農業者(個人事業主)のための消費税講座 平成15年11月10日 南淡路農業改良普及センター 平成18年5月15日 普及部 一部訂正 目 次 農業者(個人事業主)のための消費税講座 消費税 ・・・・・・・・・・・・ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 消費税の納付 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 消費税が課税される取引 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 課税売上げ 課税仕入れ 課税されない取引 不課税 非課税 固定資産の譲渡と減価償却費 免税点について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 「個人事業者は、平成 17 年より消費税の免税点が、3000万円から1000万円に 引き下げられました!」 消費税率は ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 納付税額の計算のながれ 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 納税義務者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 免税事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 確定申告・納付 会計処理方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 税抜き方式 税込方式 その他会計処理上の留意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 簡易課税制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 みなし仕入率 投資を前提として「本則課税」を選択する場合 ・・・・・・・・・・11 免税業者の場合 簡易課税業者の場合 課税売上げ割合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 1 農業者(個人事業主)のための消費税講座 このテキストは、初めて消費税の申告をしなければならない(又は、その 可能性のある)個人事業主を対象に作成しています。 消費税 消費税とは、国内における物品の販売やサービスの提供について、その購入者である消費 者に課せられる税金ですが、実際に消費税を納付するのはその物品サービスの販売者です。 消費税の納付 消費者は、物品及びサービスの購入時に、代金と同時に消費税も合わせて支払います。 消費税については、消費者が税務署に直接支払う方法も考えられますが、現実的には不可 能ですから、消費税を業者に納付委託する(つまり預ける)かたちで消費税を上乗せして 代金を支払います。 そして、業者が消費者より預かった消費税を国に返す手続きが、消費税の申告納付です。 ですから、当然その領収書・請求書・納品書等証憑書類については、かなり正確なものが 要求されます。 もちろん、業者は消費税を預かるだけでなく、物品を仕入れるときに消費税を払いますの で、実際に納める消費税は、その支払った消費税を控除した残額ということになります。 そして、そのときに支払った消費税のほうが預かった消費税よりも多いときは、消費税が 返ってくる(還付)場合もあります。 消費税が課税される取引 「事業者」が、 「事業として」かつ「有償で」行われる資産の譲渡、資産の貸付及び サービスの提供などの取引をいい、 「課税売上げ」と「課税仕入れ」があります。 しかし、たとえ無償でも個人事業主の自家消費取引は、課税取引にあたります。 課税売上げ 課税売上げとは、売上げ取引だけでなく、資産の売却額も含まれます。 事 例 注 意 点 ・売上高は、全て総額で計上すること(返品、値引 き、及び割戻しについては控除)。手数料等を差引 ・農産物及び加工品等の売上高 いた残額では計上してはいけない。 ・中古機械等固定資産売却収入額 ・中古機械の下取り価額は、その価額が課税売上げ ・家畜(子畜、育成畜、廃畜、成畜、 となる。売却損益で計上しない。 肥育畜等)の売却収入額 ・家畜についても、同様である。 ・役務収益 ・国または地方公共団体から受ける補助金、奨励金、 ・作業請負収益 助成金収入は、含まない。BSE 関連補助金(公的)、 転作奨励金も含まない。 (不課税) ・所得税免税牛の売却収入 ・借地料、借家料収入は含まない。(非課税) ・土地の譲渡収入は含まない。(非課税) 2 課税仕入れ 課税仕入れとは、仕入取引だけでなく、資産の購入額も含まれます。 事 例 注 意 点 ・肥料、農薬、飼料等の仕入高 ・給与、賃金(事業専従者含む)は含まない。 ・消耗品費等の購入額 ・減価償却費は含まない。 ・作業委託費用 ・税理士費用等役務の費用 ・借地料、借家料支出は含まない。(非課税) ・機械、建物等の固定資産の購入額 ・土地の購入支出は含まない。(非課税) ・家畜(子畜、育成畜、成畜等)の購 入額 課税されない取引 「事業でない」か「無償」か「その他社会政策的配慮等」により課税されない取引をいい ます。 この課税されない取引には、「不課税」と「非課税」がありますが、農業の場合たいへん 重要な項目なので、ここに列挙します。 ① 不課税( 事業として行われるものでない取引、または、無償取引 ) 不課税取引は、消費税の一切の計算に関係ありません。(課税売上げ割合計算も) ・共済金収入 (消費税基通 5-2-4) ・国または地方公共団体から受ける補助金、奨励金、助成金収入(消費税基通 5-2-15) BSE 関連補助金、転作奨励金は不課税です。 ・給与、賃金(事業専従者給与も) ・賦課金 ② 非課税( 課税の対象としてなじみにくい取引、または、社会政策的配慮により課税 することが適当でない取引 ) ・土地の譲渡及び貸付、住宅の貸付、郵便切手類及び印紙証紙の譲渡 固定資産の譲渡と減価償却費 固定資産の取得及び譲渡時には消費税が課税されますが、減価償却費計上時には消費税は 課税されません。 3 免税点について 「個人事業者は、平成 17 年より消費税の免税点が、3000万円から1000 万円に引き下げられました!」 個人事業者は、基準年(その年の 2 年前の年)の課税売上高が1000万円 1 円以上の場合は、消費税納税申告義務が生じます。 これも、説明するよりも、下記の表で理解するのが早道です。 平成 16 年 平成 17 年 平成 18 年 課税売上高 1000 万円 1 円以上 → 納税業者になる。 課税売上高 1000 万円以下 → 免税業者になる。 平成 16 年度の免税農家は、税込み金額で判断 する。 平成 16 年度の申告農家は、税抜き金額で判断 する。 消費税率 消費税率は4%です。(国税) それに地方消費税率1%(県税=国税×25%)が同時に申告納付されるため、合わせて 5%消費税を納付しているだけです。 納付税額の計算のながれ 消費税額(国税) = ( 税込み売上高 − 地方消費税額(県税) 税込み仕入高 = 消費税額 ) × × 100/105 25% × 4% この計算のながれについては、実際に申告してみなければ、実感としてわかないものです。 要は、消費税は地方消費税も合わせて5%であるということを理解しておいてください。 さて、この計算の流れをさらに理解を深めるため、視覚的に憶えておきましょう。 次ページの図1で、消費税納付までの流れを税抜き処理で表していますので参照してくだ さい。 4 図1 消費税納付までの流れ(税抜き処理) 取引のながれ (事業者の世界) 消費税の流れ (国・県の世界) 玉葱売上高200円(税抜き) 仮受消費税 10 円 (200円×5%) △(−) △(−) 肥料等仕入高100円(税抜き) 仮払消費税5円 (100円×5%) || || 差引100円 預り消費税5円 (100円×5%) 消費税申告納付日は、課税 期間の翌年の 3 月 31 日ま で 国への納付額 (消費税) 5%の内4% 5 県への納付額 (地方消費税) 5%の内1% 納税義務者 事業者は、国内取引において行った課税資産の譲渡につき、消費税を納める義務があり ます。 事業期間の 2 年前の事業期間において、課税売上高が 1,000 万 1 円以上ある事業者は、 消費税納税申告義務があります。 免税事業者 消費税の納税義務が免除されます。 事業期間の 2 年前の事業期間において、課税売上高が 1,000 万円以下である事業者は、 消費税納税義務がありません。 ただし、課税仕入に係る消費税額がいくら多額であっても、その控除ができず、還付を 受けることが出来ません。 確定申告・納付 個人事業主の場合は、課税期間の翌年の 3 月 31 日までです。 会計処理方法 税込方式と税抜方式があり、その選択は事業者の任意とされています。 免税業者は、税込方式で会計処理します。 税抜き方式(図1参照) 税抜き方式については、前図1のとおりで、課税売上げに係る「仮受消費税」と課税仕 入れに係る「仮払消費税」の科目を用いて、損益計算とは別に記帳する方法です。 固定資産、減価償却費計上、棚卸資産等すべて税抜取得価額で記載します。 税抜き方式で簡易課税を選択した場合において、本則課税で計算した消費税額と簡易課 税方式で計算した消費税額との差額は、事業所得計算上の雑費又は雑収入に計上します。 税込方式(図2参照) 税込方式については、図2のとおりで、売上げ、仕入、経費などの金額をすべて消費税 等込みの金額で記帳、損益計算書の作成も今までどおりに方法です。 ただ今までと違うところは、決算調整申告時において、消費税計算を行い消費税確定申 告して、その額を費用として損益計算書を作成しなければならないことです。 税込方式には、下記のように 2 つの方式があります。 ・消費税額を、課税計算年度の費用(雑費)または収益(雑収入:還付の場合)とする方式 ・消費税額を、申告書提出年度の費用または収益(雑収入:還付の場合)とする方式 固定資産、減価償却費計上、棚卸資産等すべて税込取得価額で記載します。 6 図2 消費税納付までの流れ(税込処理) 取引のながれ(事業者の世界) 玉葱売上高210円(税込み) △(−) 肥料等仕入高105円(税込み) || 差引105円(税込み) 税込方式で計算された消費税は所得計算上の費用 になる。 (本則課税計算・簡易課税計算 OK) この消費税額を、課税事業年度の費用とするか、そ れとも、翌年の事業年度の費用とするかで税込方式 による所得計算が少し異なってくる。 差引100円 消費税5円 (100円×5%) 7 その他会計処理上の留意点 ・棚卸資産の会計処理(本則課税を選択している場合だけ) (イ) 免税業者から課税業者となった場合、課税業者になる直前の年度に仕入れた期末棚 卸資産にかかる仕入額は、課税業者となった期間の課税仕入れ額に算入を基本とし ますが、実際の申告では仕入額の調整は行わず、前年期末棚卸額(=当年度期首棚 卸額)の消費税額を、申告書の添付資料付表2⑪欄の「納税義務の免除を受けない (受ける)こととなった場合における消費税額の調整(加算又は減算)額」の中で、 当該消費税額として加算し表現します。 (ロ) また、反対に課税業者から免税業者になった場合、免税業者となる直前の課税年度 に仕入れた期末棚卸資産にかかる仕入額は、課税年度の課税仕入れ額に算入しない のを基本としますが、実際の申告では仕入額の調整は行わず、当年期末棚卸額(= 次年度(免税年度)期首棚卸額)の消費税額を、申告書の添付資料付表2⑪欄の「納 税義務の免除を受けない(受ける)こととなった場合における消費税額の調整(加 算又は減算)額」の中で、当該消費税額として控除し表現します。 簡易課税制度 いままでの説明は、すべて本則課税についてでしたが、その消費税計算方法は、実際の 課税売上高と課税仕入高から消費税を導き出す方法です。 簡易課税制度は、業種ごとに、課税売上高に対して課税仕入率を想定(みなし仕入率) し、そこから課税仕入高を算出し、結果として消費税を導き出す方法です。 その条件としては、簡易課税制度の適用を受けようとする年の 2 年前の課税売上高が 5000 万円以下で、かつ、その適用希望年の前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出 書」を提出申請することが必要です。 みなし仕入率 簡易課税制度において、業種により、課税売上高に対して課税仕入率が想定されて、そ の率を適用することが出来ます。 その率を、みなし仕入率といい、農業の場合70%です。 8 図3 本則課税と簡易課税制度での消費税のながれ(税抜きで) 本則課税の場合 簡易課税制度の場合 玉葱売上高200円(税抜き) 玉葱売上高200円(税抜き) △(−) △(−) 肥料等仕入高100円(税抜き) みなし仕入高140円(税抜き) (200円 × 70%) || || 差引100円 差引60円 消費税額5円 (100円 × 5%) (地方消費税含む) 消費税額3円 (60円 × 5%) (地方消費税含む) 9 このように、実際の課税仕入高が低いときは、簡易課税制度の方が断然お得です。 みなし仕入率は、各業種によって決まっており、農業の場合は70%です。 課税仕入高は、所得計算上の費用である人件費、青色専従者給与、減価償却費等を含み ません。 したがって、農家の課税仕入高は案外と低いものです。 本則課税が得か簡易課税制度が得か、その簡単な見分け方は、青色申告書に添付した決 算書の費用から人件費、青色専従者給与、減価償却費等を控除した残額と売上高との割合 で判断します。 そして、もしも簡易課税制度のほうが得なら、平成 16 年中に税務署に出向き「消費税 簡易課税制度選択届書」を提出します。 これも、なかなか行く機会がありませんから、平成 15 年度所得税申告の際に上記書類 を提出申告しておきましょう。 これも、説明するよりも、下記の表で理解するのが早道です。 平成 16 年 課税売上高 5,000 万 1 円以上 平成 → 5,000 万円以下 課税売上高 1000 万円以下 簡易課税制度を選択してい ても、本則課税になる。 納税業者 課税売上高 1,000 万円 1 円以上 平成 18 年 16 年 簡易課税制度を選択してい → になる。 る場合、簡易課税制度適用義 務が有る。 → 簡易課税制度を選択していても、免税業 者になる。 ↑ 平成 16 年度の免税農家は、税込み金 額で判断する。 平成 16 年度の申告農家は、税抜き金 額で判断する。 ただし、簡易課税制度を適用すると、2 年間はその制度を継続しなければなりません。 しかし、本則課税は、1 年で変更することができます。 10 投資を前提として「本則課税」を選択する場合 ・免税業者の場合 その選択しようとする課税期間に、 「消費税課税事業者選択届出書」を提出申請し ます。 ただし、2 年間は納税業者として、消費税申告の義務が生じます。 免税業者に戻りたいときは、止めようとする課税期間の前年末までに「消費税課 税事業者選択不適用届出書」提出します。 ・簡易課税業者の場合 その前年末までに、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出申請します。 しかし、本則課税は、1 年で変更することができます。 再度簡易課税業者に戻りたいときは、適用を受けようとする課税期間の前年末ま でに「消費税簡易課税制度選択届出書」提出します。 課税売上げ割合 農業の場合、課税されない取引の大部分が、不課税である補助金関係収入や共済金収入 であるため、課税売上げ割合についてはそんなに関係ないと判断して、ここでは説明しま せん。 11
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