番号 FP01208100 研究課題名 ニコチン性アセチルコリン受容体刺激薬

番号
FP01208100
研究課題名
ニコチン性アセチルコリン受容体刺激薬の妊娠高血圧症候群の治療薬として
の可能性について-既存薬剤のライブラリーを用いた治療薬のスクリーニング
と、喫煙の血管弾性に与える影響-
助成期間
要旨
2010-2012
【目的】 妊娠中の喫煙は妊娠高血圧症候群のリスクを下げるということが多数の報
告で確認されている。我々は、ニコチンが血管新生因子である PlGF の血管内皮か
らの産生を刺激することを報告してきた。この事実を元に、妊娠高血圧症候群の薬
物療法の可能性について、既存薬剤のライブラリーを用いて治療薬のスクリーニン
グ検討を行うものである。また、臨床研究として喫煙と妊娠中の血管弾性について
検討し、血管弾性からの視点で低出生体重児との関連を検討した。
【方法】 血管内皮(HUVEC;ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞)を用いて、ニコチン
以外の刺激によっても PlGF の血管内皮からの産生が刺激されるかについて、既存
薬剤のライブラリー(約 500 種類の既存薬を含む)を用いて検討する。また、スクリー
ニングされた薬剤の血管内皮保護作用について tube formation 検査を用いて検
討する。
また、臨床研究として 830 名の正常妊婦に対して、妊娠 12 週から 36 週まで pulse
wave analysis を行い血管弾性を測定し妊娠中の喫煙と血管弾性の関連について
検討する。また、57 名の低出生体重児を出産した母体の血管弾性につても検討を
加えた。
【結果】 ○既存の薬物のうちいくつかがニコチンと同様に PlGF の血管内皮からの
分泌を促進することを見出した。その中でも phosphodiesterase-5 (PDE5) inhibitor
である vardenafil が最も血管内皮保護作用が高いと考えられた。
○妊娠中は血管弾性が低下(柔らかく)した。妊娠中の喫煙については、喫煙は血
管弾性に対して有意な影響を与えていなかった。
○低出生体重児を出産した母体では血管弾性が上昇(硬く)していた。低出生体
重児を出産した母体で喫煙者が多い傾向が見られたが有意差には至らなかった。
【結論】 約 500 種類の既存薬を含む既存薬物からのスクリーニングの結果から、
phosphodiesterase-5 (PDE5) inhibitor である vardenafil がニコチンと同様に PlGF 産
生促進作用を持ち血管内皮機能を改善することが判明した。妊娠中は血管弾性は
低下した。妊娠高血圧症候群では血管弾性は上昇することが報告されているが、
妊娠中の喫煙は血管弾性には有意な影響を与えなかった。ニコチンの妊娠高血
圧症候群に対する影響を考える上で興味深いものである。喫煙と低出生体重児と
の機序について、今回の検討では血管弾性とは明らかな関連は認められなかっ
た。