15122037.pdf 企 業 7266 今仙電機製作所 若 山 恭 二 (ワカヤマ キョウジ) 株式会社今仙電機製作所社長 新規得意先拡大で収益基盤を確立 ◆9月中間期は増収減益 当社の2003年9月中間期の連結業績は、売上高は前年同期比2.1%増の255億17百万円と増収になったもの の、利益面では営業利益が同43.0%減の6億49百万円、経常利益が同26.7%減の7億5百万円、中間純利益が 同45.0%減の2億56百万円と減益を余儀なくされた。要因は米国子会社における業績悪化である。 設備投資は引き続き海外に重点を置き、国内では抑制しており、当中間期は10億3百万円(国内4億48百万 円、海外5億55百万円)となった。減価償却費は10億54百万円となり、結果として有形固定資産は82百万円減 少した。 損益変動要因として、売上高が期初予想を80百万円ほど下回ったものの、前年同期比で5億27百万円増加し たのは、中国子会社の操業開始が主因である。利益面について期初予想と中間実績との差異を分析すると、当 社単体での主なプラス要因は、試作売上高、技術売上高など通常ではない売上高の増加による効果が1億50百 万円、総原価低減活動として進めている「SSI-335活動」による総原価の低減効果が4億20百万円、受取補償 費の増加が約90百万円、マイナス要因は、量産売上高の減少により2億70百万円減少したほか、為替差損が約 1億円発生し、これらの結果、期初予想比で2億96百万円の増益になった。 連結においては、単体による効果に加え、アジア地域での業績が順調に推移したこと、㈱今仙技術研究所で の電動車椅子、義足共に新機種の販売が好調だったなどのプラス要因はあったが、米国子会社の採算悪化が大 きく響き、経常利益は期初予想比34百万円減となった。 ◆米国子会社の経常損失を来期に解消 米国子会社は北米地域の自動車メーカー向け部品供給拠点として1997年4月に設立した。ホンダ「アコー ド」用などのパワーシートアジャスタから生産を開始し、2000年には「シビック」用のマニュアルシートア ジャスタの生産を開始して順調に業績を拡大し、2000年12月期には単年度黒字化を達成、2001年12月期には創 業以来の累積赤字を解消した。 しかしながら、2002年度に入り、「アコード」が新型に切り替わり従来品の生産が打ち切られたことによる 売上高の減少に加え、2002年度末から新規に生産を開始したホンダ新型SUV用マニュアルシートアジャスタ および三菱RV車用パワーシートアジャスタの立ち上げに掛かる費用が増大し、さらには、9月から10月にか けて発生した米国の港湾封鎖問題の影響による米国ホンダの操業停止や、空輸対応による輸送費の増大など で、前期は経常損失94百万円の計上となった。 2003年度になっても、新規製品であるホンダおよび三菱向けシートアジャスタの生産効率の改善が進まず作 業工数が増加したこと、それら製品の不具合が発生し、さらに下期に立ち上がった新しい製品に向けた金型費 や開発費などの準備費用が増加、また従来製品のコスト改善が大幅に遅れたことなどにより、上期に経常損失 3億30百万円を計上し、通期でも経常損失7億円を計上することになる見通しである。 このような業績悪化に対し、当社では、今年7月から米国子会社を特別管理会社に指定し、常務取締役を責 任者とした改善プロジェクトを設け、万全の支援体制を整えて、経営全般の立て直しに全力を挙げている。 2004年度には、北米の富士重工向け生産が始まるほか、ホンダRV車のフルモデルチェンジに伴う受注拡大 により売上高が大幅に増加するものの、利益は改善効果の実現に時間を要するため、上期には経常損失を予想 している。しかし、下期にはばん回して通期で経常損失を解消し、収益体質への復帰を目指す所存である。 ◆新規のトヨタと日産向けがシェア拡大 当中間期の業績を事業種類別に見ると、自動車部品関連事業とワイヤーハーネス関連事業は増収減益、福祉 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。 機器関連事業は増収増益、自動車販売関連事業は減収で、営業損失は減少となっている。 自動車部品関連事業では、主力製品であるシートアジャスタの売上高は増加傾向にあり、売上高全体に占め る割合も高まっている。これは日産系列向けパワーシートアジャスタの新規受注などによるものである。ま た、ランプの売上高も今年からトヨタ系列向けにランプ部品の納入を始めたことで増加した。 販売先別では、当社はホンダと三菱を中心に各自動車メーカーに対し積極的に販売活動を展開しているが、 ホンダ系列向けは前年同期比で約8%減少し、売上高全体に占めるシェアも低下している。この要因は、米国 子会社での売上高減少に加え、当社にとっての主力車種であるミニバンやRV車などの販売台数が伸び悩んで いるためである。三菱系列向けは北米向けが加わり売上高とシェアのいずれも若干伸びている。 その他のメーカーについては、年初から新規にランプ部品の納入を開始したトヨタ系列向けと、新規にシー トアジャスタの納入を開始した日産系列向けが好調で、両社を合わせたシェアは当中間期において約5%に拡 大している。 ワイヤーハーネス関連事業では、工作機械用が回復基調だが、航空・宇宙関連機器向けは厳しい状況が続い ている。その結果、前年同期比で売上高は微増したものの、固定費の回収が進まなかったことから損失増加と なった。 福祉機器関連事業においては、国の税収不足から福祉業界の厳しい環境が続いている中で、電動車椅子と義 足のいずれも新機種の販売が好調であったのと、総原価低減活動の効果により、前年同期比で増収増益となっ ている。なお昨年9月に、従来の義足システムにさらなる安全性と快適性を施した多リンク式安全膝「Swan」 を発売して好評を得ており、このたび「2003年度グッドデザイン賞」を受賞した。 自動車販売関連事業では販売の低迷が依然として続いているが、営業費用など固定費の削減に努め収益の改 善を進めた結果、前年同期比で損失を減らしているのが現状である。 当中間期の連結キャッシュフロー(CF)は、営業活動によるCFが、中国子会社などでの売上債権の増 加、法人税等の支払額の増加、予定の利益を確保できなかったことなどから3億53百万円減少した。投資活動 によるCFは、有形固定資産の取得と定期預金の増加により2億51百万円減少し、これを合わせたフリー キャッシュフローは6億5百万円減少となっている。財務活動によるCFは、借入金の増加により1億71百万 円増加した。これらの結果、現金および現金同等物の期末残高は36億62百万円となり、前年同期に比べ7億15 百万円の減少となっている。 ◆シート部品の開発と新規顧客の拡大に注力 今期の通期業績については、単体で売上高401億円、経常利益19億20百万円、当期純利益10億30百万円を計 画している。連結では売上高が期初予想比17億円減の513億円となり、利益も経常利益15億円、当期純利益4 億30百万円と期初予想を下回る見通しである。セグメント別には、主力の自動車部品関連事業は販売順調な中 国子会社が貢献して大幅増収となるものの、利益面では米国子会社の採算改善の遅れと、円高基調見通しによ る為替の影響などにより、大きな減益となる予想である。その他の各事業は、いずれも若干の業績アップを計 画している。 以上のような今期の計画を達成し、併せて今後の収益基盤を確立するための対策として、①北米子会社の経 営改善、②新技術を付加した新しいシート部品の開発および新規得意先の拡大、③「SSI-335活動」の仕上げ の年として総原価低減目標を達成、④中国とタイにおける子会社の操業の円滑化、に全力で取り組む考えであ る。 こうした対策の推進により、中期の業績目標として2006年3月期に、連結で売上高610億円、経常利益34億 円、当期純利益18億円の達成を目指している。 ◆質 疑 応 答◆ アジアでの売上高が順調に伸びているが、今後の見通しとして、この地域でのホンダ以外との取引はどうな るのか。 アジアでも当初はホンダが先行したが、中国とタイのいずれにおいても、ホンダ以外の日系メーカーとの取 引も予定しており、来期以降の取引の拡大を十分に期待できると思っている。 (平成15年12月3日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
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