6年2組 社会科学習指導案

6年2組
社会科学習指導案
指導者
1.小単元名
長澤
哲也
世界に歩み出した日本
2.目標
・大日本帝国憲法の発布,日清・日ロの戦争や条約改正,科学の発展などに関心をもち,それらにか
かわった人物や国際的な地位の向上のようすについて進んで調べることができる。
[関心・意欲・態度]
・我が国の国力が充実し,国際的な地位が向上していったようすを,大日本帝国憲法の制定,条約改
正,科学の発展などにかかわった人物の働きや産業の発展,日清・日ロの戦争などの外国との関係
を通して,考えることができる。
[思考・判断 ]
・年表やイラスト,写真,文書などの資料を効果的に活用しながら,大日本帝国憲法の発布,日清・
日ロの戦争や条約改正,科学の発展のようすを調べるとともに,調べたことをノートや年表にまと
めることができる。
[技能・表現]
・日清・日ロの戦争における勝利や大日本帝国憲法の発布,条約改正,科学の発展などを通して,我
が国の国力が充実し,国際的な地位が向上していったことが分かる。
[知識・理解]
3.指導にあたって
(1)教材について
開国以降,欧米の国々に追いつくことをめざしてきた近代日本。明治の世の中になって,国や地方
の政治や社会のしくみを改め,人々のくらしが西洋風へと変わり,大日本帝国憲法が制定されるなど ,
急速に近代化してきた。
しかし,江戸時代末期にペリー来航によって開国を余儀なくされ,不利な条約を結ばざるを得ない
外国諸国との力関係は明治の世の中になっても大きくは変わっていない。近代国家の歩みを始めた日
本にとって不平等条約の改正は明治以降の日本の悲願であり,またその後の日本の発展に欠かせない
ものであったと考えられる。本単元は,大日本帝国憲法の発布や国会開設などの明治政府の国の基盤
を整える努力,日清・日ロ戦争での勝利,科学分野での発展などを契機に国際的な地位の向上し,条
約改正の実現,諸外国との関係改善へと向かった日本の姿をとらえる内容となっている。
ここでは,歴史的事象や人物のはたらきが複雑に絡み合いながら時代が動いていく様子と,我が国
の国力が充実し,国際的な地位が向上していった理由を,大日本帝国憲法の発布から関税自主権の回
復までの主な歴史的事象・人物を調べながら,考えさせることができる教材であると考える。
(2)児童の実態
与えられた課題を解決しようとしたり,最後までねばり強く解決しようと取り組む姿の子は多い。
また少々難しいと思われることであっても,課題解決の見通し・道筋が見えてくるとがんばることが
できる子どもたちである。しかし,自ら課題解決に向けた手がかりを資料の中から探し出したり,読
み取ったりする力が弱く,写真・絵図・文章等の資料から課題解決に向けた手がかりを各自が得るこ
とは難しいと考えられる。
自分と同じ考えにうなずく,「同じです 。」と声を上げるなどの同調することはあっても,同じ考
えを自分の言葉で言い直したり,つけ加えて発言したりすることがあまりない。また,話を聞くこと
はできているが,発言に積極的ではないために,一方的に聞くことに終始するだけの子も多く,話し
合い活動が成立しにくい 。資料から読み取ったこと,感じたことを単発的に発言することはできても ,
それらをつなげて課題解決に向かっていくことは難しいと考えられる。
(3)「考えを出し合い,深める子」に迫るために(指導・支援)
本小単元での「考えを出し合い,深める子」とは,資料をもとに調べたことや考えたことを出し合
い,急速に近代化していった時代の様々な人々の働きや諸外国との関係の変化と当時の日本の国力の
充実,国際的な地位の向上を関連づけて理解する姿であると考える。
そのため,本単元ではこれまでの学習同様,課題解決に向けて資料を探し出すことを繰り返し指導
することをまずは心がけていきたい。その上で資料を読み取るための手だてを子どもたちに提示しな
がら,資料の読み取りを深めるようにしていきたい。
また歴史的事象や人物,国際関係が複雑に絡み合っている時代の様相をふまえ,資料の多様な読み
取りを引き出すように配慮しながら発言することができるよう工夫していく必要があると思われる。
すなわち,当時の日本の国力の充実,国際的な地位の向上の理由を1つの歴史的事象や1人の人物に
よるものとすることがないように,資料から数多くのことが読み取れるようにすることが必要である
ことに気づかせ,さらに資料から読み取ったことをつなぎ合わせて考えていけるように支援していき
たい。
そのため導入の単元全体の学習課題を条約改正の実現に至った理由を考えさせることで,子どもた
ちが国内基盤の整備,外交努力,日清・日ロ戦争における勝利,産業の発展などを理由として予想す
ることが期待でき,まとめの段階において「どれか1つ」が条約改正実現の理由なのではなく,それ
らが絡み合って実現したのだということにたどり着くことができると考えている。また ,「国際的な
地位の向上」を理解することは容易ではないが,条約改正という出来事が「日本と欧米諸国の関係が
対等になった=国際的な地位が向上した」ととらえさせることで理解がしやすくなると考え,単元全
体の課題を意識させる段階でこのことをおさえておく必要があると考えている。
4.学習計画(総時数
次
8時間)
児童の活動と思考の流れ
教師の指導・支援と評価
第 ○「ノルマントン号事件」の絵を見て,気づいたことをノー ・ボート上の船員の表情や態度
一 トに書こう。
から状況を読み取らせる。
次 ・船が遭難したんだな。
・条約改正の必要性を感じ取れ
・船長が助けようとしていないぞ。
るようじっくりと読み取らせる。
ノ ・たくさんの人が助けを求めている。
ル
マ 〈ノルマントン号事件はどんな出来事だったのでしょう〉
・事件の概要や事件後の結果か
ン
明治維新で近代化をしてきたけど,日本はまだ一流国では
ら,当時の日本の国際的な地位
ト
なかったんだな。
を感じ取らせる。
ン
号 〈ノルマントン号事件を知った当時の日本の人々はどう思っ
関:ノルマントン号事件の経
事 たのだろう〉
緯から当時の日本の地位と人
件 ○自分の考えをノートに書こう。
々の心情に迫ろうとしている 。
と
(ノート)
条
・不平等な立場に立たされてい
約
ることをふまえて当時の人々の
改
心情を書くようにさせる。
正 ○ノルマントン号事件について当時の人々はどんな思いをも
へ っていたか,発表しよう。
の ・不平等条約を改正してほしい。
歩 ・政府は早く不平等条約を何とかしてほしい。
み ・日本が下に見られてくやしい。
・このままだとまたこんな事件が起こってしまうぞ。
○不平等条約を改正することができたかどうか調べてみよ ・年表を用意して条約改正がで
う。
きたことに気づかせる。
・条約改正をしようとして失敗しているね。
・条約改正が容易に行われなか
・条約改正ができるまでにずいぶん時間がかかっているな。 ったことに目を向けさせる。
〈どうして条約の改正に成功することができたのでしょう〉 ☆年表の様々な出来事が条約改
○年表を手がかりに予想してみよう〉
正に結びつくことに気づくよう
・日清戦争や日露戦争というのがあるぞ。戦争に勝ったから 支援する。
かな。
思:条約改正ができた理由を
・大日本帝国憲法ができたからかもしれないね。
年表を手がかりに考えている 。
・韓国併合というのは関係あるのかな。
(発言・ノート)
条約改正ができたということは西洋の国と同じ立場になっ
・条約改正に結びつくと予想し
たということなんだね。日本が一流国の仲間入りができる
た出来事に関心を持たせ,調べ
ようになったわけを調べていこう。
学習への意欲につながるように
する。
〈憲法が作られたことと,一流国になることと関係があるか
調べてみよう〉
第 ○全国に広がった自由民権運動の様子を見てみよう。
・自由民権運動の演説会の絵か
二 ・国会を開いてほしいと思っている。
ら演説者や集まってきた国民の
次 ・憲法を作りたいんだ。
思いを読み取らせる。
・警官が演説者を押さえている。
条 〈伊藤博文はどのようにして憲法を作ったのでしょうか〉
☆誰を中心とした憲法であるか
約 ・皇帝の力が強いドイツ憲法をもとに作ったんだ。
を意識して考えさせる。
改 ・天皇の権力がとても強そうだ。
技:憲法の内容を的確にとら
正 ・伊藤博文は初代内閣総理大臣になって憲法を作ったんだ
えている。(発言・ノート)
に ね。
向
け
初めて内閣が作られて,伊藤博文が憲法を作り,国会を開
た
設することができたんだね。これまでの朝廷や幕府とは違
・これまでの日本の政治のしく
日
った西洋のしくみを取り入れ,一流国に近づいた。次は戦
みとは全く違うものであり,西
本
争を調べよう。
洋のしくみを取り入れたもので
の 〈二つの戦争と一流国になることは関係があるのだろうか〉 あることを確認する。
歩
み ○朝鮮をめぐって日本,ロシア,中国はどんな関係だったの ・ビゴーの風刺画の4カ国の様
だろう。
子の描かれ方をきちんととらえ
・朝鮮だけが魚で描かれている。
られるように,そして4カ国の
・日本と中国は朝鮮を支配下に置こうとしている。
関係を風刺画から読み取ること
・ロシアも釣り竿をもって,朝鮮をねらっている。
ができるようにする。
〈二つの戦争と日本の産業の発展との間にはどのような関係
があったのでしょうか〉
○日清戦争・日ロ戦争の原因や結果をまとめよう。
☆二つの戦争についての調べる
日清戦争
観点(原因と結果)を児童が明
原因
日ロ戦争
朝鮮半島の支配をめぐ 原因
ロシアが朝鮮半島に勢 確に持てるようにする。
って。
力を伸ばそうとしてき
た。
結果
・2つの戦争の前後の経過を年
清は朝鮮半島から手を 結果
朝鮮半島での日本の利 表などからつかませる。
ひいた。
益を認めさせた。
遼東半島・台湾を手に
樺太の南半分を譲り受
入れた。
けた。
賠償金を手に入れ,八
南満州鉄道の権利を譲
幡製鉄所を作ることが
り受けた。
できた。
賠償金を得ることはで
きなかった。
○二つの戦争の影響をまとめよう
思:二つの戦争における勝利
・日清戦争の賠償金で軍備の増強と八幡製鉄所の建設をし
により日本の産業が発展して
た。
いったことなどを考えている 。
・領土が拡大した。
(発表,ノート)
・日ロ戦争では賠償金がもらえず不満が残った。
2つの戦争の結果,領土が拡大し,産業が発展したりして
・ロシアに対する日本の勝利が
一流国に近づいた。世界を驚かせたんだな。
世界を驚かせる結果であったこ
〈日清・日ロ戦争で勝った日本は朝鮮半島をどのように支配 とを補説する。
していったのでしょうか〉
〈日清・日ロ戦争で勝った日本は,その後どんなことをした ・二度の戦争に勝ち,領土の拡
のでしょうか〉
張に成功した日本のその後の行
・朝鮮への支配を強めた。
動について追究意欲を持たせる。
・伊藤博文の暗殺をきっかけに韓国を併合した。
第 ・西洋諸国と同じように領土を広げていった。
二
次 ○植民地朝鮮を日本はどのように支配したか調べよう。
・日本語を教えた。
☆母国語の使用や自国の歴史を
学ぶことを禁止された朝鮮の人
条 ・朝鮮の歴史や朝鮮語の勉強を禁止した。
たちの無念さを考えさせる。
約 ・土地を失い日本人地主の小作人になった。
・日本の植民地になった朝鮮で,
改 ・仕事を求めて日本へ移住した。
人々はどのような気持ちで生活
正
していたのかを,考えさせる。
に ○日本に植民地にされた人々はどのような思いでいたのか考
向 えよう。
思:日本の植民地となった朝
け
鮮の人々の気持ちを考えてい
た
領土を広げて,植民地となった国を日本と同じようにして
日
いったんだね。支配される側でなく,支配する側に日本も
本
なったんだ。一流国と同じ立場になったんだね。
る。(発言・ノート)
の
歩 〈このころ科学の発展のために日本人がどんな活躍ををした ・政府の富国政策にともない,
み のでしょうか〉
自然科学の発達のため,外国か
○世界で活躍した野口英世について話し合う。
ら教師を招いたり留学生を送っ
・アフリカに渡って黄熱病の研究をしたよ。
たりしたことで科学の研究が活
・いろいろな最近の研究をしていたんだね。
発になったことに気づかせる。
○その他の科学者について調べ,世界で活躍する科学者が多
知:政府の近代化政策を背景
数あらわれた理由について考える。
とし,世界で活躍する日本人
・優れた研究をした科学者がいた。
が多くなり,我が国の国際的
・政府が,新しい学問,技術を積極的に導入した。
地位が向上したことを理解し
○他の分野で活躍した人物も調べよう。
ている。(発言・ノート)
医学や科学だけでなく,文学や音楽でもたくさんの人々が
活躍したんだ。これで日本人も世界の国々から認められる
ようになったんだ。
〈条約改正を実現することができたのはどうしてなのでしょ ・これまでの学習を振り返り,
うか〉
一流国と同じ立場になれたわけ
・清(中国)やロシアに勝つことができたからだ。
を考えさせる。
・西洋と同じ国のしくみを作ったからだ。
・条約改正のためにがんばった人がいるよ。
・野口英世のように科学の研究で世界的に認められた人もい
たからだ。
○条約改正につながった理由が1つだけなのか考える。
☆条約改正につながった理由を
・国のしくみや軍事力が一流国に認められたのかな。
改めて問うことで,西洋の国々
第 ・科学の発展も日本人を認めてもらうきっかけになったよ。 が日本を認めた理由が1つでは
三 ・いろいろなできごとが重なって日本が認められて,条約改 ないことに気づかせる。
次 正をすることができたんだ。
条 ○このころがどんな時代だったかをキャッチコピーで表して
思:時代の特徴を短い文で表
約 みよう。
すことができている。(ノート
改 ・悲願の条約改正が実現!日本も一流国の仲間入り
・発言)
正 ・開国からわずか50年。西洋の国々に追いつく!
の
実
いろいろな出来事が積み重なったり,たくさんの人々の努
・キャッチフレーズが作れない
現
力があって,条約改正ができたんだ。明治のはじめと比べ
場合でも,時代を示すキーワー
と
て,一流国と同じ立場になったんだね。
ドを集めることができるように
人
支援する。
々
の 〈産業の発展や戦争によって,人々の生活や社会はどのよう
生 に変化したのでしょうか。〉
活 ○日清・日ロ戦争後の日本の産業の発展とそのひずみについ ☆産業の発展にともなって人々
や て話し合おう。
の生活が豊かになったことをい
社 ・工場の数が増えた。
ろいろな出来事からとらえさせ
会 ・鉄や銅の生産が増えた。
る。
の ・児童雑誌『赤い鳥』が創刊された。
・田中正造と足尾銅山の資料か
変 ・ラジオ放送の始まった。
ら工業の発展によるひずみなど
化 ・地下鉄が開通した。
をとらえさせる。
・足尾銅山の鉱毒問題が起きた。
○米騒動や平等を求めて運動する人々について調べよう。
☆米騒動を始まりとして,様々
・生活を守るため米屋をおそう事件が起きた。
な運動が広がっていったことを
・差別をなくそうとする運動も起こってきたんだ。
とらえさせるとともに,人々の
・でもなかなか差別はなくならなかったんだね。
思いにも着目させる。
○産業の発展や戦争による人々の生活や社会の変化の様子を
ワークシートにまとめ,話し合おう。
国の国々との関係が少しずつ変わって,日本の国際的な地
技:産業の発展や戦争によっ
位が向上していったんだね。それにともなって人々の生活
て人々の生活や社会の様子が
や考え方も変わっていったよ。いいことばかりではなかっ
変わったことを理解し,自分
たんだな。
の考えをまとめている。
(ワ−クシ−ト,行動観察)
5.本時の学習(第一次中の2時)
(1)題目
ノルマントン号事件
(2)ねらい
国民の不平等条約に対する怒りを知り,政府の条約改正へ向けたの努力や条約改正が
実現した理由を予想することができる。
〔思考・判断 〕
(3)学習過程
時
7
児童の活動と思考の流れ
教師の指導・支援と評価
○ノルマントン号事件について当時の人々はどんな思いをも ・政府だけでなく,ノルマント
っていたか,発表しよう。
ン号事件により国民の条約改正
不平等条約を改正してほしい。
政府は早く不平等条約を何とかしてほしい。
13
への願いがあったことを押さえ
る。
○不平等条約を改正することができたかどうか調べてみよ ・ 1911 年の関 税自主権回復ま
う。
・条約改正をしようとして失敗しているね。
での様々な出来事を羅列した年
表を用意して条約改正ができた
ことに気づかせる。
・条約改正ができるまでにずいぶん時間がかかっているな。 ・条約改正ができた事実ととも
に容易に行われなかったことに
も目を向けさせる。
20 〈 どうして条約の改正に成功することができたのでしょうか〉☆年表の様々な出来事が条約改
○年表を手がかりに予想してみよう〉
正に結びつくことに気づくよう
支援する。
・条約改正のために必要だった
ことは何であったのかを整理し
日清戦争,日ロ戦争に
勝って強い国になった
からかな?
韓国を併合したこと
も関係あるのかな?
大日本帝国 憲法が
作られていることも
関係あるのかな?
生糸の生産が世界一
になったよ。
豊かな国になった
からかな?
北里柴三郎や野口英世の
ように世界で活躍する人
がいたからなのかもしれ
ないね。
5
て考えさせるよう支援する。
思:条約改正ができた理由を
年 表を 手 がか りに 考 えて い
る。
・予想が進まない児童には条約
改正=一流国の仲間入りという
ことをヒントとして出し,一流
国なるにはどんなことが必要か
を問いかける。
条約改正ができたということは西洋の国と同じ立場になっ
た,認められるようになったことなんだね。日本が一流国
・条約改正に結びつくと予想し
た出来事に関心を持たせ,調べ
の仲間入りができるようになったわけを調べていこう。
学習への意欲につながるように
する。
○次の時間は憲法が作られたことと,一流国になったことが
関係あるかを調べてみよう。