元売卸価格フォミュラについての意見 = フェアな競争環境構築を願って =

元 売 卸 価 格 フォミュラについての意 見
= フェアな競争環境構築を願って =
2010年12月
全国石油商業組合連合会
経営部会
経営政策検討WG
1
目
次
Ⅰ. はじめに
Ⅱ. WG設置の経緯
Ⅲ. WGでの議論の内容
(1) 何が問題なのか
(2) 元売が今回ブランド料を引き上げた理由・背景は何か
(3) 元売ブランドに価値はあるか
(4) 元売ブランド維持コスト
(5) 元売ブランド維持コストと系列SS負担額
(6) 安定供給コストと系列SS負担額
Ⅳ. まとめ
参考1. 精販Win-Win関係構築のためのフォミュラについて
参考2. 明治大学 上原教授のご意見
経営政策検討WG委員名簿
経営部会委員名簿
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Ⅰ. はじめに
右肩上がりで推移してきたガソリン需要も平成16年度(2004 年度)をピークに減少
に転じ、経済産業省 石油製品需要想定検討会が、発表した「平成22~26年度
石油製品需要見通し」では、平成26年度のガソリン需要は21年度比 14.8%減少
すると見込まれている。因みに、燃料油では 16.2%の減少となっている。
SSの在籍数が毎年 1500 ヶ所以上減少していることから1給油所当たりのガソリン販
売量は増加しているものの、ガソリンマージンは年々低下しSSの収益性はますます低
迷している。
そのような市場環境の中で、ホームセンター等異業種が大型セルフSSを建設し、ス
ケールメリットを前面に打ち出した量販により市場を撹乱している。また、元売販売子
会社も運営SS数を拡大し地域マーケットにおける市場価格に大きな影響を持つに至
っており、安値量販SSに追随している。これにより、末端の系列 SS は業転仕入SSと
の仕入格差と安値競争の影響を受けた低マージン販売の狭間で呻吟し、将来への希
望を断ち切られている。
元売会社と特約店・販売店は、元売ブランドの下に系列販売を通じて相互に連携
し、付加価値の確保と再投資可能な収益を得る一体構造が求められているところで
あるが、需要減少下における余剰玉を元売が安値で系列外に供給するという二重構
造を自ら生み出したため、系列ブランド内で競争が惹起されるに及び、元売系列販売
は崩壊し始めている。
この度、経営部会は経営政策検討WGを設置し、元売会社の卸価格フォミュラの
解析と修正案のとりまとめを行い、この提言を通じて、われわれ石油販売業者と元売と
の信頼関係再構築の可能性を内外に問うものである。
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Ⅱ. WG設置の経緯
元売各社の卸価格は、原油コスト連動方式や市況連動方式等が混在し、国際
価格とも乖離した価格体系が形成されていたが、原油価格の不安定な急騰を背景に、
平成20年10月から価格指標をベースとした市場連動仕切価格体系【業界最大手
元売の例:指標価格+ブランド料 2 円(安定供給コスト 0.5 円+系列付加価値コスト
1.5 円)】を導入したことから、他元売も実質的に追随した。
しかしながら、同時期に発生した世界同時不況を契機に石油需要が急減、供給
過剰から指標価格が低迷し元売の石油部門収支が大幅に悪化したことから、H22
年度から先に導入した新仕切価格体系の見直しを実施した。その中で、われわれが
特別に注目したのは、石油販売業者にとって最大の重要事項であるいわゆるブランド
料を、販売関連コストと改称し、従来の2円を4円に大幅値上げしたことである。
7/2 経営部会では、2 円が 4 円となったことで、系列SSは業転仕入SSと 4 円近い
仕入格差が生じることになり、マーケットでの競争上大きなハンディを背負うことになると
の認識で一致した。これを契機に、9/16 経営部会において「経営政策検討 WG」の設
置を決定し、この業転格差を、当初、元売がブランド料と表現し、現在も一部元売が
ブランド料と称していることから、ブランド料とは何を意味するのか、系列SSが負担すべ
きものなのか、その額はいくら位が適正なのか等について、元売と共生する政策検討の
一環として議論することとした。
当該 WG 委員には、柔軟な発想で自由に討議をしていただく目的から、系列バラン
スに配慮しつつ比較的年代の若い部会委員に委嘱するとともに、近隣の組合にも協
力を求め若手経営者の参画を要請した。WGは、定例の経営部会の意見を聴きなが
ら5回(9/16、10/7、10/26、11/16、12/2)に亘り開催した。
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Ⅲ. WGでの議論の内容
(1)何が問題なのか
本 WG 設置の端緒は、「7/2 経営部会において、ブランド料が 2 円から 4 円となった
ことで系列SSは業転仕入SSと 4 円近い仕入格差が生じることになりマーケットでの競
争上大きなハンディを背負うことになる。ブランド料とは、何なのか、系列 SS が負担す
べきものなのか。」という問いかけであった。そこで、本 WG では、元売ブランド並びにブラ
ンド料に係る問題の所在について、第 1 回WGの自由討議に引き続き検討の過程に
おいてもその都度課題の整理を行った。
元売各社は、平成20年10月から順次価格指標をベースとした市場連動仕切価
格体系を導入した。しかしながら、その後の需要急減・過剰供給から元売の収支が大
幅に悪化、平成22年度から新仕切価格体系の見直しを実施した。そこで、従来のい
わゆるブランド料を、2 円から 4 円に大幅値上げした。値上げに当たっては、ブランド料
を販売関連コストと改称したが、業転価格に販売関連コストを加算する方式は変わら
ず、そのコストは系列取引のみから回収し業転取引から回収していないことから、PBと
の価格差は拡大し競争が不利になるどころか勝負にならないレベルとなった。例えば、
業転価格ベースで仕入れて4~5円の粗利で小売している大手ホームセンターの小売
価格は系列SSの仕入価格に相当することになり、とても容認できるものではないとの
意見に収束した。また、金額的にみても月間 150KLで 4 円/Lのブランド料が課され
ると 60 万円/月になり、SSの収益から見てこのウエイトは経営に重くのしかかることに
なる。このことから、元売は業転玉を出荷する段階で精製販売コストを回収し、系列に
は納得のいく系列ネットワーク維持費だけを加算すべきとする意見が続出した。このた
め、業転格差となる「ブランド料とは何か」について検討することとなった。検討に当たっ
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ては、組織の太宗を占める小規模系列特約店・販売店の立場から議論することとし
た。
(2)元売が今回ブランド料を引き上げた理由・背景は何か
今回のブランド料(販売関連コスト)引き上げについて元売から十分に納得できる値
上げ理由について説明がなされなかったことから、ブランド料問題の本質を理解する上
で、元売は何故ブランド料(販売関連コスト)を引き上げたか各委員の意見をまとめて
みた。
意見は次のように大別された。①卸格差を 0.5 円から1円に引き上げ、SSインセン
ティブ1円を新設し、系列店インセンティブを最大 3 円にするにはリットル当たり 4 円の原
資が必要になると考えたのではないか、②元売が儲からないといって価格変動リスクを
系列SSに押し付けただけ、あるいは③他元売との仕切格差の平準化を図ったと考え
られる等の意見があったが、いずれも推測の域内であり詳細は不明である。
因みに、資エ庁が実施した「平成22年度元売ヒアリングの結果について(平成22
年10月)においては、次のように記述されている。
○卸価格フォミュラの中にブランド料という項目を設けていない元売もあるが、各社と
も、系列特約店の機能強化により石油製品の安定的なサプライチェーンを構築
するため、ブランド力の維持・向上が不可欠との認識であり、系列特約店とブラ
ンド戦略の共有を図りながら、系列特約店に対し機能強化に資する付加価値
の提供を実施するための経費を卸価格に加味しているとのことであった。
○具体的には、ブランド力の維持・向上のための取組として、商品の安定供給・品
質確保、テレビコマーシャルなどの広告宣伝、POS・カードなどの販売システムの
提供、塗装など従来から提供してきた付加価値に加え、厳しい競争環境下にお
いても系列特約店の持続的な経営が可能となるよう、個別SSの競争環境を考
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慮した上で販売ノウハウやSSネットワーク展開などに係るコンサルティングや従業
員に対する研修メニュー、インターネットサイトを活用したタイムリーな情報提供な
ど競争力強化に資するサポート機能の充実や新商品開発や併設店舗の実証
などを順次実施しているとのことであった。各社とも、引き続き、系列販売網の維
持・強化に向けた取組を行っていくとのことであった。」
(3)元売ブランドに価値はあるか
一般に、ブランドとは、ある商品・サービス等を他のものと差別するためのあらゆる概
念とされ、文字や図形等で具体的に表現された商標が使用される。ブランド価値を有
する商品・サービスは、①品質・②付随サービス・③イメージ等で他商品・サービスとの
明確な差別化が可能で、消費者の選択に大きく関わってくるとされている。
元売ブランドについて、ブランド構成要素と思われる前述の3項目について検証し
た結果、次のような評価となった。
① 品質は、元売の団体である石油連盟と自動車工業会との間で、ガソリン・軽油の
JIS規格を更に絞り込んでいる。灯油についても石油機器工業会と同様の協議
を行い、各社ほとんど差のない良質な規格で生産されており、系列玉も業転玉
も同一品が出荷されている。しかも元売間のバーター取引も日常的に行われてい
る。したがって、燃料油はブランドとは言えない。
② 付随サービスは、カードシステム・POSシステム・計算センターシステム・研修等、
各社系列ブランド維持のために特約店・販売店と一体のシステムを運用している
が、各社大差のないシステムとなっているのでこれもブランドとはいえない。
③ イメージは、TV・マスメディア等を通じた広告宣伝・SSサインポール・SSデザイン
塗装・SSマン制服等で消費者向けにブランドイメージの価値向上を目的にコスト
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を掛けているが、消費者は1円安いだけでもPBSSを選択する等、消費者求心
力は弱くブランド価値は認められない。
このような検証結果の一方で、元売は、系列SSの塗装を統一し、各社独自の統
一サインポールを掲示して系列SSのネットワークを誇示している。しかしながら、消費
者にとってサインポールに価格以上の選択指向性はないと言われている中で、ブランド
ネットワークに留まる理由はどのようなところにあるのだろうか。
意見としては、①師弟教育制度・サインポール・塗装・宣伝・店舗づくりのアドバイス
等はブランドネットワークに残る価値があるかもしれない、②仕入れの心配をせずに安
心して販売に専念したいという気持ちがある、③系列にいることの安心感がある、④官
公庁の中には系列SSしか受け入れないというところがある等の意見に加え、⑤マーク
をはずすと、クレジットカード客をどうするか、リースSSの返却、産業燃料の安定的な仕
入先確保、サインポールを独自仕様とする必要等、自前のコストがかかるので価格格
差があっても系列にいるという逆説的な意見もあった。
(4)元売ブランド維持コスト
第 1 回WGの議論では、業転格差を許容できる範囲いわゆるブランド料(販売関
連コスト)は 2 円以内との意見が大勢を占め、石油ブランドの検証においても石油ブラ
ンドに価値は認められないとの結果になったが、本WGでは念のため、元売系列ごとの
ブランド維持事業の内容の洗い出しとコスト積算を企ててみた。
元売ブランドに価値は見いだせなくても、元売が高額の費用をかけて維持しようとし
ているネットワーク維持コストについては、どのような内容のものがありいくらぐらいの費用
がかけられているのだろうか。大雑把に推定し感覚的に把握してみたところ次のようなこ
とであった。
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① A元売
1) カードシステム、POSシステム、広告宣伝費等に元売が掛けている費用を推
定し、SS単位に割り返した合計は、SSあたり年間 60 万円。白油3油種の
年間数量 1,800KLで計算すると 0.3 円/Lになる。
2) 計算センターについては、各SSで計算手数料を払っている。研修については
元売は一部補助を行っている程度。塗装については 3~5 年ごとの塗り替え
で年間では大きな費用はかからないだろう。制服はSS負担となっている。
② B元売
1) 元売が費用を掛けている項目としては、POSシステム、研修の元売社員のサ
ポート費用(人件費相当)、TVや雑誌の宣伝広告費がある。ここから費用を
推定すると、SSあたり年間 60 万円となる。1,800KL/年として推定すると 0.3
円/Lになる。
2) カード計算手数料や制服代等はSSで費用負担している。
③ C元売
1) カードは売上の 1.7%を手数料として払い、POS計算センターの費用も我々
が払っている。研修費用は宿泊費・交通費等は実費精算でSSが負担し、
それ以外の教育にかかる費用は元売の恩恵を受けている。広告宣伝費はわ
からない。サインポールについては設置、メンテナンスはやってくれる。塗装は内
装についてはSSの負担で実施する。制服は買取。
2) これらの中でブランド料にカウントできるのはサインポールくらいではないか。
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④ D元売
1) 過去に全SSの塗り替えが行われたときに塗装費込みの総費用が 200 億円
~300 億円という話があり、当時の試算としては 1SSで 300 万円、年間
1,800kLとして1年に 1 回の塗り替えで 1.7 円/L程度、4年に1回の塗り替
えだと年 0.4 円/Lで回収できる。
2) カード手数料はSSが払っており、元売が特段負担しているということはない。
SS業界における一般提携カード手数料は 2.5%が一般的であるが、D元売
における一般提携カード手数料は 1.85%に低減された。2.5%との差の約
0.7%は元売が負担しているわけではないが、系列SSとして恩恵を受けてい
る点でもある。
(5)元売ブランド維持コストと系列SS負担額
第4回WG(11/16)においてご講演をいただいた上原征彦 明治大学大学院教授
は、①元売ブランドでは差別性の訴求はほとんど不可能になっておりブランド使用料を
支払う根拠は希薄になっている。また、②プロモーションコスト(広告・販売促進コスト)
のうち、広告とパブリシティー(マスメディアに働きかける広報活動)は元売が自分の製品
をPRするために行うものなのでSSが費用負担する根拠は薄い。③店頭で効果のある
人的支援や販売促進活動については双方に利益をもたらすので応分の負担をする必
要があると説明している。
上原教授の説から整理されるのは、元売がいうブランド料(元売ブランド維持コスト)
は、①プロモーションコスト(広告・販売促進コスト)と、②ネットワーク維持コストである。
そこで、この業界における①プロモーションコスト(広告・販売促進コスト)と、②ネット
ワーク維持コストについて検証すると、次の通りとなる。
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①プロモーションコスト(広告・販売促進コスト)とは、広告宣伝・サインポール・デザイン
塗装等で、広告宣伝は元売が自社PRのために行うものであり系列SSに負担義
務があるわけではない。だが、サインポール・デザイン塗装・制服等の店頭販売コスト
については、SSにもメリットがあるので応分の負担をすべきと考えられる。このうちサイ
ンポール・デザイン塗装等に関しては、掴みではあるが平均 0.3~0.5 円/L程度とな
る。制服については、SS負担のケースが多いとされる。
②ネットワーク維持コストについては、カードシステム・POSシステム等のサービスツール
があるが、利用の都度に費用を支払っているものが多い。元売がシステムを開発す
るのは自分の製品を買ってもらうために行うもので、むしろ協力しているわれわれが利
益供与を受ける筋合いのものであるとの意見もあった。その一方で、冠婚葬祭から
与信支援まで面倒を見る大家族主義の元売系列では目に見えないメリットとしてあ
る程度のブランド料は受け入れられるとする意見、元売として支払いサイト等で十分
面倒をみているのだから一定の経費をブランド料としてもらいたいのかもしれない、とす
る意見もあった。
以上のことから、元売がブランド料と称していたブランド維持コストのうち系列SS
が負担する費用については、①一部のプロモーションコスト(広告・販売促進コスト)のう
ちサインポール・デザイン塗装等SS利益につながる部分、及び②その他、元売ごとに
系列SSが利益享受する部分、と考えられる。
(6)安定供給コストと系列SS負担額
ガソリン市場では1~2 円の価格差で熾烈な競争が展開されており、SS運営力に
自信を持つ経営者でさえ、自社SSに隣接してPBSSがあった場合どの位の卸価格
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差なら容認できるか考えると、感覚的で根拠はないが2円が許容範囲、しかもそれは
元売のブランド力ではなく自社の経営力によるものとの意見があった。
そのようなマーケットにおいて、「元売にブランド料が高いと指摘したら、マークをはずせ
ばブランド料を低減して供給するといわれた」との発言が伝わってきたが、この考え方は
PBに供給保証する意味でありブランド料問題の核心ではないか。米国におけるブラン
デッドとアンブランデットの販売方法と基本的に同じ売り方であり注目に値するとの指摘
もあった。
このことについて上原教授は、一般論として安定供給コストについては商品供給の
基本なので系列SSが負担する義務はないと言及しているが、石油業界における安定
供給コストは、特約契約や業転コストとの対比から、石油については別建てで支払うこ
とも必要と考えられ、当初のブランド料の構成要素として安定供給コスト 0.5 円/Lの
提示が行われていたことにも留意した。
また、元売に文句を言いながら系列を離脱できないのは、安定供給に対する不安
ではないのか、系列にいれば配送のわずらわしさもなく、製品が切れるという心配もない
という意見や、商社系のPBSSでも安定供給にはスポット価格に安定供給費 1 円が
加算されるとの指摘もあった。基本的に業転価格には安定供給コストが含まれていな
い取引であるから、安定供給コストについては別建てで負担することも必要との考え方
で一致した。
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Ⅳ. まとめ
1.今までのWGにおける議論をまとめると、①元売ブランド価値そのものに対するブラン
ド料を系列SSが負担する必要は感じられない、②元売ブランド維持コストの一部
であるサインポール・デザイン塗装・制服等の店頭販売コストについては、応分の負
担(0.5 円/L程度)をすべきである、③安定供給やサイトの設定等目に見えない経
営メリットについてのSS相当分(0.5 円/L程度)の負担は理解できる、ということに
なり、元売のいうブランド料(販売関連コスト)は1円/L程度が相当であると考えら
れる。
2.この結果、系列玉に加算される販売関連コスト4円は小売マーケットから見ると最
初から競争が成り立たない仕切格差であり、1円以内の格差でないと対等の競争
は維持できないことになる。本来、製油所又は油槽所渡しの精製・販売コストは業
転玉も系列玉も共通の負担とすべきであり、業転玉を採算割れとした状態で系列
玉から精製・販売コストを回収するのは不公平で、系列販売維持を標榜する元売
の姿勢として問題があると指摘したい。
3.今回元売各社がブランド料(販売関連コスト)を引き上げた理由について、元売は
納得性のある説明をせず協力してほしいという言い方に終始したということがすべてを
物語っていると思われる。他業種のメーカーは自社商品のブランドを守ることに努力
するが、石油元売にはブランドを守るという文化はないに等しい。何故ならば、元売
が業転を出しておきながら同一商品にブランドを求めるのは筋が通らないからである。
われわれ系列特約店・販売店は、フェアな競争環境を構築した上で、ブランドはお
互いに守りましょうと声を大にして訴えたい。前述の元売ヒアリングにおいても、資エ庁
から元売各社に対し「ブランド料について、系列特約店から納得感が得られるような
付加価値を提供し、系列全体の競争力を高めることができるようブランド力の維持・
向上に努めること。」との要望が行われている。
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4.需給がバランスしたこの数か月間、元売は、10円以上/Lのマージンを安定的に
確保してきた。それを見れば、従来の指標価格にわれわれの主張するブランド維持
コスト1円を加算するフォミュラを採用しても必要な精製マージンを確保することがで
きるのではないか。そうであるならば需給バランスを引き続き確保し、改めて透明なフ
ォミュラ制の維持に挑戦していただきたい。業転玉も系列玉も出荷時の精製・販売
コストの仕上がりは同一であるべきである。そこでしっかりコストが回収できるようにな
ればブランド維持コストもわれわれが納得する水準になると考える。試行錯誤とはい
え何度も改定を繰り返すのは混乱を招くだけである。
5.今後、アジア諸国との国際競争が具現化することが想定されるが、適切なフォミュラ
でしっかり利益を確保するとともに、精販一体のサプライチェーンを以って国際エネル
ギー企業を目指していただきたいと思うところである。
○
<提 言>
系列玉と業転玉はどちらも品質に差がないの
で、精製・販売コストは公平に負担するもので
あり同価格であるべき
○
元売ブランド維持コスト等(業転格差)のうち、
市場競争の中で系列SSが負担できるコスト
は1円が限界である
○
これにより、系列玉と業転玉の価格差を縮め、
精販一体となってフェアな競争環境構築を実
以上
現する
14
参考1.精販Win-Win関係構築のためのフォミュラについて
公正な競争環境整備のためには精販のスルーマージン確保が重要であるとの視点
から、精販Win-Win関係構築の一環として、精販での粗利・按分方式について、
小売粗利の25%(例えば10円マージンで2.5円相当の考え方)を「ブランド料」とす
る按分方式について提案があった。売値が上がれば小売粗利が増えるのでブランド料
も上がり、逆に小売粗利が下がるとブランド料も低下する方式。陸RIMと小売価格の
差を流通マージンとすると、15~20円の小売粗利幅があれば4円の“ブランド料”も
容認できるのではないか。逆に小売粗利がとれない時は元売も1~2円で辛抱する必
要がある。元売にも同じ考え方はあると思うのでこれをフォミュラ化できないかという考え
方である。
この考え方に対しては、精販の粗利を共有するという点では評価できるが、粗利の
何%といういわゆるロイヤリティ方式を維持するには大きな条件があり、それは定価販
売であることと、すべての売り上げがPOS管理されていることであるが、石油はそれを具
備していない。ゾーンプライス制の例もあり、粗利を算出する上で必要な販売価格の
把握に相当難がある等の問題がある。一方、小売市場を考えたときに、薄利多売を
誘引する売り方を助長する仕切体系につながる恐れがあるとの指摘があり、小売市況
を基準にするのは無理があるとの結論に至った。
15
参考2.明治大学 上原教授のご意見
第4回WG(11/16)において、上原先生を招聘しご講演をいただいた上で個別具
体的な事例等について指導を受けた。教授のご了解をいただいた上で以下の通り取り
まとめ掲載する。
『ブランド使用料とプロモーション費用』
産業構造審議会流通部会長
明治大学専門大学院グローバル・ビジネス研究科
上原征彦 教授
取引にかかわる条件の設定は、契約に基づくのが原則である。今回のような問題を
どのような契約条項で処理するかが決められていれば、それによって処理することになる
が、ただ、流通論や商取引の原則論からみて矛盾点・問題点を指摘できる場合は、
契約そのものに立ち返って見直すことも必要だ。石油業界の契約については、たとえば
正統的なフランチャイズビジネス(FC)の契約と比べ、厳密な論理と時代適応性に欠
けるところがあり、これが今回の問題を生じさせている一因となっている。
“ブランド”は、消費者の長期記憶に入っているもので、これが購買時に引き出されて、
当該商品の購入に強く作用することが期待されている。この作用の強さをブランド力と
呼ぶことができる。長期記憶に入れるためには広告などが有効であるが、そこから引き
出すためには、たとえば小売店舗での商品陳列の仕方なども大きな効果をもつ。花王
など優秀なメーカーは、自社製品のブランド力を訴求するため、消費者の長期記憶に
入れるための広告などを自前で積極的に展開するほか、それを引き出すための商品陳
列にも自己負担で金をかけ、小売店を支援している。それは、自社のブランド力を高め
たいからであり、そのブランド力を自社が享受できるという考え方に基づいているといえ
る。
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ブランドには大きく2つの効果が期待されている。1つは、名前の役割をもち、個体の
認識を容易にする効果である。いわゆる固有名詞としてのブランドである。いま1つは、
そのブランドによって差別性・優位性を高める効果であり、これをブランド・プレミアムと呼
ぶ。このプレミアムが高いブランドとそうでないブランドがある。プレミアムが全くなく固有名
詞だけの効果しかもたないブランドも多い。プレミアムが高いブランドについては、これを
取り扱うと恩恵があるため、その使用料を支払う根拠がある。しかしプレミアムの低いブ
ランドにつては使用料を支払う根拠は希薄だといえる。
ブランド力が強い(ブランド・プレミアムが高い)と、販売店は製品を高く売っても需要
はそれほど落ちない。そして少しでも価格を下げると大きく売上げが伸びる。逆にブラン
ド力が弱い製品は値下げしても、それほど需要が増えないばかりか、値上げすると大き
く需要が落ちる。プロモーション費用さえその価格では吸収できなくなる。石油業界の価
格競争が激化し、PBSS と系列 SS に格差がついていくのは、石油製品が明らかにブラ
ンド力の弱い曲線(下図)に位置づけられるようになったからである。
需 要
ブランド力が強い製品
ブランド力が弱い製品
値下げ
P1
Pm
(図)
17
P2
価 格
値上げ
こうした傾向のもとではブランド使用料を払う根拠が希薄になりつつある。元売もブラ
ンド料というのではなく別な名称に変えてくると思う。また、過剰生産に陥りやすい性格
を有し、余剰製品をいわゆる業転として横流ししている業界構造では、ブランド・プレミ
アムそのものを訴求するのは困難である。このような構造では、価格競争がますます推
進され、ブランドによる差別性の訴求はほとんど不可能になってきている。
一方、ブランド使用料とプロモーション費用とは深く関連づけられる。プロモーションは
①広告②パブリシティ③人的販売④セールスプロモーションの4つに分けられる。①広
告と②パブリシティは「非購入時点の態度形成」に寄与するものだが、これは店舗外で
メーカーが自分の製品を PR するために行っているものであり、販売業者がこの費用を
負担する根拠は薄い。③人的販売④セールスプロモーションについては、購入時点に
おいて店舗で行なわれるため、元売と販売業業者の双方に利するので、両者で負担
すべきものが混在している。店舗で元売が行なうプロモーションのうち、販売業者の拡
販に有意に効果があると思われるものについては、販売業者が負担する必要がある。
このように、プロモーションは単なる拡販のためだけでなく、ブランド力の構築・維持の
ために行うものであることを考えると、元売がプロモーションをしながら業転を系列外チャ
ネルに流しているという事態は、明らかにブランド力の構築・維持のためのプロモーション
効果を減じていることになる。なお、品質保証・安定供給は、系列においては売買契
約の必要条件となるので、このための料金を徴収することは合理性に欠ける。
以上のことはメーカー主導型系列チャネルの基盤そのものが崩壊過程にあることを示
唆している。将来は、販売業者が集まってチェーンを構成して、メーカーへの拮抗力を
発揮する機会も拡大してくるかもしれない。
また、販売関連コストという名称になったならば、そのコストの根拠を示さなければな
らず、そこに固定費的なものがあるとするならば、リットル換算して仕入れ価格に加算す
るのはよくない。仕入れ価格とは別に、1SS当たりにかかわるコストを計算してこれを提
示するべきだろう。上記の販売関連コストを系列店の仕入れ価格に上乗せすると、根
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拠が明確でない限り、差別対価として判断される恐れもある。石油はコモデティ(メーカ
ーによる差がない汎用的な商品)化してきており、系列は明らかに緩む方向にある。当
面は、系列はブランドを基軸とした組織体ではなく、プロモーション共同体となっていくと
みた方が現実的だ。
以上
19
経営政策検討WG委員名簿
所属
経営部会
氏
委員長
名
会社名
系列
亀井
喜久雄
㈱亀井商事
JX
〃
平井
博武
平井石油㈱
出光
〃
狩野
良弘
赤澤屋㈱
JX
〃
岡部
憲治
関西砿油㈱
〃
尾越
優
東京石商
林
神奈川石商
山口
東石㈱
彰
真一郎
20
東和興産㈱
神奈川石油㈱
コスモ
EM・JX
出光
昭シェル
経営部会委員名簿
氏名
部会長
副部会長
中村
彰一郎
会社
㈱ナカムラ
宇佐美
三郎
㈱宇佐美鉱油
四十物
祐吉
北海シェル石油㈱
系列
JX
出光・JX
昭シェル
安井
信英
㈱太洋石油店
遠藤
靖彦
遠藤商事㈱
コスモ
渡邉
一正
渡辺商事㈱
JX
村上
芳弘
日東石油㈱
コスモ
志村
武一郎
㈱志村
出光
荒木
敬一
㈱荒木
JX
亀井
喜久雄
㈱亀井商事
JX
松田
好民
㈱ペガサス
EM
平井
博武
平井石油㈱
出光
狩野
良弘
赤澤屋㈱
JX
岡部
憲治
関西砿油㈱
コスモ
藤川
禎造
丸善商事㈱
コスモ
尾越
優
三角
清一
東石㈱
JX
EM・JX
㈱エムロード
JX
坪久田
正明
南国殖産㈱
EM
棚原
実
㈱浦西石油
出光
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