展着剤について

展着剤って何だろう?
作物の表面には殆どの場合、ワックスがあります。簡単に言えば「ロウ」です。このため散布液は葉や茎の上で
はじかれそうになっています。ワックスばかりでなく、植物表面に生えている細かい毛や虫の体毛なども散布液
をはじく性質があります。
はじかれた液はたいていの場合、「表面張力」によってコロンと球状に丸まってしまい、更に付着性や拡展性を
失ってしまいます。 葉面上のワックスと馴染み、
散布液の表面張力を下げて、丸まらずに作物
表面に広げるために使うのが「展着剤」ですが、
濡れかたを改善するので、業界では「濡れ剤」と
もいいます。(ちょっとエロチックな感じですね)
一般的には、農薬散布液に加用し防除効果の
汎用性D展着剤×5000
まくぴか
×5000
安定を図る剤で、作物に対しては濡れ性・付着
性の向上を、散布液に対しては分散性・混用性の向上を図るものと言えます。農薬登録が当然必要で、成
分は「界面活性剤」が主体です。
「界面」とは水と空気、水と油、空気とガラス等の様に、気体・液体・固体のうち二つの境界を言います。ビー
カーに水と油を入れてかき混ぜても、しばらくすると上に油、下に水と界面を境に二相を形成します。そこに石
鹸水を混入すると、水と油が馴染みあって乳濁状の溶液に変わりますが、この様に二物質間の界面に作用し
て界面の性質を変える物質を界面活性剤と呼びます。
親水性部分
親油性部分
上のマッチ棒のような図が界面活性剤のモデルです。マッチの軸の部分が油や溶剤やワックス等と相性がよ
く、頭の部分が水と仲がよい性質があります。つまり水と油の仲立ちをするのです。
極端に言うと、展着剤を加用された散布液は上図の棒状の部分が葉面のワックスと、丸状の部分が散布液
と馴染もうと引っ張りあうため、表面張力が緩んで平べったい液体になって付着性や拡展性が高まるのです。
界面活性剤には乳化のために乳剤で使われる乳化剤、洗濯物を柔らかくする柔軟材、水和剤に使われる分
散剤など色々ありますが、親油性の棒状の部分に使用する成分によって表面張力を下げる度合いが異なっ
てきます。
展着剤にもいろいろあるけど・・・
道内では約 15 種類ほどの展着剤が販売されていていますが、大きく分類すると次の 3 つになります。
【一般展着剤】
上で説明した原理のものです。英語では spreader(スプレッダー)といい、まさに「広げるもの」という意味です。
各社からたくさん出ています。当社の製品ではグラミンSがこれです。
【機能性展着剤】
一般展着剤より積極的に、作物に「しみこませる効果」や、病原菌・害虫の細胞などの標的部分によく付くよう
に開発された展着剤が相当します。英語で adjuvant(アジュバント)と呼ばれ、「補助薬」の意味があります。
一般展着剤より濃い目で使われることも特徴です。しみこませるタイプではアプローチ BI、スカッシュなどがあり
ます。病原菌や害虫の細胞膜が電気的に-(マイナス)であることを利用して、+(プラス)の性質の界面活
性剤を使い、防除効果をより高めるタイプの展着剤もあります。ニーズがこのタイプです。
【その他の展着剤】
作物に固着させるタイプのもの、またアロン A のように粘度を高めて散布液滴を大きくする、空中散布専用の
ものもあります。
展着剤の効果を最大限に引き出すには、農薬や散布する作物の性質や状況を把握することが重要で、展着
剤を入れすぎると逆に付着性が落ちてしまう事があります。
また、農薬との混用順は一般的には界面活性剤の含有量が多い、下記の順に入れるのが望ましいです。
展着剤→乳剤→液剤→フロアブル→水和剤
(2007年2月 靖記)
参考文献
「クミアイ農薬総覧」
全国農業協同組合連合会