6年 容器の中で植物体を燃やしてみよう

ものの燃え方と空気
空気の入れ替えを調整しながら
6年
容器の中で植物体を燃やしてみよう
本単元では,物を燃やし,物や空気の変化を調べ,燃焼の仕組みについての考えをもつようにす
ることを目標としています。具体的には,植物体が燃えるときには,空気中の酸素が使われて二酸
化炭素ができることをとらえさせます。燃焼は身近な現象であり,子どもなりに工夫したりいろい
ろと試すことが可能な場面でもあるので,それを授業者がどう支援していくかがポイントとなるで
しょう。
1
「ふたをすると・・・?」
事前に,集気びん用のふたをつくっておきましょう。
ガラスのふたは火の熱で割れることがあります。
集気びん
・右図のように,木の板をアルミニウムはくで包む。
用のふた
・できるだけコルク栓などを利用して取っ手も付けた
い。
※結果を予想してから,観察・実験を行うようにしましょう。
①粘土の上にロウソクを立て,火をつける。
②底なし集気びんをかぶせる。
ろうそくの煙
・ろうそくは,燃え続けることを確認する。
ろうそくの炎を消し
③びんにふたをかぶせる。
たときに立ち上る白い
・多くの子どもが,火が消えると予想するものと思われる。
煙は,気体になったろ
・だんだん炎が小さくなり,やがて火が消えることを確認する。
うが冷えて小さな粒に
ったものです。
したがって,この煙
に上方から火を近づけ
ていくと,火がろうそ
くのしんに触れる前に
ろうそくに火がつき燃
え始めます。
「びんをかぶせても
燃えているね」
「ふたをしたら消え
「やっぱり消えた」
ると思う」
④すこしすき間を開けてふたをかぶせる。
・多くの子どもが燃え続けると予想するものと思われる。
・だんだん炎が小さくなり,やがて火が消えることを確認する。
⑤「ふたをしたびんの中のロウソクを燃え続けさせるには・・?」
A男:ふたを取ればいいじゃん。
B太:ふたを半分くらい開けたら。
C子:粘土をすこし取って,下に穴をあけたら。
D代:他にもいろいろありそうだね。
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「少しふたが開いてい
ても消えちゃうんだ」
2
「びんの下にすき間をつくったら・・・」
①粘土を切り取って,びんの下にすき間をつくる。
・どの程度のすき間をつくるか,いろいろと試してみたい。
②ロウソクを燃やす。
・まず,ふたをしない状態で観察する。
・次にふたをして,すき間をいろいろと変えてみる。
③線香の煙で,空気の動きを調べる。
・びんの下のすき間の近くに火のついた線香を近づける。
・線香の煙がびんの底から流れ込み,びんの口から出てい
くことを確認する。
・線香の煙の動きから,空気が入れ替わっていることを確
上昇する線香の煙
認する。
・植物体を空気中で燃やすと,空気の入れ替わるところでは燃えるが,入れ替わらないとこ
ろでは燃えなくなってしまうことをとらえるようにする。
3
酸素中でろうそくを燃やす
※事前に空気の成分を学習する。
①集気びん(底がある)に酸素を満たす。
・二酸化マンガンとオキシドール(うすい過酸化水素水)を用い
て酸素を発生させる方法とボンベの酸素を利用する方法とが考
えられる。いずれも水上置換法を利用する。
・水中でびんの7∼8分目まで酸素を入れ,ふたをして水と一緒
に取り出す。
・火花が飛び散ることがあるので,びんには必ず少量の水を残し
ておく。
②酸素で満たされた集気びんに火のついたロウソクをすばやく入れる。 激しく燃えるろうそく
・空気中での燃え方と比べて観察したい。
・窒素中でのろうそくなどの燃焼を観察し,酸素と比較することなども考えられる。
・酸素には,ものを燃やすはたらきがあることをとらえるようにする。
4
いろいろな植物体の燃焼
○ロウソクや木,紙,布以外の植物体を燃やす。
・燃やす植物体としては,デンプン,砂糖,パン,大豆など
が考えられる。
・燃焼さじやアルミニウムはくを巻いた金属製の薬品さじな
どを利用して,アルコールランプで加熱する。
・食べ物のほとんどが,元をたどれば植物であり,いずれも
燃えて熱を出すことを体感させたい。
デンプンの燃焼
酸化について
酸化については中学校2,3年で学習します。光や熱をともなう激しい酸化を燃焼
といいます。また,植物体が燃えた後に残る灰は,植物体内に含まれているカリウム
やカルシウムなどが酸化して固体として残ったものです。
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ものの燃え方と空気
燃える前との比較がポイント
6年
ろうそくが燃える前後の空気を調べてみよう
ここでは,容器の中で植物体が燃える前後の空気の性質を調
べます。ろうそくの火が消えた理由として「酸素が関係してい
るのでは」→「酸素が減ったかもしれない」→「何かできたの
かもしれない」と考える子どもは少なくないと思われます。そ
こで,燃えた後の空気を調べることになるわけですが,燃える
前と比較することではじめてその変化を確かめることができる
気体検知管のセット
という点がポイントです。
1
二酸化炭素について
(1)石灰水を使って調べる
①石灰水の性質
・集気びんに石灰水を1cm程入れ,ふたをする。
・集気びんの中には空気が入っていることをおさえる。
・びんを振って,石灰水が白く濁らないことを確認する。
・石灰水がはいった集気びんにボンベで二酸化炭素を
1∼2秒吹き込む。
・びんを振って,石灰水が白く濁ることを確認する。
②燃えた後の空気を調べる
・石灰水が入った集気びんの中に火のついたろうそくを
入れ,ふたをして火が消えるのを待つ。
二酸化炭素で白く濁った石灰水
・火が消えたら,ろうそくを取り出し,びんをよく振る。
・石灰水が白く濁ったことから,二酸化炭素が生じたことをとらえさせる。
(2)気体検知管を使って調べる
①気体検知管の特徴
・気体検知管の存在を知らせる。
二酸化炭素用検知管(0.03∼1%)
・燃える前の空気の二酸化炭素濃度を調べる
0.03∼1%用と燃えた後の空気の二酸化炭
素濃度を調べる0.5∼8%用の2種類がある。
二酸化炭素用検知管(0.5∼8%)
〔使い方〕
・検知管の両はしをチップホルダーで折り取り,
安全カバーゴムをつけて気体採集器にさしこ
安全カバーゴム(酸素用)
む。(ホルダーがない場合は,ヤスリで傷を
つけて折る。)
安全カバーゴム
・印を合わせてハンドルを引くことと,一定時間
(約1分間)待つことを確認する。
・検知管の色が変わったところの目盛りを読み取る。
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(二酸化炭素用)
・検知管の折口でのけがに注意させる。
②燃えた後の空気の二酸化炭素濃度を調べる。
・底に5mm程度水を入れた集気びんの中に火のついたろうそくを
入れ,ふたをして炎が消えるのを待つ。
・炎が消えたらろうそくを取り出し,集気びん内の気体を気体検
知管で調べる。
〔結果とまとめ〕
・燃やす前
約0.03%
・燃やした後
約4%
・ろうそくを燃やすと二酸化炭素がふえた。
検知管で調べる
2
酸素について
○燃える前後の空気の酸素濃度を調べる。
・酸素用の検知管は,使用後熱くなるので注意
して扱うようにさせる。
〔結果とまとめ〕
・燃やす前
約21%
・燃やした後
約17%
酸素用検知管(6∼24%)
・ロウソクを燃やすと酸素が減った。
3
とらえさせたいこと
植物体が燃えるときには空気に含まれる酸素の一部が使われ,二酸化炭素ができること。
気体検知管用気体採取器の製作について
気体採取器について、必要な数量を用意できない学校もあると思われます。下のような採取器
を安価で製作することが可能です。詳しくは,P242参照。
約17%も酸素が残っているのに,ロウソクが消えてしまうのはなぜ?
「17%も酸素が残っているのに,ロウソクの火が消えてしまうのはなぜだろう?」と
疑問をもつ子どももいます。燃焼は激しい酸化であるため,十分な酸素がないと反応が進みませ
ん。燃焼物によって数値は多少異なりますが,ろうそくでは16∼17%がその限界値です。鉄がさ
びるなどのゆっくりした酸化では,酸素濃度が0になるまで反応が進みます。
この実験で得た二酸化炭素濃度4%,酸素濃度17%という数値は,呼気の濃度とほぼ一致しま
す。おもしろいですね。
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ものの燃え方と空気
燃えても炎が出ないよ
6年
炭づくり
発展
古くから炭は燃料として用いられ,生活になくてはならないものでした。しかし,近年炭の使用
は急激に減少し,身の回りから姿を消していきました。ところが,最近では水の浄化や床下の調湿
効果など,新しい用途で注目を浴びています。そこで,発展的な学習として炭づくりに挑戦してみ
ましょう。そして,酸素を遮断した状態で植物体を加熱するとき,加熱前後で植物体がどう変化す
るか調べてみましょう。
1
実験方法
①下の写真のように炭にする割り箸を試験管に入れセットする。
・箸は,割った割り箸1本の2/3程度(事前に重さをはかっておく)が適当である。
②アルコールランプ(またはガスバーナー)で加熱する。
・このときの試験管内の変化をできるだけ詳しく記録させたい。
③加熱中に煙(木ガスなど)が発生する。ガラス管の先から勢いよく出てきたら,着火して炎
を観察する。
・ここで,炎は熱や光を出しながら燃焼している気体であり,したがって燃焼物から離れた
場所でも炎を観察できることに注目させたい。
④割り箸が徐々に黒く変色し,約5分で炭になる。
⑤十分冷やしてから,炭を試験管から取り出す。(※やけどに注意)
⑥色,大きさ,重さの変化などを確認する。
⑦炭を燃焼させて,炎を出さずに燃焼する様子を観察する。
加熱中の実験験装置
・加熱していくと,木タール,木酢液,水などがたまってくる。これらの液体が試験管の加熱
部分に行かないように試験管の口を少し下げてセットする。
・換気にも心掛ける。
・実験後の試験管は,どうしても汚れてしまうので,一度使用したらこの実験の専用試験管と
することが考えられる。(試験管の代わりに空き缶などを利用する方法もあるが,加熱中の
変化を観察できないことが欠点である。)
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加熱中の様子
2
木ガスが燃焼している様子
実験結果の例
○加熱中
・試験管の内側に水滴がつきはじめた。
・黄色い煙が出てきた。
・ガラス管の先から出てくる煙に火をつけると燃えた。
・試験管の口に茶色の液体がたまった。
○炭になっての変化
・色が黒くなる。
・大きさは,約2/3くらいになる。
・重さは,1.2gの割り箸が約0.3gになる。
(小さく軽くなる理由は,割り箸の中から木ガス,木タール,木酢液などの成分が出てい
ったためです。)
・できた炭に火をつけると炎を出さずに燃えた。
(炎のもととなる燃える気体(木ガス)が出ていってしまったためです。)
炭に関する豆知識
○炭の通電性
・電気を通すもの
備長炭などの「白炭」(1000℃以上で加熱したもの)
・電気を通さないもの
「黒炭」(約700℃で加熱)
(炭の主成分である炭素の結晶構造の違いによります。)
○炭の吸着力
炭には目に見えない無数の穴があるため表面積が極めて大きく,水中や空気中の汚れやにおい
を取り除く作用が知られています。
色水(青色1号などで着色)と細かな炭を容器に入れてよく振り,ろ過すると色が薄くなった
り無色透明になることを確認できます(ろ過だけでは,色は変化しない)。この性質を利用した
活性炭などが消臭剤などに利用されています。
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ものの燃え方と空気
鉄も燃えるのかな?
6年
スチールウールを燃やしてみよう
発展
ここまでの学習では,植物体の燃焼のみを扱ってきました
が,発展として金属の燃焼を取り上げてみましょう。
金属は,植物体の燃焼と異なり,二酸化炭素が発生しない
ことや炎が出ないことが特徴です。ここではスチールウール
を用いた実験を紹介します。
1
準備
スチールウール,針金(太さ1mm程度),アルコール
酸素中でのスチールウールの燃焼
ランプ,マッチ,燃えさし入れ,三角フラスコ(300ml)
ゴム栓(9号),ガラス管(長さ5cm程度),ゼムクリップ(特大),ダブルクリップ(口幅20mm
程度),砂,コード,水槽,アルミニウムはく,ぬれ雑巾,石灰水,ビーカー(300ml),鉄くぎ,
2
「鉄も燃えるのかな?」
(1)空気中での鉄の燃焼
①「鉄も燃えるのかな?」
A男:燃えないよ。
B太:う∼ん,やっぱり燃えないと思うな。
C子:鉄も燃えるって聞いたことがあるような。
②「鉄くぎをアルコールランプで加熱してみよう。」
・加熱したくぎには冷めるまでさわらないことを徹底させる。
A男:やっぱり燃えない。
B太:でも黒くなったよ。
鉄くぎを加熱する
③「スチールウールは燃えるかな?」
・スチールウールは,細い繊維状の鉄であることを説明す
る。
・磁石に引きつけられることを確認する。
・1g程度を針金で巻いて,アルコールランプで加熱する。
・下にアルミニウムはくをしいておく。
・着火したらガラス管で息を吹きかけ,よく燃焼させる。
・やけどしないよう十分注意させる。
A男:鉄も燃えるんだ。
B太:色が黒くなったよ
空気中でのスチールウール
C子:ぼろぼろになったよ。
の燃焼
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(2)容器内でのスチールウールの燃焼(演示)
①装置の説明をする。
・閉じた系であること。
・電流を流して着火させること。
・ビーカーには石灰水が入っていること。
・容器内が酸素で満たされていることは知
らせない。
・部屋を暗くして着火する。
②着火する。
・「すご∼い。花火みたい。」
・「砂の上で固まってるよ。」
装置の全体像
・容器内が冷えるまで,2∼3分ほど感想
石灰水
を聞くなどする。
③「クリップをはずすと,どうなるかな?」
・「気体がブクブクと出て,石灰水が白くにごるんじゃないかな。」
・クリップをはずすと,石灰水が勢いよくフラスコ内に吸い込まれる。
・二酸化炭素が発生していないことは,石灰水が白く濁らないことから確認できる。
・石灰水が容器内に入ったことについて,子どもが正しく理解することはやや難しい面
があるが,どの程度の体積の酸素が使われたかについては実感させることができる。
(3)実験装置について
①ゴム栓にコルクボーラーで穴をあける。
②ガラス管をゴム栓に差し込む。(ガラス管をぬらしておくと差し
込みやすい。)
③ゼムクリップ(特大)を2本直線上に伸ばして,ラジオペンチ
などを利用してゴム栓に差し込む。
④ゼムクリップにスチールウール(約0.5g)を引っかけるように
取り付ける。
クリップを挿入
⑤フラスコの底に厚さ約5mm砂を入れ,酸素ボンベでほぼ容器い
っぱいに酸素を注入し,セットする。
⑥点火については,電源装置を利用する。
ゼムクリップの上端を電源装置に接続し,電流が1A程度になるまで上げていく。
点火したら,すぐに電源装置をOFFにする。
金属の燃焼
以前は小学校で学習していた金属の燃焼が,中学校へ移行しました。中学校では,鉄が
燃焼すると酸素と化合し別の物質になること,化合した酸素の分だけ重くなることなどを学習し
ます。この観察・実験を中学校での学習へのつながりにしたいものです。
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