第6号

平成28年度 月刊
サ
イ
校長通信6号
( 生 徒 ・ 保 護 者 版 ) H 2 8 .9 .2 6 (9 月 号 )
俊 英 NOW
●野球部、秋季大会北信地区予選ベスト6入り
16 年 ぶ り の 県 大 会 出 場
北 信 地 区 予 備 戦 で 、松 代 (1-0)、 須 坂 東 (5-2)を 破 っ て シ ー ド 権 を 獲 得 、 2 回 戦 か ら の 登 場
で 中 野 西 (5-3)を 破 り 、ベスト8 。準 々 決 勝 で は 長 野 東 (2-4)に 惜 敗 、代 表 決 定 戦 へ 。代 表 決 定 戦
は 篠 ノ 井 戦 。1 点 を 先 行 さ れ 、さ ら に 5 回 1 死 満 塁 の 絶 体 絶 命 の ピ ン チ 。こ れ を ダブルプレーで
切 り 抜 け 、6 回 2 点 の 逆 転 勝 利 。16 年 ぶ り の 県 大 会 出 場 と な り ま し た 。 お め で と う !
9/24(土 )
県大会 1 回戦
下伊那農戦
5-6 で 惜 敗 !
残念!!
校 長 ESSAY
「シン・新」の付いた二つのリメイク作品(ネタバレ注意)
~ 映 画『 シ ン ・ ゴ ジ ラ 』と 小 説『 新 カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 』~
同 じ 映 画 を 観 る た め に 2 回 も 映 画 館 に 行 っ て し ま っ た 。観 た の は『 シ
ン・ゴ ジ ラ 』
( エヴァンゲリオンの 庵 野 秀 明 監 督 作 品 )、大 人 の 鑑 賞 に 耐 え 得 る ゴ
ジ ラ 映 画 と し て は 、 評 価 の 高 か っ た 第 1 作 目 『 ゴ ジ ラ 』( 1954 年 ・本 多 猪
四郎監督作品)以来のことだ、などと勝手に評論家になっている。
これまでの日本のゴジラ映画は、着ぐるみの中に人が入ってミニチ
ュ ア の 国 会 議 事 堂 な ど を ブ ッ 壊 し て い た わ け だ が 、今 回 は 完 全 C G で 、
ア メ リ カ 版『 ゴ ジ ラ 』に 十 分 匹 敵 す る ク オ リ テ ィ に な っ て い た 。冒 頭 、
海 か ら 出 現 し た「 巨 大 不 明 生 物 」は 、
「 猫 バ ス 」み た い な 奇 妙 キ テ レ ツ
な姿で、東京ビル群のなかをズリズリ這いまわり、えらのような割れ目から体液をボタボ
タ垂れ流す。気持ち悪いったらない。なんじゃこりゃ、これがゴジラかい?と思ったが、
そ れ が 出 現 の た び に 変 形 し 、お な じ み の ゴ ジ ラ の 姿 に 変 身 し て い っ た 。
「 駆 除 」の た め に 出
動する自衛隊の攻撃シーンも、これまでにないリアルな迫真映像になっていた。
さ て 、映 像 の リ ア リ テ ィ に も ま し て 印 象 的 だ っ た の が 、ス ト ー リ ー の リ ア リ テ ィ で あ る 。
破滅的な災害をもたらす「巨大不明生物」が出現したら政府レベルでどんな対応が取られ
る か 、そ れ が こ の 映 画 の 主 題 で あ り 、怪 獣 映 画 と い う よ り 政 治 映 画 で あ る 。
「巨大不明生物」
を「 駆 除 」す る た め の 自 衛 隊 は 、
「 災 害 派 遣 」な の か「 防 衛 出 動 」な の か 。市 街 地 で の 自 衛
隊の武器使用は、どのような根拠で許可できるのか。アメリカをはじめとする諸外国 への
対応は、どのような外交ルートで決定されていくのか。そして、首相、防衛大臣などの政
府中枢が殉職したとき、どのように政府機能は回復していくのか、 次々起こる想定外の危
機に右往左往しながら政策が決定されていく過程が克明に描かれていく。映画定番の恋愛
や家族愛などのサイドストーリーは一切無くて、そのドライさも小気味良かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて最近、たまたまもう一つのリメイク作品を読んだので、こ
ちらの方もコメントしておきたい。それは、元東京外大学長でロ
シア文学第一人者の亀山郁夫氏が初めて書いた小説『新カラマー
ゾフの兄弟』
( 河 出 書 房 新 社 )と い う 作 品 で あ る 。上 下 2 冊 、積 み
重ねれば立方体になるんじゃないか、というほどの分厚い本だ。
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』は、言わずと知れた
世界文学史上の最高峰である。何年か前、かの亀山郁夫氏による
新 訳( 集 英 社 文 庫 で 全 5 巻 )が 出 て 久 し ぶ り に 読 み 直 し た 。数 え て 3 度 目 の 読 書 と な る が 、
初めて読んだように新鮮で面白かった。思想性をはらんだ難解な小説ではあるが、カラマ
ーゾフ家で起こった父親殺害事件を巡る推理小説仕立てで、物語としても十分楽しめる。
実 は 、『 カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 』は 未 完 の 小 説 な の だ 。『 カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 』 は 、13 年 後
に起こる別の物語の前編であると、ドストエフスキー自身が後編の存在を予告している。
しかし残念ながら、後編に着手する前にドストエフスキーは死んでしまった。幻の後編に
ついては、生前のドストエフスキーの発言や前編の内容からの推理で 、ある程度のあらす
じ は 想 定 さ れ て い る 。現 に 亀 山 郁 夫 氏 に も『「 カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 」の 後 編 を 想 像 す る 』
(光
文社新書)という本があり、かつて読んだことがあった。
その亀山氏が『新カラマーゾフの兄弟』を書いたという。幻の後編がどんなふうに描か
れるか、いやが上にも期待が高まり、わくわくして読み始めたのだが、期待はまるまる大
外 れ 。「 ふ ざ け ん な ! 金 返 せ ! 」( つ い 本 音 が ・・・スミマセン)と 叫 び た く な る く ら い つ ま ら な か っ
た 。記 述 が ダ ラ ダ ラ し て い て 分 か り に く く 、原 作 の 登 場 人 物 た ち の 性 格 を 読 み 違 え て お り 、
さらにストーリーがまったく面白くない。そして最悪なのは、前編をそのまま書き直した
だけの凡作だったことだ。つまり、後編ではなくて、前編のできそこないのリメイクだっ
たのである。亀山郁夫ともあろう人が、何でこんなことに・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以 上 、二 つ の リ メ イ ク 作 品 を 紹 介 し た 。こ の 二 つ の 作 品 の 決 定 的 違 い は「 独 創 的 な 発 想 」
の有無にある。徹底的にリアリティにこだわって怪獣映画を大人の鑑賞に耐え得る政治ド
ラ マ に 仕 立 て 上 げ て 成 功 し た 『 シ ン ・ ゴ ジ ラ 』。 こ れ に 対 し て 、「 後 編 」 を 独 自 の 発 想 で 創
造する可能性を目の前にしながらそれに挑戦せず、
「 前 編 」を 中 途 半 端 に 書 き 直 し た だ け の
『 新 カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 』。以 上 は 、あ く ま で 個 人 的 な 見 解 な の で 異 論 も あ ろ う け れ ど 、こ
の二つの作品の違いはとても教訓的だった。深まりつつある秋の夜長、そんな思索をさら
に深めてみようと思う今日この頃である。