FOCUS クロアチア経済と 日本のビジネス展開の展望 駐クロアチア特命全権大使 井出敬二 良好な関係にあるクロアチアと日本 クロアチアは日本でも人気観光地として知られ、 で開業したり観光業で働く日本人は若干いるが、 日本企業から派遣されている常駐日本人はゼロで ある。クロアチアで製品開発をしている日本企業 年間数万人が日本から訪れている。人々はとても は1社あるが(詳細後述) 、製造している日本企 フレンドリーであり、東日本大震災ではクロアチ 業はゼロである。 アの官民から多額の支援をいただき、被災地の子 どもたちをクロアチアにも招いていただいた。 ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア などには日本の製造業が数十社進出し、数万人が クロアチアはかつての共産主義ユーゴスラビア 現地雇用されているのに比べ、クロアチアは大き の一部であり、1991 年以降ユーゴスラビアが分 く出遅れた。ただし、日本の自動車、電気・光 裂して独立国となったが、91 年から 95 年にかけ 学・事務・医療機器などの販売代理店はあり、ク て戦争も経験した。NATO (2009 年) と EU (13 年) ロアチア人スタッフが日本製品をしっかり売って に加盟し名実とも西側の一員となった。08 年の いる。筆者も大使公邸で日本製品のプロモーショ リーマンショック後、GDP 成長率はゼロないし ン活動を彼らと共に行っている。 マイナスである。失業率も 15% 以上と EU 内で クロアチアから日本にはクロマグロが輸出され はスペイン、ギリシャと共にワースト3である。 ている。地中海マグロを2年半程度アドリア海で 過去クロアチアが苦しい時代に日本から行った 畜養し、脂がのった 12 月に何千トンも収獲して 様々な支援は、今でも高く評価されている。本年 日本に輸出する(写真①)。筆者は収獲の際に日 5月にクロアチア東部は大洪水の被害を受けた 本から来る漁船団の皆さんとお目にかかれるのを が、その際には日本政府および日本企業から支援 楽しみにしている。 を行った。このように日本とクロアチアは非常に 残る旧共産主義体制と戦争の影響 良好な関係にある。 本稿では、日本ではあまり紹介されないクロア ー欧州と歴史の中でのクロアチア経済の位置付け チア経済の現状を紹介し、戦争の傷跡を乗り越え クロアチアは 28 番目の EU 加盟国であり、EU て体制移行することの困難に立ち向かっている同 の東南方向への拡大の最前線に位置する。加盟に 国の努力について説明した上で、日本とのビジネ 際して約 600 本の法令、約 1500 本の政令などを ス関係の発展を展望する。 改正したという。独立後3度の政権交代を経て民 主主義も定着し、腐敗の問題にも取り組み大きな 好印象な日本製品 成果を挙げている。本来もっと早く EU 加盟が実 クロアチアは親日的であり、日本製品にも良い 現してよかったのだが、戦争などに由来する様々 印象を持っている。クロアチアの要人たちはぜひ な問題のために加盟が遅れた。EU 加盟により、 日本企業に投資してほしいと常に話している。ク 国の諸制度も EU と共通のものになっている。 ロアチアに住む日本人は約 120 名である。個人 22 2014 年 10月号 隣国とはかつてのユーゴスラビア時代の経済関
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