拡大版 対 談 【実施日】 2016年2月2日 (火) 於 大阪市役所 大阪市 大阪弁護士会 吉村洋文 市長 松葉知幸 会長 2015年12月19日より新たに大阪市長に就任した吉村洋文市長と松葉会長との対談を行いました。 吉村市長は、53期の当会会員であり、市長としての抱負、政治の世界に入ったきっかけ、弁護士 会の役割から若手弁護士への提言まで話題は尽きず、ざっくばらんに語り合いました。 さらなる成長の土台というか、足腰の 児教育から中学校までの初等中等教 強さになってくると思っていますので、 育が管轄になりますので、まずは幼児 ─ 施政方針として「市民サービス 特に教育の分野を充実したいと思って 教育の5歳の無償化を今年の予算で取 の拡充」 「大阪の改革と成長」を います。支援を必要とされる方向けの り組んでいきたいと思っています。こ 掲げられています。特にどのよう 行政サービスは当然やりますけれども、 れが 4 歳、3 歳と、当然財源との調整 ⒈ 市長の施政方針 な点に重点的に取り組みたいとお 長いビジョンで見たときには、そのき はあるんですけれども、下げていって、 考えか、お聞かせください。 っかけを今つくっておくことが将来の 何とか社会全体が教育を重視していこ 吉村 まず、僕は「教育」は非常に大 大阪にとって大事だと思っています。そ うよという方向に向かっていくようにリ 事だという認識を持っております。成 ういう意味で、子どもの教育の無償化、 ードしたいと思っています。 熟都市である大阪がさらに成長してい また医療費もそこに密接に関連します もう 1 つは、都市の成長です。大 くためには何が必要かと考えたときに、 ので、子どもの教育・医療費の無償化 阪は経済都市ですから、この経済都 教育だと思っているんです。特に少子 都市大阪を目指すということをまず 1 市を成長させていくためには、府と 高齢化が確実視される中で、そこでも つの大きな題目として掲げています。 市が一体になって副首都推進を目指 大切なのはやはり教育だろうと。教育 基礎自治体である大阪市には大阪 すということをしています。僕が市 を充実させていくこと、これが大阪の 市立大学がありますが、基本的には幼 長になっても思うんですけれども、府 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2 5 感覚として早く分かってもらうという のは、有権者が18歳になっていること も含めると絶対必要だと思います。市 長であり、かつ弁護士というポジショ ンをお持ちなわけですから、法の支配、 あるいは法律を若い人に是非知ってい ただくために、弁護士の活用を特にお 願いしたいと思います。 吉村 僕自身、真剣に弁護士を目指そ うと思ったのは高校のときでして、公 立の生野高校だったんですけれども、 そこへ現役の弁護士が来て、弁護士の 仕事はこういうことなんですよと。あ るいは政治家も来ましたし、社会で活 躍している生野高校卒業の先輩が来て そういう話をする、それがきっかけで した。若い高校生などにそういった仕 事人、あるいは弁護士とはどういうも のなのかということに触れてもらうと いうのも有意義なことだろうなと思い ます。 Profile 平成10年 司法試験合格 平成12年10月 弁護士登録 (53期) 平成16年11月 大阪弁護士会登録 平成23年 4 月 大阪市会議員当選 ただ、弁護士の活躍の分野は、僕は 大事なことは、教育がいかに重要で もっともっと広がっていいのかなと思 あるのかとしっかりメッセージと具体 っていて、これまでの特定の依頼者の 策を出す必要があると思っていますし、 ために法廷に行く、あるいは交渉する 今回、僕が幼児教育の無償化と言って という業務はもちろん大事ですけれど るのは、子育て世代に対する支援とい も、僕はもっともっと広がりのある職 う副次的な効果は当然出てくるんです 業だと思っていますし、そうすること けれども、思いとしては教育、子ども が社会に貢献するんだろうなとも思っ と市の二重行政は確かにありますの そのものに投資する、大阪の未来に投 ています。特に大阪市は基礎自治体で で、その二重行政をなくして、大阪 資する、そういう観点でやっています すから、市民の皆さんにいろいろな市 が一体となって成長を目指せる、そ ので、いわゆる所得制限をつけずにす 民サービスを提供していますので、区 ういった行政組織をこれからの時代 るとメッセージを打ち出しています。 役所の法律相談もしていますし、ある 平成26年12月 衆議院議員当選 平成27年12月∼ 現職 は目指していかなければならないと 思っていますので、そのあたりを何 とか中心に見据えながら進めていき ⒉ 弁護士と自治体との 協力関係 いは区役所のリーガルサポーターズの ような形で、区役所として何か相談し たいというときに気軽に相談できる弁 松葉 大阪弁護士会としては、特に子 護士がいるというのは、円滑な業務を 他によく指摘されるのは待機児童の どもの教育に関しては、消費者保護委 進めていく上でも大事だと思っていま 問題ですね。待機児童を解消するこ 員会や子どもの権利委員会、あるいは す。そういった取り組みは本当に広げ とにも積極的に取り組んでいます。中 法教育委員会が一生懸命取り組んで ていくべきだと思います。さまざまな には、教育無償化よりも待機児童の問 はいるんですけれども、まだまだ広が 専門知識もありますので、今大阪市で 題が優先だという声はいただきますが、 りがない。それは行政から弁護士会に は児童虐待の支援をするというのも たいと思っています。 そこは優先順位という関係ではない部 頼むという発想が一般的にあまりない …… 分もあって、待機児童は待機児童で んですね。ただ、法律とは何なのかと 松葉 これも弁護士会の子どもの権利 やらなきゃいけないと思っています。 か社会の秩序をつくるというルールを 委員会の関係でも大分入っています。 6 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2 吉村 はい。入ってもらっていますし、 連携という意味ではさせていただきた をもっともっと、さっき言った行政分 例えば児童虐待についても、さまざま いと思っています。 野もそうですし、さまざまな分野に広 げていったらいいんじゃないのかなと な専門知識を持った大人がしっかりと あとは、僕自身が弁護士という立場 サポートをする。僕も弁護士ですが法 からも、行政に限らず、もっともっと活 思います。 的な側面だけではだめだと思うし、た 躍の場面というのはあるんじゃないのか ─ 東京は 3 会ありますし、行政連 だ、法的な部分で補えるのは弁護士で なというふうに思うんですね。地方議員 携といってもどの会とするのか、 すし、弁護士しかできないところもあ であれ国会議員であれ、政治の世界で、 行政の担当の方もやりにくいとこ ると思います。そういったことがさま 僕も市長ですけれども、法的な知識、素 ろがあるみたいですが、大阪は 1 ざまな分野であると思うんですね。大 養があるわけですから、それが立法の つです。 阪市役所でもリーガルマインドを持っ 分野で出てくる、あるいは行政の分野 松葉 それは強みですよ。法律相談で た人に入ってもらうというので、たし で出てくるというのは、僕は大阪弁護 も大阪が最初に相談センターをしっか か 5 人ぐらいかな、インハウスローヤ 士会がもっともっと広げていってもいい り作り、ほとんどの府下の自治体と契 ーみたいな形で…… んじゃないかと思います。 約して相談業務を担うように昔からで ─ そうですね。大阪市は、任期付 ─ 非常に心強いです。 きていますけれども、東京はそれがな 公務員で常勤の方が7名いらっし 吉村 一部リスクを負わなきゃいけな いんです。地区法曹という戦前からの ゃいます。 いところも出てきますけれども。 一種のグループがあって、3 会がある 吉村 任期付きは専門的な知識を生か がゆえに弁護士会としてなかなかまと ですけれども、そうじゃなくて、弁護 ⒊ 大阪の弁護士と 東京の弁護士の違い は大阪のほうがずっとうまくいってい 士資格を持たれて役所のまさに職員と ─ 話は変わりますが、大阪弁護士 ると思います。だから、その強みはも して活躍されている方もいらっしゃい 会登録までの数年間はどちらか別 っと発揮できるかなと思いますので、是 ますし、おっしゃるように任期付きで の単位会に登録しておられたんで 非よろしくお願いします。 されている方もいらっしゃいます。 すか。 吉村 はい。大阪弁護士会はアットホ してその上でというので任期の範囲内 まって対応できない。自治体との関係 それから、これはありがたいなと思 吉村 東京弁護士会にいたんです。53 ームというか、1つにまとまってされて うのは、各種審議会等で専門家から意 期で登録して、4∼5 年、東京弁護士 いるという感じがありますね。 見を聞いて客観的なご意見をいただき 会で勤務弁護士として業務をして、そ ─ 会派の組織率は大阪では 85%、 たいというときに、弁護士には多くの こから大阪弁護士会です。地元が大阪 90% ぐらいですが、東京弁護士 審議会であったり、そもそも執行機関 なので戻ってきて、共同事務所を経営 会は4割ぐらいなんです。そうす としてもですが、有識者として入って し始めたということです。 ると、あの広い東京で6割の人た いただいていますので、それも広げて ─ 東京と大阪とは大分違いはあり ちが会との接点があまりないわけ いきたいと思っています。 です。どうしても顔が見えなくな ますか。 具体的には債権回収分野でも市営 吉村 東京はやはり、僕の事務所もそ ってくるので、会運営はなかなか 住宅の使用料であったり、土地の賃借 うでしたけれども、専門化されている 大変だということは交流会などで 料であったり、契約に基づいて払って ところがあると思います。首都ですし、 お聞きします。 いただける分は─当然、ちゃんと理由 企業も集積していますから、例えば知 があって払えない人は仕方がないです 財の分野、人事の分野、あるいは消費 けれども、そうじゃなくて払っていな 者保護の分野、そういう分野分けがあ ⒋ チャレンジすることの 大切さ い方もいらっしゃることに対して、し る程度進んできていると思うんですけ 吉村 今、弁護士が増員時代で、会と っかりとプロとして回収するということ れども、大阪は中小企業のまちですし、 して若い会員をしっかりサポートする も一部お願いしています。そうやって あらゆる分野というか、総合職という ということもなかなか課題であるのか 回収したものは次の市民サービスに当 か、言い方はいいのか悪いのか分かり もしれません。 てられる。公平な行政を実現する上で ませんが、まちのお医者さんじゃない ─ それに関連して、若干お聞きし も大事ですので、そういった意味で専 ですが、親身になっていろいろな分野 ます。衆議院議員、市長を経験さ 門家の力をかりるのは今、大阪市でも で活動できる、そういったよさが大阪 れた立場から見た大阪弁護士会 取り組んでいますし、これからも行政 にはあると思います。ですから、それ を含めた弁護士全体に対して、期 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2 7 で培ってきた交渉力が如実に反映され るのは、僕は圧倒的にこの政治の世界 だろうなと思っています。大きなアド バンテージを持ちながら入ってきたと いう認識があります。条例をつくった りチェックするときもそうです。 僕が国会議員だったときの安保法制 も、憲法の範囲内で何ができるのかと いう視点をもとに法律を見ますし、そ ういった目線で、僕は維新の党という 党に所属していましたけれども、憲法 の範囲内で国際社会に対して最大で きること、日本の防衛に対してできる ことという視点で動きましたけれども、 出発点にあるのは、憲法というのが行 政の力、権力を縛るものとして一番上 にあるんだという認識で、じゃあどう いうことが許容されるのか、そういう 思考というのはやはり法律を勉強して きたから出るんだろうなというのはあ りました。 待すること、注文点など忌憚のな います。そうではなくて、弁護士全体 そういった意味で、法律をつくる、使 いご意見をお願いします。 が持てる能力をどんどん発揮すること うの差ですから、政治の世界では共通 吉村 僕も53期の弁護士会に所属する がやはり大事だと思います。そういっ する部分が非常にあったからある意味 仲間という視点で言わせていただける た意味では、僕は地方議会に入って、 理解が進みやすいと思います。ですの としたら、もっともっといろいろな分 さまざまな条例であったり、市政運営 で、まさに政治の分野にはどんどん参 野にチャレンジするべきだと思います を進めていく上で法律的知識はすごく 加すべきだと思います。どの党でもい し、そのチャレンジすることができて 役に立ちました。地方議会というのは いし、どの自治体でもいいし、どの立 いないと思っています。それは個々の あくまでも例ですけれども、これまで 場でもいいので、政治の世界にどんど 弁護士の判断もあるかもしれないです の常識にはない分野にどんどん専門知 ん飛び込んでいって、リスクはありま けれども、僕は弁護士増員時代が別に 識を持ってチャレンジする、そんな弁 すけれども、やったらどうですかね。 悪いとはそんなに思っていなくて、た 護士会であってほしい。若い会員には 松葉 議員は失職したらただの人にな だ、だからこそこれまでと同じような 特に、就職先がないないと言うのでは るとよく言うけど、弁護士という資格 スタイルではなくて、特に新しい先生 なくて、いろいろなチャレンジをして を持っている強みというのもやっぱり にはこれまでの常識を越えてさまざま いくことが大事なんだろうなと思って あるだろうと思います。 な分野にチャレンジしてもらいたいと います。 思っています。 吉村 そういう強みももちろんあります ね。会社員でも政治の世界にチャレン ジして、ちゃんと政治の任期を満了し 始めました。これは地方議員です。よ ⒌ 弁護士出身政治家の メリット く言われたのが、弁護士をやっている ─ 弁護士の資格で自治体の議員 ているみたいですけれどもまだまだ少 のに地方議員をやるの?と、そんな意 や国会議員に就任して、これはよ 数ですので、弁護士の場合は、資格が 見を聞きましたが、僕はそれは違うと かったな、役に立ったなというこ ある中での活動になりますから、そう 思っていて、それこそ弁護士の、ある とはありますか。 いった意味でもアドバンテージはある 僕自身も、最初は大阪市会議員から 意味特権意識じゃないですけど、そう 吉村 これまで司法試験で学んできた いったところから来る批判だと思って 法律の素養であったり、あるいは実務 8 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2 たらまた受け入れるところも増えてき と思います。 の司法権の範囲内の仕事と、行政、立 数について大激論しているんです 法というのは、基本的には新たなもの けれども、会員でありつつ、外の を多数意見を形成しながらつくると。 世界から見ていかがですか。 松葉 市長が弁護士になった後、そこ 松葉 もっとダイナミズムがある分野 吉村 何が適正かは弁護士会でしっか から政治家を目指された一番の動機、 ですよね。 り議論して決めたらいいとは思うんで きっかけは何ですか。今、若い人にメ 吉村 そうですね。例えばこれからの すけれども、僕が思っているのは、多 ッセージを送っていただいたんだけれ 社会にとって教育が大切だから、子ど かろうが少なかろうが活躍の場をもっ ども、決断となるとなかなか難しい人 もの教育を無償化したい、5 歳から幼 と広げるべきだということです。僕は、 が多いだろうと思うんですね。 児教育を無償化するということは、弁 何人が多いか少ないかは分からないで 吉村 弁護士業務というのは、どちら 護士には絶対できないことですね。こ すけれども、分野という意味では狭過 かというと特定の依頼者との関係で、 れは一例ですけれども、そういった意 ぎると思っています。 過去に起きた案件についてその利益を 味では、僕は地盤沈下する大阪をよく ─ 以前、衆議院議員として弁護士 守る事件処理をして権利を確保する、 したいというのが漠然とありました。 会の新年会でご挨拶いただきまし それがまず 1 つ。それから、そういっ 松葉 それは郷土愛ですか。 た。そのときに、若手弁護士の育 たことが起きないように予防法務を張 吉村 郷土愛ですね。それがひいては 成をもっと弁護士会は考えていか るというのはあるんですけれども、あ 日本の成長にもつながると思っていま ないとだめじゃないかとおっしゃ くまでもピンポイントなんですよね。例 す。東京一極集中はもうもたないと思 っていました。 えば社会全体をよくする、これから社 っていて、それを変えていく最初の突 吉村 そうですね。若手もやっぱりつ 会全体を変えていくということに関し 破口は、やっぱり大阪だろうと。東京 らいと思うんです。急に人数が増えて、 ていうと、僕はやっぱり政治であり行 一極集中をまず大阪で変えて、その先 就職もなかなか決まらなくて不安にな 政だと思います。 もさらにあるんですけれども、1発目の るということも現実問題としてあると 僕は、大阪の地盤沈下を何とかとめ 切り口はやっぱり大阪であり、それが 思います。そういった点については、こ て、大阪を成長させていきたいという 日本にとっても必要なことだと思って れまで大阪でやってこられた先輩方が 思いがあって、それは弁護士ではでき います。最終的には愛国心みたいなと しっかり若い人たちをサポートするこ ないんです。弁護士は個々の依頼者と ころですね。郷土愛であり愛国心が自 とが必要だと思いますし、そのサポー の関係では非常に充実した仕事だと思 分の原動力の根本になっているところ トの仕方として、就職をしっかり援助 っていますし、非常に魅力的な仕事だ です。 したり、あるいはOJT をしっかりやっ ⒍ 弁護士から政治家に なった動機 ということは今でも思っています。だ ていくということも必要だろうと思いま 地盤沈下しているという大きなテーゼ ⒎ 弁護士会や若手弁護士 へのメッセージ ンジするというのは個人でやるべきこ に対して正面から取り組むということ 松葉 そうすると、若い人にそういう ともありますけれども、個人でできな は、僕は政治の世界でしかできないこ モチベーションを持ってもらわないか い領域はやはり弁護士会として将来の とだと思っています。僕はそれをやり んと、まずはそこからですね。 若手のためにもしっかり活動するとい たくて政治の世界に飛び込みました。 吉村 そうですね。これは1 分野です うことが大事だと思っています。 そういう意味では、ジャンルが全く けど、若い人には、これまでの弁護士 けど、社会全体を前に進める、大阪が すが、僕が思うのは、若い人がチャレ 例えば行政の分野で、大阪市という 違うのかなと思います。先ほど申し上 業務のスタイルだけじゃないよと。政 大きな基礎自治体と弁護士会が連携 げた法律とか実務の点では共通してい 治、行政は非常に親和性の高いところ できるところを探りましょうというのは、 る部分はあるんですけれども、過去を ですが、それ以外のビジネスの分野で これは弁護士会という組織じゃないと ただしていくのか、新しいものをつくっ もいいと思います。資格を取ったらど なかなかできないでしょうし、それは ていくのか、ここは大きく違うのかなと。 こかの事務所に就職して裁判所に行っ さまざまな分野があると思います。そ それと、ピンポイントの対応をして、そ てと、そういう固定観念にとらわれる ういうさまざまな分野にアプローチし こで個人、個々の権利を守っていくの 必要はないんだろうと思っています。だ ていくというのは、若手に限らず、僕 かというのが大きな違いかなと思いま から、どんどんいろいろな分野で活躍 は弁護士会という組織自体も、今まで す。三権分立の基本的な考え方ですけ するべきだと思います。 あった弁護士の姿とは違う分野を広げ れども、少数者の権利を守るという例 ─ 今、弁護士会は司法試験合格者 ていく活動をやってあげないと、若手 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2 9 だけの力ではしんどいところはあると ようになって、やっと少しずつ広がっ んじゃないかとは思います。 思います。もちろん本人も挑戦して覚 てきています。おっしゃるようにもっ 松葉 現在の弁護士会の人口構成は 悟を決めないといけないですけれども、 といろいろな分野があると思うんです 登録 10 年以下の方が半分なんですね。 会としてそういったところをみてあげ けれども、やっぱり今まで遠い存在だ ところが、弁護士会の総会に何人の人 ないと、若手からすると、弁護士会っ ったんですね。その遠いというところ が来るのかというと、会員数が半分だ て何なのみたいになってくるんじゃな をどうやって垣根を低くして分かって った時代と変わらないんです。要する いですかね。 もらえるかというのがまさにぶつかっ に、増えた若手たちはほとんど総会に 松葉 おっしゃるとおりです。 ているところです。 出席しない。それは議案の問題もある 大阪でもそうですし、特に日弁連で 吉村 これは市長という立場もありま んでしょうけれども、結局、自分たち は、まさにおっしゃったような意味で すけれども、僕が弁護士会の後輩だと とは全然関係のないところで会務が動 の業務活動領域の拡大を大きな柱の1 いう目でお聞きいただきたいと思うん いている。自分たちが関わろうという つにして、法律サービス展開本部を3 ですが、若手が弁護士会の中で改革的 意欲をあまり出してくれていないとい 年ほど前からやっています。行政、企 に入っていくというか、それこそ突き う状況です。 業、中小企業も含めてどうやってかか 上げていく若手がもっと出てきていい 吉村 若手で少し余裕のある人を担ぎ わっていくのか、海外展開にどうかか のかなと思います。例えば弁護士会の 上げて、弁護士会の選挙に立候補して わっていくのか、いわば拡大戦略本部 会長選挙もありますけれども、若手と もらったらいいじゃないですか。物事 みたいなものをつくってやってはおる して、こういう政策をやってくれとい を変えるときは、誰かがリスクをとら んです。ちょうど私が日弁連で担当で うような、弁護士会の中での突き上げ ないと変わらないですね。若手の中で もあるんですが、弁護士会として動く というのは若手はもっとやってもいい 現状が不満だという声を僕もよく聞き ということの難しさ、つまり例えば日 んじゃないのかなと思います。 ますけれども、それだけじゃ絶対変わ 弁連だったら産業界、経団連とかいろ ─ 活性化にはなりますよね。 らないと思います。日々の業務が忙し いろなところと懇談会をやったりとい 吉村 そうですね。そういうのがあっ いのは僕も弁護士だからよく分かりま うのはあるんですけれども、弁護士が て初めて先輩方もしっかりと聞いてく すけれども、まさに会長を決めたり、い 入っていくことの意味とか意義、有用 ださると思います。選挙なんていうの ろいろなことを決めるというのは、選 性というもののそもそもがあまり伝わ はまさに緊張感の連続です。勝つか負 挙で民主的に決められているわけで、 ってないんですね。単にコンプライア けるかの中で選挙をやっているわけで 投票という仕組みがあるわけですので、 ンスだけの問題ではなくて、リーガル すから、若手も、自分たちの意見を反 こういった政策をやろうよという人が マインドを持った人間がいるというこ 映したいのであれば、お願いだけじゃ 出てくることを期待しています。 とがどれだけ意味があるかということ なくて、自分たちでやるぐらいの気概 松葉 私も、若手が弁護士会にもっと を弁護士会は説明するけれども、例え を持って、弁護士会の中で声を上げる もっと積極的に関わってくれることを ば企業にはなかなかぴんと来ない。今 というのがもっともっと出てきてもいい 期待しています。 までと同じように、法律問題が起こっ たときに使えばいい存在みたいなイメ ージにどうしてもなっている。それを 変えていかなくちゃいけないのがなか なかスムーズにはいかない。少しずつ は広がっているんですけどね。 それから、自治体もやっとここ数年 急激に広がって、弁護士資格を持った 状態で自治体に入っている人はこの7 ∼8年で10 倍ぐらいに増えてきていま す。それも自治体が弁護士が存在する ことに意味がある、それだけの使い勝 手がある、自治体の行政サービスの面 でも非常に役に立つ存在だと言われる 、岸本佳浩(行政連携センター運営委員会副委員長)、 【聞き手】 中務正裕 (副会長) 矢倉昌子(広報委員会委員)、伊田真広(広報委員会委員) 【写 真】 武田真実 10 月刊 大阪弁護士会 ― OBA Monthly Journal 2016.2
© Copyright 2024 Paperzz