職場、警察連絡体制の強化推進 昭和42年8月11日発防第652号 警察

○職場、警察連絡体制の強化推進
昭和42年8月11日発防第652号
警察本部長より各警察署長あて
少年非行の防止は、ひとり警察活動のみによって十分な効果を期待することは困
難であって、従来から関係機関、団体はもとより広く地域社会との緊密な連絡協力
体制の上にあらゆる対策が進められてきたところであり、学生生徒の非行について
は学校と警察相互の機能を効果的に集中する連絡体制が確立されて一応の落ちつき
をみせつつあるが、これに対し、一般勤労少年の非行は年を追うごとにその占める
割合が高くなり、かつ凶悪、粗暴化の傾向を強め、極めて憂慮すべき状況にある。
勤労少年の非行防止のためには、少年が、現実に働いている職場(雇用主)との
協力関係をより強化する必要のあることはいうまでもなく、従来からも職警相互の
連絡について種々対策を講ぜられているのではあるが、その組織化にあたっては、
業種の相違、企業規模の格差、若年労働者の不足などの実情や、加えて職警連の性
格、位置づけ等に対する理解不足から、運営の実態はかならずしも満足すべきもの
ではないように思われるので、本年下半期においては防犯警察の重点を職場警察連
絡体制の強化に指向して、下記により施策の推進につとめるよう配意されたい。
記
1
職場連絡の必要性
働く少年の非行化を防止するため、職場と警察が緊密な連絡を必要とすること
はいうまでもなく、とくに中学校を卒業したばかりの年少労働者については、次
のような点から一層その必要性がある。
(1) 中卒年少労働者と補導(指導)の必要性
ア
家庭における保護者の監護や、学校教育における教師の指導を離れたこと
により、少年自身にとっては、より責任のある自律性が要求される立場にあ
るにもかかわらず、一面においては解放感の伴う時期である。
イ
多くの場合、素朴な農、漁村等の生活から一変して、比較的刺激や誘惑の
伴う都会生活に置きかえられるため 、心身の発育段階にある少年にとっては、
精神的にも肉体的にも不安や悩みにそうぐうすることが多い。
ウ
職場での新しい交友関係がはじまり、また、雇主、先輩等との間にははじ
めて社会人としての人間関係が生まれるので、先輩等の心ない言動や、雇主
等の適正な指導を欠くときは、少年たちを思わぬ方向に走らせる場合も少な
くない。
エ
給料としてまとまった現金が直接渡されるため、正しい生活指導を欠くと
きは、社会の消費、享楽ムードのなかにおいて誘惑や有害な環境に負け、非
行化する場合がみられる。
オ
中学校を卒業したばかりの勤労少年は、いわゆる後期中等教育に相当する
年令であり、これら就職者の中には、進学を希望しながら家庭の事情等から
直ちに職場に就かざるを得なかった少年も相当数ある反面、中学校の義務教
育課程にすらついて行くことの困難であった問題の少年も含まれており、今
後の指導を必要とされる者も少なくない。
非行の早期発見、早期補導
(2)
職場における日常生活を通じて働く少年の実態をよく知っているのは、
雇主、
上司その他同じ職場に働く身近な人たちである。しかるに職場の現状では、少
年に非行化の兆候がみられた場合でも、まず求人難、人手不足等目前の事実に
とらわれ少年の保護、補導に配慮しようとしないため、一定量の仕事さえして
いればこれに眼をおおう傾向があって、少年の不良化あるいは非行化が相当深
刻になり、雇主や職場自体が危険にさらされるような事態に進展してはじめて
「警察沙汰」に及ぶという例が少なくないのであるが、非行少年等の早期発見、
早期補導の面からも、今後職場に要望したい問題が少なくないのである。
2
職場、警察連絡協議会の組織化推進
当面、次により各警察署毎に、職場警察連絡協議会を組織(再編整備)し、1
0月末を目途にその体制を確立するようにつとめること。
(1)
組織の単位
ア 警察署管内において、原則として少年を常時5人以上雇用している会社、
工場、事業所、商店等を対象とし、これらを統合した単一組織とすることが
望ましく、とくに住み込み、入寮の少年を相当数雇用するものについては強
く参加を求めるようにすること。
イ
管内に対象の工場、事業所、商店等が多数あって、その企業の規模内容が
著しく相違するなどの理由から、これらを網らした協議会を設置しても運営
が困難と認められる場合は、次善の策として単一組織の傘下に、部門別ある
(2)
いは地区別の組織化を考慮すること。
組織の方法
現状においては、最初の呼びかけは、警察側がとることになるが、結成のめ
どがついたときは、企業側有志に設置準備委員ともいうべき者を署長名で委嘱
するなどの方法により、企業側の自主積極的な発足準備に委ねるようにし、警
察は側面的に助言、指導を加えて結成促進に努めること。結成準備段階におい
て地域防犯協会の協力を得ることがより効果的と思われる。
(3)
補導連絡責任者の委嘱
結成後は各職場ごとに労務担当者、寮舎監等を補導連絡責任者として委嘱す
るとともに、警察側においても適任者を指定しておき、平素からの連絡を緊密
にすること。
(4) 職警連の活動
各協議会は会則を定め、これにもとづき定期的に総会、理事会等の会議をも
つことになるが、職警連はあくまでも実質的な活動を必要とするものであって、
単に会議のための会議であってはならない。地域における勤労少年の実態を調
査分析し、非行化原因等のうちで、職場に分担して貰うことがより効果的な問
題を提示して、その防止のための具体的な実践活動を展開するようにしなけれ
ばならない。
(5)
関係機関、団体等との連絡協調
年少労働者にかかわる関係機関団体として、例えば労働基準監督署、職業安
定所、婦人少年室、商工会議所があり、民間協力者としては、年少労働者福祉
員の制度等がみられるが、職警連の運営にあたっては、何らかの形でこれらと
の協力体制についての配慮が必要である。
3
進捗状況の報告
本通達に基づく、職警連組織化は10月末日を目途として推進につとめ、計画
ならびに進捗状況については逐次書面をもって報告すること。