国有財産を代替地として交換契約を行った事例 新潟国道事務所 1 用地第一課 中 濱 朋 巳 事業の概要 当所施行一般国道7号万代橋下流橋事業は、平成4年に都市計画決定された万代島ルート線の信 濃川を横断する延長 1.5km 区間で①市街地での慢性的な交通渋滞の緩和、②交通規制などの市内交 通状況の改善を目的とするとともに、新潟市の西港周辺地域の活性化の支援として計画されたもの である。平成14年度には秣川岸 IC~万代島 IC 間の L=800m が部分供用され、現在は東堀通~秣 川岸 IC 間の L=500m を平成19年度供用を目指して鋭意努力しているところである。 2 経 緯 今回の事例は、事業用地と建物付きで財務省から所管換を受けた土地を国有財産法に基づく交換 手続きにより移転先を確保した事例である。 地権者は前述の事業計画区域内に住宅、土蔵、車庫、他には賃貸の貸家、アパート、ガレージを 同一敷地内に所有しており、その収入で生計を立てていたことから当該地区周辺に移転し貸家業の 経営を継続したいという希望を強く持っており、代替地の選定が最大の懸案となっていた。 しかし、国、地権者だけでなく不動産業者等にも協力を依頼し移転先を探したが、本人の希望す る条件の土地が見つからず、約5年間移転交渉が膠着していた。 ところが、平成17年2月に偶然にも関東信越国税局(以下「国税局」という。)から同地域内 に存する新潟税務署の宿舎敷地と国道敷の境界確認の立ち会いを依頼され、同宿舎敷地を売り払う 計画であることの情報を得ることができた。 そこで、移転先が見つからない地権者に移転を打診したところ、幾つかの条件提示があったもの の代替地としての要件を満たしているとの回答を得たため、平成17年5月に財産管理者である国 税局に対して事業用地の代替地として取得(所管換)の申し入れを行ったところ、有償による国土 交通省への所管換について内諾を得ることが出来た。 3 事前打ち合わせ 3.1 当初計画 国税局と具体的な売払いの打合せを行ったところ、建物は国税局所有であるが、土地は大蔵省(現 財務省)名義であるため、当初予定では(1)平成18年度に建物の取り壊し(2)平成19年度に財務 事務所へ土地の引継ぎ及び売払い、という計画だった。 この計画に則って当該敷地の所管換を受けた場合、地権者との交換契約は早くても平成19年度 であり、その後の補償対象物件(住宅、アパートなど)の移転を考慮すると、事業用地の明け渡し は早くても平成20年度となってしまう。 平成19年度に東堀通~秣川岸 IC 間の L=500m の供用を開始するには、平成17年度内に地権者 と交換契約を行い、平成18年度内には事業用地の明け渡しが必須であることから、上記手続きの 短縮化を図り、平成17年度内に当該敷地の所管換を受けることが可能になるよう国税局及び新潟 財務事務所と協議を行った。 3.2 課題等 協議した結果、期間の短縮を図るには以下のような課題の整理が必要となった。 (1)関東信越国税局の行政財産等の一般売り払いから有効利用化財産への変更。 (2)関東信越国税局から新潟財務事務所へ建物付きで財産の引継ぎ。 (3)建物付きで交換を前提に所管換を行うこととの可否。 (4)所管換される建物は国有財産としての価値。 上記(1)~(4)について、売払い機関である新潟財務事務所と協議した結果、(1)については用途 廃止を行った上で一般売り払いから有効利用化財産へ変更は可能。(2)(3)については、最終取得者 (地権者)の意思確認を明確にすることにより、建物付きでの引継ぎ及び有償所管換えは可能。(4) については耐用年数が満了しているため国有財産としての価値はない、との結論を得た。 期間を短縮するために建物付きで所管換を受けることから、国土交通省で建物を取り壊して更地 状態にした後、事業用地と国有財産法による交換契約を行うこととした。また、所管換時における 土地評価では、建付地であるため減額評価されることとなった。 4 国有財産法における手続きについて 上記の事前打ち合わせにより、各種手続きは以下のように行われた。 ①交換計画書提出 H18. 1.30 北陸地方整備局長(協議) → 新潟財務事務所長 H18. 2. 6 新潟財務事務所長(通知) → 北陸地方整備局長 ②交換に係る評価格審査 H18. 2. 7 北陸地方整備局長(提出) → 新潟財務事務所長 H18. 3. 3 新潟財務事務所長(承認) → 北陸地方整備局長 H18. 2.13 北陸地方整備局長(協議) → 新潟財務事務所長 H18. 2.20 新潟財務事務所長(承認) → 北陸地方整備局長 ③所管換申請 ④国有財産交換申請 H18. 3.22 北陸地方整備局長(協議) → 新潟財務事務所長 H18. 3.30 新潟財務事務所長(承認) → 北陸地方整備局長 ⑤土地交換契約 H18. 3.31 ⑤における交換契約において渡財産である代替地(所管換)は建付け減価として評価された土地 であることから更地として評価し、事業用地(受財産)の方が遙かに財産が大きいため、渡財産の 価格と受財産の価格との差額金を交換差金として支払うこととした。 また、建物補償は別途に物件移転補償契約として契約を締結したものである。 5 収用手続きについて 今回の事業については、前述のとおり、代替地要求が懸案となっていたため、今回の国有財産を 代替地として確保が出来なかった場合には任意協議による解決を図ることは困難が予想された。よ って土地収用法に基づく事業認定申請を任意協議と並行して行い、平成18年1月26日に事業認 定告示を受けたものである。 4月以降に裁決申請の手続きを予定していたことから任意協議を平成18年3月31日で打ち 切ることを相手方に周知し協議を重ねていった。 6 まとめ 今回の契約に至った要因としては、長年懸案だった代替地の確保が関東信越国税局及び新潟財務 事務所の協力により迅速に交換までの手続きが完了できたこと、その手続きを担当した北陸地方整 備局の関係各課の協力が上げられる。また、事業認定告示が成されたことから交渉期限を厳格に定 められたことが、平成17年度内にまとめることができた要因である。 最後に今回の懸案を解決するにあたって、協力を頂いた関係各課に感謝申し上げます。 ~代替地表示図(宿舎跡地)~ 所管換によって確保した代替地(移転先地) 従前地(取り壊し前) 交換による渡し財産(取り壊し後)
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