フランス日本語教師会便り - e-AEJF

フランス日本語教師会便
フランス日本語教師会便り
日本語教師会便り
Association des Enseignants de Japonais en France
会員の皆様
第 26
6号
さて、
「Kanji on line」の Jean-Pierre SINTES さんのご協力
により教師会のホームページがいよいよ公開される運びとな
花びらが散っているのかと思ったら、実は小雪が舞っている、
りました。詳しくはお知らせ欄をご覧ください。よりよいホー
そんな春まだ浅き昨日今日、皆様にはいかがお過ごしでしょう
ムページにするため改良すべき点が多々あると思います。皆様
か。3月というのは学年の中盤、教師にとっても学生にとって
からのご指摘、ご提案をお待ちいたしております。
もじっくり勉強に取り組む重要な時期です。皆様のご健闘をお
それでは、次回勉強会でお会いいたしましょう。
祈りいたします。
役員一同
さて、前号よりの2ヶ月間の活動としては、第19回定例勉強
会が予定通り1月24日にパリ文化会館で行われました。今回
お 知 ら せ
は大島先生のご指導で「読書会」。否定の意味をテーマにした
7つの論文を大島先生の説明を交えて、11名の参加者ととも
に考え、討論いたしました。参加者による詳しい報告が載って
2003
2003- 2004
2004 年度 勉強会プログラム
勉強会プログラム (予定)
予定)
いますので、参加なされなかった方は是非ご一読いただき、日
本語の否定の意味の面白さを再確認し、参加された方は復習を
◆ テーマ「日本語における数量化」
(仮)
兼ねて記憶を新たにしていただければと思います。
講師
:竹内理恵(リール第 3 大学)
今後の活動としては、第 20 回定例勉強会が予定通り3月 27 日
2004 年 5 月22 日(土)
(土)に行われますが、予定されていたプログラムを急遽変更
パリ日本文化会館
させていただきました。と申しますのは、学芸大学の任都栗助
2003-2004 年度 第 20 回定例勉会
教授より国立国語研究所のプロジェクトの一環として先生が
開発されたマルチメディアソフトを是非フランス教師会の皆
さんに紹介したいというご提案をいただきました。先生はドイ
日時:2004 年 3 月27 日(土)
ツ、フランス、イギリスを巡回する中、フランスにはできれば
14 時 30 分~17 時 30 分
3月26日か27日にいらっしゃりたいとのご希望でしたの
会場:パリ日本文化会館
で、予定されていた竹内泰子先生の勉強会を来年にお願いする
101bis, quai Branly, 75740 Paris
ことにいたし、今回は任都栗先生の特別勉強会としました。詳
(地下鉄 6 号線、Bir-Hakeim 下車)
細はお知らせ欄をご覧になり、奮ってご参加ください。
プログラム
テーマ:マルチメディアソフト「yaniita」紹介
本年度のシンポジウムはすでにお知らせしてあるように、ヨー
「きりはり教室 http://xeva.hitachi-sk.co.jp/kirihari/」
ロッパ日本語教師会と共催で開催いたしますが、シンポジウム
を日本語教育用に改良した開発ソフト
のタイトルを「2004 日本語教育シンポジウム」とし、
「第
講師 :任都栗 新
9回ヨーロッパシンポジウム」と「第6回フランス日本語教育
(学芸大学助教授、国立国語研究所非常勤研究員)
シンポジウム」を同時に行うという形をとることにいたしまし
た。本誌といっしょに「シンポジウム発表者募集」が同封され
内容
ています。発表を希望される方はよくお読みになって、発表主
1.国研が開発しているマルチメディア教材作成のためのソ
フトの紹介
旨を締め切り期日までに実行委員まで送りください。また、シ
2.同ソフトの利用方法の説明。意見を取り入れた今後の開発
ンポジウムのご案内は4月中に会員の皆様にお届けいたしま
について
す。
1
3.同ソフトを利用した日本語教育教材例と授業の実際のデ
されており、このページは会員でないと見られません。このペ
モンストレーション
ージへのアクセスは上記のパスワードを入力してください。
4.日本語教育教材作成のためのマルチメディア素材につい
ホームページをより充実したものにするため、皆様のご意見を
て
お待ちいたしております。
5.同ソフトを利用した日本と海外の学校との「私たちの学校
日本語教育関連サイト
日本語教育関連サイト
生活、地域、家庭」のマルチメディアの相互交流促進およ
びコンテスト実施について
日本語教育に関するサイトは数限りなくあると思いますが、本
会と関係のあった下記のサイトをまず掲載いたします。その他
2004 日本語教育シンポジウム
日本語教育シンポジウム
推薦したいサイトがありましたら、事務局までお知らせくださ
第 9 回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム
い。
第6回フランス日本語教育シンポジウム
http://www.kanjionline.com
わが会のホームページを作成し
てくださっているサンテスさん(M. Jean-Pierre SINTES)の
サイト
共催:ヨーロッパ日本語教師会 (AJE)
http://language.tiu.ac.jp 読解学習支援システム「リーディン
フランス日本語教師会 (AEJF)
グ・チュー太」
(川村よし子)
期日:2004年8月26日(木)~ 28日(土)
http://www.f.waseda.jp/hosokawa/
早稲田大学 細川英雄先生のサイト
会場:Université Jean Moulin - Lyon 3
6, cours Albert Thomas 69008 Lyon
http://www.jpf.go.jp/kyozai/「みんなの教材サイト」国際交
テーマ:
「開かれた日本語教育 – 発想、理論、実践の共有を目
流基金日本語国際センター
指して」
http://www.e-aje.org
ヨーロッパ日本語教師会
講演 :砂川有里子教授(筑波大学)、畑佐一味教授
(パデュー大学)、東伴子助教授(グルノーブル第三
事務局より
大学)
ワークショップ
➢ 本年度の会員証を「便り」1月号とともに会員の皆
パネルディスカッション
様 に は お 送 り い た し ま し た が 、そ の 後 入 会 さ れ た 方 で ま
研究発表、実践報告
だ会員証を受け取っていない方は事務局にご連絡くだ
さい。
実行委員代表
: 島守玲子(リヨン第3大学)
尚 、 こ の 会 員 証 を 提 示 し ま す と 、 書 店 《 Culture Japon》
と 《 文 化 堂 》 に て 書 籍 を 10%割 引 で 購 入 で き ま す 。
・発表者募集案内が本号とともに同封されています。発
Culture Japon : パ リ 日 本 文 化 会 館 1 階
表を希望なさる方は、募集要項をよくお読みになり、発
101 bis, quai Branly, 75740 Paris
表要旨を4月30日までに実行委員までお送りください。
Tel : 01 45 79 02 00
・シンポジウム案内状と参加申し込み書は4月中にお送
文 化 堂 : 29, rue Saint Augustin, 75002 Paris
りいたします。尚、申込締切は5月末日です。
Tel : 01 42 60 00 66
問合せ先: 島守玲子(SHIMAMORI Reiko)
➢ 2002 年 5 月 に 本 会 が 発 行 し た 「 フ ラ ン ス 日 本 語 教 育
Tel/Fax : +33 (0)4 78 25 20 85、
No.1」( 第 1 回 ~ 第 3 回 シ ン ポ ジ ウ ム 発 表 論 文 集 ) を ま
e-mail : [email protected]
だお受 け取 り に なっ てい ない方 は事務局までご連 絡く
ださい。一部差し上げます。
AEJF ホームページ
お 礼
「Kanji on line」の Jean-Pierre SINTES さんのご協力により
フランス日本語教師会のホームページが出来上がりました。
フ ラ ン ス 国 教 育 省 よ り の 教 育 功 労 賞 (Palmes
ホームページアドレス:http://e.aejf.free.fr
Académiques)授 賞 に あ た り 、会 員 の 皆 様 よ り た く さ ん
(始めの «e» は Email の «e»)
お 祝 い の お 言 葉 を い た だ き 、た い へ ん 感 激 い た し て お り
パスワード(mot de passe):mdpaejf
ま す 。あ り が と う ご ざ い ま し た 。紙 上 を 持 っ て 御 礼 に 代
ホームページ上の「archives」には「教師会便り」全号が保存
えさせていただきます。石井陽子
2
ような丁寧さの表現と捉えられるからである。二重否定「なく
勉 強 会 報 告
ない?」は、肯定とも否定とも捉えられる「ぼかし言葉」であ
り、物事をはっきりさせないために使われる表現であるようだ。
この二重否定に関して、参加者からアクセントについての意
第 19 回定例勉会 読書会
見があった。「おもしろくな
な くない」のように、初めの「な」
報 告
にアクセントがつくと否定の意味に聞こえるが、文末が上がり
口調になると肯定に聞こえる、というものであった。
講師 :大島弘子 (パリ第 7 大学)
「 彼 は 風邪くらいでは
風邪 くらいでは休
くらいでは 休 まないよ - 否定の
否定 の スコープと
スコープ と 焦点」
焦点 」
テキスト:
「月刊 言語」2000 年11月号
(工藤真由美)
工藤真由美)
特集 [例解] 否定の意味論
否定文の中では、否定の対象範囲がどこまでであるかという
「今月の特集面白くなくない?」(滝浦真人) /「彼は風邪くらい
ことが問題になる。「社長はスーツを着て出席しなかった」と
では休まないよ」(工藤真由美) /「塩も入れないと、美味しくな
いう文は、出席したけれども、「スーツを着て」はいなかった
らない」(沼田善子) /「*一滴でも飲まなかった/*飲んだ」(吉村
と解釈される。つまり述語の動作の様態を表す修飾語「スーツ
あき子) /「*少ししか食べるわけではない」(河西良治) /「せわ
を着て」は、否定のスコープ内に入り、否定されるのである。
しくせわしない日々」(小林賢次) /「勝ちは勝ち、負けは負け」
一方、「風邪を引いて、社長は出席しなかった」の場合、理由
(中村芳久)
は風邪であり、出席はしなかったと解釈される。つまり理由を
表す状況語「風邪を引いて」はスコープ外にある(三上論文)。
瀬戸晴美・
瀬戸晴美・太田知美
新年が明け、1 月 24 日に、パリ第7大学の大島弘子先生を講師
久野論文は、マルチプルチョイス式の要素はスコープ内に入る
として、読書会が開催された。テキストは「月刊
言語」の 2000
としている。ここで大島先生はマルチプルチョイス式とは何の
年 11 月号「特集:否定の意味論」に掲載された 46 ページに渡
ことであるか説明してくださった。「歩いていきましたか?」
る 7 つの論文であった。今回の読書会には 11 名が参加し、各
という質問には、
「いいえ、車でいきました。
」などと答えるの
自が論文の内容や論文内の例文に対する意見・解釈を活発に述
が正しい。否定のスコープはマルチプルチョイス式の情報「歩
べながら、日本語の否定表現の特徴を勉強することができた。
いて」の部分であるためである。しかし日本語学習者は、「い
例文の中には複数の解釈が可能な文もあり、参加者にとっては、
いえ、行きませんでした」と返事をすることがある。これは、
日本語の否定表現の豊かさや曖昧さを、改めて考え直す機会と
否定のスコープを理解していないために起こる誤用である。
さて、否定の<スコープ>とは「可能な否定の範囲」であり、
なったのではないだろうか。
構文的に条件付けられているが、否定の<焦点>は、コンテクス
トにより実際に否定の対象となる範囲をさしている。
「今月の
今月の特集、
特集、面白くなくない
面白くなくない?」
くなくない?」(滝浦真人
(滝浦真人)
滝浦真人)
「今月の特集、面白くなくない?」と問われる時、聞き手は、
スコープ内に入るのは、通常述語を限定する対象語、修飾語
問いの意図を「面白いよね?」と肯定的に解釈する場合と「面
や規定語であるが、主語や状況語が否定の「焦点」になる場合
白くないよね?」と否定的に解釈する場合がある。この「P な
もある。例えば「はじめのうちは
は分からなかった。だんだん分
くない?」
(二重否定疑問)では、<[P +なく] ない?>と<P +[な
かってきた。
」のように、
「は」が使用され、尚且つ対比する肯
く+ない?]> の二通りの解釈が可能なのである。
定文が続く場合に、
「は」の直前の部分が否定の焦点になる。
著者のアンケートによると、例えば「分からなくない?」と
ここで、大島先生のから「は」の教え方のヒントをお聞きし
聞かれる場合、否定の意味の「分からないよね?」と、解釈す
た。「明日は行きません」の様な文章を教える際、「
「は」は否
る人が多数派(99%)だった。一方で「おいしくなくない?」
定文で使う」と学習者に教えてしまうことがある。しかし後で、
の文では「おいしいよね?」と肯定の意味で解釈する人の割合
「明日は行きます」という様な肯定文に出会った時、ひっかか
が 10.3%に上った。
「つまらない」や「分からない」のような、
ってしまう。このため、初めて「は」が出てくるときに、
「は」
一語として意識されやすい文は<[P +なく] ない?>と解釈され
には主題(thème)の意味と同時に対照(contrast)の意味があ
るのである。つまり、P を<なく>が打消し、それに対する同意
るということを教えておいた方が、後で困らないということで
を聞き手に求めるのが<ない?>なのである。それに対して、
「お
あった。
いしくない」は二語と感じられるため、重ねて「ない」を付け
「 塩 も 入 れないと、
れないと 、美味しくならない
美味 しくならない - とりたて詞
とりたて詞 と 否定」
否定 」
ると、
<なくない?>が 1 つのまとまりとして機能するのである。
(沼田善子)
沼田善子)
この<P +[なく+ない?]>が「~だよね」の意味になり得るのは、
「も」や「だけ」などはとりたて助詞と呼ばれる。
「お汁粉に
二重否定の婉曲さに疑問という婉曲さが加わることで、遠慮の
3
塩も入れる」の文では助詞前の語「塩」をとりたて、塩以外の
まず、
「一滴も」は弱い否定環境の中では成立しない。
(*アル
他者(砂糖)の存在を暗示している。
)また、中間
コールを一滴も飲んだのはせいぜい 3 人だった。
1)
「お汁粉に、塩も
も入れない」の文は、a)「お汁粉に塩を入れ
の強さの否定環境でも不可能である。(*もし一滴も飲めれば、
ない」を主張とし b)「お汁粉に塩以外(例えば砂糖)をいれな
忘年会も楽しくなるだろう。)著者は例文「?アルコールを一滴
い」という文を含みとしている。一方 2)
「お汁粉に、塩だけ
だけを
だけ
も飲むことを拒否した」に「?」をつけているが、読書会参加者
入れない」には、二つの解釈がある。まず、a)「お汁粉に塩を
の中では「*(非文)
」だとする人が多かった。
入れない」が主張で b)「お汁粉に塩以外(砂糖)を入れる」と
では、
「で」を付けた「一滴でも」ではどうか。上の 3 つの表
いうものである。もうひとつは、a)「お汁粉に塩だけを入れな
せいぜい 5 人
現に合わせてみると「お酒を一滴でも飲んだのはせいぜい
い(で砂糖も入れる)
」が主張で、b)「お汁粉に塩だけを入れる
だった」「もし
もし一滴でも飲めれば、
」「一滴でも飲むことを拒否
拒否
もし
のではな(くて、砂糖も入れる)」が含みである。このように
した」のように、中間の否定環境または弱い否定環境において
した
二つの読みが可能なのは、否定する焦点が「塩」であるか「塩
成り立つ。しかし否定文「ない」の文では成立しない。
(*一滴
だけ」であるかによる。
)また、肯定文においても成立しない。
(*
でも、飲まなかった。
1)の文を否定補文に挿入した文「お汁粉に、塩も入れない と
一滴でも、飲んだ。)
「一滴でも」のような表現は、van der Wouden
美味しくならない」には、二通りの解釈が可能になる。一つは
(1997) が指摘する「両極項目」に当たると考えられる。両極項
「お汁粉に、砂糖を入れず、塩も入れない(何も入れない)と、
目は、否定極性項目と肯定極性項目の両方の性質を持っており、
美味しくならない。
」で、もう一つは、
「お汁粉に(砂糖を入れ、
弱い否定環境または中間の否定環境でしか使用できない。また、
それに加えて)塩も入れない と、美味しくならない。
」という
「一度でも」のような最小の量を表す要素に「で」がついたも
ものである。単文の場合にはなかった二義性が否定補文の場合
のは、同様の振る舞いをする。
に出てくるのである。
非文に対する参加者からのコメントとして、例文「*一滴で
でも
本論文は、助詞「も」が示す「とりたての焦点」についても
飲まなかった」では、「でも」を「も」または「すら」に言い
言及している。「彼も船で南極に行った」のような文では、取り
換えれば正しい文になる、というのがあった。また、
「*誰にも
立てる要素の直後に「も」がついている。しかし、「彼は
船
話すことを拒否している」は、
「誰にも」を「全面的に」や「一
行きも
もした。
」の文では、
「南極へもいったし、
「北
切」にすれば可能だという意見もあった。また、西欧語の理論
極」へも行った」という文が暗示されている。つまりとりたて
を日本語に応用しようとすると、理論を実証するための例文に
助詞「も」は必ずしも焦点(南極)の直後に来る訳ではないの
無理が出てくることが多いという指摘もあった。
で
南極へ
である。
「 *少
少 ししか食
ししか 食べるわけではない - 記述否定と
記述否定とメタ言語的否
メタ言語的否
定」
(河西良治)
河西良治)
「*一滴
一滴でも
飲んだ - 日本語指定環境の
一滴でも飲
でも飲まなかった/
まなかった/ *飲
日本語指定環境の意味
文の前提や表現そのものの妥当性を否定することをメタ言語
論的階層性」
(吉村
論的階層性」
(吉村あき
吉村あき子
あき子)
本論文で著者は、
「否定と肯定は段階的に移り変わる連続体を
的否定といい、日本語では、
「~(という)わけではない」
、
「~
なしている」という van der Wouden の主張を日本語に応用しよ
というのではない」などの形式が用いられる。これはひとつの
うとしている。否定辞「ない」を含む文は否定文であるとし、
発話文の全体を否定の作用域に取り込んでいることになる。
否定的特徴を持つ文、例えば「~を拒否する」
「もし~ならば」
ところで、「しか」は「食事を少ししか食べない」のように、
「~はせいぜい N だ」などは、否定環境と呼ぶことにしている。
否定を必要とする。しかし、メタ言語的否定「~わけではない」
否定環境では、否定の強さにおいて三つの段階がある。まず、
の「ない」は、
「しか」に対応することはできない。例えば「*
「運動会で競技に参加した父兄はせいぜい
せいぜい十人だ」のような
せいぜい
少ししか食べるわけではない」は非文である。つまり、メタ言
「せいぜい」を使った文は、否定環境がもっとも弱い。次に、
語否定は文全体を否定するため、「~わけではない」の「~」
「彼はアルコールを飲むことを拒否
拒否する
拒否 する」の「拒否する」や、
する
にあたる部分には、文法的に正しい文が来なければならない。
「もし
もし男が来れば
ばわれわれは助かるだろう」の「もし~ならば」
もし
「*少ししか食べる」自体が非文であるため「*少ししか食べる
は、中間の強さの否定環境である。否定辞「ない」を使った文
わけではない」も成立しないのである。
「わけではない」は、部分否定や二重否定にも使用される。
は否定環境が最も強い。
(
「みんなが食べるわけではない。
」
「食べないわけではない。」
)
日本語では、否定極性項目(ほとんど、めったに)などは、
明示的否定辞「ない」を含む表現になるものが多い。しかし弱
また、例文 a)「みんなが
が食べない」と b)「みんなは
は食べない」
い否定環境または中間の否定環境の文でも、「誰にも」、「一滴
の「みんな」とは、誰を指しているのかについて意見が交わさ
も」
、
「決して」のような否定極性項目が使用できないかどうか、
れた。a)の「みんな」とは「
(私と)他の人の集合」を指してい
著者は分析している。
て、b)の「みんな」は対比の「は」があるため、
「みんなは食べ
4
ない。けれど私は食べる」のような解釈が成立するため、
「(私
2)
「馬鹿は馬鹿…だけれど、かわいい」
以外の)他の人」を指している。「は」と「が」の違いによっ
一つのカテゴリー(馬鹿)に属するが、そこからはみ出るとこ
て解釈が変わるので、日本語学習者にとっては解釈が難しいと
ろがある。他には例えば、
「安いのは安いけれど、質は悪い」
「行
ころであろう。
くことは行くけど…」
「好きは好きだけど…」などがある。
3)
「私は私です。
」
「せわしくせわしない日
せわしくせわしない日々 -否定の
否定の「ない」
ない」と強意の
強意の「ない」
ない」」
私は私で他の人とは関係ない、つまり他との関係を切って、カ
(小林賢次)
小林賢次)
テゴリーを切り離している。また、範囲を狭めているとも言え
「せわしい」と「せわしない」は、現在ほぼ同じ意味として
る。
「昔は昔、今は今。
」などもこのグループの例である。
使われている。では、この「ない」には、否定の意味があるの
トートロジーは、イントネーションによっても意味が変わっ
だろうか。古語において、形容詞「無し」とは別の接尾語「な
てくることも指摘された。例えば、「馬鹿は馬鹿」と言い切る
し」には、意味を強めたり、状態性を持つ形容詞を作ったりす
のと「馬鹿は馬鹿…だけれど…」というのでは意味が変わるの
る機能がある、とされている(
『古語大辞典』小学館)。現代日
である。
本語でも、「ない」は性質・状態を表す語に付いてその意味を
強調し、形容詞化すると定義されている(
『日本国語大辞典』
)。
以上、今回の読書会では否定に関する様々な側面を学ぶこと
「大層もない」
「滅相もない」は、
「大層な」
「滅相な」と同じ
ができた。日本語の構造そのものに、肯定と否定とがはっきり
意味で使われている。また「とんだ災難」と「とんでもない災
しない語や形式、表現方法があるのは、日本人が物事をはっき
難」の「とんだ」と「とんでもない」もほぼ同義である。「と
り言わずに曖昧にしたり、自分の意見をぼかしたりする事が多
んだ」の語源は「飛んだ」で、古語では、常識とかけはなれた
いからなのかもしれない。今回は、論文内の例文を、文法的観
奇異な、案外な、意外なと言う意味であった。また「とんでも
点や想定できるコンテクストに基づいて、じっくり分析するこ
ない」は、
「とんだ」をより強調した言い方であった(
『時代別
とができた。また、参加者が各自の解釈を述べながら話し合う
国語大辞典 室町時代編』三省堂)
。また、現在使われている用
ことができ、日本語の魅力をまた一つ発見することができたの
法「とんでもあり(ござい)ません」は、以前は「とんでもな
も、この読書会の収穫であった。
いことでございます」と使われていた。「とんでもない」の形
で慣用化されてきたため、
「ない」を待遇表現に転じたものが、
現在の「とんでもあり(ござい)ません」なのである。
さて、
「せわしない」と「せわしい」は同義語であるため、
「な
国際交流基金
い」にあるのはやはり強調の機能である。古語では、形容詞「無
在外邦人日本語教師研修
報 告
し」が大幅に使用されていた中、同音異義語である強調の接尾
語「なし(甚)」も存在していたのである。しかし実際には、
古語においても強調の接尾語「なし(甚)
」と形容詞「なし(無
栗木道子
し)
」の区別がつきにくくなっていったのも事実である。
11 月 18 日、研修を受けるため旅立った。いつもは飛行機に
「
「勝ちは勝ち」
「負けは負け」-トートロジーに潜む認知的否
乗ると“ヴァカンスだー”と気持ちが緩むが、今回は“いよい
定」
(中村芳久)
よ研修が始まる”と思うと気持ちが引き締まる。期待と不安が
「勝ちは勝ち」などの表現はトートロジー(同語反復)と呼
同居する。翌日無事成田に到着・バスで大宮駅へ。大宮駅には
ばれる。例えば、負けたスポーツ選手が「惜しかったですね」
交流基金のスタッフの方が出迎えてくださった。大型バスでセ
と言われたのに返答して「負けは負けですから」と言うとしよ
ンターへ。乗客は私の他にパラグアイから来られた方の二人だ
う。このトートロジーは、「勝ち負け」を連続するカテゴリー
け。なんか申し訳ないように思った。翌日は開校式。そこで初
として捉えている相手に対して、「勝ち」と「負け」を切り離
めて一緒に研修する仲間に出会った。研修生は 26 カ国から、
し、独立したカテゴリーとして提示している。
36 名、内訳は東南アジア 4 名、南アジア 3 名、大洋州 7 名、
大島先生自身もトートロジーを扱った論文を以前に執筆なさ
北米 4 名、中米 2 名、南米 5 名、西欧 8 名、東欧 2 名、中近東
っており、トートロジーを 3 つのグループに分類するという論
1 名。セレモニーの後、そこで一人一人自己紹介、生活オリエ
文の内容を簡単に紹介して下さった。
ンテーション後全員で記念撮影。昼食をはさんで授業オリエン
1)
「馬鹿は馬鹿」
テーション、そして図書館、館内案内がありこの日のプログラ
それぞれのカテゴリーにとどまって、枠や範囲を出ないので、
ムは終わった。翌日から情報交流セッションのため研修旅行
状況は何も変わらない。
(熱海)へ。情報交流は4つのグループに分かれて行われた。
5
各地域、機関における日本語教育に関する情報交換を行い、研
サイトの紹介、実際に文献や論文コピーを入手する方法につい
修生同士の交流を深め、また相互の日本語教育機関の現状につ
ての説明があった。音声指導法では音声に関する基礎的な理論
いて改めて考える機会を得ることができ、とてもいい交流会だ
や知識を確認して授業に生かせる具体的な指導法を学んだ。文
った。翌日は MOA 美術館の見学。美術館は丘の上にあり、熱
字指導法では日本語の字指導に必要な基礎的な知識の整理、具
海全体が見渡せる素敵なところだった。国宝も数点あり、素晴
体的な活動例や教材の紹介。これはクラスで使えそうな物がた
しい美術品がたくさんあったが、とにかく建物がすごかった。
くさんあった。日本語の文法では具体的な文法項目を取り上げ、
これで研修旅行は終わった。ちょうど週末だったのでこの後 2
日本語教育での文法の扱い方、問題点などを皆で一緒に考えた。
日間休み。ちょっと気が抜けてしまった。11 月 25 日よりいよ
いろいろな意見が出てとても面白かった。社会言語学では社会
いよ授業開始。履修内容と時間数は次のとおりです。
における日本語のバリエーションのついての紹介、そして日本
日本語教授法 17 時間、音声指導法 6 時間、文字指導法 3 時
語教育への応用を考えた。異文化コミュニケーションでは異文
間、日本語の文法 9 時間、社会言語学 2 時間、日本語教育とコ
化接触に伴う心理的な適応、言語的、非言語的コミュニケーシ
ンピュータ:基礎 4 時間、応用3時間、センター制作教材紹介
ョンなどについての講義、そしてエクササイズ。これは四人ず
3 時間、みんなの教材サイトワークショップ 3 時間、資料検索
つになって、二人が一対一で話をして、後の二人が話している
方法 1 時間、異文化コミュニケーション 2 時間、機関訪問 5 時
二人を観察してその様子を述べるというものだった。それから
間、課題研究+報告会 16 時間、特別講義 4 時間、情報交流 3
特別講義としてセンター所長の“国語と日本語”、という話そ
時間、合計履修時間 81 時間。その他課外授業として茶道デモ
して政策研究大学院大学の教授による最近の中等教育におけ
ンストレーションなども行われた。
る学校現場や教育政策から見た変遷についての話があった。そ
まず一番時間をかけたのが日本語教授法。これは講師からの
の他課外研修で茶道のデモンストレーション、裏千家の方々に
情報提供や研修生同士の話し合い、文献購読などを通して、教
よる茶道の実演を見て、抹茶とお菓子をいただいた。このよう
授活動に関する様々な問題を再考し、自己の授業を振り返るこ
に多くのことを五週間で研修した。三食付で部屋は個室。部屋
とを目的としている。これも 4 つのクラス、1 クラスは初等中
にはバス、トイレがありテレビや冷蔵庫、電話もあり、家事の
等機関対象、2 クラスは高等教育機関での初級授業者対象、3
心配もなく本当に至れり尽くせりの環境で“こんなに自分の時
クラスは高等教育機関および成人に対する中上級授業者対象、
間があっていいのかな?”と思うくらい恵まれた日々を過ごし
4 クラスは一般成人教育機関での初級授業者対象。私は 2 クラ
て来た。そして最後の日に歓送会を開いてくださった。
スに入った。ここではまず自分が行ってきた授業を振り返りな
この歓送会のご馳走が素晴らしかった。日本でお正月を迎え
がら教師の役割は何かを考え、また自分の日本語を振り返るた
られない人のためにおせち料理まで用意してくださった。そし
めにスピーチをテープに吹き込みそれを聞いて書き起こしを
て二次会は娯楽室で。カラオケで歌ったり、踊ったり、最後に
してよかった点、反省すべき点などを書き出した。自分のスピ
みんなで集まって、楽しい時を過ごし、別れを惜しんだ。この
ーチなど聞いたことがなかったので、とてもいい勉強になった。
研修の一番の成果はやはり今まで一人、孤軍奮闘の毎日で“本
その他文献購読、文法、文型の練習法について、会話、作文に
当に自分の教え方でいいのかな”という不安がいつもあったが
焦点を当てた指導法について、聴解、読解に焦点を当てた指導
ここで多くの仲間を得、同じように感じる人たちが大勢いるこ
法について、などそれぞれ活動紹介、理論確認をした。そして
と、また自分の教え方が間違っていなかった、という大きな自
機関訪問。訪問先は、国際基督教大学、麗澤大学、文化外国語
信を得ることができたという点だ。自信を持って教えることが
専門学校、西町インターナショナルスクールの四校。そこで授
できるということはあがり性の私はいつも授業の前にドキド
業見学をおこなった。私は麗澤大学へ行った。次に時間をかけ
キと落ち着かないがその気持ちが全く消えて、平常心で臨むこ
たのが課題研究。これは事前に提出してあった課題を担当講師
とができるようになったのが大きな変化だと思う。この貴重な
の助言を受けながら各自で研究活動を進め、最後に全体で研究
経験をさせてくださった皆様に感謝します。そしてこの研修を
成果の報告会を行った。空いている時間は図書館などでほとん
一人でも多くの方々が受けられますように。私はこの研修をこ
どの時間この課題研究に費やした。コンピュータと日本語教育
れからの授業で生かしていかれるよう努力していきます。
の授業は基礎と応用に別れ、基礎ではインターネット利用の価
値、インターネットを使うための環境作り、教師のための情報
収集の方法、コンピュータを利用した教室活動などを勉強した。
応用では川村先生による“リーディングチュウ太“の紹介と使
い方、インターネット上の素材の教材化などとても面白い講義
だった。続いて、資料検索方法。インターネットを利用して様々
な資料、情報、文献の探し方、必要な情報、文献収集に役立つ
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…という心配をよそに、どの模擬授業にも予想以上にたくさん
EXPOLANGUES
参加してくれ、座れない人もいました。模擬授業専門受付係の
報告
人も、日本語は一番参加者が多かったと言ってくれました。
これは模擬授業だけではなく、ブースに立ち寄ってくれた
入場者の数も 500 人を超え、ひっきりなしに質問に答えなけれ
EXPOLANGUES への参加
への参加
ばならなかったという、うれしい慌ただしさでした。
今回、新宿日本語学校ブースの一部では、フランス日本語
フランス教師会賛助会員
フランス教師会賛助会員
教師会賛助会員でもある KOTOBA 出版社が日仏仏日辞書 DIKO を
SNG France
紹介しました。
エクスポラング参加を通しての感想は、実質的には日本か
毎年恒例のエクスポラングが今年も 1 月 28 日(水)から 31
ら参加した唯一の日本語ブースだったこともあってか、入場者
日(土)まで、パリ 19 区のヴィレットにあるレグランドアルで
に日本語関係情報をあらゆる角度から紹介しなければならな
開催されました。世界の言葉とそれに関係する活動が一同に集
かった、ということでした。思わぬ質問を受けたことも何回も
まることでユニークな機会ですが、今年はすでに 22 回目を数
ありました。もちろん日本語学校としてその場ですべて答えら
え、定番として人気を博しています。企画主催は 3 年前から、
れるわけではなく、エクスポラング終了後返事するといったこ
学生向け雑誌 L’Etudiant を筆頭に様々な出版をしている会社
ともありましたが、言葉に関係した周辺情報もなるべく豊富に
EditionsGénération が担当しています。
そろえたほうがよかったと思いました。
会場は学校関係、語学試験、出版社、観光協会、語学講習
私的機関の個人参加ではありましたが、単に一機関を超え
企画、模擬授業教室と活動分野によって区分され、単なる言葉
た、“日本語”という普遍的なものへの関心がひしひしと伝わ
の紹介ではなく、言葉を1つの切り口にして、それにつながる
ってきました。このような機会に必ず日本語関係のブースがあ
すべてを紹介しようという姿勢を感じました。
り、日本語についての質問疑問に答えられるような受け皿の必
今年のテーマは『Les langues, un atout économique(経済の切
要性を感じました。それが日本語を世界にアピールし、日本語
り札としての言語)』というもので、主旨は経済的人的国際交流
教育のさらなる活性化へとつながるのではないかと確信して
の面から、従来の言語教育ではあまり重きを置かれなかったア
います。
ラビア語、中国語、ポルトガル語、スラブ圏の言葉に注目する
(文責 石川弓子)
というものでした。
初日の 28 日はプロフェッショナルの日として 10 時から 21
時まで、29 日から 31 日は 10 時から 19 時の開場で、28 日の午
学 校 紹 介
後7時にはリュック・フェリ教育省大臣の挨拶があり、また 30
日午後にはラファラン首相の視察と、フランス政府も多大な支
持を示しているようです。
Institut Pour la Promotion des langues (IPL)
開催後のまとめでは、今年度のブース出展数は 223。延べ入
場者数は約 22000 人という数字が出ています。他の大きな見本
市に比べると決して多くはないのですが、本当に興味を持った、
問題意識のある入場者がフランス全土はもちろんのこと、フラ
内田陽子
昨年のフランス日本語教師会シンポジウムでアヌシーでお
目にかかってから、
もうそろそろ 1 年が過ぎようとしています。
ンス以外からも訪れていました。
シンポジウムの後援団体のひとつであった私の勤務している
日本語関係については何年か前に日本語書籍の紹介を中心
学校の形態、内容が珍しいということで、今回ご紹介させてい
に続けてブースが出ていたことがありました。また 1998 年に
ただきます。
は招待言語として選ばれたり、フランス日本語教師会が 1998
学校の正式名称は Institut Pour la Promotion des langues
年、2001 年に招待参加した経緯があります。
(IPL イーピーエル、以下すべてこの名称を使用)。日本語に訳
このような状況の中、私的機関という立場で新宿日本語学
そうとすると
校(SNG)が今年ただ1つの日本語ブースとして出展しました。
語学能力開発学院といったような、奇妙な名前
になってしまいます。
日本での語学講習の紹介、模擬授業実施、教科書 CDRom の紹介
ということから
をし、模擬授業では、日本から江副隆秀校長、森恭子講師が特
どうして、そんな名前がついたのか、
この学校の始まりを説明することができま
す。
別参加、重箱文法による 1 時間の模擬授業を初日は 2 回、他の
IPL が創立されたのは
日は 1 回ずつ行いました。生徒さんが集まってくれるかどうか
1959 年、Haute Savoie 県や地元の
団体からの要請で作られた、文字通り、社会的地位向上のため
7
の成人教育機関としてでした。当時は語学よりも、社会人職業
ることもあります。たとえば何年か前に、カトリック系ラジオ
訓練のためで、会計、電気技術などが教えられていたそうです。
局と共同で、10 カ国語の教師たちが
現在のように企業が社員の能力開発の義務を持つようになっ
介する「世界の音楽」という番組がシリーズで放送されたり(私
たのは 1971 年からのことなので、それに先立つこと 12 年、社
も日本の伝統音楽と武満徹、という題でかなり個人的な音楽番
会の中での能力開発の必要性についての先見の明があったの
組を作りました。)、教師が提案する
だと現在の校長は誇りにしています。
することも多く
語学教育専門機関になったのは、1967 年からで、学校の経
自分の国とその音楽を紹
文化紹介的な行事を後援
今年は中国年なので
中国語の教師とフラ
ンス語を学ぶIUTの中国留学生が「中国の夜祭り」を計画し
営形態は Association で今でも非営利の団体として登録されて
ています。
います。歴代の代表者は、県議会議員の中から選ばれ、学校長
教師たちは、年契約で雇用され、その言語を母国語にしてい
と事務秘書、会計などの職員が社員として雇用されています。
る人が多く、授業の合間に情報交換をしたり、和やかな雰囲気
現在の授業は、23 ヶ国語を教えることができる、と言われて
がいつもあふれています。どう授業を作るかと他の言語を受け
いますが、グループ授業が行われているのは、英語、ドイツ語、
持つ教師たちと話し合うのも、また違った観点を与えてくれま
スペイン語、イタリア語、アラビア語、ロシア語、中国語、日
すし、何を達成目標にしているのかなど、自分の考えと比べて
本語の 8 ヶ国語です。時代が変わるとともに、需要も変わると
みることができます。
この学校で授業をもつようになって 7 年、
いったらよいか、アジアの言語にグループ授業ができるほど人
日本語が、特別な極東の言語から、ちょっと習ってみようか、
が集まるようになったのはこの 10 年と言ってもいいと思いま
という
す。今でも、70 歳以上の人では、このオートサヴォア県から出
す。そして、20 年前はビジネスに日本語が役立つと言われてい
たことがない、と言う人に会うことが多いのですが、その孫た
たのが 今では中国語が主流になり、どの言語の授業メソッド
ちは、世界に羽ばたく世代とも言えるでしょう。
も実践型、使える語学に向いたものが増えています。毎年、決
グループ授業が基本的な教育活動の柱で、多くは夜の授業で、
近づきやすい言語に変わってきていることを感じま
められた時間数で何を優先的に教えられるかとプログラムつ
誰でも登録できるので、学生から退職者、会社から送られて来
くりに頭を悩ませますが、地域に根ざした学校なので、私の社
る人、また再就職のための職業訓練として来る人と、それぞれ
会参加の窓口であることは間違いありません。
動機も年齢もさまざまです。それ以外にアヌシーの大学 IUT,
ESIA(Ecole supérieur d’ingénieur d’Annecy)や 私立大学か
ら語学教師派遣を依頼されて、6 ヶ国語の教師を派遣していま
コ ラ ム
す。これは 大学の経費節減の一環として需要が増えてきた分
野で、これから
もっと需要が伸びそうな分野でもあります。
このグループ授業以外にも、個人向け、企業向け授業、通訳
日本語教師、
日本語教師、私の場合
や翻訳などの語学に関するサービス全般、および英語、イタリ
ア語、ドイツ語の能力試験センターともなっています。また、
執筆者の要望によりこの項目は省略されています。
社会的活動として、裁判所、警察、税関、病院、Gendarmerie
等公共機関から、犯罪、不法滞在、急病など緊急な場合に教師
たちがボランティアで協力することなども時々あるそうです。
昨年の日本語教育シンポジウムの後援など、語学や文化紹介
に関する活動も後援していて、地元のメディア媒体と企画を作
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フランス日本語教師会便り第 26 号
発行:2004 年 3 月発行
発行人:フランス日本語教師会
Association des Enseignants
de Japonais en France (AEJF)
2,impasseArchin,
92240Malakoff
Tél:0146550422/Fax:0146573944
Email :[email protected]
http://e.aejf.free.fr
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