黄色ブドウ球菌の増殖をモニタリングするための 自動化ソリューション

アプリケーションノート
黄色ブドウ球菌の増殖をモニタリングするための
自動化ソリューション
インフィニット 200 PRO マルチモードリーダープラットフォームにおける常時振盪および加熱を用いた細
菌増殖試験の最適化
はじめに
原核細胞および酵母菌増殖のモニタリングは、ライフサイエン
インフィニット 200 PRO マイクロプレートリーダーシリーズと
スや食品産業にとって重要なツールである。細菌および酵母菌
Tecan 社製のその他のマイクロプレートリーダーは、細菌およ
細胞を定量化するための十分確立された方法は、濁度測定法
び酵母菌の増殖を解析する多様な試験で有効に使用されてい
である。この方法は、溶液中の細胞数が増えると溶液が濁って
る(1-7)。
くるという事実に基づく。サンプルを通過する光が微生物によっ
増殖をモニタリングするため、キュベットの代わりにマイクロプ
て散乱するため、濁度は溶液中の微生物数に比例する。この
レートを使用することの利点でもっとも重要なことは、スループ
濁度は分光計を用いて容易に測定できる。細胞には光を吸収
ットがより高いことである。その他の利点として、Tecan 社製マ
する高分子、例えば DNA(260 nm)、蛋白質(280 nm)、チトクロ
イクロプレートリーダーは最適化された振盪能および温度調節
ム(400~500 nm)および細胞の色素などが数多く含まれている。
能を備えており、これは器具の頑健性に対する強い要望に対
光散乱により細菌や酵母菌を測定する場合、吸収が最小とな
応して開発された。これによりリーダー内で手を煩わせることな
る波長を選択するのが最善である。例えば推奨される波長は
く(インキュベーターから分光計まで(その逆も)マイクロプレー
600 nm である。この波長でサンプルの光学濃度(OD)が細胞
トを移す必要がなくなる)長期の動態試験を実施することが可
数に正比例するため、細胞増殖法として使用できる。
能になり、結果的に「一晩のギャップ」なしにデータをグラフ化で
600 nm 吸光度測定によって細胞数を正確に測定するには、各
きる。
標準曲線を作成するほかない(OD の関数として生育可能なプ
レート数または細胞量をグラフ化)。
1
アプリケーションノート
Tecan 社製 Freedom EVOリキッドハンドリングシステムととも
に、このリーダーは全世界の研究者が使用する洗練された
HTS ソリューションを提供する。例えば、米国スタンフォード・
ゲノム・テクノロジー・センターの研究者は、酵母菌をゲノム解
析するためこれらの技術を組み合わせて完全自動化プラット
フォームを開発し、化学的ゲノムアッセイ用に低分子処理した
突然変異株の表現型解析に成功している(8-10)。
材料および方法
・ インフィニット M200 PRO Quad4 モノクロメーターTM ベースの
マルチモードリーダー
・ 黄色ブドウ球菌(DSMZ 18587)
・ トリプシン大豆ブロス(BactoTM TSB、Becton Dickinson 社)
・ Corningプレート 6 ウェル、48 ウェル、平底、透明(米国
Corning 社)
黄色ブドウ球菌は条件的グラム陽性嫌気性球菌である。通
常はヒトの皮膚および上気道に認められ、一般集団における
・ Greinerプレート 12 ウェル、24 ウェルおよび 96 ウェル、平
底、透明(ドイツ、Greiner Bio-One 社)
平均保菌率は 37.2%である(11)。黄色ブドウ球菌は長年にわ
たりヒトの疾患において重要な病原であると認識されており、
入院患者において定期的に感染が生じ、肺炎、心内膜炎、髄
膜炎、毒素ショック症候群および敗血症等、生命を脅かす疾
患を引き起こす(12)。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
は、ラクタム抗生物質(メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシ
リンおよびオキサシリン等のペニシリンとセファロスポリン)耐
黄色ブドウ球菌(DSMZ 18587)は、トリプシン大豆ブロス 20
mL 中 で 好 気 的 に 培 養 し た 。 MaxQTM4000 振 盪 培 養 器
(Thermo Fisher Scientific 社)で 37C/120 rpm にて一晩培養
後、吸光度 600 nm にて液体懸濁液をインフィニット M200
PRO マイクロプレートリーダーで吸光度 0.05 になるまで希釈し
た。
性が生じている世界中で非常に恐れられている菌株である
(13)。例えば、米国では 2004 年の全臨床分離株の 56.8%が
MRSA 陽性であり(14)、治療選択肢が限定されているため、
米国では院内感染により毎年推定 80,000 例の患者が死亡し
プレートフォーマットおよび充填量の影響を解析するため、以
下の表に従ってプレートを充填した。
プレート
ている(15)。欧州では、German Robert-Koch Institut により、
ドイツにおけるこれらの感染の年間コストは推定 15 億~30 億
ユーロとなっている(16)。結果として、黄色ブドウ球菌に関す
る世界規模の研究がきわめて重要になり、抗菌光線力学療
最高ワーキ サンプル量(最 S.aureus 培 TSB 量
ングボリュー 高ワーキングボ 養液量(μL) (μL)
ム(μL) リュームに占め
る割合[%])
COS6ft
5000
GRE12ft
3000
GRE24ft
1200
COS48ft
800
GRE96ft
200
法等、きわめて有望な新しい治療選択肢が大きな科学的関
心の対象となっている(17)。
このアプリケーションノートでは、Tecan 社製インフィニット 200
PRO マイクロプレートリーダーを用いて 600 nm 吸光度測定を
行う、黄色ブドウ球菌増殖の検出方法について述べる。アッ
セイ用パラメータおよび器具の設定がデータの質に及ぼす影
響について検討する。
25%
50%
75%
25%
50%
75%
100%
25%
50%
75%
100%
25%
50%
75%
100%
25%
50%
75%
100%
1250
1250
1250
750
750
750
750
300
300
300
300
200
200
200
200
50
50
50
50
0
1250
2500
0
750
1500
2250
0
300
600
900
0
200
400
600
0
50
100
150
表 1 マイクロプレートのサンプル充填手順
2
アプリケーションノート
菌体液と培地の分注後、プレートを Parafilmで覆って密封し、
COS 6 ウェル、2500 μL、振幅 6 mm
インフィニット 200 PRO マイクロプレートリーダーへ移した後、
スクリプトを用いて黄色ブドウ球菌の増殖曲線を作成した。マ
イクロプレートを振盪した影響について解析するため、振幅の
種類(表 2)とサンプル量を表 1 に記載した。
細菌増殖プロトコル
Plate
表 1 参照
Temperature
37 °C
Wait for Temperature
36.5 - 37.5 °C
Kinetic cycle
(duration)
14 時間
Kinetic interval
30 分
Shaking (10 sec)
回転;振幅の種類:1, 3, 6 mm
Absorbance
600 nm, 25 フラッシュ,
暫定時間 100 ms
Incubation
Shaking (800 sec): 回転、
振幅の種類:1, 3, 6 mm
図 1 Costar 社製 6 ウェルプレートにおける黄色ブドウ球菌の
増殖(2.5 mL および振盪幅 6 mm)
GRE 12 ウェル、1500μL、振幅 6 mm
Shaking (800 sec): 回転、
振幅の種類:1, 3, 6 mm
残り待ち時間(タイマー)
表 2 黄 色 ブド ウ 球 菌 の 増 殖 を モ ニ タ リ ング す る た め の
i-controlTM ベースのプロトコル
結果および考察
1 つのプレートフォーマットに対し考えられるすべての組み合
わせについて解析したところ、ワーキングボリューム 50%充填
図 2 Greiner 社製 12 ウェルプレートにおける黄色ブドウ球菌
の増殖(1.5 mL および振盪幅 6 mm)
GRE 24 ウェル、600μL、振幅 3 mm
量における増殖曲線が最適であった。
注:プレートのワーキングボリュームは、i-control ソフトウェア
(Plate stripe→Details→Well Geometrie)で確認できる。さらに、
最善の結果を得るには、6 ウェルおよび 12 ウェルのプレート
には振盪幅 6 mm が推奨され、24 ウェル、48 ウェルおよび 96
ウェルには 3 mm の振盪幅 3 mm が必要となる(図 1~5)。
図 3 Greiner 社製 24 ウェルプレートにおける黄色ブドウ球菌
の増殖(600 μL および振盪幅 3 mm)
3
アプリケーションノート
COS 48 ウェル、400 μL、振幅 3 mm
図 6 は、96 ウェルプレートフォーマットにおける振盪幅の影響
を示す。振盪幅 6 mm を使用すると「二相性」の増殖曲線が生
成され、約 12 時間後にプラトーに達する。最適化された振幅
3 mm については、「二相性」の形状は認められず、細胞数は
培養時間 7 時間以内に最高値に達する。
アッセイパラメータの影響(プレートフォーマット、充填量、器
具の設定、振盪幅等)は、原核細胞増殖試験にとって重要な
要因である。Tecan 社は、これらのパラメータを最適化してか
図 4 Greiner 社製 48 ウェルプレートにおける黄色ブドウ球菌
の増殖(400 μL および振盪幅 3 mm)
GRE 96 ウェル、100 μL、振幅 3 mm
ら実験データの生成を始めることを推奨している。
結論
細菌細胞および酵母菌増殖のモニタリングは、ライフサイエン
スや食品産業にとって重要な研究ツールである。Tecan 社製
品、特にマイクロプレートリーダーはこの研究分野では定評
があり、顧客の要求をサポートするため革新的な機能を備え
ている。
このアプリケーションノートにより、黄色ブドウ球菌の増殖曲
線を生成する際インフィニット M200 PRO の優れたパフォーマ
ンスが示されており、6 ウェル~96 ウェルプレートの全プレー
トフォーマットで実証されている。しかし、この試験用に生成さ
図 5 Greiner 社製 96 ウェルプレートにおける黄色ブドウ球菌
れたデータによると、データの質は厳密には充填量および振
の増殖(100 μL および振盪幅 3 mm)
等幅によって異なることから、予備的最適化実験の重要性が
明確に示された。
GRE 96 ウェル、振幅 3 mm 対 6 mm
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レートを使用することを推奨している。このプレートフォーマッ
Neisseria meningitis pfs and luxS Mutants Are Not to
トは最適化されたパフォーマンスと最高のスループットを兼ね
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Dr. Kristjan Plaetzer(Univ.-Doz)および Sandra Winter(BSc:
Infection Control Consortium (INICC) report, data
ザルツブルク大学材料科学・物理学部物理・生体物理科)に
summary for 2003-2008, issued June 2009. Am. J. Inf.
は細菌株の提供および実験にご協力いただき感謝申し上げ
Cont. 38:95-104.
ます。
397049J V.1.0, 03-2012
Austria +43 62 46 89 33 Belgium +32 15 42 13 19 China +86 21 2898 6333 Denmark +45 70 23 44 50 France +33 4 72 76 04 80 Germany +49 79 51 94 170
Italy +39 02 92 44 790 Japan +81 44 556 73 11 Netherlands +31 18 34 48 174 Singapore +65 644 41 886 Spain +34 93 490 01 74 Sweden +46 31 75 44 000
Switzerland +41 44 922 89 22 UK +44 118 9300 300 USA +1 919 361 5200 Other countries +41 44 922 8125
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