フェアトレードカンパニー株式会社の分析 05W2115020G 西川 英一 1 Outline 1.フェアトレードカンパニー株式会社とは 2.フェアトレードとは 3.フェアトレードカンパニーを取り囲む仕組み 4.仕組みに対する分析 5.提案:生産者団体を垂直統合 6.フェアトレード商品の例 7.売上実績 8.フェアトレード商品が与える知覚便益 9.成長への戦略 10.まとめ 11.参考文献 2 1.フェアトレードカンパニー株式会社とは 業務内容 ・フェアトレード商品(衣料品、手工芸品、食品、日用雑貨等)の商品開発 および輸入・販売 ・全商品を「People Tree」のブランド名で販売 ・衣料品の分野でフェアトレード商品を開発 商品生産者取引先 ・IFATに加盟するアジア、アフリカ、南米の20ヶ国、約60団体 ※フェアトレードカンパニー株式会社もIFATに加盟 販売チャネル ・通信販売、直営店、その他バザー、小売卸(400店舗)、大口卸、 people tree Ltd.卸 成り立ち ・環境・国際協力NGO グローバル・ヴィレッジのフェアトレード事業部門 から独立 ・株式の店頭公開はない ・現在の株主は創設時の関係者 3 2.フェアトレードとは 途上国の立場の弱い人々の自立と生活環境改善を 図るために、生産にかかる社会的なコスト、つまり 生産者や労働者の生活、人権を守ることができるコ ストと、環境的コストを織り込んだ価格を前提とした 南北間の公正な貿易 背景:市場の失敗 代表的認証機関 国際フェアトレード機構(FLO International Fair Trade Organization) →商品に対してフェアトレード基準を定める 国際フェアトレード連盟(IFAT International Federation for Alternative Trade) →団体に対してフェアトレード基準を定める ※フェアトレードカンパニーはIFATに所属 4 2.フェアトレードとは IFAT(国際フェアトレード連盟)について 形態 欧米や日本の輸入団体と、アジア、アフリカ、中南米の生産者団体の 合計70ヶ国約300団体によるネットワーク型組織 →認定をもつ生産者団体と輸入団体が取引することで フェアトレードが成立する フェアトレード基準 ①生産者に仕事の機会を提供する ③生産者の資質の向上を目指す ⑤生産者に公正な対価を支払う ⑦安全で健康的な労働条件を守る ⑨環境に配慮する ②事業の透明性を保つ ④フェアトレードを推進する ⑥性別に関わりなく平等な機会を提供する ⑧子供の権利を守る 具体的な指標は存在しないため、自己、相互、第三者による評価が重要 5 3.フェアトレードカンパニーを取り囲む仕組み 生産者 団体 生産者 団体 発注 納品 生産者 団体 直接販売・通信販売 フェアトレード カンパニー 支払い 卸売り 小売 店 販売 消 費 者 生産者 団体 IFAT 原料・商品の生産をIFATの認 証団体に外部化 直営店・通信販売による直接販売と 小売への卸売りの二元化 6 4.仕組みに対する分析 ①フェアトレードカンパニーと消費者間 直営店経営(全売り上げの11.6%を直営店2店舗で販売) メリット Ⅰ.「People Tree」ブランドの定着 自由が丘、表参道という流行に敏感な街に出展することで、 ブランドを確立 Ⅱ.マーケティングの場として活用 ・ 販売データを直接得ることで、商品開発にフィードバック ・ 月1回のワークショップを店内で開くことで、消費者に対して 「フェアトレード」の理解を促進 Ⅲ.範囲の経済の活用 商品を多種類揃えられるスペースを設けることで、一度の来店に 対して多くのニーズに対応(販売コストの削減) 自由が丘店 表参道店 デメリット 多額な建築コスト 7 4.仕組みに対する分析 ①フェアトレードカンパニーと消費者間 卸売り販売(小売400店舗への卸では30.4% ) メリット 販売窓口の増加→知名度の上昇 デメリット 取引費用の出現 (ブランディングの不自由さ) 直営店と卸売りの混合 メリット 販売窓口の増加 デメリット 消費者の取り合い 8 4.仕組みに対する分析 ②フェアトレードカンパニーと生産者団体間 IFAT内の団体から製品を購買 メリット フェアトレード基準を遵守した商品が手に入る デメリット Ⅰ.取引費用 日本市場のニーズへの理解、製品完成の遅延を承認) Ⅱ.在庫費用 「生産者に仕事の機会を与える」の基準に則り、どの生産者団体にも仕事 が平等にいきわたるように配慮 →人気商品も死に筋商品も発注 →死に筋商品の在庫が残る Ⅲ.高リスクな投資 技術はあるが生産設備を持たない生産者に対して、報酬の50%を前払い Ⅳ.高い「公正な対価」 「生産者に公正な対価を支払う」の基準に則り、報酬は生産者の社会的状 況からの判断と、生産者との話合いから決定 9 5.提案:生産者団体を垂直統合 生産者団体団体との統合を考える メリット 取引費用の減少(交渉費用と時間の減少) →生産コスト減 ※生産者、フェアトレードカンパニーともに取引相手をIFAT内に 求めなくてはいけない →機会主義的行動は阻止されやすいと予想 ※低コストで生産できる生産者に発注を集めることで、規模の経済 を達成できるか →生産者による作業は労働集約的な手工業がメインのため、 発生しにくい。 デメリット 常に商品の発注があるわけではない →組織の維持のための余分なコストの発生 結論 統合はそれほどメリットではない。 10 6.フェアトレード商品の例 内布つきサイザルバッグ Vネックワンピース ¥12000 ¥8900 OCプリント・グリーンマン ¥4500 フェアトレード商品は一般商品より1~2割高価 11 7.売り上げ実績 200 180 売 160 り 上 140 げ 120 前 100 年 80 度 比 60 40 % 80000 70000 ( 売 60000 上 50000 高 40000 万 円 30000 20000 ( ) 20 0 ) 10000 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度 開業以来、前年度比100%以上の成長率 →要因:フェアトレード商品を好んで買う消費者の増加 12 8.フェアトレード商品が与える知覚便益 なぜ衣料品業界で一般商品より高額なフェ アトレード商品が売れるのか? →価格に見合うだけの知覚便益を消費者に 提供できるから 「商品がフェアトレードであることが、商品に 付加価値を生み出す」と感じる消費者の 出現 13 8.フェアトレード商品が与える知覚便益 価格 フェアトレード商品 普及品 無差別曲線 「フェアトレード商品であるこ と」が品質として高く評価され る ことで発生 品質 収益を得るための戦略 →高い品質評価を勝ち取り現行の無差別曲線を下回る 14 9.成長への戦略 無差別曲線を下回るために ①コスト削減による低価格設定 生産者団体への援助を目的としているため生産面での コスト削減は困難 ②品質の上昇 ・フェアトレードの認知の拡大 ・フェアトレードブランド「People Tree」の認知の拡大 品質の定義の中にフェアトレードの概念を組み込む 15 10.まとめ • 高コストを要するフェアトレードが消費者に 新たな価値を与えている • フェアトレードの認知を促し、消費者の知覚便益 を大きくすることで、フェアトレードカンパニーは 成長できる 16 11.参考文献 マイケル・バラット ブラウン、青山薫、市橋秀夫 『フェア・トレード ― 公正なる貿易を求め て』 (新評論、1998/04) オックスファムインターナショナル, 渡辺龍也 訳 『貧富・公正貿易・NGO ― WTO に挑む 国際 NGO オックスファムの戦略』 (新評論、2006/03) オックスファムインターナショナル, 村田武・日本フェアトレード委員会 訳 『コーヒー危機 ― 作られる貧困』 (筑波書房、2003/11) 村田武 『コーヒーとフェアトレード』 (筑波書房、2005/01) デイヴィッド ランサム、市橋秀夫 『フェア・トレードとは何か』 (青土社、2004/11) デイビッド・ペサンコ、デイビッド・ドラノブ、マーク・シャンリー 奥村昭博、大林厚臣訳 『戦略の経済学』(ダイヤモンド社、2006/2/3/) 池上甲一、辻村英之『季刊at8号(フェアトレードの現在)』(大田出版、2007/7/3) 17
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