企業防衛(4)パワーハラスメント対策〈PDF〉

LEGAL REPORT
「企業防衛(4)パワーハラスメント対策」
2009.7.25
■
はじめに
令 ,( ウ ) 人 事 異 動 ,( エ )
新聞紙上、パワーハラス
孤 立 化 政 策 ,( オ ) 行 き 過
メントという言葉をよく見
ぎた上司の発言・Eメール
かけます。
等となります(季刊労働法
事業主の方は、このパワ
218 号 27 頁 ~ 30 頁 )。
ハラについて法的な問題点
を理解されることをお勧め
■
いたします。
判断基準
猪木・手島法律事務所
弁護士 猪 木 健 二
判例や裁判例(JR西日
■
パワーハラスメントは
どのようなものか。
□弁護士登録
□事務所設立
中央労働災害防止協会の
平成4年4月
( 登 録 番 号 22432 )
平成7年4月
□主な経歴
パワーハラスメントの
本吹田工場事件,東亜ペイ
ント事件等)では,
・行為の合理性(有効性)
定義によれば,
・必要性
「職場において,職権など
・上司の不当な動機・目的
の力関係を利用して,相手
・労働者の被る不利益(過
S39.07.03
岡山市生まれ
の人格や尊厳を侵害する言
酷さ)の程度
S58.03
芳泉高校卒
動を繰り返して行い,
を中心に判断しているとい
S62.03
岡山大学法学部卒
精神的苦痛を与えることに
えます。
H01
司法試験合格
より,その人の働く環境を
具体的には,行為のなさ
H02.04
司法研修所入所
悪化させたり,あるいは雇
れた状況,行為者の意図,
H04.04
弁護士登録
用に不安を与えること」
その行為の態様,行為者の
H07.04
猪木法律事務所開設
とされています。
職務上の地位,年齢,両者
H13.
のそれまでの関係,当該言
岡山弁護士会住宅紛争審
査会・紛争処理委員
■
具体例
動の行われた場所,その言
就業規則の筆写などの無
動の反復・継続性,被害者
意味な作業を長時間命じる
の対応,他者との共謀関係
こと、バスの運転手に約1
等を総合的にみて,それら
か月の除草作業を命じるこ
が社会通念上不相当とされ
と、一人だけ他の従業員か
る程度のものであるかを判
日 弁 連 ADR 委 員 会 委 員
ら隔離し,終日机に座らせ
断基準としていると考えら
H18.08. ~ 手 島 弁 護 士 と 事 務 所 合
ることなどが該当します。
れます。
併「猪木・手島法律事
類 型 化 す る と ,( ア ) 退
H14.02.01 ~ 岡 山 県 建 設 工 事 紛 争
審査委員
H17.04. ~ H18.03
岡山弁護士会副会長
H18.05. ~ H21.04
務所」に
職 勧 奨 行 為 ,( イ ) 仕 事 外
■
し・無意味作業等の業務命
あった場合の法的効果
-1-
パワーハラスメントが
ことを警告しています。
事業主は労働者がパワ
出来事の欄に,ひどい嫌が
ハラなどのいじめ被害に遭
らせやいじめが追加され
わないように注意し,いじ
て,その心理的負荷が3段
( ア) パ ワ ハ ラ に 関 す る 社
めが発生しないように配慮
階で一番強い強度であると
内規程やガイドラインを作
する義務(職場環境配慮義
されました。この心理的負
成し,周知徹底に努める
務 )が あ る と さ れ て い ま す 。
荷が「強」と評価されるこ
( イ) 労 働 者 に 対 す る 公 正
従って、一般的には雇用
とが「業務上」と判断され
な評価と処遇に努め,その
主に対して、債務不履行に
る前提となるため,これか
仕事と責任の範囲を明確に
基づく損害賠償(慰謝料や
らは,職場のいじめによる
する
逸失利益等)の請求をする
うつ病の罹患や自殺が「業
( ウ) ハ ラ ス メ ン ト 研 修 の
ことになります。
務上」と判断され労災認定
実施
2
されるケースが増えるもの
( エ) 部 下 に 対 す る 注 意 の
と思われます。
仕方の工夫(大勢の前で,
1
また,人格権に基づき
いじめ行為の差止請求を行
大声で叱ることを避ける,
うことが考えられます(裁
判 例 : 東 京 地 決 平 11 ・ 11
例えば,
■
企業の負うべき賠償額
具体的な事実を指摘して注
意するなど)
・ 12 労 判 781 号 72 頁 )。 た
判例や裁判例をみると,
だし、その判断は慎重にな
企業等(使用者側)の慰謝
( オ) ハ ラ ス メ ン ト 問 題 専
ることが多いようです。
料は数十万円から500
任担当者を選任し,相談・
3
万,600万円程度といえ
ケアの窓口(社内でのプラ
そうです。
イバシー保護の体制も確立
労働法上の問題として
は,労働者の地位保全や賃
すべき)を設置する
金仮払いの仮処分,人事権
企業等の場合,事態に対
限無効や解雇無効の確認,
する予見可能性が認められ
( カ) パ ワ ハ ラ に 関 す る ア
賃金請求(東京地八王子支
ないことを理由に慰謝料が
ンケート等を実施して現在
判 平 2 ・ 1 ・ 18 労 判 558 号
減額される可能性がありま
問題が起こっていないか把
68 頁 は , い じ め に よ る 欠
す ( さ い た ま 地 判 平 16 ・ 9
握する
勤に伴う賃金請求を認めま
・ 24 労 判 883 号 38 頁 〔 誠
( キ) 1 パ ワ ハ ラ の 阻 止 , 2
し た 。) の 訴 訟 も 提 起 で き
昇 会 北 本 共 済 病 院 事 件 〕は ,
パワハラの調査・検証,3
ます。
病院はいじめを十分認識す
被害者のメンタルヘルスの
4
る可能性があり,これを認
回復・カウンセリング等に
平 成 1 1 年 に 労 働 省( 当 時 )
識していじめを防止する措
関する社外の資源の活用,
が発表した「心理的負荷に
置を講ずべきであったが,
相談システムの整備
よる精神障害等に係る業務
自殺について予見可能とま
などが対策として考えられ
上外の判断指針について」
では認められないとして病
ます。
( 平 11 ・ 9 ・ 14 基 発 544 号 )
院の支払うべき慰謝料を合
に基づいて行われていま
計 500 万 円 と し ま し た 。)。
■
す。
■
ラ防止規程のサンプルを用
労災認定については,
平成21年4月,同指針
添付の「職場における心理
企業としてのパワーハ
ラスメント対策
多くの裁判例は,企業に
的 負 荷 評 価 表 」が 改 正 さ れ ,
対し,パワハラの発生を防
精神障害等の原因となった
止する措置を積極的に取る
-2-
当事務所には、パワハ
意しています。興味のある
方はご一報下さい。
2009.7.25