アウフヘーベンフォーラムⅡ~共感経済社会~ 講義録 第一部 田坂氏 今回はアウフヘーベンの二番目のセッションです。今回のサマーコンファレンスは、アウフヘーベンと言うテーマ を掲げての大きな会場です。ただ、皆さんアウフヘーベンと言われて、どのようなことか。と言う方が沢山いらっしゃ いますと思うので、その説明をさせて頂こうと思います。その前に、京都会議でも私はこのような場に出させて頂き ましたが、最近の青年会議所は中々ハイブローですね。京都会議のテーマがパラダイムシフト。見事なテーマを掲げ られたと思いますが、今回のサマーコンファレンスはアウフヘーベンです。さすがと言うか、お見事な時代の最先端 だと思います。なぜ最先端かと言うあたりが今日の説明なのですが、アウフヘーベンとはドイツ語です。難しいこと から一言申し上げると、ヘーゲンの哲学で止揚と言う日本語になっています。分かりやすく言えば、世の中に矛盾し て見える事が沢山あるのです。その矛盾するように見える事が実はどちらか一方を選ばなくてはならないと言ってい るのがヘーゲンです。例えば皆さん経営者の方が沢山いらっしゃいます。リーダーの方が沢山いらっしゃるので申し 上げると、例えばリーダーにとって厳しさと優しさは、どちらが大切ですか。と聞かれて皆さん答えられますか。少し まともなリーダー、経営者の方であれば、厳しさも大切だけれど、優しさも重要だと思います。この矛盾して見える事 が一つなのです。例えば論理と直感。経営者の方で論理的な思考が出来ないと困りますが、論理だけで経営が動くと は思っていないと思います。やはりギリギリのところで直感も必要である。それでは何でもかんでも直感で決められ るかと言ったらそんなことはない。論理と直感と呼ばれる全く矛盾するように見える事が実は一つなのです。敢えて 言えばそれ以外の場合もいくつもあります。 例えば、よく格言で言う「大胆にして細心であれ」リーダーは大胆にして細心であれ。言われてみればそうだが、大 胆と細心とは相当矛盾した言葉に聞こえます。この矛盾しているように見える二つことが実は一つなのだと言う事を 言っているのがヘーゲンの名匠であり、アウフヘーベンと言う考え方であり、この二つが一つなのです。統合してそ れを実践することが大切であると言う事なのです。 これが経営の世界でも同じなのですが、その前にこの二項対立、二つのものが全く対立したものだと言う思考が、 今20世紀からずっと引っ張って来ている訳です。特に20世紀の終わり頃からものすごい勢いになっているグロー バル資本主義と呼ばれるものは、まさに二項対立です。例えば、利益と社会貢献を二つ並べた時に究極を言えば、企業 の目的は利益なのです。と言い切ってしまうのです。それから社員と言うのは目的なのか手段なのかと言う問いに対 しても、あっさり手段だと言い切ってしまうのです。社員と言うのは利益を上げるための手段であり、必要なくなれ ば首を切ればいいのだと。必要であれば雇えばいいのだと。この考え方をする訳です。 ところが経営の世界におられたらお分かりのように実はこの二つ、例えば日本と言う国と日本型経営においては全 然そう言った捉え方をしないです。敢えて申し上げると、この二つ対立するものがバラバラのもので対立したままと 言った考え方は、精神の未成熟である。本当に精神が成熟してくると、このように矛盾しているように見える事を統 合する。まさにアウフヘーベンとして実践して行ける訳です。例えば日本の経営においては利益と社会貢献と言うも のは決して矛盾するものではない。二つにして一つだとはっきり言い切っている訳です。それがよく言われる日本型 経営の有名な言葉として「企業は本業を通じて社会に貢献をする」そうはっきり言い切っている訳です。そして、利益 とは社会に貢献した事の証である。三番目の言葉はもっとすごい。企業が多くの利益を得たと言う事は、その利益を 使って更なる社会貢献をせよとの世の声だ。日本型経営、日本資本主義と言うのは徹頭徹尾この矛盾しているように 見える事なのです。欧米の資本主義があっさりどちらか一つだけ選び、これと言っていることに対して、そんなこと ではなく、その二つは二つにして一つだ。まさに二つのものを一つにしていくと言う事は、ある意味では魂の強さが 求められますが、日本型経営の経営者に求めるものはそのような事なのです。その意味で精神の成熟とは、こう言う 簡単な二項対立のうちではない。結局どちらなのか。利益なのか、社会貢献なのか。と言う捉え方をしない。その二つ は一つなのです。腹を据えて追求していくと言う事は精神の成熟です。そして、精神の成熟のもう一つの姿が目に見 えない価値が見える。皆さん経営者として、やはり修行していくと段々と目に見えない大切さが分かる。例えばお客 様との信頼や、社員の持つ知恵、言葉にならない知恵、世の中の評判、世間様が見ていると言う言葉も使います。例え ば企業の文化と言うのは目に見えないですが、目に見えないからこそ大切だと思ってそこを本当に育てていく。お客 様とのつながりを大切にしていく。このような事が出来るのが日本型経営であり、日本型資本主義です。そのような ことを申し上げると、今日のこの後のセッションのテーマに繋がるのですが、日本青年会議所山本会頭の下、VSO P運動 Volunteer Service One day Project とは、全国津々浦々の地域の経営者、企業、商店の方々が月にたとえ一 日でもいいので本業を通じての社会貢献をしっかりやろう。これを裏返して言えば本業の方が社会貢献であると言う 事をもう一度しっかり見つめて、何か世の中の為、地域の為にやろうと言う運動を全面的に展開しているのです。予 想を超えて900に近い色々な運動が起こっていると教えて頂いておりますが、素晴らしい事です。そのような意味 で実はこのアウフヘーベンと言うテーマとこのVSOPが結びつくのです。皆様の地域でその企業の本業を通じて社 会に貢献しよう。そして、それは決して利益とは無関係ではなく、利益と言うものは本当に社会に貢献したらそれが きちんと得られるものであると、しっかり心に刻んだ上で本業を通じて社会貢献する。そして、利益とは社会貢献し た事の証である。このような事をしっかり見つめながら、今VSOP運動が全国でどんどん広がっているのです。そ のことを申し上げてみると、まずアウフヘーベンと言う少し難しい言葉は一体どういう意味なのかと言う事をお分か り頂けたと思います。そこで、この後のセッションは、皆さんよくご存じのサッカー日本代表監督を務められた、現在 FC今治のオーナーも務められている岡田武史さんに来て頂きますので、岡田武史さんと一緒にVSOP運動につい て少し全国の事例を紹介しながら岡田さんの話を伺っていきたいと思います。それでは岡田さんに入って頂きます。 岡田さんどうぞご登壇ください。 田坂氏 岡田さん早速なのですがVSOP運動について、まず、岡田さんと私が一緒に世の中に提唱して、日本青年会議所も それを正面から受け止めてくださり、先程890もの運動になっているのですが、このVSOP運動とその背景にあ る考えについて岡田さんからお願いします。 岡田氏 元々、もう皆さんも感じていると思うのですが、この社会自体が何か行き詰ってきている。貨幣資本主義と言うのも 何か行き詰まりを感じている。世の中は昨日もテロがあり、色んな事があり、なぜこうなっているのか。何か新しい方 法はないのだろうか。そのようなところから考えていくと、何か日本に昔あった企業は違った。そう言う発想をして いると、田坂さんの仰っている目に見えない資本を大切にしていく社会と言うのは、もしかしたら、かつて日本にあ った社会なのかもしれない。その一つとして一番大事なのが、企業と言うのは社会の役に立たなくては存在してはな らないと言う事です。では、社会の役に立つと言う事は誰かを笑顔にしているはずであるのですが、自分の会社は誰 かを笑顔にしているのでしょうか。自分だけ笑顔になっている会社は存続する必要はないと思うのです。良く考えて みると、あの人を笑顔にしていると言うこと。僕なりの簡単な言葉に言うと、それを再確認して社員も含めてみんな が、我々は人を笑顔にすることで役に立っていると言う事をもう一回見つめ直す運動がVSOP運動だと思うのです。 田坂氏 岡田さんからはこの後、色々な全国の動きについてコメントを頂きたいのですが、最初に岡田さんご自身が経営者と して今、大変奮闘している事をご理解頂きたいです。サッカーの世界でも見事な業績を残された方ですが、以前NH Kのネクストを拝見たところ経営者としても色々とご苦労があると思うのです。 岡田氏 昔は経営者のセミナーとかで講演していたのですが、実際はとても大変なことであると思い、よく私の言う事を聞い て頂いていたと驚きました。こんなに大変だとは思わなかったです。 田坂氏 では、これからのコメントは経営者としての苦労の中から出てくる言葉もあると思いますが、この後のいくつかの事 例紹介は全国900近くの事例なので色々なテーマがありました。敢えて、私の判断で次世代の子供たち向けのVS OP運動に少し的を絞って紹介させて頂きたいと思います。では最初に単独企業によるVSOPの運動の事例を紹介 させて頂きます。 【事例紹介1映像】 田坂氏 今の映像をご覧になって、このような活動であれば自社でもできるのではないかと思われた方は沢山いらっしゃると 思うのですが、これは蒲郡青年会議所の活動です。今日、蒲郡青年会議所の小田理事長来られていると思うので、会場 にいましたら立っていただけますか。 小田さんありがとうございます。もしかしたらコメント頂きますけれど、少しそのままで、岡田さんのコメントを 頂きたいと思います。 岡田氏 これは本当に単独でやっており、誰を笑顔にしているのかはっきりしている活動です。そして、何よりも今回は次世 代の人たちを笑顔にすることを中心に選ばれたと言う事です。動物とは世代の子供たちに命を繋いで生きていくのが 本来ですが、人間だけが今の経済、今日の株価、そのような事ばかり言っているのです。アメリカインディアンの中に 今でも使っている言葉に地球は子孫から借りているものと言う言葉があるのです。これは環境教育を倉本聰さんと行 っている中で最後の石碑に注目すると、地球と言うのはご先祖様ら引き継いだものではなく、未来に生きる子供たち から借りているものである。借りているものは壊したり汚したり傷つけてはいけない。これをネイティブアメリカン が今でも伝えているにもかかわらず、文明人と呼ばれる我々は先程言いましたように今日の株価、今の経済ばかりで、 次世代の為に何を行えばいいのか考えると結構社会問題が解決するのです。その一歩として、このように子供たちを アトピーから守る活動は素晴らしいと感じました。 田坂氏 岡田さんは子供たちの為に環境教育とか携わっていますが、その意味で次世代に向けた活動を今回選ばせて頂きまし た。小田さんもそのようなお気持ちがあると思うのです。テーマとして興味があるので伺うのですが、このようなボ ランティア活動や、ある意味無償のサービスをやることが結果として本業にプラスになっていると言う印象はお持ち ですか。 小田理事長 只今ご紹介に預かりました蒲郡青年会議所の小田と申します。田坂先生の言葉を借りるのであれば共感資本がものす ごく今回の事例は働いたのだと思います。やはりアレルギーを持つお子様を抱える保護者の方は、やはり理解を周り が示してくれない。そのようなことを共感して頂くことに対して企業や青年会議所メンバーが率先して穴埋めをして いく。そこからやはり、信頼資本に広がって、その信頼が口コミで広がっていく。あそこの会社はこのような事をやっ てくれる。信頼がうまれ、そこから会社へプラスにフィードバックしてくるものであると今回の事例は思います。 田坂氏 今、皆さん聞かれたと思いますが、共感資本と信頼資本。この考え方はもうちょっと後に説明したいと思いますが、小 田さんはそこを戦略的にしっかりと見据えておられたわけです。ボランタリーに色々な提供をする。しかし、それは 結果として共感資本を増やし、信頼資本を増やし、結果として本業にも戻ってくると言う事を仰っています。 岡田さん、共感資本と言うあたりは岡田さんもよく口にする言葉だと思うのですがいかがでしょうか。 岡田氏 サッカークラブとは売るものがありません。夢や勇気など、そのようなものしか売れないのです。物質的なものがな いと、結局みんなが我々の事を信頼して見に来てくれるか、共感して見に来てくれるかと言う所に関わる訳です。な ので、スポンサーさんにも私は共感スポンサーと呼んでいるのです。露出を出して、新聞に出る事やテレビに出事な どを計算するのではなく、我々の夢に共感して、一緒にこの社会を変えていきませんかと言うようなアプローチをし ているのです。 田坂氏 私も横で拝見していて、岡田さんのFC今治は日本中から、地域からの共感を得られていながら何か一つの事業を動 かしているなと言う所があります。小田さんどうもありがとうございました。また、会場の方と色々と意見交換をし て下さい。 時間も少しおしていますので次の事例に移ります。このVSOP運動と言うのは日本青年会議所が今ものすごい勢い でなさっていますが、賛同組織として、このVSOPの理念に共感してくださっている組織がいくつか存在します。 その一つの公益資本主義推進協議会が今進めているVSOP運動の事例を紹介したいと思います。 【事例紹介2映像】 田坂氏 これは公益資本主義推進協議会の宮城県にある企業の取り組みです。先ほどの取り組みと少し違うのが本業そのもの と言うよりも、そこのすぐ横の所にやはり子供たちに何か素晴らしい未来を拓けないかと言う志からスタートしてい る事業であると思います。実は今日この公益資本主義推進協議会の会長の大久保秀夫さんにお忙しい中、会場に来て 頂いているので大久保さんに是非登壇して頂きたいと思います。 大久保さんお忙しい中ありがとうございます。素晴らしい公益資本主義推進協議会の活動をされている訳ですが、先 程の事例と言うよりもむしろ公益資本主義推進協議会の考え方についてもこの場でご紹介いただければと思います。 大久保氏 公益資本主義推進協議会と言うのは今の世の中と言うのは、田坂先生からありましたように経済性が一番大事だと言 う事で、儲ける事が全て。即ち、人も物も商品もサービスも全て手段になっている事で色々な社会運動が起きている と思いますが、やはり組織とは本当は社会性が一番であり、次に欲物性を持ち、最終的に経済である考えで、いわゆる 社会に対する貢献の結果なのだと思います。そのような考え方をもう一度元に戻さないと、私は大変な世の中になっ てしまうのではないかと考え、昔の武士道の教えから公益性をもって世の中に尽くしていくと言う考え方を持った日 本型経済資本主義をもう一度皆様と共に実行しようとしてつくった資本主義の会です。これはVSOPの考え方に非 常に共通点が多く、今回是非と言う事で参加をさせて頂き広げていこうと思いました。 田坂氏 今、公益資本主義推進協議会は全国でどれくらいの支部や活動がなされているのですか。 大久保氏 現在、東北、東京、中部、関西、中四国、九州の6地域で約1000社近い経営者を集めて、昨年からスタートしてお り、今回賛同して動き始めたと言う状況です。 田坂氏 1000社がこのような資本主義の変革と言う志に共感して集まられている訳ですね。山本会頭が新しい資本主義と 言う事を京都会議でも宣言されたのですが、やはりこの志は全く一つのベクトルと言う感じです。 岡田さんに公益資本主義推進協議会の活動について一言お願いします。 岡田氏 私は大久保さんとお会いする前に本を何冊か読んでいました。やはりこのような事を考えている人がおられることに 当たり前の話なのですが、私が一人で考えている事ではないと思いました。是非お会いしたいと思っていた所、田坂 さんに紹介して頂き、本当に光栄に思います。やはり、実際に一流企業を経営してきた方が、このような事を仰ってお り、私はまだスタートアップでいつ潰れるか分からない会社なので、成功してきた方が実績に残すと言う事はものす ごく影響力があり、素晴らしいことだと思っています。 田坂氏 今、岡田さんが非常に重要な点を指摘いただいたと思うのですが、大久保さんはある意味では従来のグローバル資本 主義的な目で見ても相当な成功を遂げている方だと思うのです。上場企業でも記録をつくられました。そのように成 功した方が今の資本主義がおかしいと堂々と仰っており、その志に共感して1000社集まりました。もう一言何か 頂ければと思います。 大久保氏 資本主義と言うよりも、どのように動いてみんなが幸せにならなくてはいけないのか、しかもその為に価値を生まな くてはいけない。ところが今の資本主義と言うのは価値を生まない資本主義になってしまったのです。即ち金融資本 主義になってしまったと言う事。これが私は大きな問題だと言う事と同時に、その結果一部の人にだけ富が行き多く の人が富のない状態になってしまいました。これは、誰かが待ったをしなければ、本来中間層を増やすような、社会全 体を幸せにするような形に持って行くべきであり、資本主義が前まであったところになってしまいますので、違うと 言う事をもう一度気付いて頂くためには、この運動を広げることが必要だと思うのです。VSOP運動はたった一日 でも自分の本業に対して誇りを持つ事で、社員の自覚にもつながり、結果として実行した企業にとっては採用にもつ ながるのです。今アメリカのニューズウィークの人気ランキングベスト100社を見ると、上位には圧倒的にNPO、 NGOが入っています。若い学生たちも価値観そのものを変わり始めている事であり、私はまだまだ可能性があると 強く感じております。その為にはこの運動を日本だけではなくてアジア、世界にも広げていく事が社員の意識を変え ることにも繋がるのではないかと期待しています。 田坂氏 今、アジア、世界にと言う言葉について、日本青年会議所は正面から受け止められた方がいいと思います。日本青年会 議所は勿論世界中にある青年会議所と一緒に歩んでおり、その中でも最大の組織なので、志は堂々とアジア、世界の 人たちを変えるその辺りに腹を据えてもいいかと思うのです。大久保さんにはこの後のセッションも残って頂きコメ ントを頂きたいと思います。 それでは3番目の事例紹介です。これは単独一社ではなくて異業種が共同してVSOP運動を行った例です。 【事例紹介3映像】 田坂氏 この活動は愛知ブロック協議会全体で取り組んでいるのです。今日は愛知ブロック協議会の横山会長が来られている ので、後でコメントを頂きたいと思います。この後、岡田さんと大久保さんのコメントを聞いて頂けると思いますが、 岡田さんこのテーマについていかがでしょうか。 岡田氏 これはVSOPの典型的な活動だと思うのですが、結局このように地域の人がみんなで何かを始めると言う事は地方 創生の第一歩になると思うのです。我々が今、目の前で色々なことをしていますが、自分たちだけでは絶対に出来な い。しかし、色々な人たちを巻き込んできたときに何が起こると言うと、面白そうと言って人が集まってくる。そし て、それを見て今度、仲間を連れてくる人が出てくる。このような活動をしていると、外から人が集まってくるので す。実は昨日も一人弊社に入りたいと、ある有名なコンサルを辞めて給与が1/3になってもいいからって今治に来 ました。何で来たのかと聞いてみると、私が大会社の会議や臨時など行っても中々決まらない事ばかり。しかし、今治 を見ていると次から次へとトントン色々な事が進んでいくのです。そのスピード感が何か面白そうだと思い、とにか く今治に行ってみたいと言って来ました。そのような人がこの活動をすることで人は集まってくると思うのです。こ れは素晴らしく面白いと思いました。 田坂氏 異業種が結びつくことの強みを仰って頂いたのですが、この辺はまた後でコメント頂きたいと思います。大久保さん はいかがでしょう。 大久保氏 新しい形の独立産業化を感じました。食と言うのは未来にとって大切な事だと思うのです。食をベースに組みながら このような運動を起こすことで、これからは誰と組むべきなのか考えると思うのです。正面においては地域創生の一 つの在り方を示した素晴らしい内容だったと非常に強く感動しました。 田坂氏 横山さん今二人のコメント聞いて何かコメントお願いします。 横山会長 愛知ブロック協議会は33の青年会議所が集まっているのですが、京都会議で素晴らしい日本を動かす可能性のある 運動だと思い、本当に33の青年会議所の皆さまに再度、私たちの意志を伝えながらお話をさせて頂きました。そし て、ありがたいことに140もの事例が集まっております。JCをしているとやはり企業で行っていることが、いつ の間にか誰かの為に何かをしたいと言う事と結びついて多くの方が既に実践されている事と思います。例えば、JC の役をやることでその思いがさらに飛躍をして企業などでやっている。それが今回東海青年会議所から上がった事例 でもあると思います。そうしたJCを通じたことが企業活動、そして地域や最終的には企業にも返ってくると多くの 形で感じております。 田坂氏 私自身ももう十何年前ですが、日本総合研究所にいた頃に異業種連合と言うのを随分やったのです。異業種が結びつ くとみなさん素晴らしい事がいっぱい起こります。例えばお互いの知恵を寄せ集められる。お互いのネットワークが 相乗効果できる。やはり、社会的信頼が増す。こう言う効果と言うのはしっかり見据えて、VSOP単独でも面白いで すけれど、出来ればこの異業種で今の事例など参考にしながら、是非異業種をテーマにもやって頂ければと思います。 場合によって市役所とか行政など巻き込んでやってもさらに面白い。そう言う意味で愛知は一番VSOPを活動して 頂いていると言う事もあります。皆さん横山さんに盛大な拍手を送って頂ければと思います。 田坂氏 ここでもう一つ賛同組織がございまして、公益資本主義推進協議会とは少し違うタイプの組織なのですが、リバース プロジェクト。ご存知の代表は、吉田松陰を演じた伊勢谷友介さんです。俳優の伊勢谷祐介さんが代表を務められて いるリバースプロジェクトの活動があるのですが、伊勢谷友介さんから撮影の合間にビデオメッセージを作って頂き 届いておりますので、ビデオメッセージを是非流してください。 【伊勢谷友介氏映像】 田坂氏 伊勢谷さんメッセージですが雑音が多くて恐縮なのですけれど、伊勢谷さんには忙しい撮影の合間に髭を付けたまま 出てこられてメッセージを頂きました。伊勢谷さんの事ご存知方多いと思いますが、俳優家業だけではなく、地域お こしについてリバースプロジェクトではかなり全国で色々な事をなさっているのです。今ビデオで紹介しましたが、 富士吉田の辺りでも地域起こしをやっているのです。確か富士五湖青年会議所と一緒にやっていると言うお話でした。 今日富士五湖青年会議所の長田理事長がいらっしゃると思います。 長田さん、私の知る限りなので違っていたら教えて欲しいのですが、一つは商店街の地域活性化で面白いことをして いますね。居酒屋通りをもう一度復活させようと言う事で屋台村の丸三角四角。私もオープニングに呼ばれましたが、 そのようなものをリバースプロジェクトの斉藤さんと一緒に立ち上げたりしていますね。それ以外にも私副理事長の 滝口さんがご自身のカフェを使って子供食堂なんてやっていますね。そう言う意味では一家の団欒のない子供たちが 結構いる時代において、子供たちが集まってみんなで食事をしようと富士五湖青年会議所もしています。長田さん。 富士五湖青年会議所はこんなこともやっている。もしくはこんな思いでやっている。と、一言頂ければと思います。 長田理事長 田坂先生におかれましては平素より富士五湖青年会議所の活動に深い理解とご協力を頂きこの場を借りで感謝申し上 げます。今うちのメンバーのカフェを使って子供食堂をやらせてもらっています。少しずつ地域の人たちに浸透して きており、地域のメディアなど取材も増えてきました。その運動が子供たちを集めて、本当にいい流れになっている と思います。そして、富士五湖青年会議所ではVSOP運動と言うのを地域の方々と協力しながら運動の展開をさせ て頂いています。9月に55社ほどこのVSOPと言うものを伝えながら広げて行きたいと思っております。 田坂氏 それでは富士五湖青年会議所の長田さんに盛大な拍手を頂ければと思います。 ここからは少しフリーディスカッションとして、岡田さんと大久保さんのお話を伺いたいと思います。既に3つ4つ の事例を紹介した後なので、もう少しVSOP運動の原点と言うような部分でも結構ですが、岡田さんからまず口を 切って頂ければと思います。もちろん今治の話でも結構です。 岡田氏 僕は、学生ではないので学問的にどうなのか。とか、実績もないので自分のやっている事しか言えないのですが、伊勢 谷さんも働き方と仰っていました。アウフヘーベンと言う意味を概念はしていたのですけれど、先程、田坂さんの話 を聞いてやっと分かりました。アウフヘーベンとは矛盾するものは一つくらいにしか思っていなかったのですが、や はり経営をしていたら当然利益を出さなくてはいけない。しかし、社員に残業として夜中まで頑張って頂きながらも、 かなりブラックに近いのでそれはさせたくない。しかし、潰れたら元も子もない。ものすごいその矛盾の中で悩んで いました。うちは先程申し上げたように売るものがない。しかし、お客様に来てもらいたい。何とかホームの試合を満 杯にしよう。頑張って車にポスターを貼り、やはり告知だけでは駄目だと思い、熱を伝えて行く。熱を伝えていかなけ れば人は動かない。みんなでビラを配ろうと配布しました。色々な事をしました。そうしたら開幕戦が2000人満 杯になったのです。続いて残り2試合も満杯にしようとまた頑張りました。そうしたら大雨が降ったのです。次の試 合は900人。では次の試合こそ。そして、また大雨が降ったのです。890人。色々なやれることを全てやったけど 駄目でした。これは雨が降ったら900人しか入らないと言うのは私たちの力でした。では、ここからどのようにす ればよいのかみんなで話し合いました。そして考えたのが、私たちは認めてもらう事、熱を伝える事、認知してもらお うと色んな事をやったのですが、私たち自身がまちに出て行ってない。まちの人に溶け込んでいないのではないか。 FC今治だけで会議して、FC今治だけで夜中まで仕事して、FC今治だけで飯食って、一年間今治にいて友達何人 できたのか考えると一人もいないのです。遅くまで、夜遅くまで頑張って色々な事をするのも大事ですが、8時で全 員切り上げよう。それからまちに出て、フットサルのグループに入ったり、もしくはまちのグループに入ったり、誰か と飯食ったり、友達をつくろう。友達作戦というのをやりました。一か月以内に5人つくらなければ罰金一人につき 一万円と言うのを行いました。実はそれが夜中まで働くこと以上に、お前の試合見に行ってやるよ。友達連れて行っ てやるよ。など、こうして業績に繋がってきました。実は私たちは頑張って夜中まで働いていることではなく、まちに 出たほうが影響的にいいのではないかと言う結論に達したのです。そう言う意味ではVSOPと言うのは何も投資す るのではなく、さっき仰っていたように信頼と言うものが戻ってくる。そう言うものなのではないかと思います。 田坂氏 先程申し上げた岡田さんのNHKの放映されたネクストを私も拝見していて、本当に岡田さんが雨の後来てくれた9 00名くらいのお客様に駆け寄って一人ひとり心を込めて握手をする。私は、やはり地域一体となって何かをすると 言うのは、そのような所から始まる話なのだと改めて教えてもらった気がするのです。会場にいらっしゃる方は是非、 今の岡田さんの話をもう一回噛みしめて頂きたいと思います。岡田さんのようにネームバリューのある方でも、実績 のある方でも一つの企業、一つの地域でそこに大きな動きをつけて行こうと思えば、現場での悪戦苦闘から始まるの だと言う事を私自身も教えて頂いたような気がします。大久保さんからもVSOP運動についてコメントお願いしま す。 大久保氏 企業とか社会性だとかありましたが、これは事実その通りなのだと言う事を多くの方に知らせないと、若い方々が何 か仕事で働くことについて斜めに見ていることが多いのです。仕事と言うのは本当に社会に対して貢献できて素晴ら しいことなのだ。と、知らせる事をしなくてはいけないと思い、今PICCの中においてマイコミュニティと言うも のをつくりました。これはニュースキャスターをしている村尾さんと言う方と大島さんと国土交通省の舘審議官と私 と一緒になって日本全国の地域活性学会って各大学にあるのですが、そこと組んで各地域で一生懸命地域を活性化し ようと言うNPOさんなど色々な方がいらっしゃるのです。まだまだ力が強くない。そう言う所にどんどん入り込ん でいき、大学と私たちとそして、行っているNPOの方と一体になって彼らの活動を分かっていこうとするのです。 これによって若い方が自分たちで変えられる。働くとは凄いことなのだ。と実感してもらう事が第一歩になるのでは ないかと思い、このPIUCCの中で運動を始めるのです。これがVSOP運動に繋がっていく事だと思っています。 ここにいらっしゃる皆様は色々な角度で働くと言う事は本当にすごいことなのだと。社会に役立つのだと言う事を 色々な角度から実践していくと言う事によって、これから先の若い方から地球を預かっているのだと先程話ありまし たが、その方々に対してやはり示していく必要があるのではないかと思います。 田坂氏 本当はこの後にもお二人の方に時間かけて伺いたい。そして、もう一つ全国890と言われるVSOP運動をもっと 紹介させて頂きたいのですが、時間に限りがございます。先ほどのいくつかの事例を通じて何かをつかんで頂ければ と思います。また、この後の交流でもお互い学び合って頂きたいと思うのです。最後にお二人から伺いたいのは、青年 会議所は40歳までのある意味青年経済人が活躍されている場ですが、二人の経済人としての先輩でもあり、社会人 としての先輩からエールを頂きたいと思います。日本青年会議所に何を期待するか、VSOP、資本主義の変革、民間 防衛力、色々なことを掲げ素晴らしいルネッサンスを迎えられている青年会議所です。お二人の先輩から最後に一言 ずつエールを頂ければと思います。 岡田氏 青年会議所の皆さん。皆さんの未来です。皆さんの時代です。それを決めるのはやはり皆さんであるべきです。自分た ちの将来を自分たちで決めていく覚悟をもってもらいたい。僕は一人の父親として三人の子供の将来を、僕は最高の 時代を生きてきました。高度成長、戦争のない、そして子供に1000兆円の財政赤字、年金危機、隣国との緊張、環 境破壊、本当にこれでいいのでしょうか。言葉に対する思いで色々な活動をしています。野外体験活動、 、FC今治も 一緒です。しかし、一番大事なのは皆さん自身が自分の未来をどうするか、自分の未来と社会をどうするか、覚悟をも って決め、行動する事だと思います。是非真剣に考えて頂きたいと思います。 大久保氏 今日は本当に素晴らしい機会をありがとうございました。皆さんの行動に対して心から敬意を表したいと思っていま す。是非、皆さんは中小企業の方が大半だと思いますので、先程あった企業の社会性を大前提に行動をして頂きたい と思います。まずは納税によって日本社会を支えていかないとこの国が駄目になってしまいます。是非、ブラック企 業でなくて社会性を持った中での労働経営でしっかりと納税をして頂きたいと同時に声を社員に安心して発信し、将 来結婚し、子供を産めるようにしておかないと増々少子化が進んでいきます。是非今日の責任は納税、明日の責任は 雇用。私たちのミッションは社会に対する貢献だと言う事をしっかりJCの皆さんにやってもう事によって、世界5 0億人全ての方が同じ方向性を向き、中国であれば国家資本主義でもない。私たちの持っている公益性をもって資本 主義を皆さんに学んでもらうべく、日本がその核になってもらいたいと思っています。その核となるのがこのJCの 皆さんではないかと私は思っております。是非日本の未来に羅針盤となる道しるべとして、これをアジア、世界に広 げて行って頂きたいと期待して一言御礼に代えさせて頂きたいと思います。 田坂氏 皆さんお二人のメッセージが全てだと思うのですが敢えて一言申し上げます。二人共もう年齢で言えば皆さんの大先 輩です。私は思うのです。お二人とももうオーナーになったと言う立場で失言かと思いますが隠居してもいい実績も あり、このように年齢に達した方が、やはり今の日本の資本主義を変えなくてはならなければいけない。日本の地域 を変えていかなくてはいけない。やはり企業の在り方を変えていかなくてはいけない。と仰っており、ご自身が悪戦 苦闘しながら、今目の前の現実と格闘しているということ。このことだけはこの会場の皆さんに正面から受け止めて 頂きたいのです。私、青年会議所の皆さんは本当に素晴らしい方々がいらっしゃると思うのですが40歳で卒業して からが本当は皆さんの試練の道が始まるのだ。そのことをまたこの二人の先輩は教えてくれているような気がするの です。そのことを最後に申し上げてこのセッションの締めくくりとさせて頂きたいと思います。最後に本当に貴重な 時間を割いて来て頂いた岡田さん、大久保さんに会場から盛大な拍手を頂きたいと思います。 第二部 田坂氏講演 それでは、サマーコンファレンス2016の全体総括を兼ねて少しばかり話をさせて頂きたいと思います。まず、 先程までのセッションで私は全て私が伝えるべきことを皆様に伝えたと思うのですが、敢えて最後のセッションなの でいくつかの事を申し上げたいと思います。 まず、このVSOP運動と呼ばれるもの。今、みなさん素晴らしい運動を進められていると思うのですけれど、これ は日本青年会議所と言う組織の素晴らしさです。敢えて申し上げますが、日本青年会議所と言うのは単に理念とかビ ジョンとかを掲げるだけの集団ではないのだと。言うまでもなく現実を変革するために行動をする集団なのだと、ま さにこのVSOP運動の中で示して頂いているのだと思うのです。今の時代、世の中には色々な社会はこうあるべき だと言う語る組織は沢山あります。ビジョンを語る研究所もあります。でも、今一番大切なのは、この目の前の現実を 1ミリでいいから変えようと思って行動に立ち上がる人間だと思うのです。その意味で日本青年会議所と言うのはも とより、そう言うしっかりとした行動する集団としての思いは持ち続けている組織ですが、ある意味でこのVSOP 運動を通じて皆さん新しいルネッサンスの時代を切り拓こうとされているのだと思うのです。 思い起こせば京都会議で山本会頭が新しい資本主義の確立と言う事を仰っていた訳です。新しい資本主義の確立と 言うのは、単なる理念を仰っている訳ではない。今日会場にいらっしゃる、そして、全国津々浦々の日本青年会議所の メンバーの方々、青年経済人と呼ばれる方々が自らの足元で日々の仕事を通じて新たな経営を確立することを武器に して、新しい資本主義の確立などできようがない訳です。資本主義と言うのは経済学者がこう言う資本主義だと言っ てやってくるものではない。まさに、その資本主義の具体的な表れが日々の目の前の企業であり、商店であり、経営で ある限り、その現場で新しい資本主義の在り方、新しい経営の在り方が実践されることがなければそれは単なるお題 目にしか過ぎない。ある意味でこのVSOP運動と言うのは、まさに日々の目の前の仕事を通じて先程会場で立って いただいた理事長の方々とその仲間の方々、そして、立っていただくことはありませんでしたが、890がすでに生 まれている、VSOP運動に取り組まれている企業の方々、メンバーの方々。目の前の現実と格闘しながら経営の在 り方、資本主義の在り方を変革しようとしているのだと思うのです。 そして、山本会頭がもう一つ描かれた共感経済社会と言う事。これもまた素晴らしい理念ですが、この理念を本当 に実現しようと思えば、先ほどもありました共感資本と言う事を仰っていたのです。信頼資本と言うものもある。こ の目に見えない資本と言うものを現実に悪戦苦闘しながら、その増やしていく、我が物としていくと言う活動をしな い限り共感経済社会と言うものが生まれようがないのです。繰り返しになりますが、学者的な立場でどれだけ沢山の 本を書いてみても、どれだけ評論的なこと言ってみても世の中変わる訳ではない。皆さん思い起こしてみて下さい。 皆さんの経営の現場で、今皆さんどれほどの知識資本、そして関係資本、信頼資本、評判資本、そして、文化資本と呼 ばれるものを持っているのか、皆さんその事を思いながら全国各地に戻って頂きたいのです。今うちの会社は、確か に利益は上がっている。貨幣資本と言う意味ではかなり儲かっている。しかし、何か最近社員の目の色が暗い。もしか したら文化資本が下がっているのかもしれない。最近お客さんとの結びつきが何か変な結びつきになっている、離れ ている。これはもしかしたら関係資本が崩れているのかもしれない。昔から、例えば法律さえ外さなければと言う企 業はなかったのです。世間様が見ていると言う事があった。今、世の中の方々が我が社を見つめる目、我が商店を見つ める目は温かいものがあるとすれば、これは評判資本が高まっていると言う事です。この目に見えない価値や資本と 言うものを大切にする経営と言うものを皆さんが実践されたときに初めてそこに新たな経営が生まれてくる。同時に 新たな共感経済社会と呼ばれるものが生まれてくるのだと言う事を付け加えておきたいと思うのです。 その意味でVSOP運動と言うのは具体的には、この日本青年会議所の一人ひとりのメンバーの方々が本業を通じ ての社会貢献と言う事をどれほど真剣に考え、VSOP運動のような形で実践していかれるか。そして、異業種が結 びつくと言う事は実はお互い目に見えない資本の交換が生まれ、エナジーが生まれると言う事です。そのような取り 組みをしているか。そして、先程岡田さんが仰っていたように地域の方々と本当に共感するような場をつくっている のか。よく地域興しと言う言葉を簡単に口にする方が多いですけれど、本当は地域興しと言う言葉は、先程のセッシ ョンの最後に岡田さんの体験からくる言葉がありました。やはり共感と言うのは、まさに雨の中駆けていってそのお 客様と手を握り合いながら感謝をする。例えばそう言う事から始まる現実的な行動を我々が本当にとっているのだろ うか。地域興しと言うのは間違っても国が地方創生と言って予算をばら撒けば起こるものではないと言う事は、もう 何十年の歴史の中で我々がしみじみと感じてきたこと。それはむしろ皆さんのような青年経済人がその地域の片隅で 目に見えない資本をお互いの信頼、地元の方々の知恵、そして評判、文化、共感と言うものを広めていく。コツコツと した営みの中でしかその地域が活性化することはないのだと先程のセッションで教えて頂いたと思うのです。 そして、このアウフヘーベンと言う事はまさに利益追求と言う事と社会貢献と言う事が全く矛盾していないのだと 申し上げたのですが、本業と通じての社会貢献目に見えない価値を大切にする経営、そして矛盾するかに見える事を そうではない。二つにして一つだと腹を据えて取り組むその経営が生まれてくること。これが新たな資本主義であり、 そして新たな経営が生まれてくることの意味であると言う事を申し上げておきたいと思うのです。そして、そのこと を申し上げると必ず付け加えて皆さんに申し上げたいことがあるのです。先ほどから議論している新たな資本主義と はいったい何なのか、新たな経営とはいったい何なのか、実はそれは、既に我々がこの日本と言う国には昔からずっ と、たった一つの資本主義論、経営論ではないのか。日本型資本主義と先程申し上げました。日本型資本主義の三つの 言葉でも何度噛みしめてみても味わいつくせないくらいの言葉です。企業は本業を通じて社会に貢献をする。利益と は社会に貢献した事の証である。企業が多くの利益を得たと言う事はその利益を使って更なる社会貢献をしてくれと 言う世の声だ。この三つの言葉だけでも本当に十分なくらい日本型経営なのです。日本型資本主義と言うものが素晴 らしい深みのある思想、精神を持っていたのではないか。そうであるならば、皆さんは今一度先人たちが作り上げて きたこの日本に永遠と伝わってきている日本型資本主義、日本型精神の素晴らしい原点を見つめ直して頂きたいと思 います。そして、私は深く信じる者の一人ですが、この日本型経営の復活、日本型資本主義の復活。目に見えない価値 を大切にする。そして、津々浦々の企業が世のため人の為と思って活動するような社会それを本当に作ることが出来 たらそれこそが本当の意味での地方の創生であり、日本と言う国の復活ではないのか。この日本と言う国の再生復活 と言う事は多くの方々が語られるけれどもそれを本当に実践しようとするならば、もう一度申し上げる。皆さんどな たもこの会場にいらっしゃる方、一つの企業の幹部であったり、経営者であったり、職場のリーダーであったりする 方々ばかりであるならば、皆さんその目の前の職場がまさに日本型経営が大切にしてきたような、その深みのある職 場、その文化、その精神、それを復活した時に実はこの国は本当の復活を遂げるのであるのではないかと言う事を申 し上げておきたいと思います。 民間防衛力と言う事も実はそう言う中で語られること。例えば自立と言う事を大切に語ることを必要でしょう。し かし、一方で本当に今この国は弱き人々である。その自立と言われても立てないくらい本当に大変な立場に立たれて いる人たちに手を差し伸べるような優しさを持っている国なのか。この自立と言う事も大切。でもやはり、みんなで 助け合うと言うこの大切さ。二つにして一つです。こう言う事を本当に実践していけるのは、繰り返しになりますけ れど日本青年会議所だと思います。であるならば、この民間防衛力の根本にある民間の力とはいったい何なのか。私 はそろそろこの国が何かをしてくれる、お上が何かをしてくれるとした思想はもう超えていくべき時代が来たと思い ます。そうでない限りこの国の復活はない。いや、裏返して言えば、この国の復活と言うのはこの日本青年会議所皆さ んのような若い青年経済人と言う方々がどのような実践を、どのような経営を、どのような地域の取り組みに向かわ れるかによって、この未来は大きく変わっていくのだと言う事を申し上げたいと思います。 そして、最後に申し上げたいのは、この国を変えていくのは誰か。この当たり前の事をもう一度我々、私のような年 配のような人間でも同じことを心に刻むべきなのだと思います。どこか昔からこの国は政治一つを見ても劇場型政治 と呼ばれ、観客型民主主義と呼ばれる。誰かいいリーダーが出てきたら面白い。最近も何か劇場型のような姿がどこ かにあるような気もしますけれど、どこか面白い政治家が出てきたらこの人を応援しよう。じっくり見させてもらお うと言う観客型民主主義、劇場型政治と言う時代はとうの昔に終わるべきではないでしょうか。この国を変えてくれ るのは他の誰でもない我々一人ひとりなのだ。その当たり前の事に原点回帰しない限りこの国の未来はないと私は思 っています。私がしばしば引用する二極化のプレヒトの言葉があります。ブレヒトのガリレイの生涯と言う本の中に 二極の中に語られる言葉なのですが、私はやはりこの言葉は素晴らしい言葉だと思っています。英雄のいない国が不 幸なのではない。英雄を必要とする国が不幸なのだ。そうではないでしょうか。今もまだこの国は英雄待望論。凄い政 治家が出てきたらこの国は変わるのに誰か出てこないのか。あんな政治家では駄目だ。この政治家はどうだ。期待し てやはり裏切られた。そんなことばかり繰り返されている時代はもう終止符を打つべきである。民間の我々一人ひと りがこの国を変えると言って立ち上がるときにこの国を変えるのは他の誰でもない、自分なのだと思って立ち上がる ときに素晴らしい何かが始まるのです。古いスピーチになりますけれど、あのケネディが大統領就任演説で語ったあ の言葉は今も生きている。諸君、国家が君たちの為に何がなしうるかを問うことなかれ。君たちが国家の為に何をな しうるかを問いたまえ。1960年代の初頭に飾られたそのスピーチですけれど、今でもなお、真実ではないでしょ うか。国がああだ、こうだ。勿論この国も行政も政治も変革しなければならない。やはり、我々一人ひとりがこの国を どのようにして変えられるか、そしてこの国にどのように貢献できるのかと言う事を問うときに素晴らしい物語が始 まるのだろうと思います。 そしてこの国を変えていくのは、私のような60を超えたような人間も、先程壇上に上がって頂いたお二人も命尽 きるまでこの国を変えると言う思いで、その覚悟を先程のセッションで十分皆さん伝わったのではないですか。もう 十分に隠居をされてもおかしくない方がやはり地域に入って、この資本主義を変えると言って悪戦苦闘されている。 勿論語り口調はさわやかですけれど、その悪戦苦闘されている姿があるのです。皆さんまだ40歳前です。若き未来 のある青年経済人の方々に申し上げたい。日本には素晴らしい言葉がある。命尽きるまで。そうではないですか。山本 会頭がよく語られる言葉に使命と書いて命を使うと読む。そうではないですか。皆さん40前のまだ若い方々ばかり ですけれども、いずれ一瞬の人生ではないですか。100年長生きしても一瞬の人生を我々は駆け抜けていく。だと したらその人生、その命。何に使うか。その覚悟を山本会頭就任の時のスピーチから始まって語られている。私もその お考えには全く深く共感する。65歳を迎えても自分に与えられた命、あと何年与えられているか分からない。でも この命、何に使うかその使命感を持って命尽きるまで生きるようこれが日本と言う国に伝わってきている素晴らしい 精神であり、文化ではないのか。そしてそれを体現されるのは皆さんのような若い方々。まだ何十年の人生を生きら れるとしたら、その長き人生を、何に捧げて歩まれるのでしょうか。青年会議所は卒業されてからが、実は皆さんの本 当の使命の道が始まると言う事も改めて、そして敢えて申し上げておきたいと思います。この国を変えていくのは皆 さん一人ひとり。いまこのVSOP運動と言う形で全国津々浦々からこの国の変革に高き志を抱き、地域に根差し、 足元の経営を通じてこの国を変えていこうと運動が始まっています。その皆さんの運動、そこまでも尊い運動だと思 います。 私は日本に伝わるもう一つの素晴らしい言葉を最後に申し上げておきたい。伝教大師、最澄の言葉です。一隅を照 らすこれ国の宝なり。そうだと思いませんか。大企業が崩壊しているから立派な仕事をしているわけではない。今大 企業でどのような不祥事が起こっているか。それは皆さんがよくご存じではないか。企業の大きさではないのです。 今、目の前の職場、企業、商店、その地域、その一隅に思いを込め、光を届けようとするその姿。尊い姿ではないです か。そして、日本と言う国はその一隅を照らす光と言うものを深く見つめる力のある国です。そして、今の時代は素晴 らしい時代。その一隅を照らす光がふと気が付けば日本中を、時に世界中を照らす光になるような、その可能性に満 ち溢れた時代でもある。そのことも付け加えておきたいと思います。今、会場にいる方々がその地域で初めの一つの 運動が、その企業の在り方が、もしかしたらその地域に広がり、日本に広がり、時に世界に広がる可能性があるのだと 言う事も40前の若き青年経済人の方々にはお伝えしておきたいと思います。いや、この65歳になるこの人間でも、 自分のこのささやかな光がもしかして多くの人々に届くのではないかと言うその祈りをもって生きていると言う事も 付け加えておきたいと思います。 皆さんこの日本青年会議所と言う素晴らしい場に縁を得られて、ここに集われている。このご縁の深さ、そして、皆 さん深い思い、深い志、深い使命感があるからこそ今日この場に集われているのではないですか。そして、日本青年会 議所と言うこの素晴らしい人々の中に身を投じられたのではないですか。であるならば40歳にして卒業する時、自 分の選択は間違っていなかった。そしてこの何年間かの歩みの中で自分は多くの事を学んだ。鍛えられた。その思い をもって卒業の日を迎えて頂きたい。そして、先程から申し上げたように、何度も申し上げたように、その日から皆さ んの本当の使命の道、ライフワークの道が始まるのだと言う事も付け加えておきたいと思います。40にして惑わず。 その時には惑うことなき信念をもって、この日本と言う国の変革に、社会の変革に取り組んでいただきたい。そのこ とを最後に申し上げて私の総括の挨拶とさせて頂きたいと思います。皆さんこの素晴らしいこのご縁、改めて感謝を 申し上げたいと思います。ありがとうございます。
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