点眼薬と防腐剤 身体の中で最も鋭敏な臓器である眼に直接投与する点眼薬にはいくつか特性がありますが、 その一つに無菌であることがあります。しかし無菌状態で製造された点眼薬も、開封後に 使用を続けていくと微生物汚染の危険にさらされることとなります。このため点眼薬には 保存剤(防腐剤)を配合することが求められています。 現在、点眼薬に使われている防腐剤にはいくつか種類がありますが、その中で防腐剤とし て最も多く使われているのはベンザルコニウム塩化物という化合物になります。水溶性で、 低濃度で強く幅広い効力をもつことから繁用され、日本の点眼薬の約 6 割に使用されてい るといわれています。防腐剤と聞くと人体に悪影響があるのでは?と思う人もいると思い ます。しかし実際には防腐剤は人体に障害を認めない程度の濃度で含有されており、また 通常は点眼による刺激によって涙液の分泌が増量しさらに濃度が低下するため、悪影響は 少ないといわれています。 ですが点眼薬の長期使用やアレルギー体質など、障害を起こしやすい因子を有する人も増 えており、このような場合には防腐剤についても配慮が必要と考えられます。そこで最近 では防腐剤を含まない点眼薬も開発されています。主なものは以下の 2 つになります。 ① 一回使い切りのタイプ(ユニットドーズタイプ) 片眼または両眼に一回の点眼で使い捨てるため、汚染の心配はなく、防腐剤を必要としま せん。しかし値段が高い、点眼しにくい、かさばるなどの欠点もあります。 ② 容器を工夫したタイプ(防腐剤フリータイプ) 容器先端にフィルターを組み込み、二重容器とを組み合わせた複雑な構造で微生物の侵入 を防ぎます。従来の容器と変わらない外観ですが、一滴が出るのに少し時間がかかるよう です。 最後にコンタクトレンズとの関係について少し説明したいと思います。 点眼薬の成分には、コンタクトレンズに吸着されてレンズや眼に影響を与えるものがあり、 防腐剤もその一つです。コンタクトレンズに薬物が吸着され、蓄積、濃縮されることで薬 物との接触が多くなり、角結膜上皮障害が起こります。このため基本的には、コンタクト レンズは外して点眼し、その後は 5 分もしくはそれ以上時間をあけてからコンタクトレン ズを装着するようにします。なお防腐剤が含まれていないか、あるいは防腐剤+吸着防止 剤が入っているものでは、コンタクトレンズを装着したままで点眼できるのもあります。
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