優秀賞 今だから ぼくは、少し自まんがあって、ご飯 を作るのが上手だ。と、勝手に思いこ んでいるだけかもしれない。毎日、何 作ろうと考えながらも、そんなに食材 があるわけでもなく、そん中でごちそ うが出来たらと期待をこめて、チャレ ンジ精神も交じえて工夫していた。 一番おどろいたことは、弟が唐揚げ が食べたいと言ったので、鳥肉に下味 を つ け る た め ボー ル に 、 し ょ う 油 ・ に んにく・卵・塩・こしょうを入れつけ て い た 。 そ の 時 弟 が 、 そ の ボ ー ル の中 にコーラをこぼしてしまい、混ざって しまっ た 。ぼくは 弟に腹が立ち 、怒鳴 った 。 かと 言 って や り 直す 気 力 も な か ったので、そのまま油で揚げた。それ が何ぜかとてもふっくらしておいしか さぬき市立富田小学校六年 幸藤 龍翔 ぼ く は 、 幼 い 頃 か ら 母 さ ん に 怒 られ るばかりだった。ほめてもらうことな んて、一度もないくらい毎日怒られる ば か り だ っ た 。 そ う じ し なさ い ・ 宿 題 しなさい・お風呂に入りなさいなど 怒って い る母さん しか知らな い 。なん でそんなに怒るのか、本当に不思議で 仕方なかった。そのせいで、弟につい 八つ当たりしてたたいてみたり、大事 な本をかくしてみたり、今となっては とてもかわいそうな気がした。 ぼ く の家 は 、 母 さ ん と ぼ く と 弟 の 3 人家 族 だ 。 母 さ ん は 、 毎 日 休 む こ と な く 仕 事 へ 行 っ た 。 そ の た め に 、当 番を 決めていたわけでもないが、ぼくが、 晩 ご 飯 の 支 度を し て 、 弟 が せ ん た く 物 を干したりたたんだりした。 っ た の にお ど ろ い た 。 今 は こ の お い し さを教えてくれた弟に感謝しなければ な ら な い の に怒 鳴 り つ け た 自 分 が は ず かしく 思えた 。だ が、 母さんはこ の味 をほめることなく逆に、きちんと片付 けしてよっと怒った。少し悲しかった。 あ る 夏 の 日 、ぼ く と 弟は 夏 休 み と も あって、二人でゲームをして遊んでい た 。 ピ ン ポ ー ン と 音 が 鳴 ると 同 時 に 、 男の人の声でこんにちはと言った。ぼ くはすぐに玄関へ行き、戸を開けた。 そこには知らない男の人の背中に、母 さんをおぶって立っていた。母さんは 会社でたおれたらしく、連れて帰って きてくれた事を聞き、ぼくはあわてて お礼を言った。 母さんはその日から、仕事を休んだ。 何 を 問 い か け て も 、 一 言 も 口 を 開 かず 怒鳴ることだけは忘れなかった。 何日も看病らしき事をしていくぼく は、段々疲労と自由のなさに腹が立ち、 リ ュ ッ ク に パ ン や 飲 み 物 ・お 菓 子 を 積 めこみ家を出た。何ぜか弟もぼくにつ いてきた。しかし、子供の家出なんて お 金 も 持 っ て い な い の に 、 長 く 続 くわ けがない。せいぜい頑張っても二日ま で だ っ た 。で も そ の 二 日 間 、 不 思 議 と 何か物足りない気分だった。 夜中にこっそり帰ったぼくと弟。外 には、二日前に干した洗たく物が、さ みしく風にゆれていた。 ぼくと弟は、母さんに謝ろうと思っ て す ぐ 母さ ん の部 屋へ 向かっ た 。 母さ んは真っ暗な部屋の中で寝ていた。ぼ く は 母 さ ん に 「た だ い ま 」 と 、声 を か けた。返事はなかった。 「母さんごめん なさい。 」やっぱり返事はなかった。ぼ くは 仕 方 な く 、 弟 と 一 緒 に 二 日 分 の汚 れを落とすため、風呂に入って寝た。 朝弟に起こされて 、目覚めた。ぼく は 久 し ぶ り に 台 所 に 、 立ち 朝 ご 飯 を 作 った。弟が食べ始めた時に、母さんの ご 飯 を お 盆 に 乗 せ て 部 屋へ 行 っ た 。 母 さんおはようっと声をかけたしゅん間、 ぼくは母さんがおかしいことに気がつ いた。何度呼んでもゆすっても一言も 口を開くことなく動かなかった。ぼく は、頭が真っ白だった。すごく身体が ふるえた。何とも言えない気分だった。 ふと母さんの手に、にぎりしめたの か、くしゃくしゃになった紙があった。 きれいに広げて読んでみた。 「口を開く となみだが出そうだから、いつも あり がと」で終わっていた。 ぼ く は 、 弟 と 一 緒 に な みだ が か れ る まで泣いた。 この時初めて、母さんにほめてもら えてうれしかった。本当は、生きてい て聞きたかった。だからこそ、家をと び出したぼ くを責 める気持ちで い っぱ いだった。 結 局 ぼ く と 弟は 、 伯 母 さ ん と 一 緒 に く ら す こ と にな っ た 。 母 さ ん がい な く なっても、相変わらずご飯の支度をし た。伯母さんと一緒に。伯母さんは笑 顔でありがとうって、いつもほめてく れた。とてもうれしかった。 し か し 、 何 か 物 足 り な い 気 持ち が あ った。 今思うと、怒られながらもある意味、 気持ち良かったのかもしれなかった。 今だから、思う事だろう。
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