台湾における太陽光発電の発展: 産業、技術、政策 藍崇文(Lan, Chung‐Wen) 国立台湾大学化学工程学科/太陽光電産業協会 特別招聘教授/名誉理事長 《要旨》 地球温暖化の進展と化石燃料の枯渇により、再生エネルギーへのニーズは 日増しに高まっている。特に太陽光発電は、2000 年にドイツの再生エネルギー 法の施行によって開始された固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff)による恩 恵を受け、世界中で急速に発展し、2012 年には全世界での累計設置量が 100 ギガワット、さらに年間設置量が 30 ギガワットという水準に達した。台湾では 1999 年に太陽光発電設置に対する補助政策がスタートし、また 2009 年には 再生エネルギー発展条例が可決されたほか、固定価格買い取り制度(FiT)も 導入された。更に 2011 年 11 月 3 日に馬英久総統が「エネルギー政策」記者 発表において「再生エネルギー」利用の拡大に全力を尽くすことを宣言、「屋上 ソーラーパネル 100 万基設置計画」を推進。2030 年までに台湾における太陽 光発電累積設置量が 3,100MWp に達すると予測されている。さらに経済部エ ネルギー局では 2012 年 3 月 28 日に「屋上ソーラーパネル 100 万基設置計 画推進室」を立ち上げ、ソーラーパネルの普及を、スローからファーストへ、屋上 から地面設置へと段階的に拡大しながら、エネルギー買取率制度を完備し、太 陽光発電の運用を推進し、台湾における太陽光発電設備の利用を活性化す るための制度を整えている。2012 年末で、台湾国内の設置量は累計ですでに 222.4MWp に達している。 台湾の太陽光発電産業も 2005 年から急速に拡大し、2012 年までに累計 投資額が 2000 億台湾ドルを越えた。年間生産額は 2008 年に 1,000 億台湾 ドル以上の規模となり、2008~2012 年の累計で総生産額は 7,447 億台湾ドル に達した。メーカー数は 250 社を超え、雇用者数 2.2 万人を抱える一大産業に 発展。2010 年には中国大陸に次ぐ世界第 2 位の太陽電池生産国となり、 Motech(茂迪)、Gintech(昱晶)、Neo Solar Power(新日光)の 3 社が世界 太陽電池生産規模でトップ 10 入りを果たした。2012 年には、中国大陸のメーカ ーが勝手に大量生産したことで生産過剰率が 100%以上に達し、世界太陽光 発電市場にとって惨憺たる一年となりました。世界の太陽光発電メーカーが倒産 に追い込まれ、700 社から 200 社足らずまで減少した。一方、台湾は 2009 年の 金融危機、2012 年の太陽光発電産業崩壊を経験しながらも産業界の弛まぬ 努力により、2013 年には緩やかに回復を始め、多くの会社が 6 月決算で黒字 回復を果たす見込みとなっている。台湾は世界でも優れた製造技術を有すること で有名であり、充実した管理システムも整備されている。なお、昨年から今年にか けて欧米が相次いで中国大陸に対してアンチダンピング措置を発動したこともあり、 現在台湾は世界で最も重要な太陽光発電生産拠点となっており、今後の世界 における太陽光発電産業発展の鍵を握るポジションを担っている。特に、産業技 術においては弛まぬ研究開発に精進しており、コスト面での優位性を保つことにより、 台湾太陽光発電産業の世界シェアを伸ばしている。 今回の講演の中では、皆さまと共に急速に発展してきた太陽光発電産業の 歴史と、産業が最も苦悶した一年を出発点に、将来の産業発展について探り、 更に踏み込んで台湾における業界の発展と特色、政府政策の要点を共有した いと存じている。産業技術の中で特に注目に値するテーマについても共有し議論 させていただければ幸いである。
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