科目「課題研究」におけるインターネット技術の活用

<通信・制御>
科目「課題研究」におけるインターネット技術の活用
―インターネットを用いたデータベースの検索―
県立浦添工業高等学校教諭 大 城 英志郎
Ⅰ テーマ設定の理由
さらに,SQL Server を含む小規模な LAN を構築
オペレーティングシステムが,MS−DOS から
Windows へ移行するに伴い,パソコンの使用形態も
し,データベースの操作を行なえるようにしたい。
以上のことをふまえ,インターネットの応用分野
単体で使用するスタンドアローン形式から,各パソ
に関する知識と技術を習得するとともに,生徒にと
コンをネットワークでつなぎ,資源を共有で利用で
きる LAN が主流となりつつある。その時代の流れ
に沿って,本校情報技術科実習棟および CAI 教室に
って興味・関心がもてる実習書と教師用の指導書作
成を目標に本テーマを設定した。
LAN システムが設置された。本科では,新しい実習
書を使用した本格的な LAN 実習が稼働し始めたが,
1 ASPの概要
Web サーバの最も基本的な処理は,「クライアン
生徒の技量をさらに高めるには,課題研究等におい
トからの要求を受け,該当するドキュメントを返す」
て,自らシステムを構築できる環境であることが望
ましい。
というものである。しかし,それだけでは,サーバ
側のデータベースへの接続など,さまざまなサービ
現行の学習指導要領によると,「課題研究」の目標
として「工業に関する課題を設定し,その課題の解
決を図る学習を通して,専門的な知識と技術の深化,
総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,
スを提供することができない。
そこで,クライアントからの要求を受けてプログ
ラムを実行する仕組みが Web サーバに備えられる
よ う に な っ た 。 こ れ が , CGI(Common Gateway
創造的な学習態度を育てる。」と示されている。また,
Interface)である。
平成 11 年 3 月 29 日に告示された新学習指導要領に
よると,教科「情報」の目標として「情報の各分野
CGI の登場により,Web で発信されるドキュメン
トは,静的なもの(すでに作成したファイル)から
に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ,
現代社会における情報の意義や役割を理解させると
動的なもの(サーバ側で実行されたプログラムが作
成するドキュメント)へと変化を遂げた。ドキュメ
ともに,高度情報通信社会の諸課題を主体的,合理
ントを検索したり,データベースにアクセスしたり
的に解決し,社会の発展を図る創造的な能力と実践
的な態度を育てる。」とある。特に,高度情報通信社
会の中で重要な技術は LAN の技術である。LAN が
拡大した WAN(Wide Area Network)やイントラネ
して,その結果をクライアントに返すといった操作
が可能となったのである。
ットなどのネットワーク技術は,日々急速に進歩し
ている。
それに伴い,LAN の構築,管理運用ができるネッ
初心者には馴染みのない言語を使用するなどの欠点
がある。
CGI は,IIS に限らずほとんどの Web サーバ製品
トワーク技術者の人材需要が高まり,学校現場でも
それに対応したカリキュラムを組む必要がある。そ
でサポートされているが,それらの欠点を補うため
Web サーバ固有の API(Application Programming
のような状況の中で,この機会にインターネット技
術を用いたデータベース接続および検索技術を習得
Interface)が用意されるようになった。IIS には,
ISAPI という独自の API が備わっている。
し,課題研究の題材にしたい。
具体的な内容としては,IIS(Internet Information
さらに,IIS バージョン 3.0 からは,ASP という
機能が提供されるようになった。ASP は,スクリプ
ト言語(VBScript,JScript)で記述されたインタープ
Server)の ASP(Active Server Pages)機能を使い,
SQL(Structured Query Language)言語を用いて,
Ⅱ 研究内容
ところが,CGI には呼び出し速度が遅い,サーバ
側のリソースを大量に消費する,C++や perl などの
データの検索,出力等の技術を習得する。
ASP はスクリプト言語を用いて COM コンポーネ
リタ形式のプログラムを,サーバ側で実行するため
の技術である。
ASP は,ADO(ActiveX Data Objects)コンポーネ
ントを使用するので,オブジェクト指向プログラミ
ントを活用することで,データベースに手軽にアク
ングの概念が必要となり,それらの調査も行う。
セスすることができる。
- 351 -
2 ASPスクリプトの処理過程
クライアントはブラウザを通して ASP のファイ
ルを要求する。IIS は要求されたファイルを読み込
み,解釈実行し,その結果をクライアントに返す。
その処理過程の様子を図1に示し,順を追って説
明する。
図2 クライアントから URL を指定する
(2) asp ファイルの読み込み
ファイルを要求された IIS は,asp.dll を呼び出し,
該当する拡張子 asp のファイルを読み込む。
例)指定されたアドレスからファイルを読み込む
IIS のインストール時に Web サーバのホームディ
レクトリを c:¥InetPub¥wwwroot に設定してあり,
要求した asp ファイルは,wwwroot フォルダ内の
nyuushi フォルダに存在する。その物理パスを図3
に示す。
図3 指定した asp ファイルの物理パス
(3) asp スクリプトの解釈実行
読み込んだ asp ファイルを解釈する。解釈行がス
図1 ASP スクリプトの処理過程
クリプト言語で 記述されてい る場合には,asp.dll
が該当するスクリプトエンジンを呼び出す。もし,
(1) クライアントからの要求
解釈行がスクリ プト言語で記述 していなければ ,
HTML データとみなす。
クライアントはブラウザから URL を指定するこ
とによって,拡張子 asp のファイルを要求する。
例)サーバの完全修飾ドメイン名をwww.sangi.co.jp
とする。
www.sangi.co.jp を 指 定 す る と , DNS(Domain
Name System)によって IP アドレスに変換される。
それにより,該当するサーバを特定できる。
ブラウザから指定する URL を図2に示す。
例)main.asp のリスト
以下に main.asp のリスト前半部分を示す。<>
で囲まれているのが HTML タグで,<%%>で囲
まれているのがスクリプト言語(VBScrit)で記述
された部分である。
<%@ LANGUAGE="VBScript" %>
<HTML>
- 352 -
<HEAD>
<TITLE>情報技術科合格者一覧ページ</TITLE>
③ データソース名
データソース名は ODBC データソースアドミニ
</HEAD>
<BODY>
ストレータでデータベースの物理パスと対応づける。
実 際 に は , 図 3 の nyuushi フ ォ ル ダ 内 に あ る
nyuushi.mdb と対応づけている。
<%
Set.objConn=
Server.CreateObject("ADODB.Connection")
objConn.Open "nyuushi","",""
①
②③
Set objRecord=
Server.CreateObject("ADODB.Recordset")
sql="SELECT*FROM[T-JYOUHOU-IPPAN]
WHERE 合否判定=’一般合格’"
objRecord.Open sql,objConn,3,1
④
⑤
⑥⑦
図6 データソースアドミニストレータ
%>
</BODY>
</HTML>
④
レコードを操作するインスタンスを生成する
Set objRecord=
Server.CreateObject("ADODB.Recordset")
呼ばれたスクリプトエンジンは,スクリプト言語
で記述されてい る部分を解釈実 行し,その結果 を
asp.dll に返す。
例)<%%>で囲まれている部分の説明
ADO コンポーネントから,データベースを開くイ
ンスタンスを生成し,objConn という名前をつける。
図7 ADO からインスタンスを生成する
①
⑤ レコードを操作するインスタンスに指示を与え
データベースを開くインスタンスを生成する
Set objConn=
る
SQL文を用いて指示を与える。変数 sql に格納し
Server.CreateObject("ADODB.Connection")
ている指示の内容は「T-JYOUHOU-IPPAN テーブ
ルから,合否判定フィールドの値が一般合格である
レコードを抽出しなさい。」という意味である。
⑥ 操作するレコード
操作するレコードを図8に示す
図4 ADO からインスタンスを生成する
② データベースを開く
nyuushi というデータソース名で対応づけられた
データベースを開く。
objConn.Open "nyuushi","",""
図5 データベースを開く
図8 操作するレコード
- 353 -
⑦ レコードの抽出
変数 sql で指示された通りにレコードを抽出する。
カーソルタイプは静的カーソル,ロックタイプは読
み取り専用を選んでいる。
objRecord.Open sql, objConn, 3, 1
抽出されたレコードを図9に示す。
objRecord.Close
objConn.Close
(4) 結果をクライアントへ返す
解釈実行結果は asp.dll が最終的にクライアント
へ結果を返す。
図 10 クライアントの結果表示
図9 抽出されたレコード
インターネットエクスプローラでは,表示(V)
続いて main.asp のリスト後半部分を示す。
<H1><CENTER>平成12年度合格者一覧(情報技術
−ソース(C)を選択することで,IIS から返された
コードを見ることができる。
科)</CENTER></H1>
<% Do Until (objRecord.EOF ) %>
<%= objRecord("受検番号") %><BR>
<%= objRecord("氏名") %><BR>
<%= objRecord("出身中") %><BR>
<%= objRecord("性別") %><BR>
<%= objRecord("現過") %><BR>
<%= objRecord("第2志望") %><BR>
<%= objRecord("合否判定") %><BR>
図 11 表示(V)−ソース(C)を選択する
<% objRecord.MoveNext
loop
図 12 より,asp.dll から返されたデータはブラウ
objRecord.Close
ザで表示できる形式になっていることがわかる。
objConn.Close %>
</BODY>
</HTML>
⑧ 抽出されたレコードの出力
抽出された全レ コードをクライアントが出力で
きる形にして asp.dll に渡す。
Do Until (objRecord.EOF ) ~ loop
⑨ 生成したオブジェクトの消滅
必要のなくなったオブジェクトを消滅させる
処理をおこなう。
図 12 メモ帳でコードが表示される
- 354 -
3 ASPスクリプトの作成
ASP が動作するサーバは,WindowsNT Server で
入力エディタ
OS
動作する IIS,WindowsNT Woristation で動作する
PWS(Peer Web Server),Windows98 で動作する
ブラウザ
メモ帳
Windows98(PWS)
WindowsNT Server4.0(IIS)
Internet Explorer4.0
PWS(Personal Web Server)がある。
以上に示した OS で動作するサンプルの ASP スク
④ 作成するASPスクリプトの仕様
リプトを作成した。作成したスクリプトは,以下に
ア 受検番号の振り方
示す3種類のスクリプトで,身近なものを題材にし
た。
・高校入試合格者をブラウザで閲覧する ASP スク
受検番号フィールドは,表2に示す規則で番号を
振る。
リプト
・中学校別の合否をブラウザで閲覧する ASP スク
リプト
・Excel を用いてデータベースのレコードを追加す
る ASP スクリプト
これらの内容を,順を追って説明する。
(1) 高校入試合格者をブラウザで閲覧する ASP スク
リプト
① 本校の入試概要
本校は,情報技術科,インテリア科,デザイン科,
調理科の4科から構成されている。入試種別も推薦
入試,一般入試,二次募集とあるが,二次募集は考
慮に入れないことにする。
スクリプトを作 成する上で知らなければならな
い推薦入試と一般入試の違いを表1に示す。
② 作成したスクリプトの内容
本校 の受 検合 格 者を対象 と した, 合格者 発表 用
ASP スクリプトを作成する。合格者の受検番号,氏
名,出身中,性別,現役過卒の別,第二志望,合否
判定の別を科別ごとに表示する。
表示順は,一般合格者,推薦合格者,第二志望合格
接続形態
使用スクリプト言語
別のために設定してある。表3に示す規則で区別す
る。
表3 現役,過年度受検生の区別
現役生
過年度卒業生
受検生の区別
現
過
ウ 第2志望の入力
表4 第2志望の入力方法
推薦入試
一般入試
第二志望学科
推薦と記す
情報技術
インテリア
デザイン
調理
の4通り
第二 志望学 科
なしの場合は
//と記す
エ 合否判定
合否判定フィールドは,入試結果を入力する。
者の順とする。
使用コンポーネント
イ 現役,過年度卒業受検生の区別
現過フィールドは,現役,過年度卒業受検生の区
第2志望フィールドは,受検生の第二志望学科を
入力する。表4に示す規則でデータを入力する。
表1 推薦入試と一般入試の違い
推薦入試
一般入試
受検資格
現役のみ
過年度卒も可
第ニ志望
第一志望のみ
受検科以外の
他の3科から
選べる
③ スクリプトを作成した環境
データベース作成
表2 受検番号の振り方
推薦入試
一般入試
1501∼1999
1001∼1499
情報技術科
2501∼2999
2001∼2499
インテリア科
3501∼3999
3001∼3499
デザイン科
4501∼4999
4001∼4499
調理科
Access97
ADO
ODBC 接続
VBScript
表5 合否判定の入力方法
推薦入試
一般入試
合否判定
推薦合格
一般合格
不合格
第二合格
の2通り
不合格
の3通り
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オ 発表順並べ替えキー
表示順を,一般合格者,推薦合格者,第二志望合
般 合 格 者 の レ コ ー ド , T-INTERIA-IPPAN , TDESIGN-IPPAN,T-CYOURI-IPPAN 各テーブル
格者の順とするために発表順並べ替えキーフィール
ドを設定した。このキーはレコードを並べ替えると
から第二志望が情報技術科で,かつ合否判定結果が
第二志望合格者のレコードをすべて抽出する。抽出
きに使用する。
表6に示す規則でデータを入力する。
したレコードは,発表順並べ替えキーの昇順(一般
合格…1 推薦合格…2 第二合格…3 不合格…4)
に並べ替える。」
以上に述べた SQL 文の内容を,各科合格者発表
用に書き換える。各科の合格者発表用スクリプトを
表6 発表順並べ替えキーの入力方法
入力する値
一般合格
1
推薦合格
2
第二合格
3
不合格
4
制御するためのメイン用スクリプトを入れると合計
6つのスクリプトを作成した。
⑤ レコードのフォーマット
レコードのフォーマットを図 13 に示す。
図 15 作成したスクリプト
図 13 レコードのフォーマット
⑥ テーブル
データベースに作成するデータベースは,各科別,
推薦,一般入試別の計8つのテーブルを作成する。
⑧ ASP スクリプトの実行
最初に nyuushi-main.html をブラウザのアドレ
スから指定する。図 16 のメイン画面が表示される。
第一志望の受検生のレコードを各テーブルに集め
る。
図 16 メイン画面の表示
デザイン科の合格発表画面を表示してみる。デザ
イン科の ASP スクリプトをメイン画面で指定する。
図 14 作成するテーブル
⑦ ASPスクリプトの作成
作成したスクリプトは,前述の「2 ASPスク
リプトの処理過程」の説明で使用したスクリプトが
基本となっている。違うのはレコードを操作するイ
ンスタンスに指示を与える SQL 文の内容である。
内容を文章で示すと以下のようになる。
「 T-JYOUHOU-SUISEN テーブルから推薦合格者
のレコード,T-JYOUHOU-IPPAN テーブルから一
図 17 デザイン科合格発表画面
- 356 -
(2) 学校別の合否をブラウザで閲覧する ASP スクリ
プト
① 作成したスクリプトの内容
本校の受検者を対象とした,中学校別合否結果表
示用 ASP スクリプトを作成する。中学校名をリスト
ボックスから選択し,パスワードを入力しなければ
<OPTION VALUE="経塚二">経塚二
<OPTION VALUE="経塚三">経塚三
<OPTION VALUE="芸術附">芸術附
</SELECT>
パスワード:<INPUT TYPE="PASSWORD"
閲覧できないようにする。(パスワードは,中学校側
NAME="password">
<INPUT TYPE="submit"VALUE="送信">
の進路担当者のみが知っているものとする。)表示順
は,受検番号順とする。
</FORM>
<INPUT TYPE="reset"VALUE="取消">
イ パスワードが一致したレコードの抽出
図 19 で入力,送信した中学校名,パスワードを
図 18 中学校名とパスワードの入力
password テーブルの該当するフィールドのデータ
と比較し,一致したレコードがあれば変数 rec に格
② スクリプトを作成した環境
納する。
高校入試合格者をブラウザで閲覧する ASP スク
リプトと同じ
③ テーブル
高校入試合格者をブラウザで閲覧する ASP スク
リプトで作成したデータベースに,password テーブ
ルを追加する。
Set rec=db.Execute("SELECT*FROM
password WHERE PASSWORD=' "& Request
("password") &" 'AND GAKKO=' "& Request
("cyugakko-name")&" ' ")
ウ 合否結果表示の決定
変数 rec にレコードが格納されていない場合は,学
校名およびパスワードが一致したレコードがテーブ
ルに存在しないので,メインページへ戻る。
変数 rec にレコードが格納されている場合は,合
否結果表示へ進む。
図 19 password テーブル
If rec.EOF Then
学校名およびパ スワードが一 致しない場合の
処理
④ ASP スクリプトの作成
最初にすべきことは,閲覧者が選択した学校名と
入力したパスワードが,password テーブルに登録し
Else
学校名およびパ スワードが一 致する場合の処
理
ているレコードの各フィールド値と一致しているか
どうか,確認することである。閲覧者が送信したデ
ータと password テーブルの各フィールドを比較し,
値が一致するレコードを取り出すことによって正常
なパスワードかどうかを判断する。
送信側の HTML タグを以下に示す。
ア 送信側の HTML タグ
<FORM METHOD="post"ACTION=
"cyugakko-main.asp">
選択する中学校名:<SELECT NAME=
"cyugakko-name">
<OPTION VALUE="安波茶">安波茶
<OPTION VALUE="経塚一">経塚一
エ SQL 文の指示内容
レコードを操作するインスタンスに指示を与え
る SQL 文の内容を以下に示す。
「すべてのテーブルから変数 cyugakko-name で
指定された中学校のレコードを抽出する。」
⑤ ASP スクリプトの実行
中学校名に経塚一,パスワードをzzzと指定し
て送信ボタンを押すと出身中フィールドの値が経
塚一のレコードが抽出される。
中学校名およびパスワードを入力するメイン画
面を図 20 に示す。
- 357 -
③ テーブル
図 22 に所属部活動名テーブルを示す。
図 20 メイン画面
図 22 所属部活動名テーブル
(データベース名:bukatsu.mdb)
中学校名に経塚一を選択した場合の実行結果を図
21 に示す。
④ 初期値設定用ひな形ワークシート
レコード表示およびレコード追加用ワークシー
トに使用する所属部活動名テーブルフィールド名
をワークシートに保存しておく。
図 23 初期値設定用ひな形ワークシート
(ファイル名:hina-bukatsu.xls)
⑤ ASPスクリプトの作成
データベースへのレコード追加スクリプト全リ
図 21 出身中学校別合否結果一覧
(3) Excel を用いてデータベースのレコードを追加
する ASP スクリプト
① 作成したスクリプトの内容
生徒の氏名と所属部活動名のデータを持つ新規レ
ストを示す。
<% @LANGUAGE=VBScript %>
Server.ScriptTimeout = 10800
コードを所属部活動名テーブルへ追加するというス
クリプトである。前に説明した2つのスクリプトと
の違いは,ローカルサーバである Excel のワークブ
ックを,ASP スクリプトから呼び出し,ワークシー
トを入力および出力として使用することである。
② スクリプトを作成した環境
高校入試合格者をブラウザで閲覧する ASP スク
リ プ ト の 環 境 に 加 え て , Excel97 お よ び
WSH(Windows Scripting Host)がインストールさ
れている状態で動作する。
こ の ス ク リ プ ト は , Windows98 上 で 動 作 す る
PWS のみで機能する。
- 358 -
Set objConn = Server.CreateObject
("ADODB.Connection")
objConn.Open "bukatsu","",""
Set objRecord = Server.CreateObject
("ADODB.Recordset")
objRecord.Open "SELECT 氏名,部活動
FROM 所属部活動名",objConn,3,2
(所属部活動名テーブルの全レコード表示用ワー
クシートオブジェクトを生成し,xlSheet という名
前をつける。)
Set
xlApp = CreateObject("Excel.Application")
Set xlBook = xlApp.Workbooks.Add
Set xlSheet = xlBook.Worksheets(1)
xlApp.Application.Visible = True
Case 2
Set wshshell = Nothing
(初期設定用ひな形ワークシートオブジェクトを
生成し,wbk という名前をつける。)
Response.Redirect "tuika-cancel.asp"
Case 6
Set wbk = GetObject
("c:¥Inetpub¥wwwroot¥obujekuto-excel
Set wshshell = Nothing
End Select
¥hina-bukatsu.xls")
(所属部活動名テーブルの全レコード表示用ワー
(追加するレコードを所属部活動名テーブルへ
新規追加する。)
クシートの完成)
For i = 1 To 2
xlSheet.Cells(1,i).Value =
wbk.Worksheets("Sheet1").Cells(1,i).Value
tuikasuu = xlSheet2.Cells(2,3).Value
For i = 1 to tuikasuu
Next
ninzu = objRecord.RecordCount
objRecord.AddNew
objRecord.Fields("氏名") =
For i = 2 To ninzu + 1
xlSheet2.Cells(i+1,1).Value
objRecord.Fields("部活動")
=
xlSheet.Cells(i,1).Value =
objRecord.Fields("氏名")
xlSheet2.Cells(i+1,2).Value
xlSheet.Cells(i,2).Value =
objRecord.Fields("部活動")
objRecord.Update
Response.Write "1 レコード追加しました"
objRecord.MoveNext
Next
Next
objRecord.Close
objConn.Close
(所属部活動名テーブルのレコード追加用入力ワ
ークシートオブジェクトを生成し xlSheet2 という
%>
名前をつける。)
⑥ ASP スクリプトの実行
所属部活動名テーブルの全レコード表示用ワーク
Set xlApp2 = CreateObject
シートとレコード追加用ワークシートを図 24 に示
("Excel.Application")
Set xlBook2 = xlApp2.Workbooks.Add
Set xlSheet2 = xlBook2.Worksheets(1)
す。
xlApp2.Application.Visible = True
(所属部活動名テーブルのレコード追加用ワーク
シートの完成)
For i = 1 To 2
xlSheet2.Cells(1,i).Value =
wbk.Worksheets("Sheet1").Cells(1,i).Value
Next
xlSheet2.Cells(1,3) = "追加レコード数"
( WSH の メ ッ セ ー ジ ボ ッ ク ス が 表 示 さ れ る 。
追加レコードのデータを入力し,ボタンをクリック
する。OK ボタンをクリックするとレコードが追加
され,キャンセルをクリックするとレコードは追加
図 24 表示用および追加用ワークシート
テーブルへ新規レコードが追加された。
されない。)
Set wshshell = CreateObject("WScript.Shell")
ret = wshshell.popup("データ送信",-1,,1)
Select Case ret
図 25 新規レコード追加の確認
- 359 -
4 ASPと他のサーバの連携
(1) Exchange Server と ASP の連携
Exchange Server5.5 で は , ブ ラ ウ ザ を 利
用してメールボックスにアクセスする手段として
OWA(Outlook Web Access)がある。OWA は ASP
で構成されており,IIS 経由でメールボックスへア
クセスし,その内容を HTML ドキュメントに変換
しブラウザに返す。
(2) SQL Server と ASP の連携
Ⅲ まとめと今後の課題
1 オブジェクト指向について
「インターネットを用いたデータベースの検索」
のテーマで,サンプルのデータベースやスクリプト
を作成し,データベースの接続や検索技術を習得し
た。具体的には,ブラウザ(インターネットエクス
プ ロ ー ラ ) か ら ASP を 呼 び 出 し , Access や
SQLServer へ構築したデータベースの検索を行っ
Access97 で作成した高校入試合格者をブラウザ
た。この研究を通してわかったことは,
「オブジェク
ト指向」の概念がないと,この研究内容がより深く
で閲覧する ASP スクリプトのデータベースを SQL
Server へ移行し,スクリプトが実行できるかどう
理解できないということである。このことより,オ
ブジェクト指向プログラミング実習書なるものを作
か試したところ,正常に動作することが確認できた。
成し,課題研究の最初でオブジェクト指向の概念を
定着させることにした。
5 指導書および実習書の作成
研究のまとめとして,以下に示す文書を作成した。
(1) ASP 指導書(概念編)(48Page)
オブジェクトの概念や,サンプル ASP スクリプ
トの説明を記載している。
(2) ASP 指導書(実践編)(152Page)
サンプル ASP スクリプトの全リストや実行方法,
結果などを記載している。
(3) ASP 指導書(応用編)(48Page)
Exchange Server と ASP の 連 携 お よ び
SQL Server と ASP の連携について記載している。
(4) オ ブ ジ ェ ク ト 指 向 プ ロ グ ラ ミ ン グ 実 習 書
(40Page)
2 COMコンポーネントについて
ASP の特徴として COM コンポーネントのオブジ
ェクトをインスタンス化して,それを利用すること
が挙げられる。例えば,データベースへ接続する関
数やレコ−ドを操作する関数を工具箱から取り出し,
それらを利用するとイメージしてもらいたい。
そのような関数が事前に準備されていたら,自前
でむずかしいプログラムを組まなくてすむ。本研究
では ADO コンポーネント使用した。ADO コンポー
ネントから,データベースへ接続するインスタンス,
レコードを操作するインスタンスを生成した。
3 今後の課題
オブジェクトの概念から始まり,クラスやインス
タンスの説明,C++でプログラムを実際に作成する,
ADO コンポーネントを使う,Excel の機能を使う
情報技術科は,制御分野も範疇にはいっているこ
などの項目を設け,生徒にオブジェクト指向が具体
になるまでの範囲を取り扱ったコンポーネントにつ
いての教材を作成することをこれからの課題とした
い。ただし,Visual C++(ATL)の取り扱いや C++
的かつ容易にイメージできるように記載した。
ただし,オブジェクト指向モデルの標準表記法
UML(Unified Modeling Language)を用いたシ
ステム分析設計および実装の具体的な実習教材の
作成は,これからの課題とする。
最終的には,制御コンポーネントの作成や,それ
を用いてブラウザから機器の制御を行う ASP スク
リプトの作成なども項目に入れたい。ただしコンポ
ーネントの作成には Visual C++(ATL)の取り扱
いが必要となるので,現在おこなわれているC言語
とから,制御のコンポーネントを制作し,ブラウザ
を通して機器の制御を行うASPに使用できるよう
自体の知識,オブジェクト指向を用いた分析や設計,
実装などの専門的な知識が必要であるので,その部
分の研究を怠りなくやっていきたい。また,オブジ
ェクト指向モデルの標準表記法である UML につい
ては,世界標準となっているが具体的な設計方法に
ついては,各企業独自の方式でおこなわれている。
それが,いつ標準化されても即座に対応できるよ
うに,その動向に注意を払っていきたい。
の実習と連携させたい。
<主な参考文献>
大 澤 文 孝 『 Web ア プ リ ケ ー シ ョ ン 構 築 ガ イ ド Phase1』
大 澤 文 孝 『 Web ア プ リ ケ ー シ ョ ン 構 築 ガ イ ド Phase2』
有 江 敬 寛 『WindowsNT による IIS4.0&Exchange5.5 構築ガイド』
- 360 -
ソ フ ト バ ン ク
ソ フ ト バ ン ク
リックテレコム
1997
1998
1998