No.4 No.4 平成 23 年 12月 9日 広島県立福山特別支援学校 自立活動部発行 1.感覚統合ってなに 感覚統合ってなに?? ってなに?? 人間の感覚には,「自覚しやすい感覚」と「自覚しにくい感覚」の 2 つがあります。まず,「自覚しやす い感覚」には,視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の 5 つの感覚があり,これを五感と呼びます。「自覚しにく い感覚」には,前庭覚(バランス感覚,平衡感覚)・固有覚(筋肉,関節の感覚)があります。 ~自覚しやすい感覚~ 視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚(五感) ~自覚しにくい感覚~ 前庭覚(バランス感覚,平衡感覚) 固有覚(筋肉,関節の感覚) このような感覚は,子どもが母親の胎内にいるときから働いており,お互いに関わりあい影響しあっ ています。子どもが成長するにつれて,脳のその他の感覚中枢と深く連絡ができていきます。これらの 感覚はネットのように大変複雑に込み入っていますが,人がその場の状況を判断して,それにふさわし い反応をするために欠かせないものです。このように,人の発達の中で,脳が内外からのたくさんの刺 激を有効に利用できるよう,能率的に組み合わせることを「感覚統合」といいます。 2.感覚統合が 感覚統合が上手くいかないと 上手くいかないと・・・ くいかないと・・・ エアーズ博士(アメリカの作業療法士)は脳か らの連絡を交通整理のおまわりさんに例え,『も し脳が感覚統合してくれなかったら,神経の交通 渋滞で身動きできなくなる』といっています。 もし子どもに,触れられることを極端に嫌がった り,多動であったり,言葉の発達が遅れるといっ た現象がみられたら,脳が感覚統合をうまくでき ていないことに原因があるのかもしれません。 3.どうしたらいいの? どうしたらいいの? 感覚統合は子ども時代の日常生活の遊びや生活の中で完成されていきます。このことからも分かる ように,感覚統合に働きかけるために大切なことは,対象の子どもが何をやりたいと思っているかをし っかり把握することです。子どもは,その発達段階においてー番適した感覚経験を求めるものです。 つまり,子 子どもが欲 どもが欲しがる刺激 しがる刺激がその 刺激がその時 がその時に一番必要な 一番必要な感覚刺激であったりします。 感覚刺激 ① 身体の 身体の触れ合う遊び ≪ねらい: ねらい: 触覚, 触覚,固有感覚刺激 固有感覚刺激を 刺激を通して, して,人とのコミュニケーション とのコミュニケーションを コミュニケーションを培う。≫ ☆ 例えば・・・触覚を刺激する遊戯 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くすぐりっこ ごっつんこ ぎゅっと抱きしめる 皮膚のマッサージ ボールプール ペインティング ぎっこんばったん おしくらまんじゅう ② 人にしてもらって楽 にしてもらって楽しい活動 しい活動 ≪ねらい: ねらい: 人と一緒にいることを 一緒にいることを楽 にいることを楽しむ。 しむ。要求の 要求の表現を 表現を育てる。 てる。≫ ☆ 例えば・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ だっこやおんぶでピョンピョン くるくる回す 手足を持って揺らす シーツブランコ ピーナッツボール トランポリン ・ 訓練遊具で一緒に活動を経験 ③ 人に手伝ってもらって 手伝ってもらって楽 ってもらって楽しい活動 しい活動 ≪ねらい: ねらい: 人の援助を 援助を受け入れられるようにする。 れられるようにする。要求の 要求の表現を 表現を育てる。 てる。≫ ☆例えば・・・ ・ 平衡板 ・ ゆれ木馬 ・ トランポリン ・ スクーターボード ・ 援助を受けながら訓練遊具にのる ・ 援助されることで活動のレパートリーを広げる ④ 人とやりとり遊 とやりとり遊び ≪ねらい: ねらい: 物を用いて人 いて人とやりとりできるようにする。 とやりとりできるようにする。≫ ☆ 例えば・・・ ・ ・ ・ ・ 積み木の倒しっこ ボールのやりとり 的当て遊び 引張りっこ 「絵でわかる 障害児を育てる感覚統合法」 坂本龍生-著 日本文化科学社 より引用 4.触覚防衛反応ってなに 触覚防衛反応ってなに?? ってなに?? 感覚刺激を活動に取り入れるにあたって,注意しておかなければならない点が『触覚防衛反応』です。 皮膚感覚には触覚(圧覚も含む)・温覚・冷覚・痛覚の 4 種類があります。 この中で,人の触覚は原始系と識別系の 2 つに分けられます。 原始系・・・・・危険を回避し,防衛する機能 *本能的な防衛反応,反射的に物を掴む。取り込む。 識別系・・・・・ものの識別や探索をする機能 *物の感触や大きさ,形を触って識別する。 特定の触刺激に対して情緒的な拒否反応を起こすことがあり,この反応を触覚防衛と呼んでいます。 『触覚防衛反応』とは,原始系と識別系が上手く統合されず,原始系の防衛反応が強くなると,刺激に 対して,危険や不快を感じ取る反応が高まり,必要以上な反応を起こし,拒絶・逃避をして自分を守ろ うとします。このような点に注意しながら,感覚刺激を活動に取り入れてみてください。 No.7 「 重症児の 重症児のQOL 」 著者:藤岡一郎 発行年:2000 年 発行所: クリエイツかもがわ 「QOL」とはクオリティー オブ ライフの略語であり,もともとは末期癌患者の終末期医療 を行なうホスピスにおいて使用されていましたが,医療の分野でも使用されるようになった言葉で す。ライフとは生命(いのち),生活,そして人生という意味があり,クオリティーは質という意味 があります。ですから「生命の質」 ,「生活の質」, 「人生の質」と訳すことができますが,重症児の 親たちは QOL を「いのちの輝き」という表現をしています。重症児は一人一人個性があり,ユニ ークな存在です。この本は在宅で生活している重症児の医療的ケアのガイドとして書かれたもので すが,ケアの方法を参考にして,ユニークな重症児にふさわしい質の高いケアを行なって欲しいと 著者は記しています。 No.8 「 小児リハビリテーション 小児リハビリテーションのための リハビリテーションのための神経 のための神経と 神経と発達の 発達の診かた 」 監修者:五十嵐透子 発行年:2001 年 発行所: 医歯薬出版株式会社 小児のリハビリテーションを行なうためには,その子どもの発達と障害の種類・程度を理解しな ければなりません。脳の発育途上に受けた障害により種々の症状を呈する小児を脳障害児といいま すが,その診察法は臨床神経学を基本としていて特徴的です。 本書に記載されている脳性麻痺的脳障害児の診かた,知的障害児の診かた,微細神経学的兆候の 診かたのいずれかの方法を用いることで脳障害児へアプローチが可能です。子どもの発達チェック と神経学的診察の基本が総てまとめてあるので,障害を持つ子どもの理解と QOL の改善に役立つ 一冊になるでしょう。
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