第7章 社会貢献 (PDF 439kBytes)

第7章
第7章
社会貢献
社会貢献
【到達目標】
学校教育法第83条第2項に定められた「大学は、その目的を実現するための教育研究を行
い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」と定め
られている通り、本学は施設、研究成果、教育成果を積極的に公開し、社会に対して必要十
分な貢献を行い、時代の要請に応えていく。
Ⅰ.大学・学部の社会貢献
【現状説明】
1.社会への貢献
(1)社会との文化交流を目的とした教育システムの充実度
1992 年の開学以来、本学では社会との文化交流を目的とした様々な取組みを行なってき
た。本学がキャンパスを置く地域社会に積極的に貢献するための公開講座、エクステンシ
ョンプログラムの開催、また自治体、地方公共団体からの各種審議会等委員への就任要請
に応えての教員の派遣、市民講座、市民大学、生涯学習等への講師の派遣、小中学校等か
ら要請されて行なうモデル授業への講師の派遣等、本学の教育、研究上の成果を社会に還
元し、国や地方自治体等の政策形成への寄与も行なってきている。
また、2006 年に柏市が呼びかけ、千葉県北西部にある 10 大学が加盟している「大学コ
ンソーシアム柏」においても「地域リレー講座」を担当し、大学開放を兼ねて地域社会と
の文化交流を進めている。
(2)公開講座等の開設状況とこれへの市民の参加状況
1.公開講座
上記(1)で述べたように流山キャンパスでの公開講座に関しては開学 2 年目の 1993 年
より社会貢献の一貫として毎年、7~8 回の公開講座を開講しており、2008 年度末で 122
回の開講に至っている。2009 年度も 7 回の講座を予定している。
2008 年度の開講状況は以下の表を参照。
〈2008 年度流山キャンパス公開講座>
実施日
タイトル
所属
187
職名
氏名
参加者数
第7章
社会貢献
サブプライムローン
2008.5.10
問題と日本経済・今後
の金融政策
2008.6.14
2008.7.12
2008.9.20
ブラジル:農業大国の
素顔
地球温暖化問題とそ
元日本銀行政策
委員会
審議委員
中原眞
134
JICA
上席主査
本郷豊
名古屋学院大学
教授
木船
東洋学園大学
教授
宇田川史子
か、なぜ海外で受ける 国立劇場
調査資料
北潟喜久
のか
課長
の対策
アメリカ大統領選を
読む
120
久雄
130
137
歌舞伎はどんな芸術
2008.10.11
2008.11.8
2008.12.13
食文化から見たアフ
リカ
社説づくりの現場か
ら
107
東京外国語大学
教授
小川了
毎日新聞
論説委員
森嶋幹夫
112
121
合計
861
本郷キャンパスでの公開講座は旧校舎の建て替えが終了し、新 1 号館が竣工した 2007
年度に新ホール「フェニックスホール」で開催が始まった。本郷キャンパスでの公開講座
の概要は以下の通りである。なお、この連続公開講座は「文京区制 60 年記念事業」として
文京区役所との共催で行われた。
〈2007 年度本郷キャンパス公開講座>
日時
10 月 20 日
講演テーマ
投資と資産形成
金融リスクと上手につ
きあう
11 月 17 日 環境経営の現状と課題
企業成長と環境保護の
両立へ向けて
講師・コーディネーター
中村
寿太郎
教授
和敏
教授
勝
准教授
博明
教授
中井
石川
深海
188
職名
参加者
数
69
73
第7章
12 月 15 日 児童英語教育の可能性
小学校英語の現状をふ
まえて
1 月 19 日
国際政治の動向
中国の地殻変動と東ア
ジアへのインパクト
2 月 16 日
「うつ」の理解と対処
法
うつ病を予防し、克服
するために
3 月 15 日
激動する経営環境への
処方箋
日本の企業社会の強さ
と弱さ
坂本
ひとみ
教授
原田
規梭子
教授
朱
建栄
教授
西
敏彦
教授
一ノ渡
尚道
社会貢献
96
65
東洋学園大学学長
田中
秀穂
教授
永井
秀哉
現代経営学部長
鎌田
信男
教授
125
101
合計
529
2.エクステンションプログラム
本学の「研究・教育」の蓄積を広く地域社会に開放し地域密着型の大学を目指すために、
「生涯学習」の新たな形として 2001 年 4 月にエクステンションセンターを開設した。この
講座は地域住民と本学在学生、卒業生、短期大学の卒業生等を対象とし、講演会方式の「公
開講座」と比べ、語学講座、教養講座、資格取得講座等、実戦的でスキル指向である点に
特徴がある。
2001 年夏期に 8 講座でスタートしたエクステンションプログラムは、2009 年度では年間
100 を超える講座に拡大している。2008 年度のエクステンションプログラムは、
「教養講座
英語」「教養講座アジア語」「教養講座 EU 語」「教養講座実務」「教養講座健康」の 5 分野
106 講座からなり、受講者数は 831 名であった。
〈2008 年度エクステンションプログラム(106 講座中 21 講座を抜粋)>
場所
流山・前期
講座名
担当講師
大西 泰斗の英文法基礎(流山校舎)一
東洋学園大学教授
般
大西
189
泰斗
第7章
社会貢献
本郷・前期
流山・前期
流山・前期
流山・前期
大西 泰斗の英文法基礎(本郷校舎)一
般
東洋学園大学教授
大西
泰斗
DJ Jerry のロスで拾った使える英語
DJ Jerry
ネイティブスピーカーによる英会話
東洋学園大学英語講師
(入門)
キャラ・フィリップス
ネイティブスピーカーによる英会話
東洋学園大学英語講師
(初級 1)
マイケル・スタウト
元東洋女子短期大学教授
流山・前期
Writing で学ぶ英語表現
元マイニチディリーニュース
編集部長
流山・前期
Asahi Weekly を読もう
松井
頴敏
元東洋女子短期大学教授
〜世界のニュースをやさしい英語で〜
脇山
怜
東洋学園大学兼任講師
流山・前期
中国語講座(中級 1)
流山・前期
ハングル講座(初級レベル 1)
王安萍(ワン・アンピン)
東洋学園大学兼任講師
金三順(キム・サム・スン)
ゲーテ・インスティチュート講
流山・前期
ネイティブスピーカーによるドイツ話
師
ゲアリンデ小林
流山・前期
流山・前期
流山・前期
流山・前期
元読売新聞社主任研究員
揺れるヨーロッパ情勢
〜リスボン条約以後の EU〜
はじめて話すフランス語(入門)
〜パリで生活しませんか〜
小林
正文
東洋学園大学名誉教授
遊佐
礼子
東洋学園大学名誉教授
フランス語講座(初級)
遊佐
シニアライフプラン講座
-安心して暮らすための知恵-
礼子
ファイナンシャルプランナー加藤
惠子
カラーコンサルタント
流山・前期
カラーライフを楽しもう
流山・後期
感性を磨く写真講座(中級)
信岡
190
万友美
写真雑誌「PHaT PHOTO」主宰
神島
美明
第7章
流山・前期
初めてでもリアルに描ける水彩画
流山・前期
心を贈る絵手紙講座
流山・前期
ふれあい心理学
流山・後期
テニス講座(初級)
流山・前期
癒しのアロマセラピー
社会貢献
絵師
船橋
一泰
日本絵手紙協会公認講師
横山
美枝
東洋学園大学教授
Ⅻ
水野
節子
東洋学園大学教授
田中
菊子
アロマセラピスト
登
寿美子
3.大学コンソーシアム柏
2006 年末に柏市の呼びかけで千葉県北西部(東葛地区)にある 10 大学が「大学コンソ
ーシアム柏」設立、参加を打診された。本学も「地域で学ぶ
地域を学ぶ
地域に活かす」
という主旨に賛同し、地方自治体と 10 大学からなる連合組織(コンソーシアム)での活動
を通して地域との連携・交流を促進するため積極的に関わっていくことを決定した。
1 年間の準備期間を置いて、2008 年度 6 月から「地域学リレー講座」が始まった。柏市
のホールで 6 月 7 日に開催された小柴昌俊(財団法人平成基礎科学財団理事長)の「やれ
ば、できる」を皮切りに年間 12 回の講演会が各大学持ち回りで行なわれ、本学も 9 月 20
日に宮園久栄教授による「地域の安心・安全を考える~学生たちと共に」という第 8 回リ
レー講座を流山キャンパスで開催し、東葛地区の市民を中心に 66 名の参加者があった。
また、リレー講座とは別に大学コンソーシアム柏には各種の分科会が置かれている。そ
のひとつの「健康作り分科会」の催しとして 2008 年 4 月 20 日に「ららぽーと柏の葉」中
庭において「健康フェアー」が開催され、本学も「広がる心と体の健康」というテーマで
参加した。この催しでは、本学の人文学部人間科学科の身体と健康コースの教員が中心と
なり、会場に「動作計測」、「心理テスト」、「折り染め」の 3 つのブースを設け、幼児から
高齢者までの計 250 名の市民の応対にあたった。
なお、2009 年度の「地域学リレー講座」では「健康づくりにチャレンジコース」を担当
することとなり、2009 年度第 2 回リレー講座として人文学部専任講師による「運動習慣を
身につけるための心理学」を 8 月 22 日に本学流山キャンパスで開催し、58 名の市民の参
加者があった。
191
第7章
社会貢献
(3)教育研究の成果の社会への還元状況
本学においては、東洋女子短期大学からの伝統である英語教育において地域の教育機関
との関わりを深めている。流山キャンパスにおいては、流山市教育委員会からの要請で、
2005 年 2 月より流山市の小学校において英語教育活動のサポートを展開しており、本学教
員が随時、ネイティヴの特別講師とティームティーチングで英語授業を実施している。ま
た、流山市教育委員会主催の小・中学校の教員向け英語研修において本学教員が講師を務
めている。さらに、本学の学生たちも、小学校においてボランティアで英語教室を開いた
り、英語教育活動を手伝ったりしている。高等学校に関しては、ネイティヴ・スピーカー
の特別講師と日本人講師が松戸地区の高校生英語スピーチコンテストのジャッジを毎年つ
とめており、高校生の英語スピーチの能力向上に寄与している。本郷キャンパスにおいて
は、2008 年度より文京区の小学校や幼稚園との交流を実施しており、学生ボランティアが
英語教育活動を支援している。高等学校に関しては、2007 年 7 月 21 日に本郷キャンパス
のフェニックス・ホールを使って高校教員を対象とした英語教育開発センター主催のセミ
ナーを開催した。
(4)国や地方自治体等の政策形成への寄与の状況
1992 年の開学以来、キャンパスを置く流山市から様々な審議会、懇談会等への委員の派
遣を依頼され、そのテーマに関連する専門分野の担当教員を中心に流山市の要請に応じて
きた。以下の表は過去 3 年の主立った国および地方自治体関連の寄与の状況である。
年度
教員氏名
名称
2005 年度
井原
久光教授
流山市行財政改革審議会委員(至現在)
2006 年度
小林
典子教授
流山市環境審議会(副会長)
荻間
寅男教授
流山市補助金等審議会委員
田中
菊子教授
流山市下水道事業運営審議会委員
丸毛
一彰教授
大学コンソーシアム柏設立準備会委員
宮園
久栄助教授
流山市情報公開・個人情報保護審査会
丸毛 一彰教授
(社)新技術協会「産学官連携による科学技術
資源の流通と利活用システムに関する調査研
究委員会」委員
深海
博明教授
港区省エネルギービジョン策定委員会(委員
長)
192
第7章
2007 年度
社会貢献
平井
宏教授
流山市産業振興審議会委員
荻間
寅男教授
流山市補助金等審議会委員
高村
宏子教授
流山市補助金等審議会委員
梅山
香代子教授
流山市環境審議会委員
横山
和子教授
東京都非正規労働者雇用環境整備モデル企業
指定委員会委員
2008 年度
宮園
久栄教授
法務省更生保護施設検討会委員
吉武
光世教授
流山警察犯罪被害者支援連絡協議会(副会長)
横山
和子教授
千葉地方労働審議会委員
梅山
香代子教授
流山市環境審議会委員
加藤
良則教授
流山市総合計画審議会委員
高村
宏子教授
流山市補助金等審議会委員
丸毛
一彰教授
流山市産業振興審議会委員
丸毛
一彰教授
(社)新技術協会「産学官連携による独創技術
商品の開発に関する調査研究員会」委員
宮園
久栄教授
流山市情報公開・個人情報保護審査会委員
宮園
久栄教授
国立女性犯罪研究会(女性と男性に関する統
計の調査研究)委員
梅山
香代子教授
国分寺市行政改革推進委員会委員
深海
博明教授
港区環境審議会(会長)
深海
博明教授
港区地域温暖化対策地域推進計画策定委員会
(委員長)
(5)大学の施設・設備の社会への開放や社会との共同利用の状況とその有効性
本学は、教育研究に支障が無い範囲内で大学施設を有料で貸出している。本郷キャンパ
スは、交通の利便性が高く、教育施設が充実していることから、土・日曜・祝日及び夏季・
春季休業中を中心に、英語検定・各種国家試験会場、予備校試験・講習会場として利用さ
れている。1 号館のフェニックスホール(300 人収容)では、一般にも公開されている講演会
や、大学院現代経営研究科が主催する地元中小企業の支援を目的とする研究会が行なわれ
ている。
流山キャンパスは、郊外の比較的緑の多い校地に点在する校舎と最新設備の充実した教
193
第7章
社会貢献
室・事務室が、ドラマや映画のロケに使用されている。また、日曜・祝日は近隣テニス同
好会がテニスコートを利用している。流山キャンパスの図書館は、近隣住民が登録の上で
利用できる。
利用状況等は「第 10 章
施設・設備」の「社会へ開放される施設・設備及び記念施設・
保存建物」の項目にも記述している。
5-1.クリーンキャンペーン
「クリーンキャンペーン」は、本郷キャンパス建て替えの際の近隣への説明会で、本学
生の路上喫煙への苦情が寄せられたことが発端である。2005 年 7 月より、職員チームを結
成、週 3 回(月、水、金)、9:30 から約 30〜40 分程度、商店街と大学周辺の清掃を行った。
新校舎建設にあたって、文京区道路課に訪問していた際に、本学が 2005 年 7 月より実施し
ている「クリーンキャンペーン」が話題になり、文京区の「文の京ロードサポート」制度
への申請依頼があった。文京区との調印は 2007 年 12 月 20 日に文京区役所区長応接室で行
われ、文京区長と理事長が調印した。
5-2.大横丁商店街マップ作り
地元文京区の地域活性化支援の一環として、東洋学園大学 3、4 年生ゼミと有志が中心と
なり、本郷弓町自治会の活動にボランティアとして参加し、本郷大横丁通りの協力の元に
本郷大横丁商店街を調査、マップを作成した。本学ホームページのトップページに大横丁
商店街マップのサイトがある。
5-3.フェニックス壁画
文京区は 21 世紀の美しい景観づくりを進めるために、「文の京
都市景観賞」を実施し
ている。本学の「フェニックス壁画」が第 7 回(2007 年)文の京
都市景観賞「景観創造
賞」を受賞した。
5-4.本郷消防団学生入団
2008 年 4 月、本郷キャンパスの地元にある本郷消防団に、本学の 4 年生 2 名(2009 年 3
月卒業)が入団した。年に 4 回程度、消防行事、研修などに参加している。職員は防火管
理者等 2 名が入団している。
5-5.本郷壱岐坂太鼓
1973 年に大横丁通り実業会青年部の有志により発足した本郷壱岐坂太鼓に練習場を提
供している。練習は、30 年以上前から本学の旧校舎の講堂で行っており、現在は体育館で
練習している。本郷壱岐坂太鼓は、毎年秋に流山キャンパスで行われる学園祭にも参加し
ている。
5-6.
図書館の地域開放、学外者の利用
194
第7章
「第 11 章
社会貢献
図書・電子媒体等」で触れるように、2000 年より流山キャンパス図書館を
千葉県北西部(東葛地区)の市民に開放している。利用対象者は高校生以上で高校生は無
料としているが、成人の場合は登録料を年間 1,000 円としている。登録者は 2008 年度での
べ 700 人になる。毎日利用する市民を含め 1 日あたり 5 人~10 人程度の利用者がいる。
また、流山キャンパス図書館は、卒業生、退職者のほか、公開講座の受講者、エクステ
ンションプログラム受講者にも登録の上で開放している。なお、2009 年 7 月 7 日には、流
山市立図書館と流山キャンパス図書館との相互協力の調印を行った。
【長所】
大学開学の翌年から流山キャンパスで開始した「東洋学園大学公開講座」は 17 年目を迎
え、地域社会に定着している。他大学の中には徐々に参加者が減少し、やむなく縮小や休
止に至った講座もあるようだが、本学の場合、毎年参加する市民も多く、年平均 800 名か
ら 1000 名を数えている。これは「時代の変化に応える大学」として、年々変化していく市
民の関心事や時々のトピックに目を配り、年間計画の企画・立案に工夫を凝らしているた
めと思われる。また、本郷キャンパスにおいても、文京区との共催で行われた 2007 年の公
開講座に 529 名の参加者があった。
2001 年度より開始したエクステンションプログラムについては、カルチャースクールと
差別化するため 2003 年度より点検が始まり、以下の 2 点の改革を行なった。まず、市民対
象の語学講座を充実させた。春秋年 2 回の開講だったものを年 4 回の開講とし、英語の東
洋学園という評判から英会話・英文法の講座の充実に力を入れた。特に「大西泰斗の英文
法基礎」講座は多くの市民の注目を集めた。次に、学生を対象とした資格講座を充実させ
た。学生にとって就職戦線で生き残るためのスキルアップとして資格の取得は必須である
ことを広報し、また学部と連携をとり学部の特色ある資格(国内旅行・販売士 3 級・ファ
イナンシャルプランナー3 級など)のうち 1 つは必ず取得するよう指導した。これら語学
講座の充実と資格講座の展開は大学のカリキュラムを補完するものとして、また就職対策
のひとつとして「資格取得」が求められるようになってきたことも背景にある。その結果、
講座数も「国内旅行業務取扱管理者試験対策講座」・「販売士検定」・「ファイナンシャルプ
ランナー」・
「Microsoft Office Specialist Word・Excel」など 21 講座に増加し、学生受
講者数も 767 名と大幅に増加した。その中で、資格取得講座の「マイクロソフト認定資格」
において本学が日本マイクロソフト社より 2008 年度特別賞を受賞したことは、スキルの高
い学生の育成に真剣に取り組んでいる本学の姿勢と、合格率ほぼ 100%という学生の努力
が評価されたものである。
大学コンソーシアム柏には、2009 年 3 月段階で千葉県北西部の東葛地域の 11 の大学(他
195
第7章
社会貢献
にオブザーバー参加大学が 2 大学)と地方公共団体 1 市(他にオブザーバー参加が 4 市)
が参加している。このような大規模な連合組織ができ、2008 年より活動を開始したことは、
この地域に根を下ろしている本学が地域に貢献するひとつの機会になった点で長所である。
英語教育に関する地域との連携プロジェクトは、本学の英語教育の展開において重要な
契機となるものである。地域のニーズに応えていけるよう、本学としても常に英語教育の
最新の方向性を見極めていく必要がある。また、関東地方を中心とする広域の高校教員に
対する研修会が、本学において行われている。初年度は本学の独立した企画であったが、
その後、中・高の教員を対象とする授業研究の専門研究会「達人セミナー」とのコラボレ
ーションが本郷キャンパスにおいて連続開催されている。この会合は、高校の教員同士、
あるいは高校の教員と本学の教員が授業をめぐって忌憚ない意見を交換し、研鑽する場と
なっており、英語教育における高大連携が実現している。
大学の施設・設備の社会への開放や社会との共同利用に関しては、本学は本郷キャンパ
スの地に 80 年以上も前から根を下ろし、以来、様々な時代を近隣社会と共に生き抜いてき
た。その間、深い信頼関係を築き、発展させてきた。また、流山キャンパスは 30 数年の間、
地域社会に貢献してきたと自負している。
本学の施設・設備は大学の教育・研究に支障のない限り社会への開放されており、地域
社会との関係も良好であり、現状のシステムは有効に機能している。
【問題点】
近年の公開講座の半分近くが外部講師を招聘して行なわれている。専任教員 80 名、兼任
講師 80 数名の本学にあっては様々な問題に本学教員だけで対応することが難しくなって
きている。
エクステンションプログラム講座の展開に伴う問題として、開講講座数の増加に伴い、
教室の確保に苦労が生じてきたという点が挙げられる。教室使用は大学の正課の授業が優
先されるため、課外のエクステンションプログラムは、空いた時間帯、教室、施設を探し
て使用しているのが現状であり、プログラム参加者に不都合な思いをさせることもある。
また、学生の資格取得に関しても、正課の授業が最優先であるため、授業とエクステンシ
ョンプログラムの時間帯がぶつかった場合、資格講座を諦めてもらうしかない。
大学コンソーシアム柏には、多数の大学や自治体が参加しているため、参加意識の濃淡、
コンソーシアムの具体的目的の整理等、多くの問題が残されている。それがオブザーバー
参加の大学、自治体が態度を決めかねている一因と思われる。
【改善方策】
196
第7章
社会貢献
社会貢献、地域貢献に関してのガイドラインを作成し、大学の中立性を守りつつ、地域
社会、地域住民に直接、大学の物的・人的資源を還元していくことを明確にし、選択と集
中の方針のもと、自主的に社会貢献に積極的に関与していく。
公開講座においては、本学教員と外部招聘講師の割合を半々程度にすることで、多様な
問題に対応し、かつ本学が実施する公開講座という姿勢を堅持していきたい。また、本郷
キャンパスでの「公開講座」を継続し、充実していく。文京区は大学が多く集まっており、
外部講師も招聘しやすい。本学の専任教員を中心に、多様な分野の専門家に協力を仰ぐこ
とで、時代の変化に応える「公開講座」を展開することができる。
エクステンションプログラム用の教室確保のために、エクステンションセンターと教務
関連の部署が連絡を取りあい、遊休施設の活用や空き時間の設定等で調整をしていく。そ
して、エクステンション講座のさらなる発展を図り、現状の開講数 106 講座から 120 講座
程度に積み増していく。
大学コンソーシアム柏の問題を本学だけで解決することはできないが、この地域で初め
ての試みを挫折させないために、今後ともリレー講座等に積極的に参加し、また運営にも
積極的に参加する。また、学内においてこのコンソーシアムを担当する組織を整備し、社
会貢献委員会(仮称)等で窓口の一本化、責任体制の確立を図っていく。
Ⅱ.企業等との連携
【現状説明】
本学では現代経営学部において産学連携プロジェクトの一環として、りそな銀行本郷支
店との共催で「本郷・茗荷谷経営者研究会」を立ち上げ、企業との連携を深めている。
「本
郷・茗荷谷経営者研究会」は、同行の取引先約 30 社の経営者を対象とし、2009 年 2 月か
ら活動を開始した。この研究会活動を通じて地域貢献を行い、また、研究会活動に学生を
積極的に参加させ、学生に生きた経営の実践についての理解を深めさせることを目的とし
ている。
研究会は、成功した経営者からの事例報告、当学スタッフによる専門的立場からのコメ
ント、参加者全員の討議という形式を基本にしている。2009 年度研究会の日程は以下の通
りである。
〈2009 年度本郷・茗荷谷経営者研究会>
テ
第1回
ー
マ
講
アイスブレーキング、自己紹介など
197
師
等
第7章
社会貢献
第2回
儲かる仕組みづくり
ヒューマンウエア・コンサル
ティング(株)代表取締役
渡辺昇氏
第3回
第4回
事業承継1(態勢づくり、経営理念、リーダー
(株)タキズミ会長
シップ)事例報告
瀧住寿彦氏
マネーはこう動く
㈱FUJIMAKI JAPAN 代表
藤巻健史氏
第5回
事業承継2
(財務・経理の課題)
事例報告
第6回
第7回
欧文印刷(株)
和田隆史氏
事業承継3(商品開発・マーケティングの課題) キリー&アソシエイツ㈱
事例報告
片桐広景氏
ジャイロ経営(社員のやる気に火をつける)
ジャイロ経営塾
秋元征紘氏
第8回
コアメンバー、コーディネーターの講評
【長所】
2006 年に発足した「本郷・茗荷谷経営者研究会」の主旨は上述のように、文京区の「約
30 社の経営者を対象とし、研究会活動を通じた地域貢献を行い、研究会活動に学生を積極
的に参加させ、学生に生きた経営の実践についての理解を深めさせることを目的」とし、
その目的は概ね達成された。
【改善方策】
第 1 回「本郷・茗荷谷経営者研究会」についての参加者からのアンケート結果、運営の中
心になった幹事会社、りそな銀行本郷支店の意向も踏まえて更なる改善計画を立案する予
定である。
Ⅲ.大学院の社会貢献
【現状説明】
大学院現代経営研究科は「現代経営研究会」を主催している。
「現代経営研究会」は、2008
年度の大学院現代経営研究科の設置を機に地域との交流を深めるため、東京中小企業同友
会文京支部に協力要請し、同支部から当学本郷キャンパスのある文京区の企業に呼びかけ、
22 社の賛同を得て、2008 年 9 月に立ち上げられた。その目的は「地域企業の経営者・経営
幹部と本学教員との相互研鑽・交流を通じ、現代の経営諸課題について研究し、生きた経
198
第7章
社会貢献
営学ノウハウを蓄積していく」ことであり、2008 年度は、「ものづくり」をメインテーマ
にし、以下の日程で6回の研究会と特別講演会を1回開催した。
〈2008 年度現代経営研究会日程>
テ
第1回
ー
マ
講
日系多国籍企業の戦略と課題
師
等
東京大学大院教授
天野倫文氏
第2回
儲かる仕組みづくり―日本経営品質
ヒューマンウエア・コンサルティング
賞手法による経営改革
(株)代表取締役
渡辺昇氏
第3回
アサヒビールの組織・風土改革・意識
アサヒビール(株)常務(当時)
改革
泉谷直木氏
第4回
地域企業と大学の連携
長岡大学学長
第5回
中小企業とものづくり
東京大学大院教授
第6回
中小企業を中心としたアジア諸国の
東京大学大学院准教授
イノベーション
新宅純二郎
日産の挑戦
日産㈱COO
特別講演
原陽一郎氏
藤本隆宏氏
志賀俊之氏
特別講演(一般公開の形式をとったため約 200 名が参加)を除き研究会参加者は企業関
係者、本学教員・学生を合わせ 1 回平均 36 名であった。地域の企業関係者から連続開催の
希望が強く出されたので、2009 年度は「マーケティング」をテーマに以下の日程で開催し
た。
〈2009 年度現代経営研究会日程>
メインテーマ
備
考
第1回
企業ブランド基礎としてのCSR
駿河大院教授
第2回
「パナ・ケミカル」のリサイクルビ
(株)パナ・ケミカル専務
ジネス
犬飼健太郎氏
顧客満足を提供できるビジネスモ
ハーレーダビッドソンジャパン(株)元社
デル
長
異業種格闘の時代
早稲田大学教授
第3回
第4回
199
水尾順一氏
奥井俊史氏
内田和成氏
第7章
社会貢献
第5回
博報堂のマーケティング戦略
博報堂MD統括局長
第6回
地域密着のスポーツマーケティン
(株)三菱自動車フットボールクラブ社長
グ
橋本光夫氏
マネーはこう動く~今は危機か、チ
㈱FUJIMAKI JAPAN 代表
ャンスか
藤巻健史氏
特別講演
澁谷道紀氏
【長所】
2008 年 9 月に立ち上げた「現代経営研究会」は 9 月以降、文京区の企業 22 社の参加を
得て「ものづくり」をテーマに 6 回の研究会と特別講演会を1回開催した。研究会では大
学と企業の間で活発な議論が行われ、研究会終了後には、講師を交えて企業経営者・幹部
と教員、大学院生の間で意見交換・交流が行われ大きな成果があった。2009 年度は「マー
ケティング」をテーマに同様の方法で 6 回の研究会と 1 回の特別講演会を開催した。
経営の基本課題について地元経営者との本音の意見交換・交流は当学教員・学生にとっ
て意味のあるものであったし、地元経営者にも高く評価された。
【改善方策】
運営上特に大きな問題はないが、地元経営者から寄せられた意見・感想なども考慮し、
この研究会が地元に定着していく努力を積み重ねて行きたいと考えている。活発な研究会
活動を継続させていくこと、そのものが改善方策であると考えている。
200