ヒラリズム 2の19 陽羅 義光 男性的・女性的 今の世の中、性同一障害だのおかまだのニューハーフだの 女装家だのオヤジギャルだの何だのかんだのが溢れていて、 男性的とか女性的とか云うのも野暮な気もする。 誤解しないよう付け加えておくが、わしはおかまだのニュ ーハーフだの何だのかんだのが嫌いではないから、ことさら 差別しているわけではない。 しかしながら野暮な気がするだけであって、やはり男性的 と か 女 性 的 と か は 、わ し の 経 験 上 か ら も 実 存 す る は ず で あ る 。 例えば「竹を割ったような性格」と云うものは、男性的な ものと決めつけても間違いではなかろうし、例えば「触れな ば落ちん風情」と云ったものは女性的と判断する他はないと 思われる。 わしはどうしても文学を引き合いに出したがるのだが、男 性的な作家や女性的な作家と云うものは厳然として存在し、 森鴎外、夏目漱石、志賀直哉、坂口安吾、大岡昇平等がそう であり、樋口一葉、岡本かの子、林芙美子、宇野千代、森茉 莉等がそうである。 太 宰 治 も 男 性 的 な 作 家 で あ る 、と 云 う の は 、 『 女 性 徒 』や『 斜 陽』や『ヴィヨンの妻』等、女性の語り口の作品でも、その 情に流されない怜悧な文章と反骨精神溢れる物語は、実に男 性的であるからである、少なくとも女々しいところはまった くない。 その点、昨今の男性人気作家はちっとも男性的ではなく、 女々しい、村上春樹、西村賢太、田中慎弥、諏訪哲史、阿部 和重等大半がそうである。 その点、昨今の女性人気作家はちっとも女性的ではなく、 雄々しい、松浦理英子、多和田葉子、川上弘美、小川洋子、 梨木香歩等大半がそうである。 嘆かわしいか、むろん嘆かわしい。 実はわしは男性的な女性は嫌いではない、要するに可愛い 女性ではなく、かっこいい女性と云うものであろうか。 だが、かっこいいだけではやはり男性には敵わないと思わ れる。 スポーツ・クラブでわしが贔屓にしているインストラクタ ー は 、タ ン ク ト ッ プ と シ ョ ー ト パ ン ツ か ら 露 出 さ れ た 肉 体 は 、 贅肉が皆無で、男よりも男性的であるから、まあかっこいい のであるが、その手首から先、足首から先、その動きと云う か佇まいと云うか、何とも女性的で、優美なのである、だか らわしは、そのかっこよさよりもその優美さに惹かれる。 太宰治の小説はその逆で、優美で何とも女性的でありなが ら、やはり贅肉が皆無の男性的な香りがする。 昨今の男性作家群は太宰治を見習って貰いたいし、昨今の 女性作家は我がインストラクターを見習って貰いたい。 わしは、わしを苛めるのが三度の飯より好きな愚妻からも 「男の中の男」と呼ばれておるが、わしが女だったら「女の 中の女」と呼ばれたいもんだ。 「男の中の男」 「 女 の 中 の 女 」と は 何 ぞ や 、そ れ は 君 自 身 で 考えなさい。
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