福田ゼミ 国際関係論 第 10 章 リージョナリズムと欧州統合 1.ヨーロッパにおけるリージョナリズム(地域主義) リージョナリズム → 国内の地方における地域 → 世界の中の特定の地域 ※本書のリージョナリズム:世界の中の特定の地域 同じ広域地域に集まっている国が互いに協力し合いながら、その地域に一 定のパワーを保持している。 関係性 固い 緩い リージョナリズム EU(欧州連合) 地域の利益を ASEAN(東南アジア諸国連合) 追求する APEC(アジア太平洋経済協力会議) 北米:NAFTA(北米自由貿易協定) ラテンアメリカ:Mercosur(南米南部共同市場) グローバリズム アフリカ大陸:OAU(アフリカ統一機構) 中東:GCC(湾岸協力理事会) 2.欧州統合の歴史 ≪A.EC(欧州共同体)の時代≫ (1)欧州石炭鉄鋼共同体の発足 第一次世 界大戦 •ヨーロッパ の没落 ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体) 第二次世 界大戦 地位回復 •大陸の平和 の確立 •一致団結す る必要性 提案:ローベル・シューマン 設立:1952 年 脅威 加盟国:6 か国 •ドイツ・ソ 連共産主義 •流れの中断 ECSCの 設立 •脅威の封じ 込み •大陸の平和 •経済的復興 (2)欧州共同体の発足と発展 EEC(欧州経済共同体) Euratom(欧州原子力共同体) 設立:1958 年 設立:1958 年 加盟国:6 カ国 加盟国:6 カ国 相互の貿易の自由化を目指す 原子力の平和利用をめぐる協力枠組みを構築 EC:European Communities(欧州共同体) =ECSC+EEC+Euratom 設立:1967 年 特徴:超国家的な運営組織→加盟国が単独で勝手に政策を進めることが出来ない 加盟国:9 カ国(1973 年)、10 カ国(1981 年)、12 カ国(1986 年) EPC(欧州政治協力)…外交政策の調整を図る、EC の枠 外 1979 年 欧州議会の直接普通選挙、ENS(欧州通貨制度)の発足 1980 年代前半 西ヨーロッパの経済的低迷 1985 年 「域内市場白書」を採択、 「1992 年市場統合計画」…非関税障壁の撤廃、 「4 つの自 由移動」を実現 1987 年 (SEA)単一欧州議定書の発効 ≪B.EU(欧州連合)の時代≫ (1) EU の発足 EU(欧州連合) 加盟国:15 カ国(1995 年) 更なるソ連・ドイ ツの脅威 1993:マーストリ ヒト条約による構 想の具体化 新しいヨーロッパ 秩序の構築 ECの発展+共通 外交安全保障政策 +司法内務協力 EU(欧州連合) ※マーストリヒト条約→1991 年 1 月 1 日までに単一通貨を導入することを明記 ※1992 年市場統合計画→約 9 割実現 残すはヒトの自由移動・税制の調整 (2) EU 統合の更なる「深化と拡大」 1999 年 歴史的実験 単一通貨ユーロの導入:11 カ国がユーロに参加 12 カ国(2012 年) アムステルダム条約 コソボ地方での紛争:効果的に介入できなかった →欧州共通安全保障・防衛政策(ESDP)の概念 2003 年 ニース条約 2004 年 加盟国:25 カ国 欧州憲法条約 →フランス・オランダで否決(2005 年) 2005 年~2007 年 熟慮の期間 2007 年 リスボン条約=欧州連合条約+欧州連合の機能に関する条約 →変化した点:欧州理事会常任議長・高級代表を新設世界への発信力を強めた 加盟国:27 カ国 2013 年 加盟国:28 カ国 2016 年 常任議長:ドナルド・トゥクス 高級代表:フェデリカ・モゲリー二 3.EU を運営する諸機関 ≪A.主要機関≫ (1)欧州理事会(European Council) EU の最高決定機関 全会一致制 通常年 4 回 開催場所:ベルギーのブリュッセル (2)理事会(Council) 常任理事会:①一般問題理事会 理事会:10(常任理事会+8 の理事会) 決定方式:基本的には全会一致方式・特定多数決方式 ②外務理事会 (3) 欧州委員会(European Commission) EU の執行機関・EU のシンボル的存在 各加盟国から 1 名 欧州委員は EU 全体の利益のために奉仕することが条約で要求 提案権・執行権の両方を保持 本部:ベルギーのブリュッセル (4) 欧州議会 本部:フランスのストラスブール 事務局:ルクセンブルク 小委員会:ベルギーのブリュッセル 議員:1979 年以降は直接普通選挙で EU 市民から選出 議員数:加盟国ごとの人口比によって決められている (5) EU 司法裁判所 場所:ルクセンブルク 司法裁判所・一般裁判所・専門裁判所の 3 つから編成 目的:EU 基本条約の解釈・適用において統一見解を維持すること ≪B.その他の機関≫ 欧州中央銀行(ECB)…本部:フランクフルト ユーロ圏全体の金融政策を担う 欧州投資銀行(EIB)…本部:ルクセンブルク EU と市民の架け橋を目標とする諮問機関 ※他にも約 30 の専門機関がある。 各国が EU に参加し ていると実感 →EU の一員であると 認識 敢えて分散 4.EU の諸政策 ≪A.さまざまな共通政策≫ リスボン条約の下では… 排他的権限:EU (EUにすべての 権限が移譲) 排他的権限: EU・加盟国 立法権:加盟国 権能:加盟国(一 定限度でEUとし て行動できる) ※EU がすべての政策領域において権限を持つのではなく、加盟国の主権がすべて移譲されているわけで はない。 ※EU に与えられている権限の範囲は大きい。 ≪B.ユーロ≫ ユーロを導入するための基準 直近の 1 年間のインフレ率が最も低い 3 カ国の平均値から 1.5%を上回 らないでいる 過去 2 年間為替変動メカニズムの変動幅内にとどまっている 長期金利はインフレ率が最も低い 3 カ国の長期金利の平均値より 2%を 上回らないでいる 財政赤字の対 GDP 比を 3%以内にしている、 および公的債務残高を対 GDP 比 60%以下にしている ※通貨統合の参加によって、通貨主権を EU に移譲することを嫌い、ユーロに自らの意思で参加してい ない国もある。(イギリス・デンマーク・スウェーデン) ※1999 年:発足 2002 年:紙幣・硬貨の流通 ≪C.シェンゲン・エリア≫ シェンゲン・エリア…基本的にパスポートのチェックをせずに移動できる 加盟国:30 カ国 ヒトの自 由移動 EU内 部:合意 とれない 1995年: シェンゲ ン協定 •EU枠外 •5カ国 現在 EU基本 条約の中 に組み込 まれる ※自らの意思でシェンゲン協定に参加していない EU 加盟国(イギリス・アイルランド) ※シェンゲン協定に参加していて EU 加盟国ではない国(ノルウェー・スイス・アイスランド・リヒテ ンシュタイン) 5.EU の拡大と近隣諸国政策 トルコ 加盟交渉中 モンテネグロ 〃 2008 年:加盟申請 アイスランド 2013 年:加盟申請を凍結 1987 年:加盟申請 トルコ 2005 年~:加盟交渉中 モンテネグロ・マケドニア共和国・セルビア・アル EU 加盟に向けて作業中 バニア 加盟国は 30 カ国を超えると考えられている。 加盟国が増加することによって EU:新たな隣国と境界を接することになる 欧州近隣政策(ENP):周辺地域の安定化に努めている (2 国間の連合協定を結び、民主化の支援や基本的人権の定着、市場経済の導入) 6.ユーロ危機と EU の新たな課題 ●危機 2008 年 リーマンショック 2009 年 ギリシャ国債の暴落 PIIGS の経済危機 ユーロの解体してしまうのではと言われる 2012 年 危機の一旦収束 2014 年 ウクライナ危機 2015 年 対立:ギリシャのチプラス・左翼急新党とユーロ諸国圏→チプラスが緊縮政策を受け 入れることで危機を回避 アラブの春以降 北アフリカ:民主化運動の激化 北アフリカからの難民 シリア情勢の悪化 シリアからの難民 危機を1つ ずつ乗り越 えること EUの枠組 みの発展 EU統合の 次なるステ ップ
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