世界の酪農乳業の動向

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トピックス…③
世界の酪農乳業の動向
世界 91 か国の研究者の協力によって構成され、酪農乳業に関する情報を発信しつづけているIFCN
(International Farm Comparison Network)は本年 10 月、“IFCN Dairy Report 2012”を公表した。そ
の中から、2011 年における生乳生産量・処理量、乳業の動向、生乳生産コスト等に関する情報を紹介する。
主要20か国の生乳生産量と処理量
2011 年における世界の生乳生産量(水牛乳を
世界の大手乳業の動向
2011 年における生乳処理量の世界トップ5乳
含む、以下同じ)は、7億 870 万トンであった。
業は、Fonterra(ニュージーランド)2,160 万ト
ただし、これは酪農家が自家消費した量と消費
ン(世界シェア 3.0%)
、Dairy Farmers America
者に直接販売した量を含んでいるため、実際の
(米国)1,710 万トン(同 2.4%)
、Lactalis(フラ
生乳処理量はその 60%程度に相当すると推測さ
ンス)
1,500 万トン
(同 2.1%)
、
Nestle
(スイス)
1,490
れる。
万トン(同 2.1%)
、Dean Foods(米国)1,200 万
生乳生産量の世界トップ5は、インド(1億
トン(同 1.7%)
、Arla Foods(デンマーク・ス
2,120 万トン)
、米国(8,900 万トン)
、パキスタ
ウェーデン)1,200 万トン(同 1.7%)の順となっ
ン(3,560 万トン)
、中国(3,740 万トン)
、ブラ
ている(表2参照)
。
ジル(3,300 万トン)の順となっている。なお、
この生乳処理量では、Lactalis(フランス)と
乳業者が処理している乳量の世界トップ5は、
Arla Foods(デンマーク・スウェーデン)が経
米国(8,850 万トン)
、中国(3,280 万トン)
、ド
営統合や企業買収によってランキングを上昇さ
イツ(2,930 万トン)
、フランス(2,470 万トン)
、
せ、Bongrain(フランス)と Glanbia(アイルラ
ブラジル(2,250 万トン)の順となっている(表
ンド)
、Wiseman(イギリス)を企業買収した
1参照)
。
Muller(ドイツ)が新たに上位 20 社に名前を連
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世界計
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08 Japan Dairy Council No.542
生乳生産量
(百万トン)
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生乳処理量
(百万トン)
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ねている。
上昇する生乳生産コスト
IFCNは 2000 年以降、世界 51 カ国から生
乳生産コストに関する情報を集め、その動向を
分析している。このコスト分析では、家族労働、
自家所有地、自己資本などを機会費用として加
え、子牛、廃用牛、堆肥などの副産物販売額と
農家直接支払いの補助金を減じ、各国の平均コ
ストを試算している。
その結果、生乳生産コストの水準に応じて、
各国が次のようなグループに分類されている。
生乳 100kg 当たり 30 米ドル以下で最もコスト
が低いグループは、アルゼンチン、チリ、ペルー、
インドネシア、パキスタン、ナイジェリアなど
中央アフリカ諸国。40 米ドル以下は、オースト
ラリア、ニュージーランド、南アフリカ、インド、
エジプト、アルジェリア、ポーランドなど東欧
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諸国、ロシア。50 米ドル以下は、米国、ブラジル、
ける労賃の高騰、第三はエネルギーと化学肥料
英国、アイルランド、モロッコ、チュニジアで
の高騰であった。2012 年は、飼料価格とエネル
ある(図1参照)
。
ギーの高騰に加え、世界的な農地取引の活性化
2011 年における生乳生産コストは、前年に比
べて平均で約5米ドル上昇したが、その第一の
(地価の上昇)により、生乳生産コストは約5%
上昇することが見込まれている。
原因は飼料価格の高騰、第二は酪農新興国にお
図1 世界各国(地域)の平均規模酪農経営の生乳生産コスト
No.542 Japan Dairy Council 09