2015 年(平成 27 年)3 月 25 日(水) The Daily NNA タイ版【Thailand Edition】 第 04963 号[13] 第18回・無期労働契約の終了その2 <今回のポイント> 今回は、無期労働契約の終了の2回目として、 「正当 な理由」が認められない場合及び重大な企業秩序違反 に基づく懲戒解雇時の法的規制・権利義務関係を主に 述べる。 関する規則の重大な違反行為」が挙げられている。 上記で述べたように、使用者としては、不当解雇のリス クをできるだけ低減させるために、就業規則にどのような 行為が許されないのかについて具体的かつ網羅的に記載し ておくべきであろう。 3.集団的解雇 (1)総論 (1)損害賠償金の支払い 労働法 95 条は、使用者に対し、業務の減少、企業内部の 使用者が「正当な理由」無く、労働者を解雇した場合(所 再編成を理由とする集団的解雇を認めている。 謂不当解雇のケース)、当該労働者は使用者に対し、事前通 文言上、無期労働契約だけでなく有期労働契約にも適用 知に代わる補償金及び解雇補償金の支払いとは別に、損害 があるのか明らかではないが、いずれの契約にも適用があ 賠償金の支払いを求めることができる(労働法(以下法令 るものと解されている。 名省略)91 条1項、2項)。 また、何人、どのくらいの割合の労働者を解雇する場合 損害額は解雇補償金と同額と推定される(同条3項)。 に本条の適用があるのかについても文言上明らかでないた この点、労働者側が解雇補償金額以上の損害額を立証し め、この点についての仲裁裁定の集積が待たれる。 た場合であっても、損害額の上限は解雇補償金相当額であ (2)手続(95 条2項) り、これを超えることはないものと解される。 使用者は集団的解雇を行う場合、まず、労働者代表に対 (2)再雇用及び損害賠償 し、書面による解雇に関する通知を行わなければならない。 解雇したにもかかわらず、解雇に正当な理由が認められ ここにおいて解雇は、使用者及び労働者代表の希望とは ないというケースにおいて、近年、労働者が再雇用を求め 関係なく、まず、専門性が最も低いセクションの労働者か た場合には、使用者に対して、当該労働者の再雇用及び当 ら行われなければならず、当該セクションの労働者が全員 該労働者に対する解雇時から再雇用時までの期間の賃金相 解雇された後に年次の新しい労働者を解雇しなければなら 当額の損害賠償金の支払義務を認める内容の仲裁裁定が出 ない。 されている(労働仲裁 2014 年 24 号事件等参照)。 なお、結婚している労働者についてはその年次に1年が、 上記内容の仲裁裁定により、解雇を行う場合の使用者側 扶養している子供がいる場合にはその人数に応じた年数が のリスクは飛躍的に高まったものと言える。このリスクを 加算されるため注意が必要である。 低減させるためには、就業規則における懲戒に関する規定 (3)再雇用の権利 を具体的かつ網羅的に充実させ(懲戒手続を含む)、実際に 集団的解雇において解雇された労働者は、使用者が同じ 労働者を解雇する場合には就業規則に記載された手続を履 セクションの労働者を雇用する場合、解雇後2年間、優先 践した上で、十分な証拠を残しておくことが肝要であろう。 的に再雇用される権利を有する(同条3項)。 なお、仲裁裁定によれば、労働者は本項の再雇用及び解 使用者が、あるセクションの労働者を雇用する場合、集 雇時から再雇用時までの期間の賃金の損害賠償請求と前項 団的解雇において解雇した者で同じセクションに属した者 の損害賠償請求を選択的に行うことができるものであると に対して書面による通知を行わなければならない(同条5 解される。 項)。これに対して書面を受け取った元労働者は、再雇用を 望む場合、書面を受け取った日から1週間以内に使用者の 2.重大な企業秩序違反を理由とする懲戒解雇 事業所を訪れなければならない(同項)。 (1)総論 ア 労働者の重大な企業秩序違反を理由とする懲戒解雇 <プロフィル> の場合、使用者は当該労働者に対して事前通知を行うこと ■村上暢昭(日本法弁護士)Mar&JBL Law Office 所 なく(82 条)、また、解雇補償金等の金銭の支払いを行う 属・カンボジア常駐。カンボジア進出企業に対する ことなく(89 条1項)、当該労働者との労働契約を終了さ 法務支援業務を取り扱う。主な著作は「カンボジア せることができる。 重大な企業秩序違反を理由とする懲戒解雇は、使用者が 会社法」 「カンボジア労働法」 「カンボジア会社設立 当該秩序違反行為を知り得た時から7日以内に行われなけ マニュアル」等 ればならない(26 条2項)。 ■Mar&JBL Law Office:JBL Mekong グループのカ イ なお、企業秩序違反が「重大」とまでは言えない場 ンボジア現地拠点で、カンボジア弁護士協会より認 合であっても、使用者は当該労働者を懲戒解雇することが 可能である。 可を受けた法律事務所。カンボジア人パートナー弁 この場合、使用者は、「正当な理由」に基づく解雇とし 護士を中心に総合的なリーガルサービスを提供。 て、労働者に事前通知を行い、解雇補償金を支払う必要が [email protected] ある。 (2)重大な秩序違反行為(Serious Misconduct) 労働法 83 条2号は、労働者による重大な企業秩序違反行 為を例示列挙しており、ここには「訓練、安全又は健康に 1.「正当な理由」がない場合の権利義務関係 【ASIA】www.nna.jp/ 【EU】www.nna.eu/ Copyright(C) NNA All rights reserved. 記事の無断転載・複製・転送を禁じます
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