親権法における諸問題の検討−面会交流、養子縁組に着目して−

The Murata Science Foundation
親権法における諸問題の検討−面会交流、養子縁組に着目して−
A Study of Parental Authority−The Problems of Visitation Rights and Adoption−
H26海人6
派遣先 リヨン第三大学 家族法研究所(フランス・リヨン)
期 間 平成27年9月1日~平成27年11月30日(91日間)
申請者 佐賀大学 准教授 栗 林 佳 代
高裁平成26年7月17日判決について報告した。
海外における研究活動状況
日本の民法典中の親子関係に関する規定は、
研究目的
1804年のフランス民法典の規定を参照したも
親権法を巡る諸問題について、フランス法
のが多い。そして、親子関係という普遍のテー
との比較法の観点から検討し、日本における
マにおいては、両国で共通する事実上の問題
これらの問題点の解決策を探る。
点も多く、日本でもフランスでも同様の問題に
ついての対応がなされてきた。しかし、日本と
海外における研究活動報告
フランスでは、その対応に大きな差があり、始
平成27年9月1日からフランスのリヨン第三
まりにおいては多くの規定が類似していたにも
大学の家族法研究所に客員研究員として籍を
拘わらず、現在では両国の変遷は大変異なっ
設けてもらい所属し、研究活動を行っている。
ている。とりわけ、日本では、母子関係の成立
これまでのところ、主な研究活動としては、文
は民法典の規定に拘わらず、出産により定立
献調査である。その合間に、研究所で定期的
される解釈が定着しており、また、父子関係
に行われる会議やその他の研究会などに出席
では、嫡出の父子関係について、父性推定の
している。当該研究所の最近の研究テーマは
排除は未だに解釈で行っており、他方、フラ
「家族の連帯」である。
「家族の連帯」は、近年、
ンスでは、これらについて立法により対処して
日本の家族法学会でも着目されており、平成
いる。こうした両国の対応の違いは、大変興
26年11月の家族〈社会と法〉学会では「無縁社
味深いものであると申請者の所属する研究所で
会と家族法」というテーマの下に「家族の連帯」
議論がなされた。
について検討がなされたところである。申請者
また、申請者は、平成27年9月に下記の日
の所属するリヨン第三大学の家族法研究所は、
程(①)で、パリにある国立の東洋の言語およ
研究所長の主導の下、ヨーロッパの主だった
び文化を研究する機関であるイナルコでの研究
国の研究者と連携して、数年間の予定で「家族
会で、非嫡出の父子関係について、研究報告
の連帯」についての研究を遂行している。その
を行った。同研究会では、ほかに二つの報告
ため、申請者は、その一環で「家族の連帯」の
がなされ、婚姻と内縁、江戸時代まで遡った
中でも父子関係という「連帯」について、下記
調査による婚姻と非嫡出子というテーマと併せ
の日程(②)における研究所の会議の際に、最
て、日本の家族について議論がなされた。
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Annual Report No.30 2016
①パリ・イナルコ(Institut national des langues
et civilisations orientales)
「日本における非嫡
出子の法的問題点についての若干の考察」
この派遣の研究成果等を発表した
著書、論文、報告書の書名・講演題目
1) パリ・イナルコ(Institut national des langues et
civilisations orientales)
「日本における非嫡出子
(平成27年9月23日)
の法的問題点についての若干の考察」(平成27
②リヨン第三大学・家族法研究所「最高裁平
成26年7月17日判決-父性推定について」
年9月23日)
2) リヨン第三大学・家族法研究所「最高裁平成26
(平成27年10月14日)
年7月17日判決-父性推定について」
(平成27年
10月14日)
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