SD)ラットにみられた角膜類皮腫の 1 例
小川 竜也, 山本 哲弥, 小澤 直幸, 小松 真彦, 米山 潤, 岡崎 修三
Anim. Eye Res., 2010; 29: 25-28
毒性試験に供するために 5 週齡で購入した Crl:CD(SD)系雄ラット 1 例の右眼球角膜に、数本の被毛を伴う白色
の円形隆起巣(直径約 2mm)が肉眼的に認められた。約 1 年後、隆起巣はその丸みを増して半球状を呈して被毛
が脱落したことを除けば、他の部分の角膜、前眼部、中間透光体あるいは眼底に異常所見はみられなかった。生
後 59 週齢で病理組織学的検査に供した結果、隆起巣はほぼ正常な皮膚に相当する構造、すなわち、表皮、真皮
と皮膚付属器(毛包、毛根及び皮脂腺)及び皮下脂肪組織がみられたことから、角膜に発生した典型的な類皮腫
と考えられた。
資料
Observations on Canine Optic Disc Myelination in Several Breeds
Masanobu FUKUI, Hiroshi HIRAMI, Masataka MUKAIDA, Reiko SUZUKI, Masahiro NAKAMURA
Anim. Eye Res., 2010; 29: 29-34
ヒト、ウマなどでひろく認められる視束乳頭の陥凹(Optic Disc-Cupping)確認のため、60 犬種ほどにつき前記
Optic Disc の形状を調査した。ほぼ全例の眼内圧(IOP)は正常とされ、また生理的陥凹(Physiologic Cup)も,普
遍的に記録された。一方、一部の犬種で有髄神経線維の増殖(Myelination)が、若齢から通常記録された。この
ため、前記 Cupping はイヌの緑内障(Glaucoma)の初期診断には用いられず、視野狭窄(Vision Field Defect)
の簡易診断法、例えばウマでの Blinker のイヌへの改良した応用で、これを確認するなどの方法の開発が早期に
望まれよう。
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