医療税務つうしん No.31

No.31
株式会社
ムトウ コンサルティング事業部
札幌市北区北11条西4丁目1番地 電話〔直通〕011-728-6114
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平成22年6月
Q1
A
そろそろ一緒に働いている後継者の長男に個人医院の院長を交代して事業を承継
させようかと考えていますが、その場合、私名義の医院の土地、建物の所有権の
取扱いをどのようにすると税制上有利でしょうか。
ポ
イ
ン
ト
1
生前に不動産を後継者に引き継がせるには贈与するか売却するかですが、贈与又は譲渡に
係る税負担や資金負担が大きいため、後継者が借りるケースが多いようです。
しかし、土地の値上がりが予測される場合には、名義を後継者に早く移すことが相続税対策
として有効ですので相続時精算課税による贈与や譲渡も検討すべきでしょう。
将来の相続税とトータルでシミュレーションを行い院長交代後の前院長、後継者双方の税
負担の少ない方法で医院の土地、建物の所有権を移していくことがポイントといえます。
医院の土地、建物の所有権をそのまま
にして後継者に貸す場合
無償で貸していた医院の土地の相続時の評価 自用地として評価されます。
なお、建物を後継者が所有し、敷地を無償で貸し付けていた
場合も自用地として評価されます。
(1)医院の土地、建物を後継者に賃貸する場合
院長交代後、前院長である親が医院を後継者である長
男に賃料をもらって貸す場合、同一生計なのか、別生計な
のかによって、課税上の取扱いが異なります。
①生計が別の親子間では、不動産所得の計算上、前院長
が受け取った賃料は前院長の不動産所得等の収入金額
になり、
その土地・建物に係る固定資産税や減価償却費等
は必要経費となります。一方、後継者が支払った賃料は後
継者の事業所得の必要経費となります。
②生計を一にしている場合には、前院長が受け取った賃料
は収入金額にならない代わりに、後継者も支払った賃料が
医業所得の計算上、必要経費になりません。ただし、前院
長の土地・建物に係る固定資産税や減価償却費等の経費
は、後継者の事業所得の必要経費となります。
賃貸していた医院の土地の相続時の評価
貸家建付地=自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合)
なお、建物を後継者が所有し、敷地を有償で借りていた場合
には、貸宅地=自用地評価額×
(1−借地権割合)
または、
自
用地評価額×80%(相当の地代を収受している場合)で評
価されます。
(2)医院の土地、建物を無償で後継者に貸す場合
2
医院の土地、建物の贈与又は譲渡
(1)医院の土地、建物の贈与
①医院の事業を後継者に承継した以上、医院の土地、建
物の名義も後継者に変更したいとすれば、後継者に資金
力がない場合には贈与を検討することになります。贈与の
場合、土地は路線価額、建物は固定資産税評価額を基準
とした相続税評価額により、後継者が贈与税を支払わなく
てはなりません。贈与税は累進税率が高く、不動産を贈与
する場合最高50%の高税率が予想されますので、相続ま
で待った方が税負担上は有利となることが多いと思われます。
②とはいえ、相続になった場合、後継者の他の相続人に医
院の土地・建物が分割されるようなことになると永続的な医
院の発展と事業承継に支障をきたす懸念もありますので、
生前贈与を実行する一つの方法として、相続時精算課税
制度を選択することが考えられます。相続時精算課税を選
択した場合、通常の贈与税に比較して低負担で不動産を
移転できます。
③しかし、相続時精算課税を選択すると相続発生時に贈
与時の価額で相続税がかかることから、減価償却で価値が
確実に下落する建物は、相続時に贈与時の価額で課税さ
れると税負担が増えることになりますので、慎重に検討して
実行しなければなりません。
医院を後継者に使用貸借で貸すこともできます。
①この場合、生計が別の親子間では、
たとえ前院長が固定
資産税や減価償却費等の土地・建物に係る費用を負担し
医院の土地、建物の譲渡
ていたとしても、貸付けによる収入がないので必要経費とは (2)
①土地・建物を後継者に譲渡する場合、売却価額はその
ならず、経費が無駄になってしまいますので使用貸借は避
時の時価となります。時価より低額で譲渡しますと、
その差
けなければなりません。
額につき贈与税が課税されることがあるからです。
さらに、贈
②他方、生計を一にしていれば、
(1)の場合と同様、土地・
与とみなされないよう、金銭の授受をしっかりと行う必要が
建物に係る経費は後継者の事業所得の計算上、必要経費
あります。
に算入することができます。
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もし、
資金のない後継者が借入金により取得した場合には、
その借入金利子は事業所得の計算上、
当然に必要経費に
なります。
②他方、譲渡した前院長には、譲渡益がある場合他の所得
Q2
A
1
と分離して次の算式による譲渡所得税がかかります。税率は、
所有期間が5年超であれば20%
(所得税15%+住民税5%)
です。
{譲渡対価−(資産の取得費+譲渡費用)}
×税率
病院、クリニック、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、デイサービスセンター
など10施設を運営している医療法人ですが、費用関係の消費税の課税、非課税、不
課税の入力について担当者の間違いをチェックするポイントを教えてください。
ポ
イ
ン
ト
医業費用等には、諸会費や交際費のようにその中身により課税、不課税、非課税に分かれ
たり、郵便切手や印紙などのように処理方法を選択できるものがあります。
介護サービス情報公表手数料等のように役務の提供でないとされ不課税となるもの、
クレジッ
トの手数料のように非課税とされるものなど、注意を要するものがあります。
医業費用関係の消費税の課否判定のポイント
費用の中身、性格等によって科目が課税、非課税、不課税に分かれるもの
医業費用については、
材料費、
委託費、 (1)
職員への香典や金銭によるお見舞い ⇒ 不課税
設備関係費(地代、住宅家賃等を除く)、
①福利厚生費
職員の社会保険医療費の自己負担免除額 ⇒ 非課税
消耗品費などの多くの費用は課税仕入
患者や取引先への香典、入院見舞金 ⇒ 不課税
②交 際 費
れとなりますが、次の(1)、
(2)の費用の
贈答用商品券、ビール券の購入 ⇒ 非課税
ように、
その中身によって非課税、不課税
金銭による寄附、政経パーティ券の購入 ⇒ 不課税
③寄 附 金
同業者団体等の運営のための通常会費、国保請求時差引かれる診療報酬
となるものが混在しますので注意が必要
割会費等、ロータリークラブやライオンズクラブの入会金・通常会費、
です。なお、給与費、減価償却費、租税公
会費・組合費等のうち対価性のないもの ⇒ 不課税
④諸 会 費
クレジットカード年会費、レジャー施設の会費、参加費的な性格の会費
課などは不課税、法定福利費、地代、住
⇒ 課税
宅家賃、保険料、支払利息などは非課税
車検の重量税、軽油取引税 ⇒ 不課税
⑤車輌関係費
です。
車検の自賠責保険料 ⇒ 非課税
(2)処理方法を選択できるもの及び課否判定で注意すべき費用
①郵便切手の購入 ⇒ 購入時課税とすることができます
国内における通信費は課税取引で、郵便切手、ハガキは、購入時非課税で実際に郵送等の役務の提供を受けた時の課税仕入れになりますが、継続
適用を条件に購入時課税とすることができますので、全施設統一して支払った日の課税仕入れとするとよいでしょう。
なお、国際電信・電話料金、国際郵便料金は不課税です。
②収入印紙、収入証紙の購入 ⇒ 購入時不課税とすることができます
収入印紙、収入証紙は購入時非課税、使用時不課税が原則ですが、購入してすぐ使用するものですので支払った日に不課税として租税公課に計上
することができます。
③住民票、印鑑証明、戸籍抄本等の行政手数料 ⇒ 非課税
国等の行政手数料については、消費税の性格から課税することになじまないため非課税となっています。
④クレジットの手数料(クレジットカード払の診療費の入金時相殺される) ⇒ 非課税
雑費などに計上されるクレジットにかかる手数料は利息に相当するものとして非課税となります。
⑤介護サービス情報公表手数料、介護サービス情報公表調査手数料 ⇒ 不課税
調査事務及び情報公表事務は、都道府県に義務付けられており、介護サービス事業者に対する役務の提供ではないことから、消費税法に規定する
「資産の譲渡等」に該当しないため消費税の対象となる手数料には該当しません。
⑥車椅子等の身体障害者用物品の購入 ⇒ 非課税
消耗器具備品費の中に車椅子等の身体障害者用物品の購入があれば非課税です。
⑦レジの現金過不足 ⇒ 不課税
消費税の課税要件である「対価を得て行われる資産の譲渡等」に該当せず、対価性がないので消費税の課税対象とはなりません。
⑧医療法人内の施設間取引 ⇒ 不課税
医療法人内の各施設間取引については、消費税は課税されません。
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事務担当者の課否判定力アップのための態勢づくりと指導育成
(1)医療法人の本部事務部門の管理者が各施設の事務担当者が入力処理した元帳等をチェックして間違いを訂正させることは
医療法人全体の消費税の処理の正確性向上のため欠かせないことといえますが、事務担当者自身の課否判定能力を高める
指導や研修もより重要です。
(2)施設が増えてくると入力する事務担当者の数も増えますので、毎月のチェック過程を通じ、単に間違いの訂正だけでなく、担当
者毎に間違う傾向をつかんで重点管理し、指導していく必要があります。
(3)消費税法の改正や医療法人全体にとっても初めての費用の場合などについては、あらかじめ全施設の事務担当者にメールや
FAXで連絡文書を流すか、各施設の事務担当者を集めて研修を実施するなどして周知させることが大切です。
お問い合せは
ムトウ コンサルティング事業部 税理士・宮下へ 電話〔直通〕011-728-6114
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