2015 年 6 月 21 日宣教 神は偉大な人生の演出家 出エジプト記1章22節~2章10節 お早ようございます。先週は特別集会で岩崎先生の素晴らしいメッセージを聞くことが 出来ましたが、今朝は旧約聖書のモーセの物語から、私達に神様が何を語ろうとされてい るかを学びましょう。 まず 1 章の始めの部分は、創世記のヨセフ物語の展開が述べられていて、兄達からエジ プトに売られたヨセフは、飢饉からエジプトを救い、ファラオに気にいられ、同じく飢饉 に苦しんでいたヤコブ一族もヨセフのお陰でエジプトへ移住します。先祖が神から約束さ れたカナンの地をヤコブが簡単に捨ててエジプトへ移住したのを不思議に思われますが、 実はヤコブは当初カナンを離れる事に消極的でしたが、「エジプトへ下ることを恐れては ならない。あなたをそこで大いなる国民にする。私が共にエジプトへ下り、必ず連れ戻す」 (創 46:3~4)との約束を神から得ていたからエジプト行きを決心したようです。 さてユダヤ民族はどのくらいエジプトに奴隷の状態で寄留していたでしょうか?出エジ プト記 12 章には、彼等は 430 年エジプトに居たとあり、その間に当初 70 人だったヤコブ 一族は、エジプトを出る時は成人男子だけで 60 万人にもなっていた(民数記 1:46)とありま す。エジプトではユダヤ人が増え広がったことが脅威となり、特にヨセフのことを全く知 らない王の目には、彼等がエジプトを脅かす巨大な勢力に映ったのです。歴史を知らず、 そこから学ぼうとしない権力者の貧弱さと誤りが見て取れます。日本の首相が過去の歴史 を正しく顧みて反省しないとアジア諸国に批判されている姿に似ています。 1:11 を読むと、王の態度に反応するかたちでエジプト人は、ユダヤ人に強制労働を強い て、自分達の支配の下に置こうとしています。ここを読むと差別迫害は最早王の意志だけ ではなく、国民感情と化していることが解ります。これは世界の歴史の中で繰り返されて きたことです。ナチスドイツにおけるヒトラーのユダヤ人虐殺、戦前の日本の中国、韓国 人に対する虐待、最近のニュースでは、ミャンマーの少数民族ロヒンジャ族が迫害から船 で脱出しても近隣の国が受け入れを拒否した為海上で漂流するという事件が起きました。 こうして国をあげてエジプト人はユダヤの寄留の民を迫害しましたが、ユダヤ民族は増 え続けてエジプト人を恐れさせ、憎まれるようになりました。 ファラオは密かにユダヤ人の男児殺害を企て、助産婦を呼びつけて、女は生かしておいて も良いが、男の子は殺せと命じます。然し助産婦達がヘブライ人(ユダヤ人)で、神を畏れる 者だったので、王の命令に従わず、「ユダヤの女は丈夫なので、駆けつける前に皆産んで しまいます」と嘘をつきます。ユダヤ人による国家転覆を恐れていた王は、全国民に「ユ ダヤの男の子は生まれたらすぐナイル川に放り込め」という命令を出します。 今日の箇所で、実に興味深い事が述べられています。ファラオは女は生かしておいてよ いと言っていますが、相手にしようともしなかった女性が歴史に関わり動かすのです。さ てユダヤ人の中のレビ族の女が男の子を産み、可愛いかったので3ヶ月家に隠していまし が、もう隠しきれないというので、パピルスで編んだ籠に入れてナイル河畔に置いてきま す。勿論誰かに拾われ育てられることをき期待してのことです。姉ミリアム(後に女預言者 として活躍した)が物陰から見ていると、何とナイル川に水浴びに来ていたファラオの王女 に拾われます。王女は赤ん坊をユダヤ人だと解っていたが、「不憫に思って」(6 節)自分が 育てる決心をしました。その様子を見届けたミリアムが、「この子に乳を飲ませる乳母を 連れて来ましょう」と言って実の母親を連れてきます。 こうしてこの赤ん坊は結果的には実の母親のもとで大きくなるまで成長するのです。こ れも実に皮肉な展開です。殺害命令を出した王家によってこの子が保護され、しかも王家 に属する者として成人してゆくのです。そしてもっと驚くべき事は一つの小さな命が助産 婦達、姉ミリアムと実の母親、そしてエジプトの王女によってつながれてゆきます。王女 はこの子にモーセと名付けますが、これは「引き上げる」という意味のマーシャーだとあ りますが(10 節)、後にこのモーセこそが、ユダヤの民を「奴隷状態から引き上げる」ので す。世界史の中で、女性の地位はずっと低く扱われてきました。現在もそうです。 死ぬべき運命の小さな命が、女達のリレーによって生き延び、しかも殺そうとした側の 庇護の下に成長し、後にイスラエル人のリーダーとなるという実に不思議な物語は、一体 何を告げようとしているのでしょうか? 実ははこれは主なる神の綿密な筋書き通りに起こったことで、モーセの生涯は神様の演 出によるものなのです。皆さんも自分の人生を振り返って見て下さい。ある人は、順風満 帆の幸せな人生だったかもしれません。またある人は病気や災難に見舞われる不幸な人生 だったかもしれません。生まれ変われるならもっとこんな人生が送れたらと思う人もおあ りでしょう。こんな人生が神様が作られた筋書きだったなんて、と思う人もおありでしょ う。 私は自分の人生を振り返ってみる時、つくづく神様の偉大なご計画にいつも心打たれま す。長崎で爆心地から 1.3 キロの地点で被爆し、瓦礫に埋もれて死ぬ筈だった私を、兄を 送って救い出して下さり、前後 12 回に及ぶ全身麻酔による手術をうけても尚生き長らえ させて下さった神様、私に素晴らしい妻と子供達を下さった神様に感謝せずにはおれませ ん。 この間し声楽家荒垣勉氏がテレビのインタビューの中で、自分は戦争のお陰でこの世に 生まれたと言っていました。彼の父はメキシコ系アメリカ兵で、沖縄へ駐留して来た為に 自分が生まれたというのです。彼が生まれるとすぐに家族を捨ててアメリカへ帰ってしま い、お母さんも自分を祖母に預けてさっさと再婚し、おまけに産婆さんのミスで間違って 劇薬で目を洗った為幼児期に失明してしまいました。荒垣氏は成長するにつれ、自分を捨 てた両親を恨み、盲目にした助産婦を恨み、とりわけ父を恨んでアメリカへ行って探し出 し殺したいとずっと思っていました。ところがある声楽の専門家に「こんな素晴らしい声 をあなたは誰から譲り受けたのか?」と言われて,父親がラテン系のアメリカ人だったこと に気づき、荒垣氏は神のご計画で自分は今こうして歌うことが出来るのだと分かって、神 の導きに感謝したというのです。 皆さん、自分の人生を考えてみて下さい。波瀾万丈の人生を送って来られた方は、そ の都度神が逃れる道を備えて下さった筈です。平凡な人生を送って来たと思われる方には、 あなたが試練に耐えられないと思ってあなたに見合う道を備えるといった具合に、神様は 夫々ふさわしい人生を準備して下さるのです。そしてあなたが今日こうして教会へおいで になっているのも、神の導きによるものです。日々生かされていることを感謝して祈りま しょう。
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