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[連載] 米国ビジネス -成功のための交渉術- Vol.1
米国でビジネスを行うにあたって、きちんとした契約書を締結することはもちろん、相手としっかり交渉しな
がら取引を進めることが非常に重要だとジェトロは考えています。そこで、『負けない交渉術』、『負けない
議論術』などの著者である、大橋&ホーン法律事務所 パートナー、ニューヨーク州弁護士・大橋氏に、
「米国ビジネス -成功のための交渉術-」というタイトルで、米国ビジネスには欠かせない交渉とその考え
方、哲学などについて連載で紹介していただきます。日本企業の皆様にとって、米国ビジネスを成功させ
るための参考として頂ける内容です。ぜひご参照ください。
契約交渉の重要性
大橋&ホーン法律事務所 パートナー
ニューヨーク州弁護士 大橋弘昌
日本企業が作る物やサービスの品質は世界一。世界中の人々が日本製品を使えばそれを大変気に入り、
日本人からサービスを受ければそれに高い満足を得る。しかし日本企業はそれに見合った利益を得てい
ないのではないか。私は弁護士として日々ニューヨークで多くの日本企業の仕事をさせていただいている
が、米国に進出した多くの日本企業はもっと儲かるはず、とつくづく思う。
例えば、日本企業或いは日本人が米国企業と取引をするとき、自らに有利な契約書を締結すべく契約交
渉をするよう心がけるだけでも利益は増えてくる。実際には日本企業の多くが米国企業との契約交渉を苦
手としているようで、十分な契約交渉をしないまま不利な契約書を締結してしまっていることが本当に多い。
つい最近も、ニューヨークで働く日本人のコンサルタントAさんから相談があった。米国のコンサルティング
会社であるX社の請負業者(Independent Contractor)として働いているのだが、X社からの報酬の支払い
がしばしば遅れるらしい。また、X社は顧客を連れてきてくれるわけでもない。Aさんは、自分で顧客企業を
開拓して、X社経由で働いている。相談の内容は、X社との契約を解除して、直接自ら顧客にコンサルティ
ングサービスを提供したいのだが、それは可能か、というものだった。早速、契約書をレビューしたところ、
X社からは自由に契約を解除できるが、AさんからはX社に契約違反があった場合でかつその違反の有無
が争いになった場合は裁判で契約違反が認められた場合にのみ契約解除ができる、そういった限られた
場合以外にはAさんからは契約解除ができない、と定められている。
話を聞くと、X社に使ってもらうことを決めたときにはX社との関係が非常に良好で、その関係を壊したくな
かった、だから十分なレビューをせずにX社から提示された契約書に署名してしまった、とのことだった。
契約書は、お互いの関係が良好なときにこそ、その関係が悪化するような事態が発生したときにどう解決
するかを、予め交渉して合意しておくものだ。お互いの関係がよいときだからこそ少々相手に耳障りなこと
でも主張し合った上で合意することができる。日本人同士であればお互いの関係が悪化してからでも話し
合いで解決できるかもしれない。しかし国際ビジネス社会ではそれは難しい。
©JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ) 9
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契約書一本によって米国での事業が成功もするし、失敗もする。何か取引するときには契約交渉を厭わな
いようにする。それが米国での事業の成功につながるのだ。
これから毎月、私がニューヨーク州弁護士としてかかわった案件などを紹介しつつ、心がけや考え方を変
えるだけで米国でのビジネスの成功につながりうるということを読者の方々にお伝えしたいと考えている。
[連載] 米国小売店 – 売上動向(2011年7月)
2011年7月既存店売上高は前年同月比4.6%増
<新学期準備セールが好調>
国際ショッピングセンター協会(International Council of Shopping Centers 、以下ICSC)の8月4日付の発
表によると、7月の大手小売店27社の既存店売上高(季節調整前)は、同協会の予想(前年同月比3.54.5%)をわずかに上回る前年同月比4.6%増となった。主要紙は、売上高の増加した主な要因として、多くの
小売店による夏物の大幅なディスカウント、新学期準備(Back-to-School)セールの実施を挙げている。
<ばらつきのあった衣料品専門店>
全業種の中で、一番伸びの少なかった衣料品専門店では、企業によってばらつきがあったようだ。ICSC
によれば、売上の好調であった企業では、夏のクリアランス・セールの継続と、7 月の猛暑が夏物の購買
に拍車をかけた一方、すでに 6 月に夏物の在庫を販売しきってしまった企業では、暑さで夏物を求める消
費者のニーズに応えることができず、結果的に売上も伸びなかったと分析している。また、記録的な猛暑
が、秋物の購買を妨げたとの見方もある(8 月 4 日付 ウォール・ストリート・ジャーナル)
<毛皮で売上増を期待する高級百貨店>
高級百貨店部門は前年同月比でみると、09 年 11 月の減少を最後に、20 カ月連続でのプラス成長となっ
た。特に、7 月のサックスの売上高の伸びは大きく、アナリストの予想 8.0%増を大幅に上回る前年同月比
15.6%増となった(8 月 4 日 ブルームバーグ)。同社では、婦人服、婦人靴、紳士服、紳士用小物の売れ
行きが好調であった(8 月 4 日付 同社プレスリリース)。
7 月 27 日付のブルームバーグ・ビジネスウィークは、サックスやニーマン・マーカスなどの高級百貨店が、
今年の秋に例年より多くの毛皮製品を販売すると報じている。同紙によると、過去 10 年、毛皮の人気は
動物虐待と批判を受けたことによって下火になった。しかし、近年になって、業界による「(飼育状況などに)
動物虐待のないこと(Cruelty-Free)」(注 1)のアピールが功を奏し、毛皮に対する消費者の態度を軟化さ
せたことと、毛皮を使用したエレガントなデザインが流行し始めたことを背景に、再び人気を取り戻しつつ
ある(7 月 27 日付 ブルームバーグ・ビジネスウィーク)。同紙は、小売店が毛皮製品に高めの価格を設
定することによって、売上を増加させることができると指摘している。サックスのロナルド・フラッシュ社長兼
最高マーケティング責任者は、2 月のコンファレンス・コールで、第 4 四半期での毛皮や高級素材を使った
商品の販売に関し「今年の秋は、ファッション自体が高い価格設定の主導権を握る」と、高額商品の販売
を予期させるコメントをしていた(2 月 23 日付 ABC ニュース)。
©JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ) 10