JP 2013-501007 A 2013.1.10 (57)【要約】 ポルフィロモナス

JP 2013-501007 A 2013.1.10
(57)【要約】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyro
monas gingivalis)に対する免疫応答
を誘発するための組成物および方法が本明細書に提供さ
れる。組成物および方法はポルフィロモナス・ジンジバ
リス(P.gingivalis)ポリペプチドおよび
そのフラグメントと変異体、ならびにポルフィロモナス
・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症(
例えば歯周炎)の診断、予防および治療に有益な、対応
するポリヌクレオチドに関する。ポリペプチドに対する
抗体、およびこれらの抗体を含む組成物および方法も開
示される。本開示は、さらにポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)感染症(例えば歯
周炎)の検出、予防および治療のための方法も記述する
。
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの単離されたポリペプチドおよび薬剤的に許容できる担体を含む免疫原
性の組成物であって、前記少なくとも1つのポリペプチドは、
a.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG04
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;
b.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
54、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
c.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
74、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
10
d.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
e.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
13、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
f.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG21
72、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
g.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
26、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
h.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
98、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
20
i.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG01
86、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;および
j.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
16、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体、
からなる群から選ばれることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの単離されたポリペプチドおよび薬剤的に許容できる担体を含む免疫原
性の組成物であって、前記少なくとも1つのポリペプチドは、
a.配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
b.配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
30
c.配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
d.配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
e.配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
f.配列番号11に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
g.配列番号13に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
h.配列番号15に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
i.配列番号17に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;および
j.配列番号19に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
からなる群から選ばれることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
40
前記組成物がさらにアジュバントを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組
成物。
【請求項4】
対象に請求項1または2に記載の組成物の治療上有効量を投与することを含むことを特
徴とする、前記対象のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感
染症を治療するまたは予防する方法。
【請求項5】
対象に請求項3に記載の組成物の治療上有効量を投与することを含むことを特徴とする
、前記対象のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症を治
療するまたは予防する方法。
50
(3)
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【請求項6】
請求項1または2に記載の組成物を対象に投与するステップを含むことを特徴とする、
前記対象において免疫応答を誘導する方法。
【請求項7】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の予防または治
療のための免疫原性の組成物への単離されたポリペプチドの使用であって、前記単離され
たポリペプチドは、
a.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG04
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;
b.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
10
54、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
c.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
74、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
d.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
e.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
13、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
f.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG21
72、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
g.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
20
26、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
h.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
98、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
i.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG01
86、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;および
j.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
16、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体、
からなる群から選ばれることを特徴とする、使用。
【請求項8】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の予防または治
30
療のための免疫原性の組成物への単離されたポリペプチドの使用であって、前記単離され
たポリペプチドは、
a.配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
b.配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
c.配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
d.配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
e.配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
f.配列番号11に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
g.配列番号13に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
h.配列番号15に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
40
i.配列番号17に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;および
j.配列番号19に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド。
からなる群から選ばれることを特徴とする、使用。
【請求項9】
対象に少なくとも1つの単離された核酸を含む組成物の治療上有効量を投与することを
含む、前記対象のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症
を治療、または予防する方法であって、前記単離された核酸は、
a.配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする核
酸;
b.配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする核
50
(4)
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酸;
c.配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする核
酸;
d.配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする核
酸;
e.配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする核
酸;
f.配列番号11に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする
核酸;
g.配列番号13に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする
10
核酸;
h.配列番号15に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする
核酸;
i.配列番号17に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする
核酸;および
j.配列番号19に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする
核酸、
からなる群から選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記組成物がさらにアジュバントを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
20
【請求項11】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、前記ポリペプチドが、
a.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG04
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;
b.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
54、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
c.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
74、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
d.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
30
e.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
13、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
f.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG21
72、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
g.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
26、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
h.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
98、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
i.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG01
86、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;および
40
j.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
16、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体、
からなる群から選ばれることを特徴とする、抗体。
【請求項12】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、前記ポリペプチドが、
a.配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
b.配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
c.配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
d.配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
e.配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
50
(5)
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f.配列番号11に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
g.配列番号13に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
h.配列番号15に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
i.配列番号17に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;および
j.配列番号19に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
からなる群から選ばれることを特徴とする、抗体。
【請求項13】
対象に請求項11の抗体を投与することにより、前記対象を治療することを特徴とする
方法。
【請求項14】
10
対象に請求項12の抗体を投与することにより、前記対象を治療することを特徴とする
方法。
【請求項15】
対象に請求項11の抗体を投与することを含むことを特徴とする前記対象のポルフィロ
モナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症を治療する方法。
【請求項16】
対象に請求項12の前記抗体を投与することを含むことを特徴とする対象のポルフィロ
モナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症を治療する方法。
【請求項17】
少なくとも1つの単離されたポリペプチドを含む対象のポルフィロモナス・ジンジバリ
20
ス(P.gingivalis)感染症の存在を検出するためのキットであって、前記ポ
リペプチドが、
a.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG04
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;
b.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
54、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
c.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
74、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
d.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
95、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
30
e.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
13、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
f.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG21
72、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
g.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG13
26、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
h.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG17
98、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体
i.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG01
86、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体;および
40
j.ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質PG06
16、またはその免疫原性のフラグメントもしくは変異体、
からなる群から選ばれることを特徴とする、キット。
【請求項18】
少なくとも1つの単離されたポリペプチドを含む対象のポルフィロモナス・ジンジバリ
ス(P.gingivalis)感染症の存在を検出するためのキットであって、前記ポ
リペプチドが、
a.配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
b.配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
c.配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
50
(6)
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d.配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
e.配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
f.配列番号11に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
g.配列番号13に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
h.配列番号15に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
i.配列番号17に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;および
j.配列番号19に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド;
からなる群から選ばれることを特徴とする、キット。
【請求項19】
対象のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症のリスク
10
を減少させる方法であって、前記対象に請求項1または2に記載の組成物の治療上有効量
を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記対象が、症候性のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)
感染症を発症する危険性がある、または症候性のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.
gingivalis)感染症を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の方
法。
【請求項21】
前記対象が、症候性のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)
感染症を有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
20
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2009年8月2日に出願された、米国仮特許出願61/230,717号
の優先権を主張し、この出願全体を参照によって本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は免疫学の分野に関し、特にポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingi
valis)抗原、ならびに免疫化および治療でのこの抗原の使用に関する。
【背景技術】
30
【0003】
歯周病(または歯周疾患)は歯の支持組織の炎症疾患である。疾患進行は、歯周ポケッ
ト(菌苔が内部に存在)の形成、支持結合組織の破壊の進行、歯槽骨の減少、を特徴とし
、その結果、次第に歯を支えることができなくなり、歯を失うこととなる。歯周疾患は歯
肉下の歯垢にある特定の細菌に関連している。ポルフィロモナス・ジンジバリス(Por
phyromonas gingivalis)は、歯周病とその進行に関連する最も重
要な病原体の1つとみなされている。この黒色色素産生、糖非分解性、グラム陰性嫌気性
菌は、エネルギーを特定のアミノ酸の代謝に依存する。ポルフィロモナス・ジンジバリス
(P.gingivalis)は、鉄を、好ましくはヘムまたはその鉄(III)酸化物
ヘミンの形態で、必須とし、過剰ヘミン条件下で増殖した場合、実験動物において強い毒
40
性を有する。
【0004】
莢膜、付着因子、細胞毒および細胞外の加水分解酵素等の病原因子のいくつかがポルフ
ィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の病原性に関係している。ポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の主な病原因子およびワクチ
ン候補は、細胞外のシステインプロテイナーゼまたはジンジパイン(RgpA、RgpB
およびKgp)である。これらは広範囲に調査されている(非特許文献1∼8)。ジンジ
パイン複合体だけが予防動物モデルの歯槽骨退縮を防ぐことが証明された。また、この複
合体に特異的な抗体は、人体研究(非特許文献9、10)において予防効果が証明されて
いる。にもかかわらず、毒性およびポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiv
50
(7)
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alis)の疾病を引き起こす能力は多因子性であり、多くの決定要因がかかわっている
と考えられ得る(非特許文献11)。 ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W83株およびATC
C33277株のゲノムはそれぞれ配列決定されている(非特許文献12、13)が、こ
こから、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)抗原が免疫原性
で他にも有益であるかどうかについての情報を何ら得ることはできない。
【0005】
したがって、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の
効果的な治療が求められている。
【先行技術文献】
10
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L.Frazerら、“Vaccination with reco
mbinant adhesins from the RgpA−Kgp prote
inase−adhesin complex protects against P
orphyromonas gingivalis infection,”24 (4
2−43),6542(2006)
【非特許文献2】N.M.O’Brien−Simpsonら、“Serum immu
noglobulin G (IgG) and IgG subclass resp
onses to the RgpA−Kgp proteinase−ashesin
20
complex of Porphyromonas gingivalis in adult periodontitis 68(5)2704(2000)
【非特許文献3】N.M.O’Brien−Simpsonら、“Role of Rg
pA, RgpB and Kgp proteinases in virulenc
e of Porphyromonas gingivalis W50 in a m
urine lesion model,”69(12),7527(2001)
【非特許文献4】N.M.O’Brien−Simpsonら、“RgpA−Kgp p
eptide−based immunogens provide protecti
on against Porphyromonas gingivalis chal
lenge in a murine lesion model,”68(7),40
30
55(2000)
【非特許文献5】N.M O’Brien−Simpsonら、“An immune response directed to proteinase and adhe
sin functional epiptopes protects agains
t Porphyromonas gingivalis−induced perio
tontal bone lone,”175(6),3980(2005)
【非特許文献6】N.M.O’Brien−Simpsonら、“Porphyromo
nas gingivalis RgpA−Kgp proteinase−adhes
in complexes penetrate gingival tissue a
nd induce pro−inflammatory cytokines or 40
apoptosis in a concentration−dependant m
anner”,(2008)
【非特許文献7】N.M.O’Brien−Simpsonら、“Antigens o
f bacteria associated with periodontitis
”,35,101(2004)
【非特許文献8】V.Tamら、“Characterization of T Ce
ll Responses to the RgpA−Kgp Proteinase−
Adhesin Complexes of Porphyromonas gingi
valis in BALB/c Mice,”181(6),4150(2008)
【非特許文献9】Booth.Vら、Passive immunization wi
50
(8)
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th monoclonal antibodies against Porphyr
omonas gingivalis in patients with perio
dontitis. Infect Immun. 1996 Feb;64(2):4
22−7
【非特許文献10】Yokoyama, Effects of egg yolk a
ntibody against P. gingivalis gingipains
in periodontitis patients. J Oral Sci. 2007 Sep;49(3):201−6
【非特許文献11】Holt SC,Kesavalu L,Viriulence f
actors of P gingivalis.Periodontal 2000.
10
1999 Jun 20:168−238
【非特許文献12】Nelson KEら、complete genome sequ
ence of the oral pathogenic bacterium P.
gingivalis strain W83.J.Bacteriol.2003 S
ep;185(18):5591−601
【非特許文献13】“Determination of the Genome Se
quence of Porphyromonas gingivalis Strai
n ATCC 33277 and Genomic Comparison with
Strain W83 Revealed Extensive Genome Re
arrangements in P.gingivalis”,DNA Res.20
20
08 August;15(4):215−225
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)に対する免
疫応答を誘発するための組成物および方法を提供する。さらに、ポルフィロモナス・ジン
ジバリス(P.gingivalis)感染症(例えば歯周病)の予防または治療のため
の方法が提供される。一例において、組成物は、PG0495、PG0654、PG13
74、PG1795、PG2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG
0186およびPG0616からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリペプチドを含
30
む。さらに、これらのポリペプチドに特異的に結合する抗体、ならびにこのような抗体を
含む組成物、およびこのような抗体の使用方法も提供される。
【0008】
1つまたは複数のポリペプチドを含む医薬品組成物等の組成物(例えばワクチン組成物
)が提供される。場合により、組成物はアジュバントを含むことができる。
【0009】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、本発明の組成物を対象に投与すると、ポ
ルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)による感染症に対する免疫
応答が誘発される。
【0010】
40
本発明の他の特徴および利点は下記の発明を実施するための形態、図面および特許請求
の範囲から明らかとなる。
【0011】
図に関しての以下の記述により本発明への理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パネルAおよびBからなり、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingi
valis)に特異的なIgG応答を示す。図1aは、実施例3の血清抗タンパク質Ig
G抗体応答を示す。また、図1bは、実施例3の血清の総IgG抗体応答を示す。
【図2】フローサイトメトリーに基いた分析によって計測された、定常期における、ポル
50
(9)
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フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)(W50株)の細胞表面上の
タンパク質の接近性を示す。Y軸上の点はそれぞれ、得られた結果を表す。結果の平均値
を、水平方向のダッシュ(─)で表す。X軸上には同定された各タンパク質の名前を示す
。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の外膜分画におけるタ
ンパク質の存在も評価した(実施例4で議論する)。結果をX軸上に示す。(例えば、+
は、タンパク質がOM分画において検出されたことを示す;−はタンパク質がOM分画に
存在しなかったことを示す;*は、タンパク質がある実験ではOMにおいて検出されたが
他の実験では検出されなかったことを示す)
【図3】抗ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質I
gG抗体応答を示す。マウス群を水酸化アルミニウムの存在または非存在下でポルフィロ
10
モナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチドで免疫化した。ポルフ
ィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)特異的IgG抗体価を計測した
。バーはそれぞれ平均の抗体価を表し、記号は各群の単一のマウスに相当する。
【図4】タンパク質で免疫化されたマウスから得た血清サンプルの血清殺菌力を表す。
【図5】特定の抗タンパク質血清のオプソニン作用の調査での活性を表す。
【図6】フローサイトメトリーに基いた分析によって計測される、ポルフィロモナス・ジ
ンジバリス(P.gingivalis)(W50、W83、ATCC33277)の3
つの株の細胞表面上のタンパク質の接近性を表す。さらに、異なる増殖相まで生育したポ
ルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W50のタンパク質の接近
性も評価した。Y軸上の点はそれぞれ、タンパク質特異的抗血清を使用して実施された分
20
析で得られた結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、対象に投与した場合、免疫応答を誘発するポルフィロモナス・ジンジバリス
(P.gingivalis)ポリペプチドおよびこれをコードする核酸を提供する。例
えばPG0495、PG0654、PG1374、PG1795、PG2172、PG0
613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG0616のポリペプチド
、これらのポリペプチドをコードする核酸配列、およびこれらのポリペプチドに特異的に
結合する抗体を提供する。少なくとも1つのポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gi
ngivalis)ポリペプチドを含む免疫原性の組成物、ならびにポルフィロモナス・
30
ジンジバリス(P.gingivalis)感染症のリスクを予防し、治療し、減少させ
るための方法、およびこれら組成物を使用して対象において免疫応答を誘発、または誘導
するための方法も提供され、組成物を産生する方法も同様に提供される。本発明のポリペ
プチドおよび核酸配列は、本明細書の一部を形成する配列リストに示した特定の核酸およ
びアミノ酸配列を含むが、これに限定されない。これらのポリペプチド、組成物および方
法は以下に詳細に記述される。 定義
用語「抗原」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を刺激できる物質を指す。抗原
により刺激される免疫応答は、液性免疫および細胞性免疫のいずれかまたは両方でもよく
、一般に抗原に特異的である。抗原は、対象へ導入されると、対応する免疫体(抗体)の
40
形成を開始し媒介できる。抗原は複数の抗原決定基を有してもよく、この場合、対象が抗
原に接触すると、異なる特異性を有する対応抗体が複数産生され得る。抗原にはタンパク
質、ペプチド、ポリペプチド、核酸およびフラグメント、その変異体およびそれらの組み
合わせがあり得るが、これに限定しない。
【0014】
ペプチド、タンパク質およびポリペプチドという用語は本明細書では区別なく使用され
る。
【0015】
「単離された」ポリペプチドはその自然環境から除去されたポリペプチドである。例え
ば、単離されたポリペプチドは、原形質または細胞膜から除去されたポリペプチドであり
50
(10)
JP 2013-501007 A 2013.1.10
、その自然環境のポリペプチド、核酸および他の細胞形質成分の多くは、もはや存在しな
い。「単離できる」ポリペプチドは特定のソースから分離できるポリペプチドである。「
精製された」ポリペプチドは、ポリペプチドが天然で結合している他の構成成分を少なく
とも60%、好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%含ま
ないポリペプチドである。ポリペプチドが天然に生じる生物体の外部で産生されるポリペ
プチド、例えば、化学的な方法、または組み換え法により生産されるポリペプチドは、自
然環境に一度も存在したことがないため、定義により単離され精製されたとみなされる。
【0016】
用語「表面に接近可能なタンパク質」は表面が露出したタンパク質全てを指し、例えば
、内膜および外膜タンパク質、細胞壁に付着するタンパク質ならびに分泌されたタンパク
10
質を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「フラグメント」は少なくとも長さ約40
残基、または60残基であることが好ましく、少なくとも長さ約100残基であることが
好ましい。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチド
のフラグメントは当業者が周知の方法で産生できる。 用語、「抗体」はモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を指し、未精製の、も
しくは部分的に精製された形態(すなわちハイブリドーマ上澄部、腹水、ポリクローナル
抗血清)、または精製された形態の完全抗体またはフラグメント化抗体を含む。実施形態
のいくつかにおいて、抗体の抗原結合部分はFab、Fab’、F(ab’)2、Fd、
20
Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)の変異体、単鎖の抗体(scFv)、キメ
ラ抗体(ヒト化の抗体等)、二特異性抗体、ならびにポリペプチドへの特異的抗原結合に
とって十分な抗体の少なくとも一部分を含むポリペプチドを含んでいる。
【0018】
「精製された」抗体は、それが最初に(すなわちハイブリドーマ上澄部または腹水調製
の一部分として)見出されるタンパク質の少なくとも約50%から分離されるものである
。
【0019】
明細書および添付された請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」および「t
he」は、文脈により明らかにそうでないと示されない限り、複数の指示対象を含む。し
30
たがって、例えば、フラグメントに言及する場合、複数のフラグメントの混合物を含んで
もよく、医薬品の担体またはアジュバントに言及する場合、このような担体またはアジュ
バントの2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、対象または宿主は固体であることを意味する。対象は、ネ
コとイヌ等の飼育動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジおよびヤギ等の家畜、およびマウス、
ウサギ、ラット、モルモット等の実験動物を含み得る。一態様において、対象は霊長類ま
たはヒト等の哺乳動物である。
【0021】
任意選択の、または任意選択的に、とは、続いて記述した事象または状況が生じても、
40
生じなくてもよいことを意味し、また、記述には、事象または状況が生じる場合、および
生じない場合が含まれることを意味する。例えば、句、「組成物は、任意選択的に、組み
合わせを含むことができる」は、組成物が異なる分子の組み合わせを含んでも、または含
まなくてもよいことを意味するため、この記述は組み合わせおよび組み合わせがない状態
(すなわち組み合わせの個々の要素)の両方を含む。
【0022】
範囲は、本明細書では、ある特定の値の近似値から、および/または別の特定の値の近
似値までを表し得る。そのような範囲が表される場合、別の態様では、ある特定の値から
、および/または別の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞である約、または、およ
そを使用して近似として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されよ
50
(11)
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う。さらに、範囲の各端点は他の端点に関連して、および他の端点とは独立しての双方に
おいて、有意であることが理解されよう。
【0023】
用語、予防する(prevent)、予防する(preventing)、および予防(
prevention)は、本明細書においては、所与の症状に対する所与の予防的治療
(例えばポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)による感染症の
予防)に関して使用され、治療された対象が臨床的に観察可能なレベルの症状を全く発症
しないか、または緩徐に発症、および/またはその対象が治療を受けなかった場合より軽
度に症状を発症することを意味する。これらの用語は、対象において、あらゆる症状のい
かなる側面も見られないという状況に対してだけ使用されるのではない。例えば、所与の
10
症状の顕在化をもたらすと予想される刺激に対象がさらされている際に治療が行われた結
果、その患者において、治療を受けなければ予想されたであろう症状がより少ない、およ
び/または軽度である場合に、治療により症状が予防されたと言えるであろう。対象が軽
度の感染症の症状のみを示す結果となる場合、治療により感染症を「予防」できることと
なるが、これは感染微生物がどの細胞にも侵入しなかった、ということを意味するわけで
はない。
【0024】
同様に、減少する(reduce)、減少する(reducing)、および減少(re
duction)は、所与の治療による感染症のリスクに関連して本明細書で使用される
場合(例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の
20
リスクの減少)、治療を受けなかった場合の感染症発症の制御または基礎レベルと比較し
て、対象がより緩徐に、またはより軽度な症状を発症すること指す。感染症のリスクが減
少すると、対象は感染症の目立った症状を軽度にのみを示すか、感染症を緩徐に発症し得
るが、感染微生物(すなわちポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivali
s))がどの細胞にも侵入しなかった、ということを意味するわけではない。
【0025】
用語、治療する(treat)または治療する(treating)は、本明細書におい
て、所与の症状に対する所与の治療に関連して使用され(例えば、ポルフィロモナス・ジ
ンジバリス(P.gingivalis)により引き起こされた感染症、または疾病(症
候性感染)を治療)、治療された対象が臨床的に観察可能なレベルの症状を全く示さない
30
、またはその患者彼が治療を受ける前より軽度な症状を示すことを意味する。対象が感染
症の明らかな症状をより軽度に示す結果となった場合、治療により感染症または疾病を「
治療」できることとなるが、これは感染微生物(すなわちポルフィロモナス・ジンジバリ
ス(P.gingivalis))を徹底的に根絶したことを意味するわけではない。 ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチドおよび核酸
本発明は、免疫原性の組成物の構成成分、および/またはポルフィロモナス・ジンジバ
リス(P.gingivalis)感染症を診断するための試薬(例えばプローブ)とし
てとりわけ有益な、単離されたポリペプチド、およびポルフィロモナス・ジンジバリス(
P.gingivalis)に由来する核酸を提供する。本発明の好ましい実施形態は、
PG0495、PG0654、PG1374、PG1795、PG2172、PG061
40
3、PG1326、PG1798、PG0186およびPG0616の1つまたは複数の
ポリペプチド、およびこれらのポリペプチドをコードする単離された核酸を含む。PG0
495、PG0654、PG1374、PG1795、PG2172、PG0613、P
G1326、PG1798、PG0186およびPG0616のそれぞれは、実施例1で
詳述したパラメータおよび方法を使用して、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gi
ngivalis)W83株のゲノムを、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gin
givalis)W50株(ATCC53978)からその後単離された候補に対してマ
イニングすることにより同定した。
【0026】
本発明の組成物は、PG0495、PG0654、PG1374、PG1795、PG
50
(12)
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2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG061
6の少なくとも1つのポリペプチドを含む。PG0495、PG0654、PG1374
、PG1795、PG2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG01
86およびPG0616の各々について、使用に適切なポリペプチドは、完全長アミノ酸
配列(シグナル配列の有無は問わない)、ならびにその免疫原性フラグメント、変異体(
天然、またはそうでなければ、例えば合成由来)、および融合タンパク質を含む。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG0495ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG0495を発現する任意の他の株から単離されても、誘導され
てもよい。PG0495はPGN_1476としても知られている。ポルフィロモナス・
10
ジンジバリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P0495のアミノ酸
配列は、ジェンバンク受入番号AAQ65689.1により入手可能で、配列番号1とし
て本明細書の配列リストに示される。本発明での使用に好ましいP0495ポリペプチド
は、配列番号1に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、8
5、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)
を有するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号1の
少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、5
0、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸
のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号1の抗原決定基を含む。他の
好ましいフラグメントは、配列番号1の少なくとも1つの抗原決定基を保有するが、配列
20
番号1のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、15、20または25以上)および/または配列番号1のC末端から1つまたは複
数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号1のN末端からシグナル
配列を欠く。
【0027】
本明細書に記述した組成物への使用に適切なPG0654ポリペプチドは、ポルフィロ
モナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC3
3277、ならびにPG0654を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよい
。PG0654はPGN_0693としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジバ
リス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P0654のアミノ酸配列は、
30
ジェンバンク受入番号AAQ656833.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号9として記載する。本発明での使用に好ましいP0654ポリペプチドは、
配列番号9に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、85、
90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)を有
するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号9の少な
くとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、50、
60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸のフ
ラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号9の1つの抗原決定基を保有する
。他の好ましいフラグメントは、配列番号9の少なくとも1つの抗原決定基を保有するが
、配列番号9のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8
40
、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号9のC末端から1つま
たは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号9のN末端からシ
グナル配列を欠く。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG1374ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG1374を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG1374はPGN_0852としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P1374のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ66438.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号7として記載する。本発明での使用に好ましいP1374ポリペプチドは、
50
(13)
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配列番号7に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、85、
90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)を有
するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号7の少な
くとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、50、
60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸のフ
ラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号7の1つの抗原決定基を保有する
。他の好ましいフラグメントは、配列番号7の抗原決定基を少なくとも1つ保有するが、
配列番号7のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、15、20または25以上)および/または配列番号7のC末端から1つまた
は複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号7のN末端からシグ
10
ナル配列を欠く。
【0028】
本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG1795ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG1795を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG1795はPGN_1770としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P1795のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ66795.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号17として記載する。本発明で使用するのに好ましいP1795ポリペプチ
ドは、配列番号17に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80
20
、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以
上)を有するアミノ酸配列を含む。本発明で使用するのに好ましいポリペプチドは、配列
番号17の少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35
、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続し
たアミノ酸のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号17の1つの抗原
決定基を保有する。他の好ましいフラグメントは、配列番号17の抗原決定基を少なくと
も1つ保有するが、配列番号17のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、
4、5、6、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号1
7のC末端から1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列
番号17のN末端からシグナル配列を欠く。 30
本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG2172ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG2172を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG2172はPGN_0123としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P2172のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ67121.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号3として記載する。本発明で使用するのに好ましいP2172ポリペプチド
は、配列番号3に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、8
5、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)
を有するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号3の
40
少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、5
0、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸
のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号3の1つの抗原決定基を保有
する。他の好ましいフラグメントは、配列番号3の抗原決定基を少なくとも1つ保有する
が、配列番号3のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号3のC末端から1つ
または複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号3のN末端から
シグナル配列を欠く。
【0029】
本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG0613ポリペプチドは、ポルフィ
50
(14)
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ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG0613を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG0613はPGN_0656としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P0613のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ65797.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号11として記載する。本発明で使用するのに好ましいP0613ポリペプチ
ドは、配列番号11に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80
、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以
上)を有するアミノ酸配列を含む。本発明で使用するのに好ましいポリペプチドは、配列
番号11の少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35
10
、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続し
たアミノ酸のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号11の1つの抗原
決定基を保有する。他の好ましいフラグメントは、配列番号11の抗原決定基を少なくと
も1つ保有するが、配列番号11のN末端からの1つまたは複数の酸(例えば1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号
11のC末端から1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配
列番号11のN末端からシグナル配列を欠く。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG1326ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG1326を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
20
い。PG1326はPGN_1115としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P1326のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ66396.1によって入手可能で、本明細書の配列リス
トに配列番号5として記載する。本発明で使用するのに好ましいP1326ポリペプチド
は、配列番号5に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、8
5、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)
を有するアミノ酸配列を含む。本発明で使用するのに好ましいポリペプチドは、配列番号
5の少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40
、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミ
ノ酸のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号5の1つの抗原決定基を
30
保有する。他の好ましいフラグメントは、配列番号5の抗原決定基を少なくとも1つ保有
するが、配列番号5のN末端からの1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号5のC末端か
ら1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号5のN末
端からシグナル配列を欠く。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG1798ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG1798を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG1798はPGN_1767としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムのP1798の完全長のアミノ酸配列
40
はジェンバンク受入番号AAQ66797.1により入手可能であり、配列番号13とし
て本明細書の配列リストに記載される。本発明での使用に好ましいP1798ポリペプチ
ドは、配列番号13と50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、85
、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)を
有するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号13の
少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、5
0、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸
のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号13の1つの抗原決定基を含
む。他の好ましいフラグメントは、配列番号13の少なくとも1つの抗原決定基を保有す
るが、配列番号13のN末端からの1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6
50
(15)
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、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号13のC末端
から1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号13の
N末端からシグナル配列を欠く。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG0186ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG0186を発現する他の株から単離されても、誘導されてもよ
い。PG0186はPGN_0294としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P0186のアミノ酸配列は
、ジェンバンク受入番号AAQ65421.1により入手可能で、本明細書の配列リスト
に配列番号15として記載する。本発明で使用するのに好ましいP0186ポリペプチド
10
は、配列番号15に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、
85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上
)を有するアミノ酸配列を含む。本発明で使用するのに好ましいポリペプチドは、配列番
号?の少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、4
0、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したア
ミノ酸のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号15の1つの抗原決定
基を含む。他の好ましいフラグメントは、配列番号15の抗原決定基を少なくとも1つ保
有するが、配列番号15のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、
6、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号15のC末
端から1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号15
20
のN末端からシグナル配列を欠く。 本明細書に記述された組成物への使用に適切なPG0616ポリペプチドは、ポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W50およびATCC
33277、ならびにPG0616を発現する他の株から単離されても誘導されてもよい
。PG0616はPGN_0659としても知られている。ポルフィロモナス・ジンジバ
リス(P.gingivalis)W83ゲノムの完全長P0616のアミノ酸配列は、
ジェンバンク受入番号AAQ65800.1によって入手可能で、本明細書の配列リスト
に配列番号19として記載する。本発明での使用に好ましいP0616ポリペプチドは、
配列番号19に対して50%以上の同一性(例えば60、65、70、75、80、85
、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%以上)を
30
有するアミノ酸配列を含む。本発明での使用に好ましいポリペプチドは、配列番号19の
少なくとも8、9、10、12、13、16、18、20、25、30、35、40、5
0、60、70、80、90、100、150、200、250以上の連続したアミノ酸
のフラグメントを含む。好ましいフラグメントは、配列番号19の1つの抗原決定基を保
有する。他の好ましいフラグメントは、配列番号19の抗原決定基を少なくとも1つ保有
するが、配列番号19のN末端から1つまたは複数の酸(例えば1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、15、20または25以上)および/または配列番号19のC末端
から1つまたは複数のアミノ酸を欠く。さらに好ましいポリペプチドは、配列番号19の
N末端からシグナル配列を欠く。 本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および本発明のポリ
40
ペプチドをコードするポリヌクレオチドに、標準的なハイブリダイゼーション条件下でハ
イブリダイズするポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチド配列の相補体を
含む。さらに本発明には、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、2
0、22、24、26、28、30、32、34、36、38および40のいずれかのよ
うな同定された参照核酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくと
も60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%
、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なく
とも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93
%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少な
くとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドも含まれる
50
(16)
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。単離された、または本明細書に開示された配列に従って合成された本発明の核酸はポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ペプチドまたはポリペプチド
の組換え体の産生に有益である。
【0030】
本発明の核酸は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株(
例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83、W5
0およびATCC33277等があるがこれに限定しない)、および適用可能なDNA遺
伝子配列を保有する他のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)
株のDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して(PCR, A Prac
tical Approach”(McPherson、QuirkeおよびTaylo
10
r編、IRL Press Oxford、UK、1991))に記載されているように
)、または当業者が認識する標準的な代替技術を使用して、直接得てもよい。本発明の一
実施形態では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、22、24、
26、28、30、32、34、36、38および40のいずれかに対応する配列を有す
る単離された核酸分子が提供される。本発明は、これらの配列の配列保守的変異体および
機能保守的変異体を包含する。 本発明のポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、1
9、21、23、25、27、29、31、35、37および39、およびそれらの変異
体のポリペプチドを含む、開示され単離された核酸によりコードされたポリペプチドを包
含する。機能保守的変異体を含む本発明のポリペプチドは、ポルフィロモナス・ジンジバ
20
リス(P.gingivalis)の表面に接近可能なタンパク質に対応することが好ま
しい。
【0031】
本発明のポリペプチドは標準的な分子生物学の技術および発現系を使用して産生できる
(例えばSambrookらによるMolecular Cloning:A Labo
ratory Manual,Third Edition、Cold Spring Harbor Press、2001を参照のこと)。例えば、免疫原性のポリペプチド
をコードする遺伝子(または遺伝子のフラグメント)は単離されてもよく、免疫原性のポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドは、任意の市販の発現ベクター(例えば、pB
R322およびpUCベクター(New England Biolabs,Inc.,
30
Ipswich,MA)、または発現/精製ベクター(例えば、GST融合ベクター(P
fizer,Inc.,Piscataway,N.J.、または本明細書の実施例に記
述されたもの)にクローニングして、その後、適切な原核生物、ウイルス、または真核生
物の宿主内で発現させてもよい。その後、従来の方法により、または市販の発現/精製シ
ステムの場合には、製造者の指示に従って精製してもよい。 あるいは、変異体を含む本発明のポリペプチドは、これに限定しないが、例えばポルフ
ィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の野生型または突然変異体の細
胞から単離されてもよく、または、排他的固相合成、部分的固相方法、フラグメント縮合
または液相合成等の市販の自動化手順を使用する化学的な合成により単離されてもよい。
40
本発明のポリペプチドには免疫原活性があることが好ましい。「免疫原活性」は、ポリ
ペプチドが対象において免疫応答を誘発する能力を指す。ポリペプチドに対する免疫応答
は、対象におけるポリペプチドに対する細胞性および/または抗体を介した免疫応答であ
る。通常、免疫応答には、抗体の産生、ポリペプチドの1つまたは複数の抗原決定基への
、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞毒性T細胞の遊走と
いうような作用が1つまたは複数含まれる、これに限定されない。用語「抗原決定基」は
、抗原上の部位を指し、これに対して特定のB細胞および/またはT細胞が応答して抗体
が産生される。免疫原活性は予防的であってもよい。用語「予防的免疫原活性」は、ポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)による感染症を予防、または
阻止する対象の免疫応答を誘発するポリペプチドの能力を指す。
50
(17)
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【0032】
本発明のポリペプチドは、分子量、質量フィンガープリント、アミノ酸配列、ポリペプ
チドをコードする核酸塩基配列、免疫学的活性、またはこのような特徴の2つ以上の任意
の組み合わせを特徴としてもよい。典型的にはキロダルトン(kDa)で表されるポリペ
プチドの分子量は、通例の方法を使用して測定できる。この方法には、例えば、ゲルろ過
、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、
キャピラリー電気泳動法等のゲル電気泳動法、質量分析法、液体クロマトグラフィー(H
PLCを含む)、および確認されたまたは予測されたアミノ酸配列からの分子量の算定が
ある。
【0033】
10
一実施形態において、ポリペプチド、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、1
3、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37および39、
またはその変異体のうちのいずれかをコードする核酸が提供される。縮重変異体を含む、
これらの配列の変異体も提供される。ある実施形態においては、下記に詳述するように、
ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントをコードする核酸分子を、1つまたは複数
の発現ベクターに導入してよい。そのような実施形態では、ポリペプチドおよび/または
フラグメントは、アミノ酸配列に対応するヌクレオチドによりコードされる。下記表1に
示すように、多様なアミノ酸をコードするヌクレオチドの特定の組み合わせは当技術分野
において周知であり、当業者が用いるさまざまな参照文献に記載されている(例えばLe
win,B.Genes V,Oxford University Press, 1
994,および続版)。核酸変異体は、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチドの
任意の組み合わせを使用してもよい。
20
(18)
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【表1】
10
20
30
40
【0034】
50
(19)
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本明細書に記述されたPG0495、PG0654、PG1374、PG1795、P
G2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG06
16の免疫原性のポリペプチドは、このようなポリペプチドおよび/またはフラグメント
の免疫原性のフラグメントおよび変異体を含む。変異体はアミノ酸修飾を含んでもよい。
例えば、アミノ酸配列修飾には置換、挿入、または欠失による変化がある。変異体が免疫
原性である限り、置換、欠失、挿入またはその任意の組み合わせは単一の変異体において
併用されてもよい。挿入はアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、および単一のア
ミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は、一般的に、アミノま
たはカルボキシル末端の融合の場合よりも小規模な挿入(例えば約1∼4残基)となるだ
ろう。欠失は、1つまたは複数のアミノ酸残基をタンパク質配列から除去することが特徴
10
である。わずか約2∼6残基が、タンパク質分子内の任意の一部位で欠失するのが典型的
である。これらの変異体は通常、タンパク質をコードするDNAのヌクレオチドの部位突
然変異によって作成され、それにより変異体をコードするDNAを産生し、その後、組み
換え細胞培養でDNAを発現させる。
【0035】
既知の配列を有するDNA内の所定の部位で置換突然変異を誘発する技術はよく知られ
ており、M13プライマー突然変異誘発およびPCT突然変異誘発があるがこれに限定さ
れない。アミノ酸置換は典型的には単一の残基であるが、異なるいくつかの部位で生じさ
せることができる。置換変異体は、少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる
残基が挿入されたものである。このような置換は、一般に下記の表2に従って生成され、
保存的置換(非保存的置換も可能であるが)と呼ばれる。他のものは当業者に周知である
。
【0036】
保存的なアミノ酸置換では、その位置のアミノ酸残基の大きさ、極性、電荷、疎水性ま
たは親水性にはほとんど、または全く影響しないよう、特に、免疫原性の減少を招かぬよ
う、天然のアミノ酸残基を非天然の残基で置換してもよい。適切な保存的なアミノ酸置換
を表2に示す。
20
(20)
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【表2】
10
20
30
40
【0037】
選択された特定のアミノ酸置換は、選択された部位の位置に依存してもよい。ある実施
50
(21)
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形態において、ポリペプチドおよび/またはフラグメントをコードするヌクレオチドは、
遺伝コードの縮重に基づいて置換されている(すなわち、「ゆらぎ」仮説との一致)。核
酸が細胞内でのポリペプチドの発現に有益な組換えDNA分子である場合(例えば発現ベ
クター)、ゆらぎ型置換は、DNA分子によりコードされたその元々のアミノ酸と同じア
ミノ酸配列を有するポリペプチドを発現することとなる。しかしながら、上述のように、
置換は保存的、または非保存的、またはその任意の組み合わせであってよい。 当業者は、よく知られている技術を使用して、本明細書で提供されたポリペプチドおよ
び/またはフラグメントの適切な変異体を特定することができるだろう。生物活性(例え
ば免疫原性、MHC結合、赤血球(RBC)凝集、RBC溶血)を破壊せずに変化可能な
分子の適切な領域の同定に際して、当業者は、その活性にとって重要だとは思われない領
10
域を標的としてもよい。例えば、同一の種、または他の種から同様の活性を有する誘導体
が知られている場合、当業者はポリペプチドのアミノ酸配列をこのような類似のポリペプ
チドと比較してもよい。このような分析を実施すれば、保存される分子の残基および部分
を同定できる。このような類似の誘導体に関連して保存されない分子の領域での変化は、
ポリペプチドの生物活性および/または構造にはほとんど悪影響を及ぼさないことが認識
されるだろう。しかしながら、MHCへの結合の減少を招く修飾は、多くの場合適切では
ないであろう。当業者は、比較的保存された領域においても、ポリペプチドおよび/また
はフラグメントの望ましい特性を保有したまま、天然の残基を化学的に類似のアミノ酸と
置換し得ることも認識しているだろう。したがって、生物活性、または構造にとって重要
と思われる領域においても、生物活性を破壊せずに、または誘導体の構造に悪影響を与え
20
ずに、保存的なアミノ酸置換を行える。
【0038】
類似体は、天然のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリ
ペプチドとは、アミノ酸配列において、および/または非配列修飾により異なる可能性が
ある。非配列修飾は、アセチル化、メチレーション、ホスホリレーション、カルボキシル
化またはグリコシル化の変化を含む。本発明のポリペプチドの「修飾」は、1つまたは複
数の構成アミノ酸において化学的に、または酵素学的に誘導体化されたポリペプチド(ま
たはその類似体、例えばそのフラグメント)を含む。そのような修飾には例えば、側鎖修
飾、主鎖修飾および、N末端およびC末端修飾、例えばアセチル化、ヒドロキシル化、メ
チレーション、アミド化および糖または脂質成分の付加、補因子等、およびこれらの組み
30
合わせを含み得る。本発明の修飾ポリペプチドは、無修飾のポリペプチドの生物活性を保
有してもよく、またはその生物活性が減少、または増加を示してもよい。
【0039】
ポリペプチド配列の類似性およびポリペプチド配列の同一性
2つのポリペプチドの構造的類似性は2つのポリペプチド残基(例えば候補ポリペプチ
ドと、例えば配列番号1のポリペプチド)をアラインさせて、これらの配列の長さに沿っ
て同一のアミノ酸の数を最適化することにより測定できる。各配列のアミノ酸はそれらの
本来の順のままであるが、片方の、または両配列内のギャップは、同一のアミノ酸の数を
最適化するためにアラインメントする際には容認される。候補となるポリペプチドは参照
ポリペプチドと比較されるポリペプチドである。候補ポリペプチドは、例えば微生物(例
40
えばポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis))から単離でき、ま
たは、組み換え技術を用いて産生しても、または化学的もしくは酵素学的に合成してもよ
い。
【0040】
アミノ酸配列の対比較分析はグローバルアルゴリズム(例えばNeedleman−W
unsch)を使用して行なうことができる。あるいは、ポリペプチドは、Tatian
aらにより記述されたように(FEMS Microbiol. Lett,174:2
47−250(1999))、ローカルアラインメントアルゴリズム、例えばBLAST
2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して比較してもよい。これは、国立
バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ウェブサイトで利用可能である。全BLA
50
(22)
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ST2検索パラメータに対してデフォルト値を使用してもよい。デフォルト値はmatr
ix=BLOSUM62;open gap penalty=11、extensio
n gap penalty=1、gap x dropoff=50、expect 10、wordsize=3、およびfilter onを含む。Smith Wate
rmanアルゴリズムは、使用可能な別のローカルのアラインメントツールである(19
88)。
【0041】
2つのアミノ酸配列の比較において、構造上の類似性を、「同一性」パーセント、また
は、「類似性」パーセントとして言及してもよい。「同一性」は、同一のアミノ酸の存在
を指す。別記しない限り、用語「同一性パーセント」は、2つのアミノ酸の対比較分析が
10
グローバルアルゴリズムを使用して行なわれたことを意味する。「類似性」は、同一のア
ミノ酸の存在だけでなく保存的置換の存在をも指す。本発明のポリペプチドにおけるアミ
ノ酸の保存的置換は、表2に示すように、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選
択されてもよい。
【0042】
本発明のポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも5
5%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少
なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも
88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、
少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
20
も97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポ
リペプチドを含み得る。
【0043】
融合
他の実施形態において、本明細書に記述されたポリペプチドおよび/またはフラグメン
トは、ポリペプチドの精製または検出を支援する融合ポリペプチドセグメントを含んでい
てもよい。融合は、対象ポリペプチド変異体のアミノ末端、またはカルボキシ末端で生成
できる。融合はリンカーまたはアダプター分子なしで直接的に、またはリンカーまたはア
ダプター分子によってなされてもよい。リンカーまたはアダプター分子は、1つまたは複
数のアミノ酸残基であってもよく、典型的には約20∼約50のアミノ酸残基である。リ
30
ンカーまたはアダプター分子も、DNA制限エンドヌクレアーゼ、または融合成分の分離
を可能とするタンパク分解酵素の切断部位とともに設計されてもよい。融合ポリペプチド
が一度構築されれば、本明細書に記述された方法に従って誘導可能であることが理解され
るであろう。適切な融合セグメントには、特に、金属結合ドメイン(例えばポリヒスチジ
ンセグメント)、免疫グロブリン結合ドメイン(すなわちプロテインA、プロテインG、
T細胞、B細胞、Fc受容体または補体タンパク質抗体結合ドメイン)、糖結合ドメイン
(例えばマルトース結合ドメイン)、および/または「タグ」ドメイン(すなわち、ガラ
クトシダーゼの少なくとも一部分、連鎖球菌タグペプチド、T7タグペプチド、FLAG
ペプチド、またはモノクローナル抗体等のドメインに結合する化合物を使用して精製でき
る他のドメイン)が含まれる。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現においてポ
40
リペプチドに融合され、宿主細胞から目的のポリペプチド配列をアフィニティー精製する
ための手段として機能する。アフィニティー精製は、例えばカラムクロマトグラフィーで
、アフィニティマトリクスとしてタグに対する抗体を使用して行うことができる。その後
場合により、タグを、切断にある種のペプチダーゼを使用する様々な方法によって、目的
のポリペプチドの精製した配列から除去できる。精製を支援するためにN末端に付加され
たセグメント/ドメインを有する融合タンパク質の例を本明細書に提供する(例えば配列
番号21、23、25、27、29、31、35、37および39を参照)。
【0044】
ある実施形態において、ポリペプチドおよび/またはフラグメントは、検出できるよう
、直接的または間接的に(すなわち、抗体を使用して)標識またはタグ付けされてもよい
50
(23)
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。標識には、フルオレッセイン等の蛍光色素、ローダミン、フィコエリトリン、ユウロピ
ウムおよびテキサスレッド、ジアミノベンジジン等の発色染色、ラジオアイソトープ、巨
大分子のコロイド粒子または着色ラテックスビーズ等の分散粒子、磁性または常磁性、ビ
オチンおよびジゴキシゲニン等の結合剤、およびFACS、ELISA、ウエスタンブロ
ット、TRFIA、免疫組織化学的検査、消散、ルミネックスビーズアレイ、またはディ
ップスティックもしくは他のラテラルフロー分析フォーマット等において、直接的にまた
は間接的に、検出可能な信号を視認可能に、電子的に検出可能に、またはそうでなければ
記録可能にする生物学上はまたは化学的に活性な薬剤が含まれる。このような方法で使用
される適切な抗体結合分子には、免疫グロブリン結合抗体、例えば抗ヒトIg抗体、抗ヒ
ト抗体、Igイソタイプ、もしくはIgGのサブクラスに特異的な、またはポルフィロモ
10
ナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質に特異的な抗ヒト抗体を含
み得る。
【0045】
好ましい蛍光性のタグタンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)として知られてい
るクラゲタンパク質由来のものを含む。GFPおよび他の蛍光体についての詳細は下記の
論文に示されている:Tsien R Y,“The Green Fluoresce
nt Protein”Annual Reviews of Biochemistr
y 1998; 67:509−544、Verkhusha,VおよびLukyano
v,K.“The Molecular Properties and Applic
ations of Anthoza Fluorescent Proteins a
20
nd Chromophores” Nature Biotechnology 20
04;22:289−296。幅広い蛍光性のタグタンパク質をコードするプラスミドベ
クターは、様々な供給者から入手可能であり、例えばClontech Laborat
ories,Inc.より入手可能な“Living Colours™F
luorescent Proteins”アレイが含まれる。類似のベクターもInv
itrogenおよびAmersham Bioscience等の他の供給者から入手
可能である。GFP由来の適切な蛍光性タンパク質には、赤に変換された変異体EGFP
、青に変換された変異体ECFP、および黄色に変換された変異体EYFPである。EG
FPは標的抗原の抗原特性への影響を最小限に抑えながら明るい蛍光を発するため、蛍光
マーカーとして好まれている。別の蛍光性マーカータンパク質は市販されている。生物学
30
上はまたは化学的に活性な薬剤は酵素を含んでおり、酵素は例えば色を発色させるため、
または変化させる反応を触媒したり、電気的性質の変化を引き起こしたりするため有益で
ある。酵素は分子的に励起可能なため、エネルギー状態間の電子遷移により特有のスペク
トルが吸収または放出される。酵素には、バイオセンサーと共に使用される化学成分を含
んでもよい。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリフ
ォスファターゼ検出体が使用されてもよい。さらなる例にはホースラディッシュペルオキ
シダーゼおよび化学蛍光も含まれる。実施形態のいくつかにおいては、非固定化抗体結合
分子またはポリペプチドは、前記非固定化抗体結合分子またはポリペプチドと結合する抗
体を使用して検出されてもよい。適切な検出抗体は蛍光によって標識されてもよい。標識
は、標的抗原を直接標識するために使用される蛍光マーカー(タグ)でもよく、これによ
40
り抗原と蛍光マーカーが融合タンパク質を形成する。
【0046】
標的抗原に対する抗体が生物学的試料中にある場合、抗原は、抗体に結合されたタグで
標識されてもよく、形成された複合体は、免疫沈殿法を使用して検出される。その後、タ
グに関連した蛍光は、タンパク質の沈降の判断に(定性的測定)、または沈降したタンパ
ク質の量を測定する(定性的測定)ために使用されてもよい。例えば、蛍光タグをつけた
抗原の可溶性抽出物を、適切な期間、例えば4℃で一晩、対象血清でインキュベートして
抗体を抗原に結合させてもよい(典型的には抽出物300−500μl(300−500
mm3)以下に対して血清10−15μl(10−15mm3))。プロテインAまたは
プロテインGのセファロースビーズを、非特異的な結合を防止するために低IgGウシ胎
50
(24)
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児血清(Sigma)でプレインキュベートし、その後タグ付きタンパク質/抗体複合体
を含む抽出物/血清混合物に付加し、室温で1∼2時間、ゆっくり回転させて混合した。
タグ付きタンパク質に特異的に結合するものを含む、血清内の抗体は、タンパク質A/G
ビーズにより結合される。その後、タンパク質A/Gセファロースビーズを適切な緩衝液
で洗浄し(典型的には10mMトリス塩酸塩pH7.4、100mM塩化ナトリウム/1
mM EDTA/1%トリトンX−100)、結合しなかったタグ付きタンパク質を除去
する。これは、遠心分離を3回行い、上澄部を除去し、緩衝液で再懸濁して行ってもよい
。その後ビーズを、そのうちいくつかにはタグ付きタンパク質が付着しているが、回収し
、蛍光読取り装置、例えばMolecular Devices Inc.のSpect
ra Max Gemini XSプレートリーダーに入れる。本来の血清試料の特異的
10
自己抗体/抗体の存在が定量化される。GFPの場合には、波長472nmでの励起、お
よび512nmでの発光を使用する。蛍光励起は、使用される蛍光体/タグに依存するが
、同時にいくつかの異なるタグ付きタンパク質を組み合わせることは可能だろう。例えば
、異なるポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチド(
および/またはそのフラグメント)は別々にタグ付けされ、別々にまたは同時に分析され
てもよい。方法の感受性は検出装置に依存し、より感受性の高い検出装置の使用により相
当に高めることができる。これらの方法では様々な改変が可能である。
【0047】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)抗原で免疫活性抗体を
検出するために本明細書に記述した分析も、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gi
20
ngivalis)感染症の検出に有益な他の分析と組み合わせてもよい。例えば、これ
らの分析(すなわちELISA)は、生物学的試料中のポルフィロモナス・ジンジバリス
(P.gingivalis)核酸の検出ためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析と
組み合わせてもよい。あるいは、ELISA分析は免疫沈殿法分析と組み合わせてもよく
、PCRに基づいた分析を、免疫沈殿法分析と組み合わせてもよい。本明細書に記述した
様々な分析を組み合わせて、検出の感受性をさらに増加させても、データの陰性的中率を
さらに減少させてもよい。
発現ベクター
さらに本発明は、発現ベクターの使用法を提供する。発現ベクターは一般的に、ポリペ
プチドをコードする異種性の核酸配列(「コード配列」)に操作可能に連結されたフラン
30
キング配列で構成される。他の実施形態において、またはこのような実施形態との組み合
わせにおいて、フランキング配列には、コード配列の複製、転写および/または翻訳に影
響を与えられることが好ましく、コード配列に操作可能に連結される。「操作可能に連結
された」とは、核酸配列がそれらの通常の機能を実施するように構成されることを示す。
例えば、プロモーターがそのコード配列の転写を指示できる場合、プロモーターは、コー
ド配列に操作可能に連結されている。存在可能なプロモーターエレメントは、ポリペプチ
ドをコードする核酸配列に本来関連したもの、および核酸配列に関連しない外来性のエレ
メントも含む。
【0048】
正確に機能する限り、フランキング配列はコード配列に隣接する必要はない。即ち、例
40
えば翻訳も転写もされない配列をプロモーター配列とコード配列の間に介在させてよく、
この場合プロモーター配列はやはりコード配列と機能的に結合していると見なすことがで
きる。フランキング配列は、相同(すなわち宿主細胞と同一の種および/または株由来)
、異種(すなわち宿主細胞の種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち2つ以
上のソースのフランキング配列の組み合わせ)または合成であってもよい。フランキング
配列はさらに宿主のゲノム内でポリペプチドをコードする核酸配列の発現を調節するため
に通常機能する配列であってもよく、また利用してもよい。
【0049】
ベクターを含む培養細胞も提供される。培養細胞は、ベクターで形質移入された培養細
胞またはその細胞の後代であってもよく、細胞は免疫原性のポリペプチドを発現する。例
50
(25)
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えば、適切な細胞株は当業者に知られており、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC
)によって入手可能である。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivali
s)核酸配列は、例えば哺乳動物細胞、バキュロウィルス、植物、バクテリアおよび酵母
で使用される種々の発現系で発現できる。形質移入された細胞は、免疫原性のポリペプチ
ドを産生する方法において使用できる。この方法には、ポリペプチドの発現を許容する条
件下で、場合により発現配列の制御下で、ベクターを含む細胞を培養することを含む。ポ
リペプチドは標準的なタンパク質精製方法を使用して、細胞または培地から単離できる。
【0050】
送達技術
ある実施形態において、フランキング配列は標的細胞内で高レベルの遺伝子発現をもた
10
らす転写制御領域であることが好ましい。転写制御領域は例えば、プロモーター、エンハ
ンサー、サイレンサー、抑制エレメントまたはその組み合わせを含んでもよい。転写制御
領域は構成的、または組織もしくは細胞型に特異的であってもよい(すなわち、この領域
により、組織または細胞のある型において、別の型と比較してより高レベルの転写がもた
らされる)。そのため、フランキング配列が、宿主細胞の機構において機能する、および
機構によって活性化され得るならば、転写制御領域のソースは、任意の原核生物もしくは
真核生物、任意の脊椎動物もしくは無脊椎動物、または任意の植物であってもよい。種々
様々の転写制御領域を利用してもよい。
【0051】
適切な転写制御領域には、中でも、CMVプロモーター(すなわちCMV−最初期プロ
20
モーター);真核生物の遺伝子(すなわちエストロゲン誘導性ニワトリオバルブミン遺伝
子、インターフェロン遺伝子、グルココルチコイド誘導性チロシンアミノトランスフェラ
ーゼ遺伝子およびチミジンキナーゼ遺伝子)のプロモーター;および主要初期および後期
アデノウイルス遺伝子プロモーター;SV40初期プロモーター領域(Bernoist
およびChambon、1981、Nature 290:304−10);Rous肉
腫ウイルス(RSV)の3’末端反復配列(LTR)に含まれるプロモーター(Yama
motoら、1980、Cell 22:787−97);単純ヘルペスウイルスチミジ
ンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Na
tl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444−45);メタロチオネイン遺伝
子の制御配列(Brinsterら、1982、Nature 296:39−42);
30
βラクタマーゼプロモーター等の原核生物の発現ベクター(Villa−Kamarof
fら、1978、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:372
7−31);またはtacプロモーター(DeBoerら、1983、Proc.Nat
l.Acad.Sci.U.S.A.,80:21−25)が含まれる。組織および/ま
たは細胞型特異的転写制御領域には、例えば、膵腺房細胞において活性なエラスターゼI
遺伝子制御領域(Swiftら、1984、Cell 38:639−46;Ornit
zら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Bi
ol.50:399−409(1986);MacDonald、1987、Hepat
ology 7:425−515);膵臓β細胞において活性なインスリン遺伝子制御領
域(Hanahan、1985、Nature 315:115−22);リンパ系細胞
40
において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984、C
ell 38:647−58;Adamesら、1985、Nature 318:53
3−38;Alexanderら、1987、Mol.Cell.Biol.、7:14
36−44);精巣、乳腺、リンパおよび肥満細胞内のマウス乳癌ウイルス制御領域(L
ederら、1986、Cell 45:485−95);肝臓のアルブミン遺伝子制御
領域(Pinkertら、1987、Genes and Devel.1:268−7
6);肝臓のαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら、1985、Mo
l.Cell.Biol.、5:1639−48;Hammerら、1987、Scie
nce 235:53−58);肝臓のα1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kel
seyら、1987、Genes and Devel.1:161−71);骨髄細胞
50
(26)
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のβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985、Nature 315:33
8−40;Kolliasら、1986、Cell 46:89−94)脳の乏突起膠細
胞内のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987、Ce
ll 48:703−12);骨格筋のミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani、1
985、Nature 314:283−86);および視床下部の性腺刺激放出ホルモ
ン遺伝子制御領域(Masonら、1986、Science 234:1372−78
)、およびメラノーマ細胞内のチロシナーゼプロモーター(Hart,I.Semin Oncol 1996 Feb;23(1):154−8;Sidersら、Cance
r Gene Ther 1998 Sep−Oct;5(5):281−91)がある
。他の適切なプロモーターは当技術分野において周知である。
10
【0052】
核酸分子はウイルスおよび非ウイルスベクターの一部分として投与されてもよい。一実
施形態において、DNAベクターは、標的免疫原および/または会合分子(すなわち同時
刺激の分子、サイトカインまたはケモカイン)をコードする核酸を対象に送達するために
利用される。これを行う際に、多様な方法を使用して、このようなメカニズムの効率を改
善してもよい。このような方法には例えば、自己増殖ウイルスレプリコンの使用(Cal
eyら、1999.Vaccine、17:3124−2135;Dubenskyら、
2000.Mol.Med.6:723−732;Leitnerら、2000.Can
cer Res.60:51−55)、コドン最適化(Liuら2000.Mol.Th
er.、1:497−500;Dubensky、前出;Huangら、2001.J.
20
Virol.75:4947−4951)、インビボエレクトロポレーション(Wid
eraら、2000.J.Immunol.164:4635−3640)、同時刺激分
子、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸の取り込み(Xiangら
、1995.Immunity,(2):129−135;Kimら、1998.Eur
.J.Immunol.、28:1089−1103;Iwasakiら、1997.J
.Immunol.158:4591−3601;Sheerlinckら、2001.
Vaccine,19:2647−265)、CpG等の刺激モチーフの取り込み(Gu
runathan、前出;Leitner、前出)、形質膜陥入経路またはユビキチン−
プロセシング経路のターゲティングのための配列(Thomsonら、1998.J.V
irol.72:2246−2252;Veldersら、2001.J.Immuno
30
l.166:5366−5373)、プライム−ブースト法(Gurunathan、前
述;Sullivanら、2000.Nature、408:605−609;Hank
eら、1998.Vaccine、16:439−445;Amaraら、2001.S
cience(292):69−74)、プロテアソーム感受性切断部位、およびサルモ
ネラ(Salmonella)等の粘膜送達ベクターの使用(Darjiら、1997.
Cell、91:765−775;Wooら、2001.Vaccine(19):29
45−2954)。他の方法は当技術分野において知られており、このうちのいくつかは
、以下で記述される。
【0053】
核酸を宿主に導入するのに使用される様々なウイルスベクターには、特に、レトロウイ
40
ルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスおよびポック
スウイルスがある。多数のこのようなウイルスベクターが当技術分野において有用である
ことは当技術分野において理解されている。ベクターは、当業者に広く利用可能な標準的
な組み換え技術を使用して構築されてもよい。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、19
89、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、
Gene Expression Technology(Methods in En
zymology, Vol. 185,D.Goeddel編,1991.Acade
mic Press,San Diego,CA)およびPCRプロトコル:A Gui
de to Methods and Applications(Innisら、19
50
(27)
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90.Academic Press,San Diego,CA)等の一般的な分子生
物学の参考文献で見られる。
【0054】
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスの誘導体およびマウスまたは鳥類
のレトロウイルスの誘導体である。適切なレトロウイルスベクターには例えば、モロニー
マウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)
、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIV、およびラウス肉腫ウイ
ルス(RSV)がある。レトロウイルスベクターのいくつかは外来性の核酸配列を複数組
み入れることができる。組換えレトロウイルスは不完全であるので、感染性のベクター粒
子を産生するために支援を必要とする。この支援は例えば、レトロウイルス構造遺伝子を
10
コードするヘルパー細胞株により提供することができる。適切なヘルパー細胞株には特に
PA317とPA12がある。その後、そのような細胞株を使用して産生されたベクター
のウイルス粒子を、NIH3T3細胞等の組織細胞株に感染させ、大量のキメラレトロウ
イルスのウイルス粒子を産生してもよい。レトロウイルスベクターは、伝統的な方法(す
なわち注入)、または標的細胞集団の近接に「プロデューサー細胞株」を埋め込んで投与
してもよい(Culver,K.ら、1994、Hum.Gene Ther.,5(3
):343−79;Culver,K.ら、Cold Spring Harb.Sym
p.Quant.Biol.,59:685−90);Oldfield,E.、199
3、Hum.Gene Ther.、4(1):39−69)。プロデューサー細胞株は
ウイルスベクターを産生するために操作され、標的細胞の近くにウイルス粒子を放出する
20
。放出されたウイルス粒子の一部分がターゲット細胞と接触し、細胞を感染させて標的細
胞に核酸を送達する。標的細胞の感染後に、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0055】
アデノウイルスベクターは真核細胞への遺伝子導入(Rosenfeld,Mら、19
91、Science,252(5004):431−3;Crystal,R.ら、1
994、Nat.Genet.、8(1):42−51)、真核生物の遺伝子発現に関す
る研究(Levrero、M.ら、1991,Gene,101(2):195−202
)、ワクチン開発(Graham,F.およびPrevec,L.、1992、Biot
echnology,20: 363−90)、および動物モデル(Stratford
−Perricaudet,L.ら、1992、Bone Marrow Transp
30
lant.,9(Suppl.1):151−2;Rich,D.ら、1993、Hum
.Gene Ther.、4(4): 461−76)においてに特に有益であると証明
されている。インビボの異なる組織に対する組み換えAdを投与するための経験的な経路
には、気管内投与(Rosenfeld,M.ら、1992、Cell,68(1):1
43−55)、筋肉注入(Quantin,B.ら、1992、Proc.Natl.A
cad.Sci.U.S.A.,89(7):2581−3)、末梢静脈注入(Herz
,J.、およびGerard,R.、1993、Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A.,90(7):2812−6)、および脳への定位接種(Le Gal La Salle,G.ら,1993およびScience,259(5097):98
8−90)が含まれる。
40
【0056】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は宿主細胞ゲノムへ組み込む際に高レベルの感染力、幅
広い宿主域および特異性を示す(Hermonat,P.ら、1984、Proc.Na
tl.Acad.Sci.U.S.A.、81(20):6466−70)。また、単純
ヘルペスウイルス1型(HSV−1)も、好ましいベクター系であり、向神経性特性を有
するためのため特に神経系で使用される。(Geller,A.ら、1991、Tren
ds Neurosci.,14(10):428−32;Gloriosoら、199
5、Mol.Biotechnol.、4(1):87−99;Gloriosoら、1
995、Annu.Rev.Microbiol.,49:675−710)。
【0057】
50
(28)
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ポックスウイルスも有益な発現ベクターである。(Smithら、1983、Gene
,25(1):21−8;Mossら、1992、Biotechnology,20:
345−62;Mossら、1992、Curr.Top.Microbiol.Imm
unol.,158:25−38;Mossら、1991.Science,252:1
662−1667)。有益であると証明されたポックスウイルスには特に、ワクチニア、
NYVAC(商標)、アビポックス、鶏痘、カナリア痘、ALVAC(商標)およびAL
VAC(2)が含まれる。
【0058】
NYVAC(商標)(vP866)は、ワクチニアウイルスのコペンハーゲンワクチン
株から、既知の病原因子または潜在的な病原因子をコードするゲノムの6つの不必要な領
10
域を欠失させることにより誘導された(例えば、米国特許第5,364,773号明細書
および5,494,807号明細書を参照)。欠失座も外来遺伝子の挿入のため受入座と
して操作された。欠失領域は次のとおりである:チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R
)vP410;出血性領域(u;B13R+B14R)vP553;A型封入体領域(A
TI;A26L)vP618;血球凝集素遺伝子(HA;A56R)vP723;宿主域
遺伝子領域(C7L−K1L)vP804;およびリボヌクレオチドレダクターゼ大サブ
ユニット(I4L)vP866。NYVAC(商標)は、毒性および宿主域に関する遺伝
子産物をコードする18のオープンリーディングフレームを特異的に欠失させて産生した
遺伝子改変のワクチニアウイルス株である。NYVAC(商標)は、TAを発現するのに
有益であることが証明されている(例えば、米国特許第6,265,189号明細書を参
20
照)。NYVAC(商標)(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433
、placZH6H4Lreverse、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FH
VBも、ブダペスト条約の条項下、ATCCへ、それぞれ寄託番号VR−2559、VR
−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97
912およびATCC−97914で寄託された。
【0059】
ALVACに基づく組換えウイルス(すなわちALVAC−1およびALVAC−2)
も使用に適切である(例えば、米国特許第5,756,103号明細書を参照)。ALV
AC(2)は、ALVAC(2)ゲノムがワクチニアプロモーター制御下でワクチニアE
3LおよびK3L遺伝子を有する点を除き、ALVAC(1)と同一である。(米国特許
30
第6,130,066号明細書;Beattieら、1995a、1995b、1991
;Changら、1992;Daviesら、1993)。ALVAC(1)およびAL
VAC(2)の両方とも、TA等の外来性DNA配列を発現するのに有益であることが証
明されている。(Tartagliaら、1993a、b;米国特許第5,833,97
5号明細書)。ALVACは、ブダペスト条約の条項下、アメリカ培養細胞系統保存機関
(ATCC)(10801 University Boulevard,Manass
as,Va.20110−2209,USA)へATCC寄託番号VR−2547で寄託
された。
【0060】
別の有益なポックスウイルスベクターはTROVAC(商標)ベクターである。TRO
40
VAC(商標)は弱毒化鶏痘のことで、鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン株からプラーク
クローニングで単離され、1日齢のヒナへの接種が許可されている。TROVAC(商標
)ベクターのサンプルは、ブダペスト条約の条項下、ATCCへ寄託番号2553で寄託
された。
【0061】
「非ウイルスの」プラスミドベクターもまた、ある実施形態において適切であり得る。
好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫および/または哺乳類の宿主細胞と適合性が
ある。そのようなベクターには例えば、PCR−II、pCR3およびpcDNA3.1
(Invitrogen,San Diego,CA)、pBSII(Stratage
ne,La Jolla,CA)、pET15(Novagen,Madison,WI
50
(29)
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)、pGEX(Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)、
pEGFP−N2(Clontech,Palo Alto,CA)、pETL(Blu
eBacII,Invitrogen)、pDSR−α(PCT国際公開第90/143
63号パンフレット)およびpFastBacDual(Gibco−BRL,Gran
d Island,NY)およびBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(
高コピー数のCOLE1系ファージミド、Stratagene Cloning Sy
stems,La Jolla,CA)、Taq増幅PCR産物のクローニングのために
設計されたPCRクローニングプラスミド(例えばTOPO(商標)TA clonin
g(登録商標)kit、PCR2.1(商標)プラスミド誘導体、Invitrogen
,Carlsbad,CA)がある。細菌ベクターも使用されてもよい。これらのベクタ
10
ーには例えば、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、ビ
ブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、ラクトバチルス(Lactoba
cillus)、ウシ型弱毒結核菌ワクチン(BCG)(Bacille calmet
te guerin)およびストレプトコックス(Streptococcus)(例え
ば国際公開第88/6626号パンフレット;国際公開第90/0594号パンフレット
;国際公開第91/13157号パンフレット;国際公開第92/1796号パンフレッ
ト;および国際公開第92/21376号パンフレットを参照)がある。他の多数の非ウ
イルスのプラスミド発現ベクターおよび発現系が当技術分野において知られており、これ
を使用してもよい。
【0062】
20
他の送達技術も利用でき、例えば、DNAリガンド複合体、アデノウイルスリガンドD
NA複合体、DNAの直接注入、CaPO4沈降、遺伝子銃技術、エレクトロポレーショ
ンおよびコロイド分散系が含まれる。コロイド分散系は高分子複合体、ナノカプセル、マ
イクロスフェア、ビーズ、および脂質系、例えば水中油滴型エマルション、ミセル、混合
ミセルおよびリポソームが含まれる。好ましいコロイド系はリポソームであり、インビト
ロのおよびインビボで送達手段として有益な人工膜小胞である。リボ核酸、DNAおよび
無傷のウイルス粒子を水性内部に封入して、生物学上活性な形態で細胞に送達され得る(
Fraley,R.,ら、1981、Trends Biochem.Sci.(6):
77)。リポソームの組成物は通常リン脂質、特に相転移温度が高いリン脂質と、通常ス
テロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質を使
30
用してもよい。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度および二価カチオンの存在に
依存する。リポソーム産生に有益な脂質の例には、フォスファチジルグリセロール、フォ
スファチジルコリン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン等の
フォスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドがある。
特に有益なものはジアシルフォスファチジルグリセロールであり、脂質部位は14∼18
の炭素原子、特に16∼18の炭素原子を含み飽和している。リン脂質の例には卵子フォ
スファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルフォス
ファチジルコリンがある。
【0063】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチド特異的抗体
40
本開示はさらに、抗体に関し、抗体は防衛および/または中和抗体であることが好まし
く、PG0495、PG0654、PG1795、PG2172、PG0613、PG1
326、PG1798、PG0186、またはPG0616もしくはそのフラグメントま
たは変異体の1つを使用して産生され、結果として生ずる抗体は、ポルフィロモナス・ジ
ンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチドおよび/またはそのフラグメント
もしくは変異体と反応、または特異的に結合する。さらに、抗体の産生を誘発する方法が
提供されるが、この抗体は防御抗体および/または中和抗体であり、ポルフィロモナス・
ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチドおよび/またはそのフラグメン
トと反応する。抗体は能動免疫および受動免疫の両方を誘発してもよい。ポリペプチドお
よび/またはそのフラグメントも抗体を同定し単離するために使用されてもよく、この抗
50
(30)
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体は防御抗体および/または中和抗体であり、それは、天然のポルフィロモナス・ジンジ
バリス(P.gingivalis)タンパク質により誘発されたものと交差反応する。
【0064】
精製された抗体は、抗体が最初に見出されるタンパク質の少なくとも約60%、75%
、80%、85%、90%または95%から分離されることが好ましい。当技術分野にお
いて知られているように、適切な誘導体にはフラグメント(すなわち、Fab、Fab2
またはFv等の単鎖抗体)が含まれ得る。抗体は、任意の適切な起源または形態、例えば
、マウス(すなわち、マウスのハイブリドーマ細胞により産生された)であってもよくヒ
ト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体などとして発現されてもよい。
【0065】
10
様々な型の抗体を調製および利用する方法は、当業者によく知られており、使用に適切
だろう(例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、198
8;Harlowら、Using Antibodies:A Laboratory Manual,Portable Protocol No.1,1998;Kohle
rおよびMilstein、Nature,256:495(1975));Jones
ら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Na
ture,332:323−329(1988);Presta(Curr.Op.St
ruct.Biol.,2:593−596(1992);Verhoeyenら(Sc
ience、239:1534−1536(1988);Hoogenboomら、J.
20
Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Bio
l.,222:581(1991);Coleら、Monoclonal Antibo
dies and Cancer Therapy,Alan R.Liss、p.77
(1985);Boernerら、J.Immunol.,147(1):86−95(
1991);Marksら、Bio/Technology 10,779−783(1
992);Lonbergら、Nature 368 856−859(1994);M
orrison,Nature 368 812−13(1994);Fishwild
ら、Nature Biotechnology 14,845−51(1996);N
euberger、Nature Biotechnology 14,826(199
6);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.1
30
3 65−93(1995);および米国特許第4,816,567号明細書;同第5,
545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号
明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;および同
第5,661,016号明細書を参照のこと)。ある適用において、抗体はハイブリドー
マ上澄部または腹水内に含まれていてもよく、そのまま直接的に使用しても、標準的な方
法を使用して濃縮してから使用してもよい。他の適用において、抗体は例えば、塩分別お
よびイオン交換クロマトグラフィー、またはアガロースビーズ等の固体担体に共有結合す
るタンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/Gおよび/またはタンパク質Lのリガン
ドを使用するアフィニティークロマトグラフィー、またはこれらの技術の組み合わせを使
用して、さらに精製してもよい。抗体は任意の適切な形態で貯蔵してもよく、凍結調製(
40
すなわち−20℃または−70℃)として、凍結乾燥形態で、または通常の冷蔵条件(例
えば4℃)で貯蔵してもよい。液体の形態で貯蔵された場合、適切な緩衝液、例えばトリ
ス緩衝食塩水(TBS)またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)を利用することが好ましい
。抗体およびそれらの誘導体は、インビトロまたはインビボで使用するため、本明細書に
記述した組成物へ組み入れられてもよい。当業者に利用可能な抗体を産生および使用する
他の方法も、使用に適切でありえる。
【0066】
組成物
開示されたポリペプチドおよびこれらのポリペプチドをコードする核酸は、例えばワク
チン組成物等の免疫原性の組成物(免疫学的な組成物とも呼ばれる)の構成成分としてと
50
(31)
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りわけ有益である。免疫原性の組成物は、対象(例えば哺乳動物)対して投与されると、
組成物内に含まれる抗原(または免疫原)に対する免疫応答を誘発、または増強する。こ
の応答には、(例えばB細胞の刺激作用による)抗体の産生、またはT細胞ベースの応答
(例えば細胞溶解応答)が含まれてもよい。これらの応答は防御作用、または中和作用で
あってもなくてもよい。防御的または中和的な免疫応答は、抗原に対応する感染性の生物
体(つまり、抗原が由来する)に有害であり、宿主に有益である(例えば感染症の減少ま
たは予防によって)。本明細書で使用される場合、防御抗体または中和抗体は、対応する
野生型ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)抗原またはそのフ
ラグメントに対して反応してもよく、動物でテストされた場合、ポリペプチドまたはその
フラグメントがそこから由来し、対応するポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gin
10
givalis)抗原による致死性を減少または阻害された。対象に投与されると、防御
的な、または中和的な免疫応答を引き起こす免疫原性の組成物はワクチンとみなしてもよ
い。ワクチン組成物は予防および/または治療を目的として機能してもよい。本発明のポ
ルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチド(抗原)を1
つまたは複数を含む免疫原性の組成物(例えばワクチン)は、歯周炎および歯肉炎等の歯
周疾患を治療かつ/または予防するために使用されてもよい。免疫応答はその病気に対す
る完全な防御および/または治療を提供する必要はない。
【0067】
本発明の免疫原性の組成物の好ましい実施形態は、下記のタンパク質の1つまたは複数
を含む組成物を含んでいる:PG0495、PG0654、PG1374、PG1795
20
、PG2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG
0616。さらに好ましい実施形態は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15
、17、19、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50に対
して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、9
6%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するポリペプチドを含む免疫
原性の組成物である。
【0068】
本発明の組成物のある実施形態は実施例6において記述される。本発明の好ましい予防
的組成物は、動物に投与された場合、Th2−抗体偏向反応を誘発し、このような反応は
歯槽骨退縮予防マウスモデルでの予防に関連している(J.Immunol.2008 30
Sep.15;181(6):4150−8)。
【0069】
本発明の組成物(例えばワクチン組成物)はアジュバントがある、または無い状態で投
与されてもよい。アジュバントは一般に抗原の免疫原性を強化できる物質である。アジュ
バントは獲得免疫および先天免疫の両方で働いてもよく、様々な方法で機能し得るが、そ
れらすべてが理解されているとは限らない。
【0070】
アジュバントも、免疫応答を刺激または強化するために、本明細書に記述された組成物
および方法に含まれていてもよい。適切なクラスのアジュバントの例には、ゲル型[例え
ば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム(「アルミニウムアジュバント」)、リン酸
40
カルシウム、微生物起源(ムラミルジペプチド(MDP)]、細菌外毒素[例えばコレラ
トキシン(CT)、天然のコレラトキシンサブユニットB(CTB)、大腸菌(E.co
li)の不安定毒素(LT)、百日咳毒素(PT)、CpGオリゴヌクレオチド、BCG
配列、破傷風トキソイド、例えば大腸菌(E.coli)、サルモネラ・ミネソタ(Sa
lmonella minnesota)、サルモネラ・チフィリウム(Salmone
lla typhimurium)またはシゲラ(Shigella exseri)の
モノホスホリルリピドA(MPL)]、粒子性アジュバント(例えば、生分解性、高分子
化合物マイクロスフェア)免疫刺激複合体(ISCOM)、油−エマルジョンおよび界面
活性剤に基づいたアジュバント[フロインド不完全アジュバント(FIA)、微流動化エ
マルジョン(例えばMF59,SAF)、サポニン(例えばQS−21)]、合成ムラミ
50
(32)
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ルペプチド誘導体(murabutide、threony−MDP)、非イオン性ブロ
ック共重合体(例えばL121)、ポリホスファゼン(PCCP)、合成ポリヌクレオチ
ド(ポリA:U、ポリI:C)、サリドマイド誘導体(CC−4407/ACTIMID
)、RH3リガンド、またはポリ乳酸グリコリド(PLGA)マイクロスフェアが含まれ
るがこれらに限定されない。これら記述した毒素のいずれかのフラグメント、ホモログ、
誘導体、および融合物がアジュバントとしての活性を保有すれば、これらも適切である。
アジュバントの適切な突然変異体または変異体は、例えば国際公開第95/17211号
パンフレット(Arg−7−Lys CT突然変異体)、国際公開第96/6627号パ
ンフレット(Arg−192−Gly LT突然変異体)および国際公開第95/343
23号パンフレット(Arg−9−LysおよびGlu−129−Gly PT突然変異
10
体)に記述されている。加えて、LT突然変異体、例えば、Ser−63−Lys, A
la−69−Gly,Glu−110−AspおよびGlu−112−Asp突然変異体
も含まれる。
【0071】
アルミニウム塩のアジュバント(または化合物)は、本発明を実施するのに有用なアジ
ュバントである。有用なアルミニウム塩のアジュバントの例としては、水酸化アルミニウ
ム(例えば、結晶性オキシ水酸化アルミニウムAlO(OH)、および水酸化アルミニウ
ムAl(OH)3)がある。特定の実施形態において、アルミニウムアジュバントはオキ
シ水酸化アルミニウム(例えばAlhydrogel(登録商標))である。アルミニウ
ム塩のアジュバントを有する組成物は極端な温度、つまり、凍結(0℃)温度未満、また
20
は超高温(例えば≧70℃)にさらすと、安定性、および吸着抗原およびアジュバントの
両免疫原性に悪影響が出るため、このような温度にさらすべきではないことは、当技術分
野においてよく知られている。
【0072】
アルミニウムアジュバント等の金属塩アジュバントは、安全な賦形剤にアジュバント活
性を与えているため当技術分野において良く知られている。これらのアジュバントの作用
機構には、抗原が投与後最長3週間注入部位に留まるように抗原貯留物を形成することと
、抗原提示細胞により容易に取り込まれる抗原/金属塩複合体が形成されることが含まれ
ると考えられている。アルミニウムに加えて、他の金属塩、例えば亜鉛、カルシウム、セ
リウム、クロム、鉄分およびベリリウムの塩も抗原を吸着するために使用されている。ア
30
ルミニウムの水酸化物とリン酸塩は最も一般的である。アルミニウム塩、抗原、および追
加の免疫賦活剤を含んでいる製剤または組成物は、当技術分野において知られている。免
疫賦活剤の一例は3−脱−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)である
。別の例は製品E6020(CAS番号287180−63−6)である。ある実施形態
において、組成物は水酸化アルミニウムとE6020を含む。製品E6020は米国特許
出願公開第2007/0082875明細書において記述されている。(その全体が参照
により本明細書に組み込まれる)。
【0073】
アジュバントを加えた免疫化の一実施形態において、例えば、ポリペプチドおよび/ま
たはそのフラグメントは、多糖類複合物を形成するために細菌性多糖類に共有結合させて
40
もよい。そのような複合物は、ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントと複合体を
形成する細菌性多糖類に対するT細胞依存型の免疫原性反応を誘発するための免疫原とし
て有用であり得る。
【0074】
1つまたは複数のサイトカインも、ポリペプチドとして、または、核酸によりコードさ
れたものとして、本発明の組成物での使用に適切な同時刺激要素であり得る。(Parm
ianiら、Immunol Lett 2000 Sep 15;74(1):41−
3;Berzofskyら、Nature Immunol.1:209−219)。適
切なサイトカインには例えば、インターロイキン2(IL−2)(Rosenbergら
、Nature Med.4:321−327(1998))、IL−4、IL−7、I
50
(33)
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L−12(Pardollによりレビューされた、1992;Harriesら、J.G
ene Med.2000 Jul−Aug;2(4):243−9;RaoらJ.Im
munol.156:3357−3365(1996))、IL−15(XinらVac
cine,17:858−866,1999)、IL−16(Cruikshankら、
J.Leuk Biol.67(6):757−66、2000)、IL−18(J.C
ancer Res.Clin.Oncol.2001.127(12):718−72
6)、GM−CSF(Disisら、Blood,88:202−210(1996))
、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、およびインターフェロンガンマ(INF−γ)がある
。当技術分野において知られているように、他のサイトカインも使用に適切であり得る。
【0075】
10
ある実施形態において、組成物は、少なくともスクアレンを含む水中油滴型エマルショ
ン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン界面活性剤、疎水性
非イオン性界面活性剤を含むアジュバントが存在する状態で投与され、前記水中油滴型エ
マルションは転相温度法により得ることができる。油滴の容量による集団の90%は、2
00nm未満、および場合により150nm未満の大きさを有する。そのようなアジュバ
ントは国際公開第2007006939号パンプレット(Vaccine Compos
ition Comprising a Thermoinversable Emul
sion)において記述されており、その全体が本明細書に組み込まれる。組成物はさら
に、または記述されたスクアレン水中油滴型エマルションに加えて、またはその代わりに
、製品E6020(CAS番号287180−63−6)を含んでいてもよい。
20
【0076】
ある実施形態において、組成物はTLRアゴニスト(例えばTLR4アゴニスト)単独
でまたはアジュバントと組み合わせて含む。例えば、アジュバントはTLR4アゴニスト
(例えばTLA4)、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基に
属する非イオン性の親水性界面活性剤、および非イオン性の疎水性の界面活性剤を含んで
もよく、熱可逆的であってもよい。このようなアジュバントの例は、国際公開第2007
080308号パンフレットに記述されており、この全体が参照により本明細書に組まれ
る。一実施形態において、組成物は、CpGおよびアルミニウム塩アジュバント(例えば
水酸化アルミニウム)を組み合わせてアジュバント化される。
【0077】
30
医薬製剤
本発明の組成物は好ましくは液体の形態であるが、凍結乾燥されてもよく(標準的な方
法で)、または、乾燥発泡体(国際公開第2009012601号パンフレット、Ant
igen−Adjuvant Compositions and Methodsにお
いて記述)であってもよい。本発明の一実施形態による組成物は液体形態である。免疫化
用量は0.5∼1.0ml(0.5∼1.0cm3)の容積で調剤されてもよい。液剤は
、投与に適切な任意の形態、例えば水溶液または懸濁剤であってもよい。
【0078】
本発明の組成物の医薬製剤はさらに任意で「薬剤的に許容できる担体」を含んでいても
よい。用語「薬剤的に許容できる担体」は、生物学的ではない、またはそうでなければ望
40
ましくない物質を指す(すなわち、物質は、いかなる望まれない生物学的作用も引き起こ
さず、この物質が含まれる医薬品組成物の他の構成成分のいずれとも有害な方法で相互作
用せずに、対象に投与され得る)。当業者によく知られているように、担体は本来、活性
成分(例えば免疫原性のポリペプチド)のあらゆる分解を最小限し、かつ対象におけるあ
らゆる副作用を最小化するために選択されるだろう。
【0079】
適切な担体およびその製剤は、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,21st Edition, Davi
d B.Troy,編、Lippicott Williams & Wilkins(
2005)に記述されている。典型的には、薬剤的に許容可能な塩の適正量は等張製剤と
50
(34)
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するために製剤中で使用される。薬剤的に許容可能な担体の例には、滅菌水、食塩水、R
inger溶液等の緩衝液およびデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されな
い。溶液のpHは、約5∼約8、または約7∼約7.5が一般的である。他の担体には、
ポリペプチドまたはそのフラグメントを含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックス等
の徐放性製剤がある。マトリックスは、造形品、例えばフィルム、リポソーム、微粒子の
形態であってもよい。ある担体が、例えば投与される組成物の投与経路および濃度に依存
することが好ましいことは、当業者には明らかであろう。担体は、ヒトまたは他の対象に
対する、ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントの投与に適切なものである。
【0080】
本発明の組成物の医薬製剤は、さらに任意で、当技術分野においてよく知られている1
10
つまたは複数の賦形剤(例えば希釈剤、増粘剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤、界面活性
剤および/または免疫賦活剤)を含んでいてもよい。当技術分野においてよく知られてい
るように、適切な賦形剤は、組成物中にある抗原、およびあらゆるアジュバントと適合す
るであろう。希釈剤には例えば結合剤、崩壊剤、またはデンプン、セルロース誘導体、フ
ェノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセリン等の分散剤
を含む。界面活性剤の例には、Tween80等のTween(ポリソルベート)が含ま
れる。医薬品組成物はさらに、抗菌剤、消炎鎮痛剤および麻酔剤等の1つまたは複数の活
性成分を含んでもよい。本発明の組成物に適切な賦形剤は当技術分野において知られてい
る。
【0081】
20
組成物は例えばこれらに限定しないが、歯磨き粉、磨歯剤、液体の歯磨剤、歯肉クリー
ム、ゲル、カプセル、ロゼンジおよびチューインガム等の経口使用用に調剤されてもよい
。
【0082】
組成物は、組成物および使用説明書を含むキットの形態であってもよい。一例において
、組成物は、組成物およびアジュバント、または従来のまたは他のデバイスを使用して、
哺乳動物に対して投与するために組成物の再構成を促進する1つまたは複数の薬剤的に許
容できる希釈剤を含む再構成溶液を含むキットであってよい。このようなキットには、任
意選択的に液体形態の組成物を投与するためのデバイス(例えば皮下注射器、マイクロニ
ードルアレイ)および/または使用説明書を含んでいてもよい。
30
【0083】
使用方法
本発明の予防および治療方法は、例えば治療それ自体行う際に、後の感染症を予防する
際に、または後の受動免疫で使用される抗体の産生の際に、開示された免疫原性のポリペ
プチドの1つまたは複数を有するワクチンを投与することを含む。
【0084】
本発明の免疫原性の組成物は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiva
lis)に関連した疾病、障害、症状または徴候を予防または治療するための方法におい
て使用される。疾病、障害および症状という用語は区別なく本明細書で使用されるだろう
。特に、予防および治療方法は、対象に対する医薬品組成物の治療上有効量の投与を含む
40
。特定の実施形態において、症候性ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiv
alis)感染症に関連した歯周疾患を予防または治療する方法が提供される。
【0085】
本明細書で使用される場合、疾病または障害の予防は、ポルフィロモナス・ジンジバリ
ス(P.gingivalis)が関連する特定の疾病または障害の発症から対象を保護
するために、対象に本発明の医薬品組成物の治療上有効量を投与することを意味する。
【0086】
疾病または障害の治療は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivali
s)により引き起こされた疾病で苦しむか、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gi
ngivalis)にさらされた対象に対して、本発明の医薬品組成物の治療上有効量の
50
(35)
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投与することを意図し、そこでの目的は、その疾病の症状または徴候を治療する、治癒す
る、緩和する、軽減する、変更する、改善するか、回復させる、好転させる、またはそれ
に作用することである。
【0087】
治療上有効量は、所与の症状および投与計画に対して治療効果を与える量を指す。一般
の熟練した医療従事者は、対象特性(歳、体重、性別、症状、合併症、他の疾病等)に基
づいて治療上有効量を決定できる。治療上有効量は、組成物の投与経路によりさらに影響
されるだろう。
【0088】
本発明の組成物は適切な経路、例えば経皮運搬(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮
10
下)、経皮性、粘膜性または外用により、当業者により適切であると決定された量および
投与計画で投与できる。
【0089】
本方法は対象に本発明の組成物の有効量を投与することを含む。態様のいくつかにおい
て、この方法にはさらに、二次免疫応答を増強するか刺激するために、対象に組成物を追
加で投与することが(例えば1つまたは複数の追加免疫投与)含まれてもよい。追加免疫
は、最初の投与後に一度に投与でき、例えば、組成物の最初の投与1∼8週後に、好まし
くは2∼4週後に投与する。続く追加免疫は年間で、1、2、3または4回であってもよ
い。理論による制限を目的としないが、本発明の態様のいくつかにおいて、対象は、屋外
で、微生物(ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis))にさらさ
20
れることで感染するが、この微生物は、組成物中にあるポリペプチドを発現し、対象に投
与された組成物のポリペプチド上にある抗原決定基と同一の、または構造的に関連した抗
原決定基を有するため、毎年の追加免疫は必要ではないことが予想される。
【0090】
一態様において、本発明は、例えば、対象において抗体の産生を誘導することによって
、または組み換え技術によって抗体を産生する方法を対象としている。産生された抗体に
は、組成物の中にある少なくとも1つのポリペプチドの少なくとも1つの抗原決定基に特
異的に結合する抗体が含まれる。本発明のこの態様において、「有効量」は、対象での抗
体の産生をもたらすのに効果的な量である。対象が本発明の組成物中にあるポリペプチド
に特異的に結合する抗体を産生したかどうか決定する方法は、当技術分野においてよく知
30
られており、および本明細書で記述するように特定ができる。本発明はさらに、特異的に
本発明のポリペプチド結合する抗体、およびそのような抗体を含む組成物を含む。
【0091】
方法は微生物(ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis))によ
り発現されたポリペプチドを特異的に結合する抗体を産生するために使用されてもよく、
組成物のポリペプチドはここから単離される。本明細書で使用される場合、ポリペプチド
と「特異的に結合できる」抗体は、抗体の合成を誘導する抗原の抗原決定基と相互作用す
る、または構造的に関連する抗原決定基と相互作用する抗体である。本発明の組成物中に
あるポリペプチドのうちの少なくともいくつかは、典型的には異なる株種のポリペプチド
中で保存される抗原決定基を含む。したがって、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.
40
gingivalis)の1つの株から誘導した組成物を使用して産生された抗体は、他
のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株により発現されたポ
リペプチドに結合し、かつこのグラム陰性菌生物体に対する幅広い保護システムを与える
ことが予想される。
【0092】
対象の歯周疾患のリスクを減少させる方法もまた開示され、その方法は、1つまたは複
数の開示された免疫原性のポリペプチドを含む免疫原性の組成物を対象に投与することを
含む。歯周疾患(症候性の感染)には例えば歯周炎が含まれる。あらゆる症候性のポルフ
ィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症(またはあらゆるそのよ
うな症候性のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の再
50
(36)
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発)のリスクは、本明細書に記述された方法により減少させ得る。
【0093】
診断キット
さらに、対象の生物学的試料中の抗体または核酸の検出により、対象におけるポルフィ
ロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染症の存在を検出するためのキ
ットが本明細書で提供される。一実施形態において、1つまたは複数の抗原(例えばポリ
ペプチドおよび/またはそのフラグメント)は、生物学的試料中の抗ポルフィロモナス・
ジンジバリス(P.gingivalis)抗体の検出または診断のためのキットの一部
分を形成してもよい。抗原は、中身が外部環境から保護される小ビン等の適切な容器で提
供されてもよい。したがって、試料中の抗ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gin
10
givalis)抗体を検出するためのキットは、1つまたは複数のポルフィロモナス・
ジンジバリス(P.gingivalis)ポリペプチドおよび/またはそのフラグメン
ト、および試料中の1つまたは複数の抗体の抗原への結合を特定するための1つまたは複
数の検出試薬を含んでもよい。キットは、(i)1つまたは複数の単離し精製したポリペ
プチドおよび/またはそのフラグメント;および(ii)抗原抗体複合体の形成を検出す
るためのシステムを含むのが好ましく、任意選択的に使用説明書をつける。抗原は溶液内
で遊離していてもよく、または磁気ビーズ、チューブ、マイクロプレートウェルまたはチ
ップ等の固体担体上に固定してもよい。ある実施形態において、単離され精製されたポリ
ペプチド、および/もしくはそのフラグメント、またはそこに吸着された融合タンパク質
もしくはタンパク質集合体を含む固体マトリクスが提供される。実施形態のいくつかにお
20
いては、キットは、検出試薬として抗体結合分子をさらに含んでもよい。抗体結合分子は
捕獲または検出試薬であってもよく、溶液中で遊離していても、磁気ビーズ、チューブ、
マイクロプレートウェル、またはチップ等の固体担体上で固定されていてもよい。抗体結
合分子またはポリペプチドは、検出可能な標識、例えば蛍光性か発色性の標識、ビオチン
等の結合成分で標識されてもよい。適切な標識は上記でより詳細に記述されている。キッ
トはさらに検出試薬および/または免疫沈殿法用試薬を含んでも良く、検出試薬は例えば
、発色性、蛍光性または化学発光性の基質などの基質等であり、これは標識、または標識
に結合する酵素複合体等の分子と反応し、信号を発生する。検出試薬にはさらに緩衝液、
洗浄溶液および他の有益な試薬を含んでもよい。キットは、さらに対象から得られた試料
の処理および/または貯蔵するための装置、および対象から試料を得るための器具(例え
30
ば針葉、ランセット、および捕集チューブまたは容器)の1つまたは両方を含んでもよい
。キットは、さらに、本明細書で記述するように、抗原の使用説明書(例えば試験試料の
抗ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)抗体を検出するための
方法における)を含んでいてもよい。分析を別のタイプの分析(例えばPCR)と組み合
わせる場合、このような分析に必要とされる試薬(すなわちプライマー、緩衝液など)と
共に、任意選択的にそれを使用するための説明書も含めてよい。
【0094】
本開示において引用された参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組込ま
れる。ある実施形態は、下記の実施例において詳述される。これらの実施形態は単に例と
して示され、いかなる方法によっても特許請求の範囲を限定することを目的としない。
40
【実施例】
【0095】
上記の開示は本発明を一般的に記述している。下記の特定の実施例を参照することによ
り本発明をより完全に理解できる。これらの実施例は、単に説明の目的のために記述され
、本発明の範囲を限定することを目的としない。状況により判断して、または便宜上、形
態の変化および均等物の代用を考慮する。特定の用語を本明細書で使用したが、それらの
用語は説明のための使用を目的とし、限定を目的としない。使用される分子遺伝学、タン
パク質生化学および免疫学の方法は、本開示および実施例に明確に記載されていないが、
科学的な文献において広く報告されており、当業者の能力の範囲内にある。
【0096】
50
(37)
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実施例1:ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)のゲノムマイ
ニング
この実施例は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の免疫
原性のポリペプチドを同定するために実施したゲノムマイニングについて記述する。ポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W83のゲノムにはおよそ
2200のオープンリーディングフレームがある。コンピューターの支援を利用して、ポ
ルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W83ゲノム(http:
//cmr.jcvi.org/cgi−bin/CMR/GenomePage.cg
i?org=gpg)を含むタンパク質を、下記のパラメータを使用して評価し、さらな
る評価のため(クローニング、発現および精製による)、これらのタンパク質に優先順位
10
をつけた:
1.C末端領域(CTD)を有する候補についてさらに評価するため優先順位をつけた。
CTDは、その本来の成熟化、正しい分泌および細胞表面に対する付着に必要とされるこ
とが、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質分解酵
素、RgpBにおいて示された(Nguyenら、J.of Bacteriology
,2007、189,833−843)。 2.PSORTbによる局在、優先度が高い順に:(外膜または細胞外)>(未知)>(
(周辺質かまたは細胞質)。Psortb(バージョン2.0)はウェブベースの細菌タ
ンパク質細胞内局在予測ツールである[www.psort.orgで利用可能;J.L
.Gardy,M.R.Laird,F.Chen,S.Rey,C.J.Walsh,
20
M.Ester,およびF.S.L.Brinkman(2005)PSORTb v.
2.0:expanded prediction of bacterial pro
tein subcellular localization and insigh
ts gained from comparative proteome anal
ysis、Bioinformatics 21(5):617−623]
3.タンパク質の優先度をさらに上げる、他のパラメータ:
i. シグナル配列の存在;
ii.優勢株(すなわちポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)
W50株、W83株およびATCC33277株に存在); iii.公表されている配列決定されたゲノムを有する株(例えばW83、ATCC33
30
277)間での高度な(75%)配列保存;
iv.タンパク質が外膜に局在し、および/または潜在的な病原因子であることを示すデ
ータを開示する公表されている記事;
4.タンパク質の優先度をさらに下げる、他のパラメータ:
i.ヒト配列との検出可能な類似性;
ii.予測される膜貫通ヘリックス;
iii.分子量が>100kDaまたは<20kDa
iv.予測される細胞内局在
これらの優先パラメータを使用して、およそ131のタンパク質候補を評価対象として同
定した。その後、実施例2に詳細に説明したように、各候補をポルフィロモナス・ジンジ
40
バリス(P.gingivalis)W50株(ATCC53978として委託)からク
ローニングし、大腸菌(Escherichia coli)内で組換えで発現した。溶
解性として発現されたもの(すなわち約40のタンパク質)はさらなる評価のために選抜
された。
【0097】
実施例2:ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質の
組み換えクローニング、発現および精製
ポルフィロモナス・ジンジバリスW50株(例えばPG 0495、 PG 2172
、 PG 1326、 PG 1374、 PG 0654、 PG 0613、 PG
1798、 PG 0186、 PG 1795、 PG 0616)から選抜された
50
(38)
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遺伝子を、組換えでクローニングし、発現させて精製した。 下記表4に記載のプライマーはポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiva
lis)W50株の適切な遺伝子(全長だがシグナル配列を欠く)を増幅するために設計
した。増幅遺伝子産物を、pET−30 Ek/LICベクターキットでpET−30 Ek/LIC(Novagen(登録商標)、Merck、Germany)にクローニ
ングした。このベクターを使用して発現された産物は、発現分析を促進するベクターにコ
ードされるSタグ、およびベクターにコードされるN末端タグ(mhhhhhhssgl
vprgsgmketaaakferqhmdspdlgtddddk配列番号51)を
有する。ベクターのクローニング要件に基づくと、次のアミノ酸はMet(m)またはI
le(i)のいずれかでなくてはならない。したがって、それらの残基のいずれかを、そ
10
れがクローニングされる所望のフラグメントの第1のネイティブアミノ酸でない場合に付
加した。エンテロキナーゼでの消化により、標的タンパク質のベクターにコードされた全
配列が除去できるが、初期のスクリーニングのために、タグは除去しなかった。
【0098】
各遺伝子のシグナルペプチド配列をSignalIP(http://www.cbs
.dtu.dk/services/SignalP/)を使用して予測し、または、先
に記述し同定したように、典型的なポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiv
alis)I型シグナル切断部位の一致に基づき割り当てた。(J.Bacteriol
.2006 Sept.:188(17):6376−6386)。結果として生じるク
ローニングされた核酸配列がシグナルペプチド配列を欠くように、遺伝子をクローニング
20
した。当技術分野において知られているように、シグナルペプチド配列は、いくつかの方
法、例えばhttp://www.cbs.dtu.dk/services/Sign
alP/で利用可能な予測ソフトウエア(TargetP、SignalPおよび関連ツ
ールを使用して細胞内タンパク質の位置決めを行う、O.Emanuelsson,S.
Brunak,G.von Heijne,H.Nielsen,Nature Pro
tocols 2,953−971(2007))を使用して予測できる。
【0099】
結果として生じたベクターはそれぞれ、NovaBlueコンピテント細胞へサブクロ
ーニングされ、続いて、生じたプラスミドを、Overnight Express(商
標)Autoinduction System 1(Novagen)を使用して、そ
30
れぞれタンパク質産生用大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株を形質転換させた
。IPTGを導入し、組み換えポリペプチドを発現させた。
【0100】
発現後に、発現したポリペプチドの溶解性を、SDS−PAGEおよび/またはFRE
TWorks(商標)S−Tag(商標)assay kit(Novagen、製造者
の推奨による)を使用して評価した。この分析の原理は、あらゆる溶解性の組換えタンパ
ク質のSタグ融合ペプチドにより、Sタンパク質の外因的に付加され精製された変異体バ
ージョンにトランス相補性を提供でき、RNA分解酵素活性を回復する、ということであ
る。再構成されたRNA分解酵素により切断された場合、基質FRET ArUAAが蛍
光を発し、蛍光読み出し情報が与えられる。
【0101】
溶解性発現ポリペプチドを、市販のキット(Qiagen(登録商標))を使用して、
天然条件下、Ni2+−NTAアガロースを使用したアフィニティークロマトグラフィー
により精製した。続いてSDS−PAGE分析をクーマシーブルー染色を用いて、各組換
えでクローニングされたポリペプチドに関して実施した。また、各ケースの単一バンドを
、近似の分子量とともに、下の表3に示した。
40
(39)
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【表3】
10
(40)
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【表4】
10
20
30
【0102】
40
当業者は、シグナルペプチド配列とともに核酸配列をクローニングできることを認識す
るだろう。同様に、ポリペプチドはそれぞれ、ベクターにコードされたSタグおよびHi
sタグを使用せず、異なるプラスミドクローニングベクターの使用により組換えで発現で
きることを当業者は認識するだろう。しかしながら、PG0616に関しては、ポリペプ
チドは、シグナルペプチド配列なしで、pET−30 Ek/LICへ遺伝子をクローニ
ングすることにより溶解性発現が可能であるが、シグナルペプチドとともに発現した場合
、ポリペプチドは溶解性ではなかったことは、注意するべきである。
【0103】
rPG0495
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
50
(41)
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、配列決定した(配列番号41として記載した配列)。発現されたタンパク質の配列は、
配列番号21として記載した。クローン化した遺伝子の核酸配列(配列番号22として記
載)は、以下の変化以外はW83の配列と同一である:
i)塩基対130はクローン化した遺伝子で「T」であるが、これは公表されたW83配
列の「A」である。これによりこのコドンにおいてMETがLEUに置換される。
【0104】
ii)塩基対861はクローン化した遺伝子で「G」であるが、これは公表されたW83
配列の「A」である。GCGおよびGCAの両方がアラニンをコードするためこれはサイ
レント変異となる。
【0105】
10
iii)「A」が塩基対1440の後に欠失しているため、以下の事象を有するフレーム
シフトが起こる:C末端の7つのアミノ酸はTERVIVQ*であるべきであるが、クロ
ーン化した遺伝子によりコードされたタンパク質においてはQKE*で置換される。この
フレームシフトはクローニングによる人為産物である。下記は、クローニングされ発現さ
れたrPG0495タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下線を引く
)。
【0106】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKLQTMAPNYFHADPQQFKHRIVKEKSFSSYSNYEYGVD
NRLQRIYSVDESSGEIEHERRFFFNEGGYMIREEEYDGTV
20
QIPVRKWEFVRDDKGYITHFSRYSPKDGSQELIEDIRIDF
SYDADMKLIKADIDFFDIMANVWGDLRTTKLVYNENGLLK
EMIQTDPGSGQEFNREELTYNNLNKIVAIRFIPGPASTGL
NEFELIYEYDSEGMDIVKAGRDDFWYYYEYDKEMLASETF
FPKPSIADLVYFGLKDYVDFSGLPFKNSYTHVVVKESTNE
VEAIYEPISVYSVVVIQPENGEIKLTADGQPLNSGSTLVA
GRRIKIHPIPAEGYEVDKVMVNGENIEAPYEFLLEKDTEV
TALMKKSNAVGEVDTKGFHVYPIPTSKDLTIEIPAEMVGK
VASLIDMNGQIVYRVTLNNIFQQIDISHLKGVFLLQIGDI
QKE(配列番号21)
30
rPG2172
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
、配列決定した(配列番号47として記載した配列)。発現されたタンパク質の配列は、
配列番号29として記載した。W50クローン化遺伝子の核酸配列(配列番号30に記載
)は、公表されたゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニングさ
れ発現されたrPG2172タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下
線を引く)。
【0107】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQVVIKVGDAILENNATVDITAFTTEDGTEEMKFEGM
40
VINQSATPINVIGKITKQEMIGDGHFALCFGQCMGPNVSV
SPIVEALDGEGEYVSLHYKFPVSNEGHTGAFTFSCFPESG
APGTELATVNINFKYKGGGTGLTNIGLGRIALIQSGNTCT
LQYNSNGKRLALEVYNLLGVKVFTSQLPAGSGSYTLPVRL
QRGVHIFRITEGGKPAFVQKYLIK(配列番号29)
rPG1326
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。発現されたタンパク質の配
列は、配列番号39として記載した。W50クローン化遺伝子の配列(配列番号40とし
て記載)は、公表されたゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニ
ングされ発現されたrPG1326タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配
50
(42)
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列に下線を引く)。
【0108】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMLCENTLAQQKTEEFAPVSDLRAEAYGSTVFLHWTPP
YDNPMIPLSESFESGIPAIWKTIDADGDGYNWMHLTNFTG
QSGLCVSSASYIGGVGALTPDNYLITPELKLPTDALVEII
YWVCTQDLTAPSEHYAVYSSSTGNNAADFVNLLYEETLTA
KRIQSPELIRGNRTQGVWYQRKVVLPNDTKYVAFRHFNST
DNFWLNLDEVSILYTPLPRRAPCPHPGGYTYSVFRDGQKI
ASGLSALAYIDTDVPYGTQDYCVQVNYLQGDSYKVCKNIV
10
VANSANIYGADKPFALTVVGKTIVASAFKGEITLYDIRGR
LIASGCDTLRYKAENGFYLIKIQVNGTVYTEKIQIQ(配列番
号39)
rPG0654
遺伝子は、W50株からクローニングされた。プラスミドDNAを単離し、配列決定し
た(配列番号43として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列番号25とし
て記載した。W50クローン化遺伝子の配列(配列番号26として記載)は、公表された
ゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニングされ発現されたrP
G0654タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下線を引く)。
【0109】
20
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQSPRIPQVDVHTRIARNARYRLDKISVPDSRQIFDY
FYKEETIPTKIQTTTGGAITSIDSLFYEDDRLVQVRYFDN
NLELKQAEKYVYDGSKLVLREIRKSPTDETPIKKVSYHYL
CGSDMPFEITTEMSDGYFESHTLNYLNGKIARIDIMTQQN
PSAELIETGRMVYEFDANNDAVLLRDSVFLPLQNKWVEMF
THRYTYDNKHNCIRWEQDEFGTLTLANNFEYDTTIPLSSV
LFPTHEEFFRPLLPNFMKHMRTKQTYFNNSGEGLSEVCDY
NYFYTDMQGNALTDVAVNESIKIYPRPATDFLRIEGSQLL
RLSLFDMNGKLIRATELTGDLAIIGVASLPRGTYIAEITA
30
ANSKTIRAKVSLR(配列番号25)
rPG1374
遺伝子は、W50株からクローニングされた。プラスミドDNAを単離し、配列決定し
た(配列番号44として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列番号27とし
て記載した。クローン化した遺伝子の配列(配列番号28として記載)は、以下の点以外
はW83の対応する配列と同一である: i)塩基対481はクローン化した遺伝子の「T」であるが、これは公表されたW83配
列の「C」である。CTGおよびTTGの両方がロイシンをコードするためこれはサイレ
ント変異となる。(すなわち、タンパク質は100%同一である)。下記は、クローニン
グされ発現されたrPG1374タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列
40
に下線を引く)。
【0110】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQFVPAPTTGIRMSVTTTKAVGEKIELLVHSIEKKGI
WIDLNGDATYQQGEEITVFDEAYHEYTIGTQTLTIYGNTT
RLGCRSTGATAVDVTKNPNLTYLACPKNNLKSLDLTQNPK
LLRVWCDSNEIESLDLSGNPALIILGCDRNKLTELKTDNN
PKLASLWCSDNNLTELELSANPRLNDLWCFGNRITKLDLS
ANPLLVTLWCSDNELSTLDLSKNSDVAYLWCSSNKLTSLN
LSGVKGLSVLVCHSNQIAGEEMTKVVNALPTLSPGAGAQS
50
(43)
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KFVVVDLKDTDEKNICTVKDVEKAKSKNWRVFDFNGDSDN
MLPYEGSPTSNLAVDAPTVRIYPNPVGRYALVEIPESLLG
QEAALYDMNGVKVYSFAVESLRQNIDLTHLPDGTYFFRLD
NYTTKLIKQ(配列番号27)
rPG1795
遺伝子は、W50株からクローニングされた。プラスミドDNAを単離し、配列決定し
た(配列番号48として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列番号31とし
て記載した。W50クローン化遺伝子の配列(配列番号32として記載)は、公表された
ゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニングされ発現されたrP
G1795タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下線を引く)。
10
【0111】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQSLSTIKVQNNSVQQPREEATIQVCGELAEQVDCIG
TGNSAIIAAAAKFESDDLESYVGWEIMSVDFFPGYKACKY
TSAVWADDMTILGQSEDSDPEMQTINNLALKTSVKIEAGK
NYIVGYIANTAGGHPIGCDQGPAVDGYGDLVSISEDGGAT
FPPFESLHQAVPTLNYNIYVVVHLKKGEGVEAVLTNDKAN
AYVQNGVIYVAGANGRQVSLFDMNGKVVYTGVSETIAAPQ
KGMYILRVGAKSIKLAI(配列番号31)
rPG0613
20
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
、配列決定した(配列番号49として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列
番号33として記載した。W50クローン化遺伝子の配列(配列番号34として記載)は
、公表されたゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニングされ発
現されたrPG0613タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下線を
引く)。
【0112】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQTTTNSSRSYFTGRIEKVSLNLGVPPVSTEVWGMTH
DANGLPFEIPISFSRFNSQGDIATTYYIANSEATLNEWCD
30
YAHPGGIVRVEGRFWKMTYNIPTYNAVCTRITFENQEIEG
TIVLIPKPKVSLPHVSESVPCIRTEAGREFILCEEDDTFV
SHDGNEVTIGGKPFLLNTNVKIVGDVSQKYAVGVGEIRFL
QICAQTVSQQK(配列番号33)
rPG1798
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
、配列決定した(配列番号46として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列
番号35として記載した。クローン化した遺伝子の配列(配列番号36として記載)は、
以下の変化を除きW83の配列と同一である:
i)エラーをPCR増幅の間に遺伝子の3’末端に導入した(プライマー内)。最終結果
40
は、発現されたタンパク質が欠損しているということである、その最後の2つの天然のア
ミノ酸および追加の約56のアミノ酸が付加された(ベクターからコードされた)。プラ
スミドの予測された正しい配列は、配列番号45として記載する。下記は、クローニング
され発現されたrPG1798タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に
下線を引く)。
【0113】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQTKDNSSYKPFSKEDIAGGVYSLPTQNRAQKDNAEW
LLTATVSTNQSADTHFIFDENNRYIARDIKANGVRKSTDS
IYYDANGRISHVDLYISFSGGEPALDTRFKYTYDDEGKMT
50
(44)
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VREVFMLVMDPNTPISRLEYHYDAQGRLTHWISFAFGAES
QKNTYHYNEKGLLVSEVLSNAMGTTYSDTGKTEYSYDDAD
NMVKAEYFVVQQGKAWQVLKREEYTYEDNICIQYLAINGT
DTKVYKRDIESDKSISANVIDIPSMPEQTWPNMYGFNAKR
LKETYSSYEGDVATPIFDYIYTYKALTSMATPSTEAQVAV
YLNPSTDRLVILANGITHLSMYDLQGKLIRDCALSGDKVE
MGVGSLTKGTYLLKVNTDQGAFVRKVVFDDRASPQPWRYR
IRIRAPSTSLRPHSSTTTTTTEIRLLTKPERKLSWLLPPL
SNN(配列番号35)
rPG0186
10
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
、配列決定した(配列番号50として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列
番号37として記載した。W83配列から予測されるように、プラスミドpEAG037
(クローニングされた遺伝子;配列番号38として記載)の挿入配列は100%正確であ
った。下記は、クローニングされ発現されたrPG0186タンパク質のアミノ酸配列で
ある(ベクター由来の配列に下線を引く)。
【0114】
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMCELDRDPEGKDFQQPYTSFVQTKQNRDGLYALLRNT
ENPRMHFYQELQSDMYCTTITDGNSLAPFVNWDLGILNDH
20
GRADEDEVSGIAGYYFVYNRLNQQANAFVNNTEAALQNQV
YKNSTEIANAKSFLAEGKVLQALAIWRLMDRFSFHESVTE
VNSGAKDLGVILLKEYNPGYIGPRATKAQCYDYILSRLSE
AIEVLPENRESVLYVSRDYAYALRARIYLALGEYGKAAAD
AKMVVDKYPLIGAADASEFENIYRSDANNPEIIFRGFASA
TLGSFTATTLNGAAPAGKDIKYNPSAVPFQWVVDLYENED
FRKSVYIAKVVKKDKGYLVNKFLEDKAYRDVQDKPNLKVG
ARYFSVAEVYLILVESALQTGDTPTAEKYLKALSKARGAE
VSVVNMEALQAERTRELIGEGSRLRDMVRWSIPNNHDAFE
TQPGLEGFANTTPLKAQAPVGFYAYTWEFPQRDRQTNPQL
30
IKNWPI(配列番号37)。
【0115】
rPG0616(40kDaOMP)
遺伝子は、W50株から上述のようにクローニングされた。プラスミドDNAを単離し
、配列決定した(配列番号42として記載した配列)。発現したタンパク質の配列を配列
番号23として記載した。W50クローン化遺伝子の配列(配列番号24に記載)は、公
表されたゲノムの対応するW83の配列と同一である:下記は、クローニングされ発現さ
れたrPG0616タンパク質のアミノ酸配列である(ベクター由来の配列に下線を引く
)。
【0116】
40
MHHHHHHSSGLVPRGSGMKETAAAKFERQHMDSPDLGTDD
DDKMQELKTSADMKGSFKKNVVLEVFTAEWCGYCPGGKER
IAKAIEMLDDEYKERVFQTFVHYNDGISKKWPRVGQLFIA
LDQTLGIPGFPTFSVCRMEKKGENLSIGAPIAIKNKIMKG
FGDGTAPAEVNLKLTKGATPEDVCTATFTGKVDADLIGKP
LMLTAYVLKNNMKPINPQNGAGDGYLHQHTVLMILSTDVK
GDALNIAADGSFTIKKEFKLDGFEIKDTDVLAFVHHPMSN
AENHSIINAGQESLDKAEPTATEQIVATPSVKAYVQNGKI
VVEEEYSKMEVFNATGQLVKNESLVPGVYVVRITANGVMY
FLKVLVP(配列番号23)
50
(45)
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実施例3:タンパク質特異的な抗血清の調製
実施例2で記載した方法にしたがって調製した、ある組換えタンパク質(例えばrPG
0495、rPG2172、rPG1326、rPG1374、rPG0654、rPG
0613、rPG1798、rPG0186、rPG1795、rPG0616)に対す
る抗体を、マウスで産生した。マウス(Balb/c)は、精製した組換えタンパク質5
0μgの50μl(50mm3)容積とTiterMax(登録商標)Gold adj
uvant(CytRx Corporation, California,U.S.
)を1/1(容積/容積)で混合した総注入容積100μl(100mm3)を筋肉内投
与して免疫化し、抗組み換えポリクローナル血清を得た。TiterMax(登録商標)
Gold adjuvantは、ブロック共重合体CRL−8300を含む油中水乳剤で
10
ある。使用される免疫化プロトコルは以下の通りであった:
(i)精製した各組換えタンパク質について、3匹のマウスの1群を使用した;
(ii)3日目に、採血前試料を各ネズミから得た。
【0117】
(iii)0日目に、マウスを、精製組換えタンパク質50μg用量でTiterMax
(商標)Goldと共に一緒に(各肢の四頭筋に25μl(25mm3)ずつ注入)筋肉
内投与して免疫化した。
【0118】
(iv)28日目に、マウスを、同じ精製組換えタンパク質25μg用量でTiterM
ax(登録商標)Goldと共に(各後肢の四頭筋に25μl(25mm3)ずつ注入)
20
筋肉内投与して免疫化した。
【0119】
(v)2週間後にマウスの血液試料を得た。各群からの血清を貯蔵した。
【0120】
各組換えタンパク質により生じたポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiva
lis)特異的抗体応答を、ELISAにより評価した。3つの別々の調査から得られた
結果を、図1aおよび1b内に概説する。図1aおよび1bからわかるように、Tite
rMax(登録商標)Goldの存在下、各組換えタンパク質50μgで免疫化すると、
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)に特異的なIgG応答が
誘発される。
30
【0121】
実施例4:ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の外膜におけ
るタンパク質の検出
選択されたタンパク質がポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis
)の外膜に存在するかどうか(つまり抗体が入手可能かどうか)を評価するために、ポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)(W50)外膜分画のウエス
タンブロットを、組換えタンパク質に対して生じた抗血清(実施例3において概説した調
査の1つから得た)をプローブにして実施した。
【0122】
全細胞可溶化物および外膜分画を得るために使用された一プロトコルを示す。一般的に
40
、ウエスタンブロットにおいて使用される外膜分画は、嫌気的に増殖させたポルフィロモ
ナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W50株の液体培養を使用して得た。
細胞を回収し、(選択的に内膜を可溶化する)界面活性剤サルコシルを使用して分画した
。サルコシルによる処理で、サルコシルに不溶性な物質は外膜分画となる。
【0123】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)を、BHI培地(シス
テインおよびヘミンを添加した)で、約5∼6日間(培養物が混濁するまで)、嫌気性容
器内で37℃で増殖させた。培養物1.5ml(1.5cm3)の試料2つを、2つに分
かれたチューブ2つに入れた。試料の1つを遠心分離し、ペレットを−20℃で貯蔵した
(全細胞可溶化物の調製に使用するため)。第2の試料も遠心分離し、生じたペレットを
50
(46)
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50mMリン酸ナトリウム(NaP)(5mL(5cm3)のNaP/1g細胞ペースト
)に再懸濁し、−20℃で貯蔵した。ペレットを解凍し、4xUMSの50mMのNaP
+300μL(300mm3)の各300μL(300mm3)に再懸濁し、その後およ
そ10分間試料を沸騰して、全細胞可溶化物を調製した。50mMのNaPで再懸濁した
ペレットのうちの1つを解凍して、最小量20mL(20cm3)(または超音波処理器
具に必要な最小量)に50mMのNaPを付加し、リゾチームを付加して1mg/mL(
cm3)の最終濃度とし、外膜分画を調製した。懸濁液にプロテアーゼ阻害剤の錠剤を付
加し、その後氷上で超音波処理し、次に遠心分離して、非溶解細胞をペレットとした。上
澄部を除去した。1%のサルコシル溶液でペレットを再懸濁し、回転混合器を使用して室
温で約30分間インキュベートし、次いで遠心分離した。内膜フラグメントを含む生成し
10
た上澄部を除去し、ペレットを0.5%サルコシル溶液に再懸濁し、再度遠心分離した。
上澄部を抜き取り、ペレットを50mMのNaP+UMSで再懸濁し、沸騰した。試料を
ゲル上で泳動する前に沸騰させた。試料をゲル上で泳動させた。各ゲルにはそれぞれ計4
つのレーンがある:(i)対照レーン(精製されたタンパク質)、(ii)分子量基準、
(iii)全細胞可溶化物の試料および(iv)外膜分画の試料。ゲルをPVDF膜上に
転写し、適用可能な抗血清でプローブした。 各PG0495、PG0654、PG1374、PG1795、PG2172、PG0
613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG0616が、ポルフィロ
モナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W50の外膜分画内で検出された。
結果を図2に要約する。
20
【0124】
実施例5:フローサイトメトリーに基づいた表面接近性分析による表面露出評価
フローサイトメトリーに基づいた表面接近性分析(SASSY)を使用して、無傷のポ
ルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)細胞上の各タンパク質の抗
体結合への接近性を計測した。実施例3に記述したように、この分析で使用したタンパク
質に特異的な抗血清を得た。SASSY実験をいくつか実施したが、各実験は下記のプロ
トコルに従って実施された:
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株(W50、W83、
332277)は実質的に実施例4の記述のように培養した;つまり、菌株を、BHI培
地(システインおよびヘミンを添加)で、嫌気性容器内で37℃で増殖させた。ある実験
30
において、初期対数増殖期、対数増殖期、または定常期の様々な増殖工程で細胞を回収し
、分光測定でOD600で計測した。
【0125】
各分析調査を行うために、培養物の試料をマイクロチューブに等分し遠心分離した。上
澄部をピペット吸引し、ペレットを10%FBS添加培地500μL(500mm3)/
1mL(1cm3)に再懸濁し、攪拌した。チューブを再び遠心分離し、上澄部を吸引し
、ペレットを10%FBSで再懸濁し、添加培地の推定CFU/mL(cm3)に基づい
て約5E9CFU/mL(cm3)の懸濁液を産生した。一次抗体は、約5E9CFU/
mL(cm3)の洗浄細菌190μL(190mm3)/試料を等分してインキュベート
し、その後テストする試料の1つの各10μL(10mm3)に添加した。各試料を攪拌
40
し、次に37℃で約30分間インキュベートした。その後、各チューブに790μL(7
90mm3)10%FBSを付加して洗浄し、次に遠心チューブを転倒混和し、上澄部を
ピペット吸引した。
【0126】
以下のように二次抗体をインキュベートした:二次抗体の5μL(mm3)をDPBS
で希釈した[典型的には1:1000比で];希釈した二次抗体の200μL(mm3)
を各一次抗体結合試料のチューブに付加した;その後、各ペレットをシングルチャンネル
ピペッタで移して再懸濁し攪拌した。対照として、二次抗体の代わりに10%FBSをチ
ューブに入れた。チューブを遮光下に置き、およそ30分間室温でインキュベートした。
その後、各チューブに10%FBSを付加して試料を洗浄し、転倒混和した。チューブを
50
(47)
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遠心分離し、上澄部をピペット吸引した。各試料を、%PFAを付加して固定した。試料
を遮光下に置き、2∼8℃で貯蔵した。
【0127】
ホルマリンで死滅させたW50全細胞(FKWC)に対して生じた抗血清を、陽性対照
として使用した(実施例6にこの血清の生成をより詳細に記述する)。AF488標識ヤ
ギ抗マウスIgGを使用して結合する抗血清を検出した。
【0128】
試料をFACS Caliburフローサイトメーター(Becton Dickis
on)で分析した。フローサイトメーターでは、アルゴンイオンレーザーから生成した4
88nmの波長域を使用した。放出シグナル(SASSYにはAlexaFluor−4
10
88およびOPA取込みにはCFSE)を10,000のゲートイベントからなる各分析
において収集した。ゲートイベントはCELLQuest Proソフトウエア(Bec
ton Dickinson)を使用して大きさおよび粒度に基づいて収集された。Fl
owJo7.2.5ソフトウエアを使用して、試料を解析した。
【0129】
図2は、各タンパク質で実施した個別の実験のいくつかから得られた結果の概要を示す
。Y軸に沿って示した各点は、SASSY実験の1つでそのタンパク質のタンパク質特異
的抗血清を使用して得られた結果を表す。Y軸に沿って示した水平方向の各ダッシュは、
そのタンパク質のタンパク質特異的抗血清を使用して実施された全SASSY実験で得ら
れた結果の平均を表す。PG0495、PG0654、PG1374、PG1795、P
20
G2172、PG0613、PG1326、PG1798、PG0186およびPG06
16各々は、定常期のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W
50株上で表面露出し、SASSYにより検出された。
【0130】
2つの他のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株(W83
およびATCC33277)上の、および異なる増殖相のW50株上の各タンパク質(P
G0495、PG0654、PG1374、PG1795、PG2172、PG0613
、PG1326、PG1798、PG0186およびPG0616)の表面接近性を調べ
た。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W50株を、初期対
数増殖期、対数増殖期、または定常期まで増殖させ、ポルフィロモナス・ジンジバリス(
30
P.gingivalis)W83株およびATCC33277株を定常期まで増殖させ
た。上で記述した、フローサイトメトリーに基づいた分析を使用して、表面接近性を評価
した。
【0131】
図6は、各タンパク質で実施された様々な実験から得た結果の概要を示す。Y軸上に示
した各点(●)は、適用可能なタンパク質のタンパク質特異的抗血清を使用して、1つの
分析で得られた結果を表す。Y軸に沿って示した水平方向の各ダッシュ(―)は、タンパ
ク質のタンパク質特異的抗血清を使用して実施した全実験で得られた結果の平均を表す。
PG0186、PG0495、PG0613、PG0616、PG0654、PG132
6、PG1374、PG1795、PG1798およびPG2172はそれぞれ、3つの
40
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株上で表面を露出して検
出された。ほとんどのタンパク質は、2つ以上の株間で露出の程度が異なっていた。抗原
露出はさらにW50株で評価した異なる増殖相(すなわち、初期対数増殖期、対数増殖期
、または定常期)で変動し、対数増殖期で露出は最大となった。
【0132】
実施例6:SEタンパク質候補の免疫原性の評価
Th2−抗体偏向反応は歯槽骨退縮予防モデルでの疾病予防に関連している(J Im
munol.2008 Sep 15;181(6):4150−8)。歯周炎感染モデ
ルマウスにおいて、Th1応答に偏向した免疫化マウスは、ポルフィロモナス・ジンジバ
リス(P.gingivalis)に感染後、歯周組織炎症および歯槽骨退縮を高レベル
50
(48)
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で発症したが、Th2応答に偏向したマウスは歯槽骨退縮を発症しなかった。(Am.J
.Pathol。2007;170:203−213)。マウスのIgG1はFcに関連
したエフェクター機能を制限した。FcγRIIIのみに結合し、古典経路により補体を
活性化しなかった(Klaus、1979)。
【0133】
組み換えポリペプチドにより誘発された応答のタイプの評価するため、マウス(BAL
B/c)を、精製した組み換えポリペプチド(アジュバントと一緒に、またはアジュバン
ト無しで)を筋肉内投与して免疫化した。 使用される免疫化プロトコルは以下の通りである:
(i)採血前試料をプロトコルの開始に先立って採取した(0日目)。7日目に最初の免
10
疫化を行った。
【0134】
(ii)精製した組換えタンパク質それぞれについて、8匹のマウスの2群を使用した。
第1群は、0.56mg/ml(cm3)アジュバント(すなわちAlhydrogel
‘85’2%(オキシ水酸化アルミニウム))中タンパク質(5μg)、総容積50μl
(50mm3)を1部位から筋肉内投与して免疫化し、第2群はタンパク質(5μg)単
独を(総容積50μl(50mm3))1部位から筋肉内投与して免疫化した
(iii)対照として、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス(P.
gingivalis)W50全細胞(FKWC)でマウスを免疫化し、実質的にRaj
apakseら、2002に記述されたように調製した。第1群の8匹のマウスを101
0
20
3
cfuのFKWC単独で(総容積50μl(50mm
3
のマウスを、総容積50μl(50mm
))で免疫化し、第2群の8匹
10
)中10
cfuのFKWCと0.56mg
/ml(cm3)のアジュバント(すなわちAlhydrogel‘85’2%)で免疫
化した。
【0135】
(iv)20日目に血液試料を各ネズミから得た。
【0136】
(v)21日目にマウスに追加免疫化した(すなわち第1と同じものを二次注入した)。
【0137】
(vi)2週間後に、マウスを失血させた。各群からの血清は
30
貯蔵しなかった。
【0138】
ELISAにより、IgG、IgG1およびIgG2aの終点力価を測定した(つまり
、FKWCをコートしたマイクロタイタープレートと反応するFKWC抗体の既知濃度で
観察されるODを標準として使用)。IgG1/IgG2aの比も測定した。当業者は、
慣例的にIgG1対IgG2aの比を、免疫応答でのTh2およびTh1要素の相対的な
規模を間接的に表す尺度として使用する。比が高い、および低い場合はそれぞれ、免疫応
答においてTh2、およびTh1要素が優勢であることを示す。
【0139】
図3および表5に、得られた結果を記載する。FKWC抗血清はポルフィロモナス・ジ
ンジバリス(P.gingivalis)に特異的な高いIgG終点力価を示した。FK
WCをコートしたマイクロタイタープレートを使用したELISASにより、FKWCが
単独で(すなわちアジュバント無しで)投与されると、Th1偏向応答を引き起こすこと
が示された。AlOOHを注入した場合、各組み換えポリペプチドは、ポルフィロモナス
・ジンジバリス(P.gingivalis)に特異的なTh2−偏向抗体応答を誘発す
ることが示され、rPG0495とrPG2172による誘発が最も高かった。
40
(49)
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【表5】
10
【0140】
実施例6b:タンパク質の抗原特異的免疫原性の評価
各タンパク質により誘発された免疫応答を、第二調査で評価した。この第二調査におい
て、ELISAを個々の特異的抗原でコートしたマイクロタイタープレートを使用して実
20
施した。これにより、個々のタンパク質の抗原特異的免疫原性を評価できた。
【0141】
BALB/cマウス群は、上述の免疫化プロトコルに実質的に従って、精製組み換えポ
リペプチド(アジュバントと一緒に、またはアジュバント無しで)を筋肉内投与して免疫
化した。マウスは、総容積50μl(50mm3)中0.56mg/ml(cm3)のア
ジュバント(すなわちAlhydrogel‘85’2%)中タンパク質(5または25
μg/用量のいずれか)を1部位で筋肉内投与して免疫化するか、または総容積50μl
(50mm3)中タンパク質単独(5または25μg/用量のいずれか)を1部位で筋肉
内投与して免疫化した。採血前試料はプロトコルの開始に先立って採取し(0日目)、7
日目に最初の免疫化を行った。先の調査と同様、21日目にマウスを追加免疫化し(すな
わち最初と同じものを二次注入した)、2週間後に、マウスを失血させて、血清サンプル
を調製した。テストした個々の組み換えポリペプチドに対して、使用した群の数および1
群当たりのマウスの数は下の表7に記載した。
30
(50)
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【表6】
10
20
30
【0142】
40
個々のマウスの血清のIgG、IgG1、IgG2aの終点力価をタンパク質特異的なE
LISAにより測定し、IgG1:IgG2a比を算定した。使用したELISAプロト
コルの一例をここに記載する。
【0143】
マイクロタイタープレート(Nunc−Immuno MaxiSorp、平底ポリス
チレン)を、0.05M炭酸−重炭酸塩緩衝液、pH9.6中、特定の組換えタンパク質
0.5μg/mL(cm3)(50ng/ウェル)を100μl(100mm3)使用し
て室温で一晩コートした。プレートは、洗浄緩衝液(1XPBS+0.1%Tween−
20)200μL(200mm3)/ウェルで2回洗浄し、その後、PBS中1%BSA
150μL(150mm3)/ウェルで室温で60分ブロックした。
50
(51)
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【0144】
その後、個々のマウスの2倍系列希釈した血清サンプルを付加し、プレートを室温で6
0分インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液200μL(200mm3)/ウェル
で4回洗浄した。HRP標識二次抗体の100μL(100mm3)/ウェルを(F(a
b’)2ヤギ抗ネズミIgG(H+L):HRPを1:10’000希釈、F(ab’)
2ヤギ抗ネズミIgG1(H+L):HRPを1:20’000希釈、またはF(ab’
)2ヤギ抗ネズミIgG2a(H+L):HRPを1:20’000希釈)その後、室温
で60分インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液200μL(200mm3)/ウ
ェルで4回洗浄した。TMB(HRP基質)の100μL(100mm3)/ウェルをプ
レートに付加し、室温で15分間インキュベートし、1MH2S04を50μL(50m
10
m3)/ウェル付加して反応を止めた。SOFTmaxPro v5.2で用意したテン
プレートを使用して、分光光度計で波長450nmでプレート読みOD値を決定した。
【0145】
終点力価はカットオフ値を上回るODを示す血清の最高希釈度の逆数として定義される
。終点力価の定量はカットオフ値に基づく。終点力価を確立するために、カットオフ値は
一段階毎に選ばれる。また、全希釈系列の全希釈のODはそれぞれのカットオフ値と比較
される。選ばれたカットオフOD450値は0.100である。
【0146】
稀釈がカットオフ値以下のODに到達したときが終点となる。先の希釈の逆数は終点力
価として報告される。
20
【0147】
得られた結果を表8に概説する。表に示すように、各タンパク質は両用量(5および2
5μg)で免疫原性であり、高用量(25μg)でより高い総IgG応答が誘発された。
タンパク質がアジュバント(水酸化アルミニウム)存在下で投与された場合、より高い総
IgG応答が誘発された。特に、アジュバント存在下のタンパク質はTh2に偏向したタ
ンパク質特異的IgG反応を誘発した。これらの結果により、評価された各タンパク質は
免疫原性であり、適切なアジュバント(アルミニウム化合物、例えば水酸化アルミニウム
等)が存在する場合、望ましいTh2に偏向したタンパク質特異的なIgG応答を誘発で
きることが示された。当業者は、他のアジュバントが使用されてもよいことを認識するだ
ろう。特に適切なアジュバントは、本発明のタンパク質と一緒に投与された場合、Th2
偏向応答を引き起こすアジュバントである。
30
(52)
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【表7】
10
20
30
40
【0148】
実施例7:血清殺菌力
実質的に実施例6での記述のように生成された抗血清について、2つの別々の調査で血
50
(53)
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清殺菌力(SBA)評価した。そのような分析は当業者には有名である。抗原特異的血清
の正のSBA活性は、特定の抗原が、対応する細菌による感染症に対する防御的免疫応答
を引き起こすであろうことを示す。
【0149】
使用された方法の一例をここで記載する。手短に言えば、菌体(ポルフィロモナス・ジ
ンジバリス(P.gingivalis))の既知量を、活性または不活性な補体の存在
下、対照または抗血清でインキュベートする。血清殺菌力による細菌の死滅のレベルを、
1時間後に生存細菌を培養しカウントすることにより評価する。具体的には、各試料およ
び対照については、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)(株
W50)を約1.26×107cfuを含む214μL(214mm3)を、嫌気性の容
10
器内にある氷上の無菌のマイクロタイタープレートの別々のウェルへ等分した。各試験試
料および対照に対して、活性または不活性の補体の10μL(10mm3)を別々のウェ
ルに等分した。適用可能な血清のうちの1つ12.52μL(12.52mm3)を適用
可能なウェルに付加し、ピペットで混ぜた(結果はSBA反応での血清の20倍稀釈だっ
た)。各試料および対照については、細菌+血清混合物の90μL(90mm3)を活性
または不活性の補体を含む両ウェルに等分した。各ウェルの中身をピペットで混ぜた。チ
ューブを嫌気性の容器で約60分間室温でインキュベートした。
【0150】
希釈法
各試験サンプルおよび対照に対して、10倍希釈の3系列を以下のように調製した:1
3
80μL(180mm
20
3
)のBHI+ブロス中20μL(20mm
)SBA反応、1系
3
列6.25倍希釈168μL(168mm
)のBHI+ブロス中32μL(32mm3
)SBA反応および3系列2.5倍希釈120μL(120mm3)のBHI+ブロス中
80μL(80mm3)SBA反応。累積的に、結果として生ずる希釈係数は、10、1
00、1000、6250、15625、3.90625E4および9.765625E
4である。
【0151】
平板培養
各試料および対照の平板培養に関しては、3つの最高希釈の各々3×10μL(3×1
0mm3)を、BHI+血液寒天培地上に播種した。これは100の平板培養因数を生じ
30
る。一度、播種したプレートを乾燥させた後、裏返して、4−7日間嫌気性の容器内で室
温でインキュベートした。
【0152】
図4は、活性または不活性の補体と共に、各組換えタンパク質に対して得られたSBA
結果の概要を記載する。テストした血清のある希釈において、PG0495、PG613
、およびPG1326はそれぞれ、わずかに殺菌活性を示した。他のタンパク質は、検出
可能なSBA活性をほとんどまたは全く示さなかったが、異なる免疫メカニズムを利用し
て、感染症に対する防御免疫応答を引き起こし得る。
【0153】
実施例8:オプソニン化貪食作用分析
40
あるポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質(すな
わちrPG0495、rPG2172、rPG1326、rPG654、rPG1374
、rPG1795、rPG0613およびrPG0616)のポリクローナル血清のオプ
ソニン活性を評価するために分析を実施した。実施例6において記述するように実質的に
生成された抗血清を評価した。採血前血清、および希釈剤(血清なし)の試料は実験上の
対照として使用された。
【0154】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W50の細胞培養はお
よそ5.0x109cfu/mL(cm3)まで増殖させた。細胞を遠心分離によりペレ
ットにして、次に1%PBSで2度を洗浄し、CFSEで標識した。CFSEの溶液をD
50
(54)
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DAO−SEにIF緩衝液を付加して調製した。溶液を遮光下に置き、37℃で15分間
インキュベートした。試料をPBSで2回洗浄した。その後、試料にOPA緩衝液を付加
した。
【0155】
血清サンプルをオプソニン化ステップのため最終的に1/50で調製し(最終容積20
0μl(200mm3)、50μl(50mm3)/ウェル付加)およびOPA緩衝液で
1/12.5に希釈した。試料を56℃で30分間熱失活させた。不活性なまたは活性な
補体をOPA緩衝液(最終の反応の1%)において希釈し、次に、試料に付加した。氷上
で、オプソニン化反応を、培地、血清、補体および細菌の順に付加して、開始した。その
後試料を、振盪培養器(700振動/分)で室温で30分間インキュベートした。
10
【0156】
分化HL−60細胞株(ATCC CCL−240)を貪食細胞として使用した。4x
105細胞密度でDMF100mMで6日間分化させたHL60細胞懸濁液を回収し、1
XHBSSで洗浄し、次に、5x106細胞/ml(cm3)となるようOPA緩衝液で
再懸濁した。HL−60細胞懸濁液200μl(200mm3)をオプソニン化細菌に加
え、振盪培養器(700振動/分)で37℃で30分間インキュベートした。オプソニン
化貪食作用を氷上で止めた。試料を氷上に置き、反応終了後2時間以内にFACS Ca
liburフローサイトメーター(Becton Dickison)で調査した。CE
LLQuest Proソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して
大きさおよび粒度に基づいて収集された、HL−60の10,000のゲートイベントか
20
らなる各分析において、CSFE放出シグナルを収集した。試料はFlowJo7.2.
5ソフトウエアを使用して解析した。
【0157】
得られた結果を、図5に概説する。所与の希釈でテストしたPG1374およびPG0
613は、それぞれわずかなにOPA活性を示した。他のタンパク質は検出可能なOPA
活性をほとんどまたは全く示さなかったが、
異なる免疫メカニズムを利用して、感染症に対する防御免疫応答を引き起こり得る。 実施例9:血球凝集活性
細菌(または細菌上清液)により引き起こされた血球凝集活性(HAI)を抑制するあ
る種のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)タンパク質に対し
30
て生じた抗血清の能力が評価された。抗血球凝集活性は、いくつかの病原体に対して誘発
された防御免疫血清に関連する特性である。ある場合には、HAIは疾病(例えばインフ
ルエンザ)の防御に対する関する既知の相関分析である。実質的に、実施例6の記載のよ
うに生成した抗血清をHAIに対してテストした。血球凝集活性の評価に対して使用され
た方法を下に記述する。
【0158】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)W83株およびW50
株を増殖相まで生育した。培養試料を遠心分離し、上澄部(媒体分画)をペレット分画(
全細胞)から分離した。ペレットをダルベッコPBS(Gibco)を使用し洗浄し、約
1OD/mL(cm3)に再懸濁した。ダルベッコPBSを使用して、ヒツジ赤血球(R
40
BC)も洗浄し、ペレットを使用して1%のヒツジ血液混合物を調製した。各株の上澄部
およびペレット(1OD/mL(cm3))の試料はダルベッコのPBSを使用して、2
倍系列希釈し、1ウェル当たり最終容積100μl(100mm3)とした。1%ヒツジ
血液100μl(100mm3)を試料を含むウェルに付加し、最終濃度0.5%RBC
とした。これらの血球凝集素分析は少なくとも3時間好気条件下、室温または4℃で静置
インキュベートした。3時間後、プレートを観察し完全なHAを有する最後のウェルに近
いウェルを血球凝集反応阻害測定のため選んだ。
【0159】
血清試料(RBCに対するポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivali
s)の赤血球凝集を阻止できるかテストするために)を、Melon Gel IgG精
50
(55)
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製キット(Thermo Fisher)を使用して精製するか、「未精製の」のまま、
精製しない血清試料とした。
【0160】
血清試料はダルベッコPBSで2倍系列希釈した。ポルフィロモナス・ジンジバリス(
P.gingivalis)試料を、完全なHAを有する最後のウェルに近い選抜したウ
ェルの濃縮に希釈した(上のHA分析を参照)。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.
gingivalis)試料50μl(50mm3)+血清50μl(50mm3)は9
6穴プレートで混合した。抗体がない対照=ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gi
ngivalis)50ul+ダルベッコPBS。他の対照は血清50μl(50mm3
)+PBS50μl(50mm3)またはBHI培地、およびPBS100μl(100
10
mm3)またはBHI培地を単独で含む。プレートは37℃で1時間穏やかに振動させた
。1%ヒツジ血液100μl(100mm3)を、試料を含むウェルに付加し最終濃度0
.5%ヒツジRBCとした。プレートは、4℃で好気条件下、一晩(約16∼20時間)
静置インキュベートした。HAI力価は血清の最大希釈試料の可視化により定義したが、
これでも、細菌のペレット、または上清の血球凝集活性を抑制できた。重要なことは、免
疫血清のHAI力価は、採血前血清サンプルのHAI力価の少なくとも2倍を上回るべき
である。HAI力価を表9に示す。
【表8】
20
30
40
【0161】
記号「*」を付けたHAI力価は採血前血清バックグラウンドの2倍であった。これは
、これらの抗原の抗体がポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)
50
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のHAを抑制することを示す。
【0162】
実施例10:ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)感染を防御
する、組換えタンパク質の効果
各精製されたタンパク質単独での、または併用での予防効果を、十分に確立されたマウ
ス歯槽骨退縮予防モデルで、(5)の記述のように評価した。そのようなモデルを使用す
る調査で、Th2−偏向応答(IgGサブクラスの分布変化に関連)はポルフィロモナス
・ジンジバリス(P.gingivalis)が引き起こす骨減少症に対する防御と関連
することが証明された。マウス(BALB/c(6∼8週齡))を、適切なTh2−偏向
応答(例えば、水酸化アルミニウムまたはアルハイドロゲル等)をもたらす様々なアジュ
10
バントの存在および非存在下、各組換えタンパク質(10∼50μg/用量)、またはP
G0186、PG0495、PG0613、PG0616、PG0654、PG1326
、PG1374、PG1795、PG1798およびPG2172からなる群から選択さ
れた精製組換えタンパク質(10∼50μg/用量/タンパク質)の組み合わせを皮下投
与して免疫化し、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)による
感染に対する防御を評価した。組換えタンパク質またはタンパク質は既知の方法により、
例えば実施例2に記載のように、ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingiva
lis)株W50(またはW83)から、誘導される。1∼3の追加免疫を1∼2週の間
隔(またはより長い間隔で)で投与できる。また、約12日後にマウスの延髄後の神経叢
から採血した。採血後、マウスに脱イオン水中1mg/ml(cm3)のカナマイシンを
20
10
任意で7日間投与する。抗菌処理の3日後に、マウスを、2日違いで、1x10
ポル
フィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)株W50生存細胞で経口で感
染させ、対照群は、2g/100ml(100cm3)のカルボキシメチルセルロース単
独を含むPG緩衝液で偽感染させる((5)に記述したように)。感染の28日後にマウ
スを屠殺し上顎骨を除去し調製する。(5)で記述したように水平方向の骨減少症を評価
する。血清を収集し、ELISAで抗体価を測定する。
【0163】
本発明を好ましい実施形態の点から記述したが、例えば、本明細書に記述された化合物
、組成物および方法の変形および改変を当業者が考慮することは理解されるであろう。し
たがって、添付の特許請求の範囲は、請求された本発明の範囲内で生じるそのような均等
30
的改変をすべて包含することが意図される。
【0164】
参考文献
以下の文献の内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0165】
L. Frazer, et al., “Vaccination with rec
ombinant adhesins from the RgpA−Kgp prot
einase−adhesin complex protects against Porphyromonas gingivalis infection,” 24 (42−43), 6542 (2006)
40
N.M. O’Brien−Simpson, et al., “Serum im
munoglobulin G (IgG) and IgG subclass re
sponses to the RgpA−Kgp proteinase−ashes
in complex of Porphyromonas gingivalis i
n adult periodontitis 68(5) 2704 (2000)
N.M. O’Brien−Simpson, et al., “Role of R
gpA, RgpB and Kgp proteinases in virulen
ce of Porphyromonas gingivalis W50 in a murine lesion model,” 69(12), 7527 (2001
).
50
(57)
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N.M. O’Brien−Simpson et al, “RgpA−Kgp pe
ptide−based immunogens provide protectio
n against Porphyromonas gingivalis chall
enge in a murine lesion model,” 68(7), 4
055 (2000)
N.M O’Brien−Simpson, et al, “An immune r
esponse directed to proteinase and adhes
in functional epiptopes protects against
Porphyromonas gingivalis−induced periot
ontal bone lone,“ 175(6), 3980 (2005)
10
N.M.O’Brien−Simpson et al., “Porphyromon
as gingivalis RgpA−Kgp proteinase−adhesi
n complexes penetrate gingival tissue an
d induce pro−inflammatory cytokines or a
poptosis in a concentration−dependant ma
nner”, (2008)
N.M. O’Brien−Simpson et al., “Antigens o
f bacteria associated with periodontitis
”, 35, 101(2004)
V.Tam et al., “Characterization of T Cel
20
l Responses to the RgpA−Kgp Proteinase−A
dhesin Complexes of Porphyromonas gingiv
alis in BALB/c Mice,” 181(6), 4150 (2008
)
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h monoclonal antibodies against Porphyro
monas gingivalis in patients with period
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22−7
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gainst P. gingivalis gingipains in perio
dontitis patients. J Oral Sci. 2007 Sep;
49(3):201−6
Holt SC, Kesavalu L, Viriulence factors of P gingivalis. Periodontal 2000.1999 J
un 20:168−238
Nelson KE, et al, complete genome sequen
ce of the oral pathogenic bacterium P. g
ingivalis strain W83. J. Bacteriol. 2003
Sep; 185(18):5591−601
“Determination of the Genome Sequence of
Porphyromonas gingivalis Strain ATCC 33
277 and Genomic Comparison with Strain W
83 Revealed Extensive Genome Rearrangeme
nts in P. gingivalis”, DNA Res. 2008 Aug
ust; 15(4): 215−225.
40
(58)
【図1】
【図3】
【図2】
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(59)
【図4】
【図5】
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(60)
【図6】
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(61)
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【国際調査報告】
10
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(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P 37/04
(2006.01)
A61P 31/04
A61P
(2006.01)
A61P 37/04
(2006.01)
A61P
ZNA 1/02
C07K 14/195
1/02
C07K 14/195
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,T
M),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,S
10
E,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,
BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,I
L,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ
,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,
ZM,ZW
(72)発明者 チャールボイス,ロバート
カナダ国 エム6エス 3エックス5 オンタリオ州 トロント アルマデール アヴェニュー 335
(72)発明者 ケムヌール,ロランス
20
フランス国 F−69280 マーシー レトワール アヴェニュー マルセル メリュー 80
(72)発明者 イェトホン,ジェレミー
カナダ国 エム2アール 3ティー4 オンタリオ州 トロント スティールズ アヴェニュー ウェスト 1755
(72)発明者 リーチ,マイケル
カナダ国 エム2アール 3ティー4 オンタリオ州 トロント スティールズ アヴェニュー ウェスト 1755
Fターム(参考) 4C084 AA13 MA16 MA24 MA28 MA37 MA43 MA47 MA56 MA63 MA66
NA14 ZA67 ZB09 ZB35
4C085 AA03 AA14 BA15 CC02 CC07 DD63 EE01 GG02 GG03 GG04
GG06 GG08 GG10
4H045 AA11 AA30 CA11 DA75 DA86 EA29 EA50 FA74
30