18062025.pdf http://www.shinkawa.com/ 企 業 6274 新川 上 原 宏 一 (ウエハラ コウイチ) 株式会社新川社長 半導体メーカーの設備投資需要で 順調に業績拡大 ◆会社概要 当社は1988年に東証二部に上場し、2000年に東証一部に指定替えし、上場以来18年目にして初めて決算 説明会を開催する運びとなった。1959年に創業し、最初の10年間は主にトランジスタの組立治具、パワート ランジスタのテスターやハンドラー、ダイオードの自動組立装置など、電子部品関連の自動化装置の開発・製 造・販売に従事していた。第1次オイルショック以降はワイヤボンダ、ダイボンダ、テープボンダ、フリップ チップボンダなど、自動化装置開発に特化し、半導体組立装置の専業メーカーとして今日に至っている。2001 年のITバブル崩壊以降、苦しい時期もあったが、当社はあえて選択と集中の道を選ばず、半導体組立装置につ いてはオールラウンドプレイヤーであり続けた。これが専業メーカーのあるべき姿であるという経営方針に基 づいて、現在もほとんどのパッケージングをできるボンダをラインアップしている。主要顧客はIDMと呼ばれ る世界の大手半導体メーカーと、サブコンと呼ばれる組立専業メーカーである。市場としては、世界の半導体 後工程の生産工場が集中しているアジアが主戦場である。顧客の技術サポート、納入したボンダのメンテナン スを主目的としてアジア地域を中心に9カ所の拠点を設けている。 ◆2006年3月期連結業績 当期の連結業績は、売上高が前期比22.5%増、売上総利益が同24.5%増となり、増収効果もあって営業利 益、経常利益ともに大幅増となった。当期純利益は同73%増であった。年間受注額は83.7%増の303億円と なった。年間配当は、従来の安定配当から利益により傾斜した形で配分することに決め、前期20円に対して 当期は40円とした。受注と売上高の推移を見ると、受注は2004年7~9月に底を打ち、徐々に回復傾向にあ る。2005年3月期の第2~4四半期は売上より受注が少ないが、2006年3月期になって受注が売上を上回るよ うになった。品目別の売上高は、主力のワイヤボンダの構成比が前期59.6%から当期53.4%に下落し、ワイ ヤボンダの依存度が低くなっている。逆に当社が戦略的に拡販したいと考えているダイボンダやテープボンダ の構成比が上がっている。地域別の売上高は、前期40%弱が国内であったが、当期は30%を切っている。韓 国34%、台湾12%、中国11%、東南アジア14%と、後工程は完全にアジアにシフトしている。利益について は、営業利益率が前期9.5%から13.0%に上昇したが、これは増収効果が大きい。 貸借対照表では、資産合計が510億円を超えている。売上が伸びているため流動資産が46億円の増加となっ た。このうち27億円が売掛金、8億円が現預金、10億円弱が棚卸資産である。現在の規模から見れば、棚卸資 産は妥当な水準であると考えている。流動負債についても、買掛金が24億円増えている。キャッシュフロー (CF)は、営業CFが売上債権増のマイナス要因と仕入れ債務の増加のプラス要因等により28億94百万円と なった。投資CFは、固定資産の取得や投資有価証券の取得によりマイナス10億34百万円となった。財務CF は、自己株式の取得や配当金の支払いによりマイナス4億37百万円となった。研究開発費は13億円であり、今 期は14億円を予定している。設備投資が前期比で大きく増えたのは、原価低減のために試作工場を立ち上げ るために2億円、自社製品をお客様に評価してもらうために4億円を使ったことによる。今期は設備投資9億 円、減価償却費8億50百万円を予定している。 ◆2007年3月期業績予想と重点施策 昨年の半導体市場は2000年のピークを超えて25兆円となり、これから2010年に向けて30兆円以上の市場 になると予想される。地域別に市場規模を見ると、拡大の中心はBRICsを含めた東南アジア市場である。ア プリケーション別で見ると、半導体市場を今まで牽引してきたのは通信や携帯端末、パソコンであったが、 2004年からはそれに加えてデジカメ、DVD、液晶テレビなどのデジタル家電が増加している。注目すべきは 車載用のICである。構成比はまだ10%に達していないが、2015年には新車売上の20%が車載用半導体になる と予想されている。ボンダ市場は、2000年にピークとなり、2,200億~2,300億円の市場規模となった。次の ピークは北京オリンピックの2008年と思われるので、これに向けてどのような戦略でやっていくのか、その 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。 後に訪れるシリコンサイクルの谷間にどのように対処するかが当社の課題となる。これまではシリコンサイク ルの波から外れないように努力してきたが、今後はその谷間をどう埋めていくかを考える必要がある。2001 年のITバブル崩壊の時に当社がシリコンサイクルの波から外れたのは、主力のUTC-1000の市場投入が遅れた ためである。 本日公表した2007年3月期の業績予想は、連結売上高290億円(中間期では150億円)、当期純利益23億円 であり、1株当たりの配当金は前期並みの40円である。 半導体パッケージのトレンドとしては、3次元実装の立体構造が主流となり、コストダウンのためにファイ ンピッチ化や多ピンのフリップチップ化がさらに進み、高周波化されていくと予想される。ワイヤボンダは、 UTC-2000を去年のセミコンショーで発表し、既に市場投入した。現状の性能は、スピードが60ミリ秒、パッ ドピッチが35μmである。これからのパッケージトレンドに対応するためには30μmのピッチと、さらに高 速のボンディングスピードが必要となる。また3次元実装のために多彩なループモードを開発する必要があ る。スタックになると庇のような出っ張りがあるため、中空にボンディングするなど高度な積層デバイスのボ ンディング技術が求められる。旧型のUTC-1000を本年12月にかけて徐々にこのUTC-2000に切り替えてい く予定であったが、基本的なプラットフォームはUTC-1000で、スピードアップのためにXYテーブルとボン ドヘッドを切り替えただけなので、従来のお客様は注文と同時に1号機評価を行い、よければそのまま導入と いった形でスムーズに受注に結び付いている。ちなみに旧型のUTC-1000は約3年間で6,000台近く出荷して いる。UTC-2000 も、既に約200台を市場に出荷している。ダイボンダSPA-300Superは、300ミリウェー ハ対応として3年前に市場投入し、約600台を主に国内・韓国・東南アジアへ出荷している。今後の課題とし ては、スタックが9~10段になってくるとダイボンド精度を現状の50ミクロンからさらに薄くしなければなら ない。またエポキシライティングのスピードも現状の1.2秒から0.8秒にし、異なる種類のスペーサフィルムへ の対応、薄型ダイピックアップ高速化を進めていく必要がある。これについては、年末か来年初めには新しい モデルが投入できるだろう。ディスクリートアセンブラは、幸い去年の暮れから市場が回復している。アセン ブラというのは、ダイボンダとワイヤボンダを2台ずつ連結する、または2対1や1対2で使うことを意味する。 現在はUPH22000の高速で、ボンドヘッドはリニアモータ駆動で0.137秒であり、以前のワイヤボンダ並の スピードでダイボンディングを行っている。さらなる生産性向上のため、ワイヤボンダUTC-2000をベースに した新モデルを来年投入する予定である。テープボンダは、以前はTCPが主流であったが最近はチップオン フィルムになっている。液晶テレビの市場価格が下落しているためデバイスメーカーはコストダウンを求めら れており、そのためにダイを縮小すると思われるので、来年には総合ボンディング精度をさらに向上させス ピードアップしたモデルを投入する予定である。フリップチップボンダについては、大型チップ用はプロセス の種類が多いので、当社は3年前に電子部品からこの市場に参入し、SAWフィルター、高周波モジュール、携 帯電話に使われる白色LEDのバックライト用などのアプリケーションに対応した製品を出した。今後蛍光灯 がLEDになるとアプリケーションはもっと増えていくだろう。大型チップ市場へどうやって参入していくか は、現在検討中である。バンプボンダは、UTC-1000をベースにしており、現在競合製品は少ない。ファイン ピッチに対応しボンディングスピードを向上させるためUTC-2000をベースにしたモデルを計画しており、こ れから開発に着手する。 今期の施策として、 「顧客対応力の強化=顧客満足」は当然のこととしてやっていかなければならないが、私 が社長就任以来特に強調しているのが「足元を固める=ボンダの信頼性向上」である。お客さんの生産ライン で壊れない、止まらない、手間が掛からない製品を実現するには、地道な研究を続けなければならない。しか し、それが実現できたら、例え競合製品よりスピードが数ミリ秒遅くても、週や月単位で見れば生産性が高く なり、ランニングコストが安くなる。最近サブコンはcost of ownershipの考え方を採用しているので、当社 ブランドの評判が市場に定着したら自然にシェアが上昇するはずである。また「徹底したコストダウン=収益 力アップ」も必要である。 2006 年3 月期は2 億50 百万円を投資して試作工場を2006 年3 月に竣工した。これは、ボンダの機械的モ ジュールを試作し、開発者が完全な図面にフィードバックすることにより、従来のようにサプライヤ任せにせ ず、開発サイクルを短縮して適正コストを算定するためである。 今期の重点施策は以下のとおりである。 ●中国のシェアをさらに増やすために役員1名を駐在させる。 ●海外拠点は、営業担当者に加えて設計技術者を駐在させ、お客様の要求を汲み上げる体制をつくる。 ●現地のエンジニアを本社で教育することにより、顧客サポートを徹底強化する。 (平成18年5月17日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
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