3年1組 長谷川洋平 建築設計製図Ⅲ 第2課題

長谷川 ― この敷地に、健常者から見ると少し敬遠されがちな方々の住まい
西沢 ―― この中で関係を生み出さ
をつくることと、そこに魅力的な施設を置くことで人々を呼んで交流を生
ないのが一番いい気がする。前に
もうというのが狙いです。葉山町は芸術活動が盛んなので、地域での活動
庭があって、その奥にすぐに部屋
ができるアトリエやスタジオを設置します。心に傷害を持っている方々、
があるのが。
軽度な精神障害者の方々を対象にして、グループホームで普通の家に住む
長谷川 ― 通り道がなるべく接しな
という形なんですが、実際にはなかなかそういう機会が与えられていない
いように、居住区域の前はなるべ
と知ったので、こういう場所に長期的に滞在できる共有スペースがあれば
く坂道に。
よいと思いました。道路に沿って坂を歩きながら海まで降りて行く形にな
西沢 ―― 1mくらい客室が上がっ
っています。降りることによってスペースができるので、居住スペースと
ているだけでも全然違うよ。
かアトリエ、レストランを配置しました。野外は全部屋上の庭園として、
高橋 ―― やっぱりプライバシーの
市民の方に開放できるようなプランにしました。なるべく緑を多くして背
話は一言あった方がいいと思う
後に迫っている山の延長とし、ほとんどの施設は坂の中に埋めることでボ
よ。
リュームを上げないように気を使いました。
長谷川 ― 水回りはなるべく前に持
吉田 ―― 敷地からどう周りが見えるか、また周りから敷地がどう見られる
っていって。でも本当は持ってき
かを意識するように指導しました。敷地を目一杯使い、余っているところ
たくなかったんですけど、人から
がないようにすることも大切であって、彼は敷地全体にレベルをつけて、
直接見えるのはまずいので。
その隙間の部分に何らかの施設を入れていこうと。心に傷害があるとかも
飯田 ―― お風呂から外が見えるの
言っていたんですけど、結局、誰もが使える施設じゃないでしょうか。大
はいいんだけどね。
きな大地を山から海までだらだら登っては下がり、全体的な使い方ができ
高宮 ―― 図面の表現が非常にまず
る計画だと思っています。
いよね。ものすごくいいプロジェ
若色 ―― 敷地をジグザグに海の方まで降りるのはおもしろいと思うんだけ
クトなのに。
ど、断面だけでなく平面的にも隙間がないとできないんじゃないかな。
野沢 ―― 本当に下手だね(笑)。
飯田 ―― 実際にはスロープが付くの?
そんなにおもしろいの?
長谷川 ― いや、段です。
高橋 ―― 半分以上はランドスケー
飯田 ―― それをそのまま上がって行くわけね。階段で繋ぐの?
プデザインとして、屋上、つまり
長谷川 ― 少し急な坂ですが、1段 60cm 降りるのに長さ3 m のスロープで
床を考えている。植栽はどんなイ
すが、階段よりは滑らかに行けるかなと。全部坂にしてしまうと、坂の上
メージなんですか?
での活動になってしまうので、なるべく1つの舞台という場所で。
長谷川 ― ほとんどは木で覆われて
飯田 ―― 屋上はコントロールされないんでしょう? 室内に入るときだけ
いて、花壇やベンチがあったり、
コントロールするんでしょう?
人が溜まれるような場所をつくることによって交流できるかなと。
長谷川 ― そうですね。海岸から帰ってきた場合には全く。
高橋 ―― 木の植え方を変えることで、人工的にも鬱蒼とした感じにもでき
野沢 ―― 室内は公園側から入るようになるんでしょう?
るし。この中間的なバランスで止まっているあり方は?
西沢 ―― 中のサーキュレーションはないの?
長谷川 ― 規則正しく並べるのはあまりなかったです。どちらかというと自
長谷川 ― ないです。全部外部から。
然な感じにしたかった。
高宮 ―― 建築とランドスケープが渾然一体となってすごくおもしろいと思
高橋 ―― それで粗密の区別もなくだらだらと繋がっているということ?
うんだけど、心に傷害を持つ人というのはちょっとね。
長谷川 ― そうですね。
西沢 ―― そういう特殊なプログラムを外しても十分通用するよ。今回は、
敷地が 5,500㎡で建築が 2,000㎡というのが出てるよね。そうすると、その
差の 3,500㎡ぐらいの空地ができちゃって、そいつをどうするかが結構重要
なんだよね。そういう意味では、すごくそこを積極的に考えているよね。
飯田 ―― 僕が気になったのは、全部同じような繋がり方じゃないですか。
あれをもう少し、例えばいろんな勾配の床。
高宮 ―― そうじゃないのがおもしろいんじゃない? 段々になっている
のが。
飯田 ―― ただ繋がり方が全部同じ長さと同じ幅で。
野沢 ―― 60cmをどうするかというのはもっとあるかもしれないね。
高宮 ―― いや、ものすごい変化になっているんだよ。すごくおもしろいと
思うよ。
section
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建築設計製図Ⅲ 第2課題
3年1組 長谷川洋平
roof plan
1F plan
指導:若色峰郎 高宮眞介
飯田善彦 高橋晶子 西沢立衛 野沢正光 吉田博
滝川 ―― 今までの課題では、全て都会の中で自然を抽象化して建てると
いう手法を取っていたのですが、今度はその逆に自然の中に都市空間を抽
象化して復元させて、それと自然との共存・共生をテーマに取り組むつも
りでした。形をつくるときに、都市空間を単純な擬似空間として三次元的
west elevation
に出していこうと考えました。初めは、このユニットが集まったグチャグ
チャしたものをつくろうと思っていたのですが、建物のボリュームを三次
元的に解凍して、その「うざったさ」を無くすことにおもしろみを感じて、
だんだん初めのコンセプトをそっちのけで形を詰めていったという感じ
です。
横河 ―― 図面を見たときに「これすげー」って思ったんだけど、模型見な
いほうがよかったかな(笑)
。
一同 ――(笑)
横河 ―― まじめにこの模型を見ちゃっていいのかな。考え方を示している
滝川 ―― いろいろな角度から。
のか、建築的に成立させようとしているのかということなんだけど。図面
本杉 ―― 確かにこの部分はとんでもないと言えるし、すごいことをやった
だと、ちゃんと建築として成立しているように見えるんだけれど。そのギ
とも言えるし、両面を持っているよね。でも下の方のコミュニケーション
ャップにすごく戸惑ってます。
スペースはおもしろくないな。
椎名 ―― 図面の色の違いは何なの?
クライン―― まだダイアグラムのレベルから出てないんだよ。この段階で楽し
滝川 ―― 素材を変えようと思って、茶色の部分は木造で、緑の部分は芝み
くって、実際に建築になってない。建築になるとまた楽しくなくなってし
たいなもので覆われていて。
まうかもしれないね(笑)
。こんな形でカッコイイ。でも実際にしたら手摺
大川 ―― 構造体は? RCなの?
だらけだよ(笑)
。その辺りがまだ建物になってないよ。
滝川 ―― そこまでは考えてなかったんですけど。
曽我部 ― ボリュームコントロールまでの作業はおもしろいのだけれど、具
横河 ―― そこまで考えてないということが、すごいことだと思うんだよね。
体化されてないんです。視点は基本的に人間なんです。実際に使う人の視
「構造は何?」ということ、つまり「建築化させる」ということは、多分そ
点とか、実際に行ったときの視界であるとかといったパターンで考えるこ
ういう構造も含めて言うんだろうけど。建築空間の可能性のスタディーだ
とができるんです。これはまだ彼の中で発展できると僕は思ってます。で
けなんですというのがなんとなく感じられるんだよね。
もまだプランニングになってないね(笑)
。
椎名 ―― だけど、かなり魅力的なパワーを君は秘めてるよね。それを秘め
クライン―― 人間的なのは理解できます。いろいろな方向からの視点のスタデ
ていながら、敷地を全部削ってしまった。これはすごいことだよね。例え
ィができてる。これはすごいことですよ。でも次のステップに行かなけれ
ば、その上の通路デッキの部分なんかもすごく簡単にやってるんだけど、
ば。それで終わりじゃないからね(笑)
。
そういうものが結ばれるというのは大きいんだよ。そこは人が通る動線だ
横河 ―― これなんかつくるのどうやってするの? ちゃんと構造ができて
よね。ここを通る人の視線というのは、他の間近の建物にすごく影響を与
るように見えるんだけど。
えるんだよ。単なる頭の中でやっている作業だと、中で実際に体験する人
曽我部 ― 構造をどう組むかぐらいまでは考えてたんです。でもそこに人が
間が気持ちよく感じる空間はまったくできなくなるから。だけど、そうい
入って、どこにどう窓が開いた方がいいかっていう計画レベルにはないん
うことをしたという君のパワーが素晴らしさを秘めているんだよね(笑)
。
です。
だけどよくない(笑)
。YES & NOだね(笑)
。
横河 ―― これちゃんと構造成立してるの?
横河 ―― もしかしたら海を人が横切るというのは、何かすごくおもしろい
クライン―― ちょっと怪しいよね(笑)
。パースでごまかしてる(笑)
。
可能性を秘めているのかもしれない。だから、そういうスタディーだと考
椎名 ―― 柱が一本ずつ立ってるじゃない。つまり、彼は空中に持っていく
えればすごくいいですよね。
ものは、全てポカンと浮かせたかったんじゃないの? そのためには柱はた
本杉 ―― 横河さんがプラスに評価した「もしかしたらおもしろいことがあ
くさんつくれないわけで。だから後は構造家にお願いをすると(笑)
。
るかもしれない」というのは、この向う側に普通の風景が見えて、その向
曽我部 ― 僕も最後の最後に構造は見たんですけど。時間も時間だったから、
うに山が見えて、ここに大地が見えて、そこを普通の人が歩いているとい
模型が持てば構造も持つと(笑)
。
指導:本杉省三 関澤勝一
う。そういうのを狙ったのかな?
奥田孝次 アストリッド・クライン 椎名英三 曽我部昌史 横河健
2F plan
3F plan
建築設計製図Ⅲ 第2課題
3年2組 滝川佑介
37
平山 ―― 私の中では、ここは海と山と空の色とか匂いとかそういうものを
感じることができる場所だと思いました。そこで、都会の生活に疲れたり、
心の病を持った人がここに来て、共同で生活をすることにより、いろいろ
な刺激や感じ方により改善し、リハビリをしてもらうような施設を考えま
した。山と海と空がキーワードなので、波が立ち上がり、大地が隆起する
section
という自然のイメージを建築に持ってきたらおもしろいんじゃないかと思
いました。普通そういう施設はすごく隔離されていますが、外や地元から
来る人の刺激を受けながら、リハビリ活動としてレストランやバーで働き、
隆起した洞窟というイメージの穴蔵に帰ってゆくという日々の活動を意識
する意味で、上に行くことで外に行けるプランにしました。石は山と海に
south elevation
共通する素材ということで、昼間はこの建物は自然の太陽から光を受け入
れて、夜になると隙間や窓から光を外に放出するという暖かいイメージの
そういうのもいるのかなと思いますけど、僕は美しいと見ていて、青の洞
建物を考えました。
窟のような光が入ってくるのいいですよね。
飯田 ―― 賛否両論いろいろある案と思います。傾斜の使い方も全く逆で、
高橋 ―― すごくいいと思いますよ、本当に。
普通は海に向かってなだらかに傾斜しているところをどうやって使うかと
野沢 ―― ルートだけあって、クレバスみたいに繋がって。
思うのですが、この場合は意図的に持ち上げて、直接海が見えないような
若色 ―― 海のところに岩場ってあるでしょう。あなたがつくったように平
場所をわざわざつくっている。それから、彼女がプログラムした、リハビ
面的にボンというのはないんですよね。ちょっと人工的につくりすぎてる
リテーションを必要とする人たちの一種の交流の場所としてのイメージが
っていう印象を持つね。
あると思うんですけれども、下に彼らは住んでいて、この中のレストラン
野沢 ―― 中側が洞窟のイメージなんでしょう?
で働くことによって、一種のリハビリテーションを兼ねた構成プログラム
飯田 ―― 3層全部が。
をつくろうとしており、それが適切かどうかという話もある。僕がこの案
若色 ―― 海辺というのは、海岸線に散策して歩く人が結構多いわけでしょ
を評価するのは、自分が考えてストーリーをつくり、それを建築化してい
う。ここだけ忽然とこれがあるというよりは、何か自然のものに合わせる
くという意志の強さみたいなものがよかったんですね。非常に強度がある
とか。
ものまでつくり上げる力があるという、彼女の思考の強さみたいなものを
高橋 ―― その辺は、どういうふうに考えてるんですか? むしろ、ギャッ
非常に高く評価したつもりです。
プをつくりたい?
高宮 ―― サンドパークってなんですか? かなり暗そうだけど。
平山 ―― 擁壁をガンというくらい、土地が全部力強く上がったというイメ
平山 ―― 海から来た人のために、光が隙間から。
ージにしたかったんです。
野沢 ―― 湿っぽそうだな。フナムシなんかいっぱいいそうだ。
高橋 ―― アースワーク的なんだけど、造形というか構成をすごくクリアに
平山 ―― ここは隔離されていて、自分の意志で外に行くために公共の場を
出したいわけですよね。
通って外に行く。
西沢 ―― 本当に忠実に自然の形を再現すると、より人工的になるかもしれ
野沢 ―― そんなに意志の強い人が、リハビリが必要な病んでいる人という
ないから難しいところだよね。いずれにしても半分は人工になってしまっ
設定のところがやっぱり難しそうだね。
て、半分は自然現象によって風が入ったりするから、そいつをどのくらい
西沢 ―― やはり建築が海に向かって降りて行くから、それに合わせれば一
の匙加減でやるかだろうね。
番自然じゃない。それを、逆にするのはなにかガツンて感じがする。紅茶
高宮 ―― この岩はかなり自然じゃないよね。意図してるのは。
にね、砂糖20杯みたいな。
飯田 ―― 意図しているもの自体が自然じゃない。
野沢 ―― 端に何か止まるって気がしない? 自然の岩の崖みたいのが突然
西沢 ―― 使う石は、自然石らしいですよ。
現れるのもあるかもしれないけれど、敷地が終わったところがなかなか難
高宮 ―― 擬岩じゃないの?
しいんだよね。
平山 ―― 自然石を串刺しにして。
平山 ―― 道になってたんで。
飯田 ―― 自然石を使っているんだけど、柱とか梁とか建築のルールにしち
野沢 ―― 埋めちゃったらどうなんだろう、1階は。中国のヤオトンみたい
ゃってる。
指導:若色峰郎 高宮眞介
にさ、穴の中に家が顔を出してるとか。
西沢 ―― 1階は半屋外の面積が大きいよね。確かにフナムシと言われると、
1F plan
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建築設計製図Ⅲ 第2課題
3年1組 平山香
飯田善彦 高橋晶子 西沢立衛 野沢正光 吉田博
2F plan
3F plan
志村 ――
現代の発達した消費社会では、モノを「使う」娯楽だけでなく、ガーデニ
ングのようにモノを「作る」娯楽も発達した。この場所性を活かした「作
ること」と「使うこと」が一体となった娯楽施設をこの土地に計画するこ
とで、この地の活性化に貢献できる。ここでは、自分だけのボートやカヌ
ーを作り、実際に海に出ることも楽しめる。週末や長期休暇に親子で来て、
いい思い出となる作品をつくることもできる。
実験用、管理用に設けたプールは、視覚的に海との連続性を持ちながら新
たな風景をつくる。海とプールとボートが一体となったランドスケープを
つくる。また、海の家の機能や砂浜に無造作に置かれたボートを整備する
こともできるので、この地のアクティビティの起点となるだろう。
指導:本杉省三 関澤勝一
奥田孝次 アストリッド・クライン 椎名英三 曽我部昌史 横河健
site plan
1F plan
east elevation
建築設計製図Ⅲ 第2課題
3年2組 志村卓馬
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