資料 6 基準と規格の人材育成 2008年5月13日 トヨタ自動車株式会社 東京技術部 佐々木剛史 1 ▽企業として、人材育成のために 社員教育を実施。 教育の例) ・新入社員に対する導入教育 ・職位に対する教育、研修 ・専門技術の講習会、語学研修 ・企業人として必要な規格知識の教育 例)ISO9000 : 組織における品質マネジメントシステム ・ISO9000ファミリーの特徴、 ISO9001の要求骨子、審査登録制度、 取得方法等の概要知識から品質マネジメントシステムおよび品質 マネジメント8原則の理解。また、知識不足によるトラブル事例や 誤解した例、正しい利用方法、取得状況等を教育。 ・その他諸々の教育等 2 ▽しかし、規格化を推進するための 人材を育成する教育はしていない。 その理由 規格化に対する問題意識が希薄。 その理由 規格化は車の販売に直接影響しない (= 任意の扱い) 自動車メーカの関心は、 車を各国に販売するための各国の「法規・基準」 (= 遵守が義務) 3 自動車における基準と規格 自動車は、各国(地域)の基準(法規)に適合し、認可を取得しないと 販売できない。おのずと規格より基準が重要視される。 ※一部基準に規格を引用したものがある。 基準(法規) 規格 ・ JIS ・ ・ ・ ・ ・ 強制 ・ ISO ・ ・ ・ ・ ・ ・道路運送車両法(日本) ・UN/ECE/Reg.(欧州) ※ 任意 4 ▽国・地域毎に基準が異なると適合が大変 ⇒ 国際的な基準調和(ハーモナイズ)に 向けた活動が進展 ・欧州との基準調和 → 米国を含めた世界統一基準への動き 5 自動車基準の国際的な流れ 現在、主に日本、欧州、米国に基準(法規)が存在する。 国連(UN)にて基準の調和活動を推進中。(全世界統一基準) 米国 欧州 日本 自動車基準調和世界フォーラム UN/ECE/WP29 6 基準調和のメリット メーカー ●各国仕様統一による開発 の効率化 、生産性 の向上 ●部品の共通化 ユーザー ●より安全で環境にやさしい 自動車の普及 ●自動車の価格の低減 ●輸入車の選択肢の拡大 ●部品管理の効率化 ●承認取得の効率化 行政 ●基準作成の効率化 ●国際流通の円滑化 ●審査作業の効率化 7 世界統一基準作成のプロセス 加盟国 加盟国 EU 米国 日本 加盟国 加盟国 加盟国 加盟国 加盟国 加盟国 提案 審議・採決 自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29) 作業WG 安全一般 衝突安全 ブレーキと走行装置 (GRSG) (GRSP) (GRRF) 排出ガスとエネルギー 騒 音 灯火器 (GRPE) (GRB) (GRE) 世界統一基準成立 8 基準作成における自動車メーカーの係わり JASIC(国土交通省)を中心に日本案を作成。 自動車メーカーは、JASICの活動をサポートすると共に、 OICA(世界自工会)一員としてWP29に参加。 自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29) 専門家として参加 投票権:無 日本国として提案 投票権:有 国内採用 JASIC OICA 自動車メーカー業界 日本の基準・認証制度の国際化 国土交通省、自工会、部工会、輸入組合 JASIC:自動車基準認証国際化研究センター 9 トヨタの体制(法規主管責任者制度) 個々の車両法規について専門知識・経験を有する者(法規主管)が 中心となり、法規管理部署と連携して、法規対応の推進を図る。 連携 法規管理部署 ・各国の法規動向の展開 ・コメントとりまとめ ・横並び評価 ・渉外活動 ・法規適合確認 法規主管 (主に専門部署) ・法規の影響調査 ・コメント案作成 ・渉外活動 ・製品展開 ・未然防止 10 基準(法規)に対するトヨタの人材育成 基準調和活動の為の特別な教育はないが、法規管理部署、専門部署 (法規主管)によるOJTやローテーションにより、結果として基準調和を 推進できる人材育成ができている。 ー法規管理部署ー ・法規担当者としてのOJT教育 ・海外駐在等で現地現物(現地の政府折衝・業界活動、 情報収集・発信 ・JASIC、自工会活動に参画 等) ー専門部署ー ・分野毎の設計スペシャリスト育成(法規とは関係なく) ・法規主管のミッション教育(対応方針作成、渉外推進、 製品展開の推進等) ・ JASIC、自工会活動に参画 11 規格化に対するトヨタの人材育成 ▽自動車メーカの標準化(規格)活動の場として、 (社)自動車技術会(JSAE) がある。 この場で自動車・部品メーカから派遣された委員が JASO制定、ISO審議(TC22,TC204)に対応。 ・派遣委員: 標準化の教育を受けた技術者ではなく、業務として その分野に携わり専門技術を持った人。 ・自動車技術特有の分野を含めた幅広い規格化の活 動は部品メーカーが携わっているのが現状 。 12 部品メーカーの人材育成状況 確認結果 ⇒ 弊社と同じ状況を確認 ※ ISO/IEC規格は重要で審議対応しているが、そうした人材を 積極的に育成しようとするニーズは高まりつつあるが、まだ まだとどかない状況 規 ① ② 格 立 ⇒ 提 案 (戦略) 案 ⇒ ③ 審 議 ⇒ ④ 規 格 化 規格化の流れの中で、 ③④の部分は対応でき ているが、①②を推進で きる人材が不足。 ※JSAE 等のISO/IEC国内審議団体に委員を派遣し標準化活動に参画して いるが、各種団体からの要請に応じることや、情報の入手を中心に活動し ており、その分野の専門家で、それなりの時間がとれる技術者が参加して いるのが実態。標準化推進のための人材育成は特にしていない。 13 標準化人材育成施策に対するコメント ①企業にとって標準化の重要性の理解が不足。 ・標準化での成功事例、時期を逸した失敗事例等の紹介 ・企業に危機感を抱かせる事例紹介 ・戦略として日本初の技術を国際規格として他国に先駆けて標準化 することで得られるメリットの紹介 ⇒ JSAE等の団体に標準化のプロを置き、企業に標準化メリット の理解を促進 ②標準化を強力に推進できる人材像を明らかにし、この人はという方を ベンチマークして、そのスキルを明らかにして育成方法を検討したら どうか ③国からの教育・活動費用や資格等の面でのインセンティブ? ・・・・・・ 鶏と卵の問題か ④日本人のメンタリティーの問題?(水泳、ジャンプ、F1等) ・強者(日本)に不利なルールに改訂されても、その変えられたルールに 必死についていこうとする姿。 14 ≪整理≫ ▽日本 : 物づくり + 知財 ⇒ 工業立国として成立 人材に求められるレベルがアップ 人材育成のニーズと (技術力) (対応がほぼ確立) 1.規格・標準化を駆使することの重要性・・・(認知はOK) ・生産品を世界共通商品として販売するためには規格・標準化 の駆使が必要不可欠 (販売契約時の説明や購入先から要求される項目) 2.戦略等の競争する部分(新技術、新規格)で 遅れないことの重要性(危機意識)・・・(認識が不十分) 3.ルールづくりをリードすることによる優位性 ・・・・・・(経験が不足) ▽ルールづくりで競争優位を確保する風土の定着 15
© Copyright 2024 Paperzz