監査委員選任に対する天下みゆき県議の反対討論

監査委員の選任に対する天下みゆき議員の反対討論=二〇一三年十二月六日(本番用)
私は日本共産党宮城県議団を代表して、ただいま提案されました議第三百二十七号議案、
「監査委員の選任につき同意を求めることについて」に反対し、討論いたします。
地方自治法第百九十六条は、議員のうちから選任する監査委員の数は、監査委員の定数
が4人のときは2人または1人と定めており、定数四の都道府県や政令市においては、1
人ないし2人を議員選出としております。そして、当該自治体が議員選出の監査委員を二
人にするか一人にするかは、執行部及び議会の自由裁量とされています。
実際、佐賀県、福岡県、滋賀県、長野県の4県が議会選出監査委員を1人としています。
またこの間、岐阜県、鳥取県、徳島県の3県は識見を有する監査委員を拡充してもかまわ
ないとする法改正にもとづき、識見監査委員を4人に拡充しています。
本県の場合、食糧費問題やカラ出張など、公金の不正支出問題への厳しい世論が高まる
中で、平成七年十月十五日に、県議会に議会改革検討委員会が設置され、検討項目の一つ
に、監査委員制度の改善が議論されました。その結果、平成八年二月二十八日、改革検討
委員会の行った第一次報告書は、議会からの監査委員選出については、監査委員制度の充
実強化が図られることを条件に、現行の2名選出から1名とすることを考慮するとの意見
が多数を占めたとの結論が明記され、報告書の結果を踏まえ、速やかに改善されるよう期
待するものであると述べられています。
監査委員の4名のうち残る2名が県庁OBであった当時の慣習は、既に2名とも外部委
員に改めてられており、平成十一年度からは、外部監査も設置されております。改革が進
んでいないのは、まさに議会選出監査委員の定数問題だけです。全国的に見ても、平成九
年二月の第25次地方制度調査会の答申ですでに、議員選出監査委員の定数について、
「上限を一人とすべきではないかという有力な意見もある」とし、今後の検討課題とされ
ています。
こうした流れがある中で、旧態依然のままの提案がされてきたことについて、平成二十
三年の三月二日に、横田議員が提案権を持つ執行部が1人とすることを決断することを求
め、知事に質疑しました。知事は、「改選後の議会の御意向も確認しながら、皆様でその
方がいい(つまり1人でいい)ということであるならば、六月に条例改正案を提出するこ
ともやぶさかではございません」と答えました。これは自らの責任でやれることを議会に
ボールを投げ返すという主体性に欠ける問題がある一方、執行部側には1人にすることへ
の障害が無いことが明らかとなりました。その後、ご承知の通り、大震災があり、改選時
期がずれるなど曲折はありましたが、この点を踏まえての一定の協議がおこなわれ、今日
に至っています。
それは平成24年3月9日に、議長から検討事項「議会選出監査委員のあり方」の諮問
を 受 け 、 議 会 改 革 検 討 委 員 会 で 検 討 さ れ 、 本 年 11月 21日 に 議 長 に 検 討 結 果 が 答 申 さ れ て い
ます。その「検討内容」の報告書では、「一部の会派(私どもですが)からは、議会選出
監査委員は1名にすべきであり、また、議員には執行機関を監視する役割があることから、
議会選出監査委員としての監査委員報酬を返上すべきといった意見も出された」とありま
す。しかし、結論は以下の通りとなっています。「議会選出監査委員を減じ、識見監査委
員を求めようとしても、識見監査委員については、民間企業会計と公会計の制度の違い、
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報酬や勤務実態等といった事情から人材が不足していることや、現状においても議会内の
議論全てが識見委員に十分伝わってない状況があることから、議会選出監査委員を減らせ
ば、県民の声が伝わりにくくなるおそれがあるとの意見も出された。これらの意見を踏ま
え、執行機関を監視するという議会の役割にかんがみ、現行どおり2名を選任することが
適当との判断に至った」との結論です。
これでは宮城県議会は、先人の議論をないがしろにしていると言われても仕方ありませ
ん。地方制度調査会などでも地方自治法に定められた監査委員制度をめぐる諸検討の核心
は、監査の質をいかに高めるかであり、そのため識見監査委員の比重を高めることができ
る法改正が行われるなどしてきました。
監査委員とは、本来地方自治体の事務が住民の福祉増進に努めるように行われているか、
最少の経費で最大の効果をあげるように行われているかどうかをチェックする、極めて重
要な役割を持っています。住民からも、執行部を厳格にチェックする「お目付役」を期待
されています。そうした視点から見れば、識見を有する監査委員を拡充する方向をとるな
らまだしも、議会選出監査委員を2人に固定化するかの議論は、宮城県議会が積み重ねた
改善方向にも、住民の期待にも、そして全国的な改善の流れにも、まさに二重三重に逆行
するものと言わざるをえません。
なお、二〇〇九年八月に岡山県で開催された「第16回全国市民オンブズマン大会」で、
「監査委員アンケート調査結果」が報告されていますが、その中に「監査委員の報酬につ
いて」も触れられています。
議員監査委員の報酬額は、都道府県の最高額は東京都の月額24万1千円、最低額は兵
庫県の月額8万2千5百円ですが、宮城県の場合は月額14万1千円、年間169万2千
円が支給されています。私ども日本共産党県議団は、議員監査委員への報酬制度そのもの
を見直すべきと考えますが、オンブズマンの報告書では、「今回の調査では、地方自治体
の財政状況が厳しいことを反映し、条例で定めた報酬額を一定期間減額して支給すること
にしている地方自治体も少なくなかった」とされています。
そこで、県当局に宮城県議会選出の議員監査委員が報酬の減額ないし返上した事例が過
去にあるかどうかを問い合わせましたが、それは無いということでした。
また、もう一つ指摘したいことは、議員監査委員の任期の問題です。今回も知事に途中
で辞任届けが出され、本日の議会選出をもって監査委員が交代する訳ですが、法律では議
員の任期中、すなわち通常は4年間ですが、少なくとも4年間の任期があるのに、なぜ2
年間で議員監査委員がコロコロ代わるのか。識見を有する監査委員の任期は、監査技術の
熟 練 度 が ま す ま す 必 要 と さ れ る こ と か ら 、 2 年 か ら 3 年 、 そ し て 昭 和 49年 の 改 正 で 議 員 選
出監査委員に合わせて任期4年間とした経過があります。議員監査委員だけをなぜ2年で
交替するのか、これは実に不思議な現象であります。議長も任期2年で交代する慣例があ
るからか、あるいは会派で順番待ちになっている方が居るためなのか、いずれにしても議
会側の都合で2年交替になっております。私は議員監査委員の2人枠を既得権のようにと
らえ、2年ごとに順番待ちで交代を繰り返すようなやり方をしていて、果たして県民に責
任持つ監査が本当にできるのだろうかと率直に思います。また、予算議案等に賛成してき
た議員が、果たして厳格なチェックができるのかどうか、さらに月額14万1千円という
報酬が第2給与という面がないのかどうかなど、住民目線からみれば、その妥当性が厳し
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く問われていると思います。
以上、あらゆる角度から見て、議会選出監査委員を従来通り2人枠で提案するというこ
の人事案には、提案された議員の能力・識見などの問題ではなく、同意できません。した
がって、議第三百二十七号議案には反対であることを申し上げて、私の討論といたします。
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