ベリーズ概況 平成24年9月 在ジャマイカ日本国大使館 1 1.正式国名 ベリーズ(Belize) 。1973年の国名変更まで英領ホンデュラス。 2.位置・面積 (1)位置 ユカタン半島南部,カリブ海沿岸に位置。北部及び北西部をメキシコと,南部及び 南西部をグアテマラと国境を接している。 (2)面積 22.963平方キロメートル(四国全体より約20%大きい。 )。 3.地勢 海岸に沿って数多くの小島と世界有数の珊瑚礁が形成されている。マングローブの林 に覆われた海岸低地は内陸部に入るに従いなだらかに登っていく。南部にはマヤ連峰 (Maya Mountains),そして最高峰のヴィクトリア峰(Victoria Peak, 1.122メ ートル),コックスコーム連山(Cockscomb Range)が連なっている。北部低地には 数多くの河川がある。 4.気候 亜熱帯性気候であるが,貿易風によりしのぎやすい。海岸地帯の気温は,平均10℃ ~36℃の間を上下するが,内陸では較差は更に大きい。雨量は,北部の年平均 1.295ミリから南部の4.445ミリと地域によって異なる。2月から5月が乾 期であるが,時に8月も乾期になる。9月から11月は時としてハリケーンが襲来す る。2000年10月にはハリケーン・キースが来襲し,全土に大きな被害を与えた。 5.人口・民族 人口は2011年の推計で約332.700人,人口密度は12.3人/k㎡。 人口の約4分の1が商業の中心地である最大都市のベリーズ・シティーに住んでいる。 クレオール(黒人系:24.9%),メスティソ(マヤとスペイン系の混血:48. 7%),マヤ系先住民(10.6%),ガリフナ(黒人とカリブ族の混血:6.1%) を主体とし,その他インド系,中国系も存在する。 6.言語 公用語は英語である。しかし約半数の住民がスペイン語を話す。ほとんどの住民は クレオールと呼ばれる英語の方言を話す。特に南部にカリブ語,マヤ語を母語とする 住民が多い。 7.特徴 2 ベリーズ社会の大きな特徴の一つは,地域による地勢と民族の多様さである。国 の中部から北部にかけては平坦で広大な未開発の荒地・湿地帯が広がる。利用される 耕地の大部分は,サトウキビ栽培が占める。中部から南部には海岸線に沿って幅10 ~20キロメートルの平野が続き,柑橘類のプランテーションが広がっている。平野 の後背地はグアテマラ国境まで続くマヤ山地(標高最高点は,1.120メートル) で熱帯雨林に覆われている。この地方は,大雨が降ると山間部の降水が幅の広い平野 部に押し寄せるため,洪水の被害が出やすい地形となっている。 8.国民性 一般に温和で,ラテンアメリカ,特にカリブの陽気さと,イギリス風の規律の正し さという両面を備えている。 9.国旗・国歌・国花 (1)国旗 濃紺の長方形の地に,細くて赤いストライプが上下に走り,中心には白い円に, 国の紋章があしらわれている。 (2)国歌 「自由な地(Land of the Free)」 1925年に作成。 作詞:サミュエル・ヘインズ(Samuel Haynes) 作曲:ウェルフォード・ヤング(Welford Young) (3)国花 黒ラン(Encyclia Cochleata) 国の木 マホガニー 10.歴史 国内各地に残っている遺跡が示すように,この地域は紀元300~900年頃に最 盛期を迎えたマヤ文明の栄えた地域であった。現在のベリーズにヨーロッパ人が最初 の足跡を残したのは1638年のことで,難破した英国の船乗りであった。その語, 英国人が散発的に植民を試み始めたのは1650年代頃からと推定されている。ヨー ロッパの植民者がこの地に定住しようとした目的はロッグウッドの伐採で,ロッグウ ッドはその後長らくスペインと英国の争奪の対象となった。1763年のパリ条約で 英国が事実上支配する地域となったが,その後もスペインの干渉や攻撃は続き,特に, 1798年9月10日に英国人植民者がスペインの攻撃を破ったことで英領植民地と しての一体感が生まれ,その後の個別領土としての基盤が形成されたといわれており, 現在,9月10日は国の祝祭日に指定されている。「英領ホンデュラス(BRITISH HONDURAS) 」として正式に英領植民地として宣言されたのは1862年のことであ る。他方,1821年にスペインから独立した隣接国のグアテマラは,スペイン統治 時代の権利を全て継承したとして英領ホンデュラスの領有を主張し,後年のグアテマ ラ・英国,更にグアテマラ・ベリーズの領土問題の紀源となった。 1862年の英領植民地への編入宣言とともに,ジャマイカ総督管轄下の代理総督 が行政を,任命制の立法議会が立法を行う制度が導入されたが,1884年にはジャ 3 マイカ総督の管轄から切り離され,英領ホンデュラス総督が置かれるようになった。 また,1935年から制限選挙が実施されるようになり,1954年には普通選挙が 実施されることで,植民地自治制度が確立した。1973年には,それまでの英領 ホンデュラスの名称がベリーズに改称された。当時は英語圏カリブ諸国が続々と独立 を達成していた時期でもあり,ベリーズの独立も時代の趨勢ではあったが,グアテマ ラがベリーズの領有を主張したため,その独立は遅れた。1975年には国連でもベ リーズ独立問題が討議された経緯がある。その後,英国とグアテマラの交渉の結果, ようやく1981年9月21日に,ベリーズは正式に独立国となる。 11.政体 立憲君主制。元首はイギリス女王エリザベス2世であり,その権限はベリーズ人総 督(GOVERNOR GENERAL)により代行される。現在の総督はコルビル・ヤング (COLVILLE YOUNG)である。 12.政治概況 (1) イギリス式議会制度の下に政情は概ね安定しており,これまで二大政党であ るUDP(民主連合党)とPUP(人民連合党)の政権交代が,民主的な選挙を通じ 実施されてきた。1981年の独立時には,植民地自治政府の時代から引き続きPU Pが政権を担当していたが,1984年の総選挙でUDP政権が誕生し,1989年 の総選挙でPUPが政権に返り咲いた。その後,PUPは,選挙に勝てるとの目算に より早期解散を行い,1993年6月に総選挙を実施したが,PUPの予想に反して UDPが勝利し政権に返り咲いた。 (2)1998年8月27日に実施された総選挙(下院選挙)の結果,PUPが再び 議席の大半を押さえ,サイード・ムサを首班とする政権が成立し,2003年3月の 下院選挙で再びPUPが過半数を占めた。 (3)2008年2月に総選挙が実施され,UDPが,31議席中25議席を占め地 滑り的な勝利を収めた。PUPは,過去10年間政権を担ってきたが,右総選挙の結 果については,UDPの勝因よりも,近年のPUP政権下での汚職,引いては,ムサ 前首相の指導力の欠如が,PUPの大きな敗因として挙げられる。バロウ政権は,政 権掌握役,国内経済再建(具体的には,外国企業による石油開発の ),を行ってい るが,世界的経済停滞の影響もあり,治安は悪化し始めている。また,前政権ほどで はないが,一部政権内関係の汚職問題も指摘されている。 (4)2012年に入って,ベリーズシティー市内の治安は,若干改善の兆しを見せ てきたが,全体としてはまだ」十分でなく,観光・石油収入も思うように伸びない中 にあって,2012年度予算の立て直しを図るべく大規模な国債発行政策を国民に問 うべくバロウ政権(UDP)は,残り任期期間が1年間あるにも拘わらず,3月7日 に早期総選挙を実施した.総選挙の結果は,UDPが,17議席を得て14議席を得 た野党(PUP)に辛勝した。3月13日に発足した新政権は,前政権の主要閣僚が 留任する形で発足した。 4 13.現政権の課題 公的債務問題(ベリーズ政府発行の国債の金利,元本保障問題,外国から融資を受け た負債資金支払い。 )。治安の改善。失業率の解消。外国投資の誘致。石油収益の陰り。 14.現政権閣僚リスト ( 1) Rt. Hon. Dean Barrow - Prime Minister and Minister of Finance and Economic Development ディーン・バロウ首相兼財務・経済開発大臣 ( 2 ). Hon. Gaspar Vega - Deputy Prime Minister and Minister of Natural Resources and Agriculture ガスパール・ベガ副首相兼天然資源・農業大臣 (3) Hon. Erwin Contreras - Minister of Trade, Investment, Private Sector Development and Consumer Protection アーウィン・コントレラス貿易・投資・民間部門開発・消費者保護大臣 ( 4 ) Hon. Senator Liselle Alamilla - Forestry, Fisheries, Sustainable Development and Indigenous People リセッレ・アラミッラ森林・漁業・持続的成長・先住民対策大臣 (5)Hon. Senator Joy Grant - Minister of Energy, Science and Technology and Public Utilities ジョイ・グラント・エネルギー・科学技術・公益大臣 (6)Hon. Wilfred Elrington - Attorney General and Minister of Foreign Affairs ウィルフレッド・エルリントン司法大臣兼外務大臣 (7)Hon. John Saldivar - National Security, Police and Belize Defense Force ジョン・サルディバー国家安全保障・警察・国防大臣 (8)Hon. Michael Finnegan - Minister of Housing and Urban Development 5 マイケル・フィネガン住宅・都市開発大臣 (9)Hon. Rene Montero - Minister of Works and Transport レネ・モンテロ公共事業・運輸大臣 (10)Hon. Manuel Heredia - Minister of Tourism and Culture マニュエル・ヘレディア観光・文化大臣 (11)Hon. Pablo Marin - Minister of Health パブロ・マーリン保健大臣 (12)Hon. Senator Godwin Hulse - Minister of Labour, Local Government and Rural Development ゴッドウィン・ハルス労働・地方政府・地方開発大臣 ( 1 3 ) Hon. Senator Charles Gibson - Public Service and Elections and Boundaries チャールス・ギブソン公共サービス・選挙・選挙区問題対策大臣 ( 1 4 ) Hon. Anthony Martinez - Minister of Human Development, Social Transformation and Poverty Alleviation アンソニー・マルティネス人間開発・社会変革・貧困削減大臣 (15)Hon. Patrick Faber - Education, Youth and Sports パロリック・ファーバー教育・青年・スポーツ大臣 (国務大臣) (16)Minister of State Herman Longsworth (with special emphasis on Youth and Sports) ハーマン・ロングスウォース青年・スポーツ担当大臣 6 (17)Minister of State Santiago Castillo (with special emphasis on Economic Development) サンチャゴ・カスティロ経済開発担当大臣 (18)Minister of State Hugo Patt (with special emphasis on Agriculture) フューゴ・パット農業担当大臣 (19)Minister of State Elvin Penner - with special emphasis on Immigration and Border Protection エルビン・ペナー移民・国境監視担当大臣 (20)Minister of State Edmond Castro - with special emphasis on Transport エドモンド・カストロ運輸担当大臣 (21)Hon. Mark King - special emphasis on the Conscious Youth Development Programme and the Gang Truce Programme マーク・キング青年開発計画・ギャング取締対策担当大臣 15.立法・政党 (1)立法 総督の下に議会(NATIONAL ASSEMBLY)があり,議会は下院(HOUSE OF REPRESENTATIVES)と上院(SENATE)の二院制となっている。下院は,普通選挙 (選挙権は18歳以上)により選出される31名の議員により構成され,任期は5年。 上院は12名の議員により構成されるが,うち6名は首相の助言により,残り3名は 野党党首の助言により,残り3名は宗教団体等の助言により指名され,総督がこれを 任命する。 2012年3月の総選挙の結果,現在の下院の政党別議席配分は,人民連合党 (PUPが17議席,民主連合党(UDP)が14議席となっている。また上院は UDP6議席,PUP3議席,その他3議席となっている。 (2)政党 主要な政党は,PUP(PEOPLE’S UNITED PARTY:人民連合党)とUDP (UNITED DEMOCRATIC PARTY:民主連合党)の2政党であるが,イデオロギー上・ 政策上の差異はほとんど見られない。なおこの他に,National Reform Party,Vision Inspired by the People,National Belizean Alliance 等がある。 7 主要政党については,以下の通り。 (イ)PUP:ジョージ・プライスを指導者として,植民地時代の1950年代から 1980年代までベリーズ政界をリードしてきた政党である。当初は,労働運動と強 い関わりを持っていたが,近年では労働運動との関係は薄れている。UDPと比較し てややリベラルで外交的には中米諸国との一体性をより重視しているともいわれ,メ スティーソ人口の割合が高いコロザル地区で相対的に人気が高い。現党首は,フラン シス・ウィリアム・フォンセカ党首。 (ロ)UDP:1973年に当時の3つの小政党がマヌエル・エスキベルの指導の下 に合併してできた政党。PUPよりもやや保守的で外交的にはカリブ寄りとも評され, クレオール系人口の割合が高いベリーズ地区において比較的支持率が高い。党首はデ ィーン・バロウ党首。 16.司法 裁判所には最高裁判所(SUPREME COURT),控訴裁判所(COURT OF APPEAL) 及び6地区に刑事地方裁判所と民事地方裁判所がある。2010年には,カリブ裁判 所を最終裁判所とした。 17.地方制度 全国は6つの行政地区(ベリーズ,カヨ,コロザル,オレンジウォーク,スタンク リーク,トレド)に区分される。ベリーズ地区を除く各地区では,7名からなる地区 評議会が地区行政にあたるが,カヨ地区にはサン・イグナシオ及びベンケ・ビエホに 夫々地区評議会があるので,全国で7つの地区評議会があることになる。ベリーズ地 区については,9名から成る市評議会が行政にあたる。いずれも選挙は3年毎に実施 される。最大都市は,旧首都のベリーズ市,第二は,オレンジウォーク。首都のベル モパンは,カヨ州にある。2012年3月に行われ統一地方選挙では,与党(UDP) が多くの都市で野党(PUP)を押さえ勝利を収めた. 18.国防政策 外部からの攻撃に対する防衛が主要な国防軍の任務。最近では,グアテマラから越 境するグアテマラ人原住民の取り締まりを強化している。 19.国防組織・国防力 1978年に創設された陸海空から成るベリーズ国防軍(約1000名)が国防の 主体であり,装備,訓練ともに英国の援助を受けている。3軍制であるが,主体は陸 軍で,海軍は約50名の要員に10数隻の巡視艇,空軍は約20名の要員に若干の輸 送機を持つ小規模のもの。以前は英国軍が駐留していたが,1995年初頭までに若 干の訓練要員を除いて撤収した。1995年,それまでの国防省がベリーズ国防軍と ベリーズ警察を統括する国家安全保障省に改組された。 8 (1)予算 (2)兵制 (3)兵力 約18百万米ドル(2007年ミリタリーバランス) 志願制 1,050人陸軍(推定) (2008年ミリタリーバランス) 20.外交政策 (1)現在米州機構(OAS),カリブ共同体(カリコム,1975年に加盟),中米 統合機構(SICA:Central American Integration System,2000年より加盟) の加盟国である。 (2)現政権は,1987年に政権にあった際に中国政府を承認していた。その後現 野党(PUP:人民統一党)が,政権時に再度台湾と外交関係を復活。 (3)台湾は,中国の様にインフラ分野での大規模な経済協力はしていないが,農業 分野,特に米の改良等の技術協力をしている。またテラピアをベリーズで養殖して台 湾に輸出している。2009年5月には,馬英九総統がベリーズを訪問した。 (4)グアテマラとの関係 両国の国境線が機械的に分断されており,グアテマラからの越境者が後を絶たず,大 きな問題となっている。 グアテマラとの国境クロノロジーは,以下のとおり。 2002年 OAS仲介案提示。 2005年 定が成立。 ベリーズとグアテマラ間で(国境問題)信頼構築措置に関する合意協 2010年 グアテマラ議会は,2008年12月の特別合意を承認。 2012年 ベリーズとグアテマラ間の国境線問題をICJに提起する国民投票を 2013年10月6日とする合意が両国間で成立した。 21.経済総論 (1)歳入及び歳出 ●総歳入額 862,643,366ベリーズドル(11/12年度は,843,6 30,032ベリーズドル,1ベリーズドルは0.5米ドル) うち援助額 35,199,305ベリーズドル(11/12年度は,54,29 5,000ベリーズドル) ●総歳出額 937,857,347ベリーズドル(11/12年度は,889,9 87,180ベリーズドル) (2)現下のベリーズ経済の特長 (ア)輸出指向型(原油,農産品,水産物,砂糖)他に観光,外国からの投資,援助, ディアスポラの送金 (イ)1930年の世界恐慌以来の世界不況下の影響を直に受けていること 9 (ウ)中長期的には,経済は上向くことが予想される (3)最近の近隣諸国との経済発展 (ア)砂糖生産の拡大及びベリーズ砂糖産業会社(BSI)が資金問題を抱えており, 政府は,米国砂糖精製会社が,BSIの筆頭所有会社となる交渉を行った。これは, サトウキビ業者にとり3千万ベリーズドルの所得増加になる。 (イ)法的枠組みの下でメキシコに生きたままの家畜の輸出をする計画を進めている。 (4)2012年の経済 (ア)2012の経済成長は,実質2%の見込み。経済成長の主要上昇要因は,第一 次産業分野のバナナとサトウキビ。第二次産業分野の砂糖と電力,第三次産業分野の 輸送と観光。 (イ)バナナ収穫は,2011年の暴風雨の被害から完全に立直った。柑橘類は,国 際価格の上昇とハリケーンの影響からの立直りが期待される。砂糖は,米国砂糖精製 会社のBSIへの投資により,生産拡大と農家の生産性増加が期待される。BALエ ビ会社を含む水産資源も新たな投資家の参加により上向くことが期待される。 (ウ)原油生産は,減少している。 (5)今後の税制改革 新たな課税制度は導入しないが以下を改正予定 (ア)昨年撤廃済みの燃料に対するGST(一般消費税)の再導入。 (イ)電力生産企業に対するビジネス税を現行の6.5%から1.75%に引き下げ る。 (ウ)ホテル業界に課せられるホテル・観光宿泊税を廃止して,ホテル・観光宿泊税を GSTの中で徴収する。 (6)ベリーズの公的債務問題 (ア)公的債務は,GDP比で91%であったが,現在は,81%にまで改善された。 (イ)スーパーボンドと称されるベリーズ政府負債の内訳 (a)Bear Stearns が振出した,額面125百万米ドルと100万米ドルの債券 (b)RBTT Merchant Bank が振出した額面76百万米ドルと Royal Merchant Bank and Finance Company が振出した額面25百万米ドルの債券 (c)Citicorp Merchant Bank が振出した総額21.5百万米ドルの3つの債券 (d)The International Bank of Miami 宛ての6つの約束手形 (e)総額96百万ドルの Bear Stearns に対する二件の負債 (f)ボリビア政府に対する50百万米ドルの約束手形 (7)PUP前政権が2007年前に行ったこれら17件の総額11億ベリーズドル の債務は,2007年の金利スワップ前までは平均11.25%の金利に達していた。 現時点では,金利8.5%であるが毎年93百万米ドルの支払いを必要とし,これは 10 GDPの3%以上に達する。 (8)昨年度は,GDPの3.1%に達していた原油関連収益も1.4%に落ち込み, さらにベリーズ通信公社(BTL)と電力公社(BEL)の前所有者に対する保障金問題 もある。 (9)経済指標 2009年 10年 11年 (ア)人口(単位千人) 333.2 323.4 332.7 (イ)労働力(単位千人) 120.5 100.7 不明 (ウ)4月時点の失業率(%) (エ)GDP 13.1 23.3 2,698 不明 2,797 2,895 (単位百万ベリーズドル) (オ)一人当たりGDP 8,097 8.650 8,702 0.6 2.4 2.2 221.7 224.7 233.2 (単位ベリーズドル) (カ)実質成長率(%) (キ)観光業 (宿泊者数,単位千人) (ク)クルーズ船停泊客数 (単位千人) 634.7 (ケ)インフレ率(%) 1.1 688.2 0.9 654.8 1.5 (コ)中央銀行の貸付総額 (単位百万ベリーズドル) 1,805.4 1,762.0 1,757.7 (サ)金利(%) 加重平均貸付率 14.0 13.8 13.0 加重平均預金率 6.1 5.6 3.7 (シ)国際収支 輸出(FOB,単位は百万米ドル) 382.1 481.9 603.3 輸入(同様) 602.5 615.7 773.9 -238.4 -133.8 -170.7 貿易バランス 海外からの送金 76.2 74.5 73.3 観光(総収益) 256.2 248.6 253.7 観光(純益) 182.6 203.4 175.1 経常収支 -84.6 -5.3 -36.8 資本・金融流入 外貨準備高 135.5 213.7 13.6 40.9 218.0 236.1 (ス)通貨ベリーズドル(1米ドル=2ベリーズドル) (セ)主要貿易品(ベリーズ中銀) 輸出:砂糖,バナナ,柑橘類,衣服,魚介類,糖蜜,木材 輸入:機械,輸送機器,製造品,燃料,科学物資,医薬品,食料,飲料,たばこ 11 (ソ)主要貿易相手国(2007年,ベリーズ中銀) 輸出:米(28.7%),英(16.3%),タイ(5.8%),象牙海岸(5.4%) ,フィンランド(4. 2%) ,スペイン(4%) 輸入:米(31.2%) ,メキシコ(13.6%) ,キューバ(8.5%),グアテマラ(8%) ,ロシア (4.6%) 在ベリーズ・米国大使館ホームページ案内では,2010年時点でベリーズの対米輸出は,全体の49. 1%,対米輸入は,全体の47.9%となっている。 (タ)電話普及率(人口比)52.91%(2007年中銀) 22.ベリーズの社会開発について (1)社会開発 a. 社会指標 1981 年の独立以来、ベリーズの社会指標は改善傾向にある。平均寿命は 1981 年の 67.0 歳から 2005 年には 75.9 歳に延び、5 歳以下の幼児死亡率(1000 人当たり)は 1981 年の 35 から 1996 年には 26、2005 年には 17 人へと減少している。近年の指標は、他の中高位 収入国と比較しても遜色がない。 しかしながら、順調な経済成長に比べると、いくつかの社会指標はまだ低いレベルにあ る。識字率は 2005 年の統計でも 15 歳以上の人口の約 1/4 が文字の読み書きをできないこ とを示している。また、2004 年に国家貧困ラインを使用した貧困率は 33.5%と、国民の 1/3 が貧困状況にあるとしている。IDB の統計では、絶対的貧困レベルにある人口が全体 の 10.5%(2003 年)いるとしている。ベリーズの状況を、順調な経済成長、比較的高い 一人当たり GDP、急速な観光産業の成長のみで判断すると、見誤ることとなる。 b. 教育・医療 ベリーズの教育制度は初等教育が 6 年(Grade1~6)、中等教育が 4 年(Form1~4)で、Grade1 から Form4 までの 10 年間が義務教育となっている。大学進学を希望する学生は中高校の 6 年生に編入され、2 年間かけて必要な単位を取得することになっている(中高校 5 年生 はない) 。大学教育では、学士課程がある大学が国内に 3 大学あるが、国立大学はベリー ズ大学のみである。 1980 年代以降、ベリーズ政府は義務教育にかかる予算を増やし、学校数が増えるととも に小学校の就学率は 2006 年に 97%に達した。中等教育については、1991 年に 31%だった 就学率が 2005 年には 71%に改善している。通常途上国の大きな教育問題の一つが生徒の ドロップアウト率の高さであるが、ベリーズでは小学校のドロップアウト率が 1991 年の 33%から 2004 年には 9%に改善している。しかしながら、地方には通える小中学校がない 子供たちも少なくない。また、中学の就学率が依然 71%に止まっているということは、現 在でもベリーズの子供たちの 3 割は小学校までで教育を終わってしまうということであ る。 過去 10 年ほど、ベリーズにおける新増労働人口の 2/3 は学歴が小学校教育以下で、専 門技術を持たない労働者であるとされている。また、労働人口の増加のペースが経済成長 に伴う労働市場の拡大を上回っているため、結果として学歴・技術をもたない若年は就業 12 の機会が限られることとなる。ベリーズでは、近年銃器を使った殺人や強盗事件が増加し ているが、犯罪者の多くは若年失業者であると考えられている。 教師の質やカリキュラムの内容も大きな問題である。2007 年に行われた調査では、小 学校 6 年生担任教師 300 人が PSE テスト(中学に進学するための統一テスト。通常 70 点 が合格ライン)を受験し、うち 100 人が 60 点を取れなかった。カリキュラムについても 暗記中心のものが多く、応用力が身につく内容になっていないとされる。 ベリーズの公的医療は、ベリーズシティのカール・ヒュースラー・メモリアル病院を頂 点に、公立病院が各郡に計 7、ヘルス・センター計 40、ヘルス・ポスト計 60 で全国をカ バーしている。この他にベリーズシティに私立総合病院が 2 件、眼科医・歯科医・皮膚科 医などの専門クリニックが全国各都市にある。国内の都市や地方のコミュニティが幹線・ 支線道路沿いに点在しているベリーズでは、国民の 90%以上が公的な医療サービスへのア クセスがあると考えられる。病院における診療は基本的に有料であるが、交通事故や犯罪 事件の被害者など救急外来の治療は無料となっている。ヘルス・センターにおける母子健 診、乳幼児予防接種、一般の B 型肝炎・狂犬病予防接種、エイズやシャーガス病検査など も無料となっている。 公立の病院ではレントゲン撮影程度の設備はあるが、エコー・CT スキャン・MRI といっ た先端機器となると私立総合病院か専門の検査機関(ベリーズシティに 1 ヶ所)に設備が あるのみである。CT や MRI の検査料は 5 万円から 9 万円と高く、私立病院の入院費も 1 泊 5 万円以上かかってしまう。一般の人が、こうした高額検査料や入院費を負担するのは 困難がある。大手の民間企業以外国民が加入できる健康保険制度はないため、国民の殆ど は医療費全額を自己負担している。また、地方の医療設備、医療サービスのレベルが低い ため、重病・重症患者はベリーズシティの病院か、メキシコ・グアテマラの病院に搬送さ れるケースが多いようである。2006 年の保健・医療にかかる予算は、政府予算全体の 8.7% であった。 ベリーズ政府は、2004 年よりヘルス・セクター・リフォーム・プロジェクトに取り組 んでいる。このプロジェクトは医療サービスの質的向上、効果的で平等な提供を目的とし ており、国内医療施設の新・増・改築、設備の改善、運営管理システムの改善が Inter-American Development Bank (IDB) 、 Caribbean Development Bank (CDB), EU 、 Multilateral Investment Fund (MIT)の資金支援で進められている。 医療従事者については、ベリーズ国内に看護婦養成校はあるものの、医師の資格を取る 場合はグアテマラ、メキシコ、ジャマイカ、キューバ、米国などに留学する必要がある。 医師・看護婦ともに絶対数は不足しており、医師はキューバ人、グアテマラ人、インド人 の契約医、看護婦は二国間協定によるナイジェリア人看護婦の受け入れで人材不足を補っ ている。そのままベリーズに移住する外国人医療従事者も少なくない。 ベリーズで現在大きな社会問題となっているのは、エイズ患者の増加である。HIV 感染 率 2.5%(2005 年)は、中米・カリブ諸国の中でも最も高いレベルにあり、その主な原因 は、不特定多数の相手と性交渉を行うことの多い性習慣や売春にあると考えられている。 売春は法律で禁じられているが、組織化された売春が行われているとの情報もある。 13 c. 社会格差 ベリーズの Gini 指数は 0.510(1995 年)と非常に高いレベルにあったが、残念ながら、 最近の Gini 指数や富裕層・貧困層別の収入比率といったデータはない。しかし、国連の 国別評価レポート(2005 年)は、 「経済成長や一人当たり GDP の伸びが格差是正につなが らず、むしろ地域的、性別的、人種的格差が拡大傾向にある」と指摘し、格差はベリーズ 政府が取り組まなければならない構造的問題であると強調している。 国 家 貧 困 削 減 戦 略 ( National Poverty Elimination Strategy and Action Plan 2006-2010)では、2002 年の国家貧困ラインを使用した貧困率は 33.5%で、国民のほぼ 1/3 が貧困状況にあるとしている。同じくベリーズ全体の絶対的貧困率は 10.8%である。 表 3 の地域別の貧困率は、ベリーズの貧困プロファイルで地域格差が顕著であることを 示している。ベリーズの 6 郡のうち貧困率が高い郡はマヤ族が集中しているトレド郡で貧 困率は 79%、最も貧困率が低いのはベリーズ郡で 24.8%となっている。トレド郡では絶 対的貧困率も 56.1%と高く、2 番目のオレンジウォーク郡の 7.1%と比べても際立ってい る。トレド郡のマヤ族については、人口の殆どが絶対的貧困レベルにあると考えられる。 マヤ族を除いたトレド郡内人口の貧困率は 28.6%、絶対的貧困率 5.9%である。また、ベ リーズは 1980 年代末以降、周辺国から 6 万人(全人口の 25%)の移民・難民を受け入れ ているが、これら移民の多くが貧困状況にあると考えられている。移民人口の多さは、ベ リーズの人口増加の一因ともなっている。 都市部と地方の比較では、地方の貧困率は 44.2%と、都市部の貧困率 23.7%の 2 倍 近いというデータが出ている。しかしながら、都市部の方が人口が多いことから、全貧困 人口の 53.0%は都市部に居住している。ベリーズの貧困人口は、都市部ではインフォー マル・サービス産業、地方では貧困人口の 50%以上が農業従事者(零細農民、少数民族、 移民)であると考えられている。地域格差は社会指標についてもあり、5 歳以下の幼児死 亡率は、国内平均の 31.0 人(1000 人当たり)に対し、トレド郡では 49.5 人となってい る。また、トレド郡の貧困世帯の中等教育就学率は 8%であるのに対し、ベリーズ郡の就 学率は 26%である。 平均寿命 識字率(15 歳以上) 就学率(2004 年) 67.0 歳(1981) 、75.9 歳(2005 年) 70.3%(1985~1995)、76.4%(1995~2005) 小学校 97%(2006) 中学校 31%(1991) 、71%(2005) 修学修了率 小学校 67%(1991) 、91%(2004) 5 歳以下幼児死亡率(1000 人当たり) 35 人(1981) 、17 人(2005) 妊婦死亡率 (10 万人あたり) 140 人(2005、調整値 52 人) HIV 感染率(15-49 歳人口あたり) 2.5%(2005) 23.治安問題 (1)2010年中の殺人事件発生件数は史上最高記録となった。 非公式ではあるが,同年中の殺人事件発生件数は132件であり,過去最高であっ た2008年(103件)を29%(+29件)上回った。 14 また,右29%増という比率は,前年比増加率で過去最高だった2001年の40% に次ぐ比率を示している。 (2)2011 年中の主要犯罪(殺人,強姦,強盗,侵入盗,その他窃盗,年少者性的虐 待の 6 罪種)の全認知件数は 2,766 件であり前年比 3.7%の増加を示した。 また,検挙数(その他窃盗を除く 5 罪種に対する件数)は 829 人であり,前年比 3. 6%減少した。 各主要犯罪の統計データは以下のとおり。 区 分 件 数 前 年 比 人口 10 万人当り発生率 ・殺人 124 件 3.9%減 37.5 ・強姦 27 件 22.2%増 8.1 ・強盗 447 件 6.3%減 135.4 ・侵入窃盗 1,094 件 6.9%増 331.5 ・その他窃盗 1,024 件 4.9%増 310.3 ・年少者性的虐待 50 件 8.0%増 15.1 24. 日ベリーズ二国間関係 (1)日本の援助実績 (ア)有償資金協力(2010 年度まで、交換公文ベース) 実績なし (イ)無償資金協力 (a) 2009 年度、環境無償資金協力「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」 (5.19 億円)の交換公文の署名が行われた。 (b)草の根人間の安全保障無償資金協力 途上国の地方政府、教育・医療機関、及び NGO(非政府団体)などが実施する比較的小規 模な草の根レベルに直接裨益効果のあるプロジェクトに対して無償資金を提供するもの。 ベリーズに対しては、2007 年以降、教育分野を中心に小学校校舎建設等、合計 36 件に約 172 万米ドルが供与されている。 2007 年からジャマイカ大使館管轄(1996 年から 2003 年まではメキシコ大使館の管轄) 年 案件名 (被供与団体名) 供与額(US$) サンタマーサ村落公立小学校改修計画 58,189 2007年 ベリーズキリスト教女子青年会改修計画 85,636 88,490 2008年 アルメニア村落公立小学校改修計画 サン・ルイス・レイ公立小学校改修計画 90,642 2009年 102,939 2010年 サン・アントニオ幼稚園整備計画 111,635 2011年 サミュエル・ヘインズ・インスティテュート・オブ・ エクセレンス施設拡充計画 稟請中 2012年 ブエナ・ヴィスタ公立小学校学習支援計画 2007-2011 年 1996-2011 年 総計 7 件 総計 36 件 US$ US$ 537,531 (55,630,937 円) 1,721,271 15 (ウ)技術協力実績 青年海外協力隊派遣事業(平成24年9月1日現在) 派遣実績:104名(男37名、女67名) 派遣中 :14名(男5名、女9名) 環境教育、小学校教諭を中心に関連分野に派遣中。 シニア海外ボランティアの派遣(平成24年9月1日現在) 派遣実績:2名 男1名 女1名 派遣中 :3名(男2名,女1名) ベリーズ観光省(1名:観光開発) 天然資源環境省(1名:固形廃棄物処理) 人材開発省(1名:手工芸) (エ)主要援助国(2009 年) (a)米国 (b)日本・カナダ (c)スペイン (d)アイルランド (3) 二国間関係 (ア)政治関係 1981 年 9 月 21 日の独立と同時に、日本は承認。1982 年 11 月 3 日外交関係開設。 1984 年 3 月 27 日より日本大使館設置(在メキシコ大使館が兼轄。2006 年 1 月 1 日よ り、在ジャマイカ大使館が兼轄している。 )。ベリーズは、1984 年駐日名誉領事設置。 1995 年 7 月 3 日名誉総領事に昇格の後、2001 年 8 月駐日大使館(実館)を開設。2009 年 1 月、日本はベリーズ・シティーに名誉総領事(モンティ・サダランガニ氏)を任 命。 (イ)経済関係 (a)対日貿易(JETRO 貿易統計) (i)貿易額 2008 年 2009 年 対日輸出 555 635 対日輸入 559 516 (JETRO 統計・1 万ドル) 2010 年 991 847 2011 年 1,907 276 (ii)主要品目 対日輸出 アルミニウムの塊、果汁、天然真珠等 対日輸入 船外機、自動車、せん孔用、掘削用機械 (b)日本からの直接投資 統計的資料はないが、ほとんど行われていないと推定される。 16 (ウ)文化関係 2008年から毎年 2 月ないしは 3 月に、当館からの支援協力をもとに、在留邦人が 中心となって、日本文化紹介を目的とした「ジャパン・デー」がベリーズ・シティー において開催され、多数の来場者を得てきている。 2012年2月には,「ジャパン デー」に代わり初めて国際交流基金事業による「和太鼓コンサート」を実現した。 2011年度国費留学生としてベリーズ人が,渡日し,ベリーズから初めて国費留学 生が誕生した。 (エ)在留邦人数 33 名(2011 年 10 月 1 日現在) (オ)在日当該国人数 5 名(2007 年 12 月現在) (カ)要人往来 (1)往 年月 要人名 1981 年 内藤特派大使(独立式典) 1983 年 山下徳夫衆議院議員 1984 年 同上 2001 年 山口外務大臣政務官 2006 年 金子農水政務官 (2)来 年月 要人名 1984 年 ムサ教育・スポーツ・文化・経済開発相 1985 年 アラゴン保健・労働・スポーツ相 1986 年 リンド農業相 1990 年 17 ゴードン総督(即位の礼) 1995 年 ガルシア農業・漁業相 1996 年 エスキベル首相 1998 年 マルティネス通産相 2000 年 シルバ農水・共同組合相(日・カリコム閣僚レベル会合) 2005 年 ブリセーニョ副首相 2010 年 ベガ副首相兼天然資源・環境大臣、エルリントン外相 (キ)二国間条約・取極 1999 年 青年海外協力隊派遣取極 2006 年 技術協力協定 18
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