目標1 男女共同参画社会の実現に向けた意識づくり

目標
Ⅰ
男女共同参画社会の実現に向けた意識づくり
現状と課題
日本国憲法に個人の尊重と男女平等の理念がうたわれ、その後、女子差別撤廃条約の
批准、男女共同参画社会基本法の制定など、我が国における法制上の男女平等は、大き
く前進しました。しかしながら、未だに、社会に根深く残る「男は男らしく、女は女ら
しく」あるいは、
「男は仕事、女は家庭」といった性別による固定的役割分担意識やそれ
に基づく慣習・社会通念が自由な生き方や能力発揮を阻んでいます。平成 19 年度に実施
した「まちづくり市民アンケート調査」の固定的性別役割分担意識調査(参考資料4)
によると、「男は仕事、女は家庭」に同感する方の割合が平成 14 年度より若干増加して
いますが、同感しない方の割合も増加しており、男女共同参画に関する意識はわずかな
がら、変わりつつあります。
男女共同参画社会とは、男女の人権が等しく尊重され、男女が均等に政治的、社会的、
経済的、文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を分かち合う社会であり、
女性のみならず男性にとっても、多様な価値観に基づいて自由な生き方を自ら選択する
ことを可能にするものです。
このような社会を実現するためには、私たち一人ひとりが、男女の性別による固定的
役割分担意識を改め、社会的・文化的につくられた性差であるジェンダー(*)に敏感
な視点を養っていかなければなりません。
また、女性の人権を尊重することは、男女平等の実現のために極めて重要ですが、現
実には、家庭や職場、地域社会などで様々な形の差別や暴力を受けるなど、人権が侵害
されています。その形は、家庭内における潜在的な暴力、セクシャル・ハラスメント(*)、
性犯罪、売買春、メディアによる性の商品化など広範囲にわたっています。女性や子ど
もに対する暴力は、重大な人権侵害であり「犯罪行為」であるという認識を社会全体に
浸透させる必要があります。そのため、男女平等教育や人権を尊重する意識改革が必要
であり、あらゆる機会をとらえての啓発活動が重要になってきます。
* ジェンダー gender 生物学的な違いに基づく性であるセックスに対して、社会的、文化的に形
成された性別をいう。例えば、女らしさ、男らしさといった性役割や、「男は仕事、女は家庭」
という性別役割分業など、男女の行動や態度、指向性の違いとして現れ、男女差別や男女の自立
を阻害する要因となる。
* セクシャル・ハラスメント sexual harassment 相手の意に反した性的な言動・いやがらせ。職
場でのセクシャル・ハラスメントについては、「相手の意に反した性的な言動を行い、それに対
する対応によって仕事を遂行する上での一定の不利益を与えたり、それを繰り返すことによって
職場環境を著しく悪化させること」とされている。
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【参考資料 4】
「男は仕事、女は家庭」という考え方についてどう思いますか
同感する
(H14全体)
10.2%
H19全体
11.3%
H19女性
8.8%
H19男性
15.0%
どちらともいえない
53.6%
同感しない
無回答
33.0%
48.5%
37.8%
40.3%
48.6%
49.0%
34.6%
3.2%
2.4%
2.3%
1.3%
資料:「まちづくり市民アンケート調査」美唄市地域経営室
【参考資料 5】
「社会的性別」(ジェンダー)の視点
※国の第2次男女共同参画基本計画(平成 17 年 12 月 27 日閣議決定)より抜粋
1.人間には生まれついての生物学的性別(セックス/sex)がある。一方、社会通
念や慣習の中には、社会によって作り上げられた「男性像」、「女性像」があり、
このような男性、女性の別を「社会的性別」
(ジェンダー/gender) という。
「社
会的性別」は、それ自体に良い、悪いの価値を含むものではなく、国際的にも使
われている。
「社会的性別の視点」とは、
「社会的性別」が性差別、性別による固定的役割分
担、偏見等につながっている場合もあり、これらが社会的に作られたものである
ことを意識していこうとするものである。
このように、
「社会的性別の視点」でとらえられる対象には、性差別、性別によ
る固定的役割分担及び偏見等、男女共同参画社会の形成を阻害すると考えられる
ものがある。その一方で、対象の中には、男女共同参画社会の形成を阻害しない
と考えられるものもあり、このようなものまで見直しを行おうとするものではな
い。社会制度・慣行の見直しを行う際には、社会的な合意を得ながら進める必要
がある。
2.「ジェンダー・フリー」という用語を使用して、性差を否定したり、男らしさ、
女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと、また、家族やひな
祭り等の伝統文化を否定することは、国民が求める男女共同参画社会とは異なる。
例えば、児童生徒の発達段階を踏まえない行き過ぎた性教育、男女同室着替え、
男女同室宿泊、男女混合騎馬戦等の事例は極めて非常識である。また、公共の施
設におけるトイレの男女別色表示を同色にすることは、男女共同参画の趣旨から
導き出されるものではない。
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基本方針1 男女平等の視点に立った教育・学習の推進
性別 に よる 固 定的 な 役割 分 担意 識 に基 づ く慣 習 や社 会 通念 を なく し てい く ため に
は、家庭、学校、地域など社会のあらゆる場面で、男女平等の視点に立った教育・学
習を行っていくことが大切です。
このため、幼児期から成人、高齢期にわたるすべてのライフステージにおいて、男
女が対等なパートナーとして互いに協力し、思いやりと自立の意識を育み、家庭生活
の大切さを認識していけるよう、男女平等観を定着させるための教育・学習を推進し
ます。
また、学校教育に限らず、家庭、地域において、子どもの教育・学習に携わる者が
男女共同参画の理念を理解して関われるよう、意識啓発に努めます。
◆目標値
項目
固定的性別役割分担意識を
持たない市民の割合
施
策
①家庭における男女平等学習
の推進
②学校等における男女平等教
育の推進
③地域における男女平等学習
の推進
現状値(H18)
5 年後(H24)
10 年後(H29)
31.4%
40.0%
50.0%
内
容
○男女共同参画週間(6/23~6/29)の周知・
啓発
○啓発セミナー等の開催
○啓発資料の作成・配布
○食育の推進
○幼稚園・保育所での性別にとらわれない
教育活動の推進
○ジェンダー・フリー(*)学習など小中
学校での男女平等教育の推進
○高等学校教育での男女平等教育の推進
○教職員関係者や保護者に対する男女共同
参画社会の正確な理解と促進
○食育の推進(再掲)
○啓発資料の作成・配布
○生涯学習による男女平等学習の推進
○食育の推進(再掲)
実施主体
国・道・市
道・市
国・道・市
国・道・市
市
道・市
道
道・市
国・道・市
国・道・市
市
国・道・市
市民の皆さんも取り組みましょう
・男女の人権をお互いに尊重し合うことのできる子どもに育てましょう。
・家庭での育児・しつけは性別にとらわれず、自分の生き方を選択できるよう
に育てましょう。
・誰もが健全な食生活を実現するため、学校や家庭で食生活の正しい理解や望
ましい習慣を身につけましょう。
・性別役割分担意識 (*) に基づく地域での慣習・慣行を改めましょう。
* ジェンダー・フリー 人々の行動や生き方をジェンダーによって枠にはめることなく、誰もが自
分らしく多様な生き方ができる社会をつくろうという考え方。
* 性別役割分担意識 「男だから、女だから」「男は仕事、女は家庭」などと性別によって役割を
固定的にとらえる意識のこと。
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【参考資料 6】
男女が平等に生活するための必要な取組
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
(H17全体)
H19全体
H19男性
啓発活動や教育を通じて
男女共同参画の意識を高める
H19女性
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
市などの政策決定の場へ、
もっと女性を起用する
(H17全体)
H19全体
家事や育児、介護を男女が平等で
分担する環境づくりを進める
H19男性
H19女性
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
育児、介護の支援を充実し、
仕事と家庭が両立できるようにする
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
女性の再就職や労働条件など、
働く場での男女平等を確保する
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
その他
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
(H17全体)
H19全体
H19男性
H19女性
無回答
資料:「まちづくり市民アンケート調査」美唄市地域経営室
【参考資料 7】
○市内小中学校・高等学校での男女混合名簿(*)の導入状況
区
分
学校数
導入済校数
導入率
小 学 校
8校
8校
100.0%
中 学 校
6校
6校
100.0%
高等学校
3校
2校
66.7%
資料:平成 19 年 4 月現在
美唄市教育委員会学務課
* 男女混合名簿 学校の出席名簿や集会の並び方など、男子が先で女子が後という慣習を変えるた
め、男女混合であいうえお順などにした名簿を使うこと。
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基本方針2 男女の人権を尊重する意識づくり
男女の人権の尊重は男女共同参画の根底である基本となる考えです。本来、男女は
平等であり、基本的人権は守られなければなりません。互いの性と人権を尊重し、女
性や 子ど もに 対 する いか なる 暴力 も これ を容 認し ない と いう 意識 を社 会に 広 く浸 透
させることが重要です。
このことから、男女の人権尊重の視点に立った性教育、特に性と生殖に関する健康
と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(*))の普及、母性の尊重・保護につ
いて の啓 発や 人 権侵 害で あり 犯罪 で もあ る女 性・ 子ど も への 暴力 の根 絶に 向 けて 広
報・啓発に努めます。
◆目標値
項目
現状値(H18)
5 年後(H24)
10 年後(H29)
人権・心配ごと相談実施回数
(行政相談を含む。)
年12回
年12回
年12回
施
策
①性の尊重など男女の人権を
尊重する意識づくりの推進
②女性や子どもへの暴力根絶
に向けた啓発活動の推進
内
容
○リプロダクティブ・ヘルス/ライツの考
え方の啓発・普及
○HIV/エイズ、性感染症に関する啓発
の充実
○学校教育での性教育の充実
○有害図書等の監視・環境浄化
○人権週間(12/4~10)の周知・啓発
○人権擁護相談の実施
○母親教室、父親教室、ペア教室等の開催
○企業等に対する母性保護規定等の周知
○暴力被害の情報収集と提供
○DV防止法(*)の周知・啓発
○女性相談窓口の周知
○セクシャル・ハラスメント防止のための
啓発
○児童虐待や子どもを対象とした犯罪防止
に向けた啓発
実施主体
市
市
市
道・市
国・道・市
国
市
国・市
国・道・市
国・道・市
市
国・道・市
国・道・市・
民間
* リプロダクティブ・ヘルス/ライツ reproductive health/rights 性と生殖に関する健康と権利。
女性の体や性の問題を「健康と人権」という観点から保障しようとするもので、性と出産につ
いて女性の選択の自由と自己決定権を尊重しようという考え方。1994 年のエジプト・カイロで
開催された世界人口開発会議で提唱された。子どもを産むか産まないか、安全な性生活、性感
染症やエイズ、性暴力など、性と生殖をめぐる幅広い問題がこの概念に包括される。
* DV防止法 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」を一般的に「DV(ド
メスティック・バイオレンス domestic violence)防止法」と呼んでいる。平成 13 年 10 月 13
日(一部は平成 14 年4月1日)から施行され、人権の擁護と男女平等の実現を図るために、配
偶者からの暴力に係る通報、相談、自立支援等の措置が規定されている。
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市民の皆さんも取り組みましょう
市民の皆さんも取り組 みましょう
・男女が互いの人権・性を尊重し、女性や子どもへの暴力をなくしましょう。
・女性も男性も、性についての正しい知識を持ちましょう。
【参考資料 8】
○女性に関する事柄で,人権上問題があると思うのはどのようなことか (複数回答:全国)
資料:「人権擁護に関する世論調査世論調査報告書」
平成 19 年 6 月調査 内閣府大臣官房政府広報室
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基本方針3 男女共同参画社会への啓発活動の推進
男女共同参画社会を実現していくためには、女性が受けている様々な不平等な扱い
や人権侵害の実態を認識し、そのことに対する問題意識を持つ必要があります。その
ような社会の実現は、男性にとっても多様なライフスタイルを可能にします。
市民一人ひとりの中に、人権尊重と男女平等の意識を深く浸透させるため、男女共
同参画に関する広報・啓発や情報の収集・提供を積極的に行い、気運の醸成に努めま
す。また、近年の情報通信の高度化が進む中で、メディアによる情報の影響は更に拡
大するものと予想されることから、メディア・リテラシー(*)を身につけ男女共同
参画の視点を持つことが出来るよう啓発に努めます。
また、人口や環境、食糧問題とともに男女共同参画の推進は世界共通の課題である
ことから、男女平等に関する国際的な動きや取組に対する情報収集・提供を図り、相
互の人権を認め合えるよう、国際交流と国際理解の推進に努めます。
◆目標値
項目
現状値(H18)
5 年後(H24)
10 年後(H29)
市広報紙での啓発記事掲載回数
年4回
年5回
年5回
施
策
内
容
実施主体
① 男 女 共 同 参 画 に 関 す る 広 ○男女共同参画に関する条例の制定
報・啓発活動の推進
○男女共同参画週間の周知・啓発(再掲)
○市広報紙やインターネットなどを活用し
た広報・啓発活動の充実
○まちづくり出前講座による啓発
○特に、男性を対象とした男女共同参画社会
についての啓発
○図書、ビデオ等の啓発資料の貸出
○啓発セミナー等の開催(再掲)
② 男 女 共 同 参 画 に 関 す る 情 報 ○男女共同参画関係資料の収集と提供
提供等の充実
○図書、ビデオ等の啓発資料の貸出(再掲)
○統計調査資料の収集
○相談体制の充実(再掲)
市
国・道・市
市
③ メ デ ィ ア 等 に お け る 男 女 平 ○有害図書等の監視・環境浄化(再掲)
等理念への配慮
○メディア・リテラシー向上のための情報提
供と意識啓発
○広報紙等における男女平等の理念の配慮
道・市
国・道・市
④国際交流と国際理解の推進
○国際交流事業の推進
○男女共同参画に関する国際的な情報の収
集・提供
市
国・道・市
市
道・市
市
市
市
市
国・道・市
市・民間
市
* メディア
メディア・
・リテラシー 「メディア」はテレビや新聞、インターネットなど情報媒体のこと。
「リ
テラシー」は読みとる力。「メディア・リテラシー」は、テレビなどのメディアが伝える情報を
そのまま信じ込んでしまうのではなく、視聴者、読者自身が、自分で考え判断する力のこと。
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市民の皆さんも取り組みましょう
・男女が対等のパートナーとして、互いに尊重されているか関心を持ちましょう。
・自分にできるところから、国際交流を実践しましょう。
【参考資料 9】
(1) HDI(人間開発指数)
HDI (人間開発指数)
7 位/ 177 カ国
基本的な人間の能力がどこまで伸びたかを測るもので、
基礎となる「長寿を全うできる健康的な生活」「知識」「人
並みの生活水準」の3つの側面の達成度の複合指数です。
平均寿命、教育水準(成人識字率と就学率)、調整済み1人
当たり国民所得を用いて算出されます。
(2) GDI(ジェンダー開
GDI (ジェンダー開 発指数)
13 位/ 136 カ国
HDI と同じく基本的能力の達成度を測定するものですが、
その際、女性と男性の間でみられる達成度の不平等に注目
したもの。HDI と同様に平均寿命、教育水準(成人識字率
と就学率)、国民所得を用いつつ、これらにおける男女間格
差を考慮して算出されます。「ジェンダーの不平等を調整し
た HDI」と言えます。
(3) GEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)
GEM (ジェンダー・エンパワーメント指数)
42 位/ 75 カ国
女性が、政治・経済分野の意思決定の場で活動できてい
るかどうかや、経済的自立ができているかどうかを測るも
のです。専門職・技術職に占める女性割合、上級行政職・
管理職に占める女性割合、国会議員に占める女性割合、女
性の所得を用いて算出されます。
※ 測 定 可 能 な 国 数 は 、HDI は 177 か 国 、GDI は 136 か 国 、GEM は 75 か 国 。
資料:「人間開発報告書 2006」国連開発計画(UNDP)
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