DOWNLOAD - 宮崎大学医学部・大学院看護学研究科

不安症研究,6(2), 100–112, 2015
〈総 説〉
日本の看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向:
系統的文献レビュー
1
2
3
4
5
吉永尚紀 野崎章子 宇野澤輝美枝 浦尾悠子 林 佑太 清水栄司
3
1
2
宮崎大学テニュアトラック推進機構
千葉大学大学院看護学研究科精神看護学教育研究分野
3
千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学
4
5
千葉県立保健医療大学看護学科
千葉大学医学部附属病院精神神経科病棟
要約
日本国内の看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向を概括することを目的に,事例および
効果研究の系統的文献レビューを行った。その結果,認知行動療法は精神疾患を中心にさまざまな看
護領域で活用され,また,その多くは入院環境下で実施されていることが明らかになった。効果研究
では,看護職による認知行動療法が効果的とする報告が多かったが,その対象や研究デザインは多岐
にわたっていた。また,事例研究と効果研究のいずれも,認知行動療法実施中のスーパービジョンな
ど,質の担保方法に関する報告が少なかった。これらの知見から,継続的なスーパービジョンを含む
教育・研修システムの整備,看護職養成課程での認知行動療法に関する基礎教育の実施,そして看護
職による認知行動療法の効果を検証するランダム化比較試験の実施が,今後取り組むべき課題と示唆
された。
キーワード:看護,認知行動療法,日本,系統的文献レビュー
制度は臨床現場の実情を反映していないことが
【背景】
うかがえる。このような実態を踏まえ,CBT
本 邦 に お い て 認 知 行 動 療 法 ( Cognitive
の実施に対して診療報酬が支払われる職種を,
Behavioral Therapy; CBT)は, 2010 年 度 の 診
心理職や看護職などのコ・メディカルスタッフ
療報酬改定により,熟練した医師がうつ病患者
に拡大することが提案されている(堀越・大
に実施した場合に診療報酬が算定されるように
江,2014)。
なった。しかしながら,本邦ではこの治療法を
CBT などの長時間にわたる心理面接は,国
十分に提供できていないという課題がある(藤
内外を問わず心理職が担うことが多いが,本邦
澤ら,2006)。その理由として,①習熟した専
ではその資格が医療制度に準じた国家資格とは
門医が行う治療としては保険点数が低く,治療
なっていない。そのため,近年すでに国家資格
者に対する経済的な支援が不十分であること,
化している看護職に,診療報酬制度上の CBT
②診療報酬上の実施者が医師に限定されてお
の新たな担い手になることが期待されている。
り,治療者の数が不足していること,などが指
厚生労働省科学研究班が 2013 年度から,看護
摘されている(大野,2011)。一方,実際の臨
職向けの教育・研修システムの開発に着手して
床場面では医師以外の職種が CBT を提供して
いることからも(堀越・大江,2014),看護職
いる場合が多く(佐藤・丹野,2012),現行の
への期待の大きさがうかがえる。しかしなが
— 100 —
吉永ほか:看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向
ら,本邦においてコ・メディカルによる CBT
合,ファシリテータとしての介入も含む),②
の実態を示した研究は,心理職に焦点を当てた
介入研究であるものとし,除外基準は,①総説
文献レビューのみであり(佐藤・丹野,2011),
または解説,② CBT の理論を用いて介入の後
看護職についての実態は明らかになっていな
方視的考察のみを行った研究,③ CBT の内容
い。
や質の担保方法の詳細な記述を含まない 2 ペー
そこで本研究では,系統的文献レビューを通
ジ以下の報告とした。
して,看護領域における CBT の実践・研究に
ついて,国内の現状を概括することを目的とし
2.分析方法
た。具体的には,① CBT が用いられる対象と
本研究では,介入研究のうち統計学的手法を
領域,②看護職が実施する CBT の実践・研究
用いた量的な分析を含むものを「効果研究」,
の内容とその効果,③ CBT の質の担保方法に
その他を「事例研究」として分類した。さらに,
ついて明らかにする。なお,本レビューにより
Cooper ら(2009)の統合的レビューの方法論
得られた知見は,看護職が行う CBT に関する
を参考にコーディングシートを作成し,入手し
効果研究の実施,教育・研修システムの整備,
た文献を整理・分析した。
および国内における CBT の迅速かつ適切な普
【結果】
及に向けた基礎資料とする。
1.看護領域における CBT の実践・研究の動向
【用語の定義】
合計 72 文献が分析対象となり,そのうち事
認知行動療法:行動療法・認知療法・認知行
例 研 究 は 54 件,効 果 研 究 は 18 件 で あ っ た
(Figure 1)。事例研究と効果研究に分けて,そ
動療法の総称とする。
看護職:保健師・助産師・看護師の総称とす
る。
の概要を以下に記述する。
1–1.事例研究について
事例研究 54 件の概要を Table 1 に示す。CBT
【方法】
の対象は精神疾患を有する者が大部分を占めて
おり(85.2%),その内訳は統合失調症が最多
1.文献検索と選定方法
電子データベースの検索とハンドサーチを実
で(31.5%),次いで,うつ病(13.0%)であっ
施し,国内の看護領域で実施された CBT の事
た。身体疾患を有する者を対象とした CBT は
例研究と効果研究を抽出した。和文献の検索に
相対的に少数で(14.8%),不妊治療を受ける
は「医中誌 Web」および「CiNii」を用い,検
索条件は表題か抄録に「看護」かつ「行動療法」
「認知療法」「認知行動療法」のいずれかを含む
雑 誌 論 文 と し た。英 文 献 の 検 索 に は
“MEDLINE”,“CINAHL”,“PsycINFO” を用い,
検索条件は表題か本文に “nurs*” を含み,か
つ “behavio* therapy OR cognitive therapy OR
cognitive behavio* therapy” と “Japan*” を 含
む雑誌論文とした(「*」は前方一致検索を示
す)。さらに,以下の包含・除外基準に従い,
文献の絞り込みを行った。包含基準は,①看護
職が CBT を実施しているもの(集団療法の場
— 101 —
Figure 1 文献の選定プロセス
不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
Table 1 事例研究(54 件)の概要
対象 *
n(%)
精神疾患
統合失調症圏
うつ病圏
発達障害圏
強迫性障害
摂食障害
社交不安障害
その他の精神疾患
(合計)
身体疾患(合計)
17
7
5
4
3
2
8
46
8
技法 **
(31.5)
(13.0)
(9.3)
(7.4)
(5.6)
(3.7)
(14.8)
(85.2)
認知再構成法
行動実験
曝露療法または曝露反応妨害法
問題解決法
行動活性化法
社会技能訓練(SST)
トークンエコノミー法
n(%)
11
5
5
4
3
3
3
(20.4)
(9.3)
(9.3)
(7.4)
(5.6)
(5.6)
(5.6)
(14.8)
セッティング別にみた構造の記載と形式
外来
入院
訪問看護
合計
n(%)
構造 ***
形式
十分な記載あり
一部の記載あり
記載なし
個人
集団
記載なし
2(3.7)
3(5.6)
3(5.6)
7(13.0)
1(1.9)
0(0.0)
7(13.0)
8(14.8)
28(51.9)
12(22.2)
3(5.6)
28(51.9)
0(0.0)
2(3.7)
1(1.9)
3(5.6)
0(0.0)
0(0.0)
9(16.7)
13(24.1)
32(59.3)
22(40.7)
4(7.4)
28(51.9)
注:* 主診断のみを用いてカウント,** 2 件以上のものを記載,***「頻度」「時間」「セッション数」の全項目
の記載があるものを「十分」,1∼2 項目の記載があるものを「一部」として分類
患者の不安と抑うつ症状の予防・軽減や,血液
健常者を対象にした研究が 3 件あった。
透析を受ける患者の塩分摂取や体重コントロー
対象別にみた CBT のセッティングと実施形
ル,運動習慣の動機づけなどを目的に実施され
式の特徴として,身体疾患を有する者を対象に
ていた。技法としては,認知再構成法を中心に
した研究(7 件)では,外来環境下で個人療法
(11 件),さまざまな認知的・行動的技法が用
として実施されたものが多かった(6 件)。一
いられていた。CBT のセッティングは,入院
方,精神疾患を有する者を対象にした研究(8
環境で実施されたものが多く(79.6%),次い
件)では,入院,外来ほぼ同数であったが,形
で外来環境(14.8%)であった。特に,入院環
式としては集団療法が多かった(6 件)。
境下の研究では,その半数以上で治療構造と実
2.看護職による CBT の効果
施形式に関する記載がなかった。
1–2.効果研究について
デ ザ イ ン は,単 群・前 後 比 較 が 最 多 で あ り
効果研究 18 件のうち,看護職のみによって
CBT が実施された 13 件の概要を Table 3 に示
す。精神疾患を有する者を対象にした CBT は 3
(61.1%),次いでランダム化割付・群間比較で
件であった。単群・前後比較デザインを用いた
あった(22.2%)。対象は,事例研究と同様に
2 件では,それぞれ女性うつ病患者と地域で生
精神疾患を有する者が多かったが(44.4%),
活する精神障がい者を対象に,集団療法として
そのうち最多な疾患はうつ病であった
実施されていた。ランダム化割付・群間比較デ
(27.8%)。また効果研究では,疾患を有しない
ザインを用いた 1 件は,統合失調症の入院患者
効果研究 18 件の概要を Table 2 に示す。研究
— 102 —
吉永ほか:看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向
Table 2 効果研究(18 件)の概要
研究デザイン
n(%)
ランダム化割付・群間比較
非ランダム化割付・群間比較
単群前後比較
対象
精神疾患 うつ病圏
その他
(合計)
身体疾患 (合計)
健常者(合計)
4 (22.2)
3 (16.7)
11 (61.1)
形式と実施者
n(%)
看護職のみ
医師・看護職
医師・看護職・心理職・
精神保健福祉士
(合計)
集団療法 看護職のみ *
医師・看護職
看護職・心理職
(合計)
6 (33.3)
1 (5.6)
1 (5.6)
個人療法
(27.8)
(16.7)
(44.4)
(38.9)
5
3
8
7
3 (16.7)
その他
看護職のみ
8
6
1
2
9
1
(44.4)
(33.3)
(5.6)
(11.1)
(50)
(5.6)
対象別にみたセッティングと形式
セッティング
形式
外来
入院
その他
個人
集団
その他
精神疾患
身体疾患
健常者
合計
n(%)
3(5.6)
4(7.4)
1(1.9)
2(3.7)
6(11.1)
0(0.0)
6(11.1)
1(1.9)
0(0.0)
6(11.1)
0(0.0)
1(1.9)
—
—
3(5.6)
0(0.0)
3(5.6)
0(0.0)
9(50.0)
5(27.8)
4(22.2)
8(44.4)
9(50.0)
1(5.6)
注:* 1 件は臨床心理士資格を有する看護師が実施
を対象に集団療法として実施されたものであっ
較して,CBT が効果的であったと報告されて
た。すべての研究において,看護職による集団
いた。
療法としての CBT が効果的だったと報告され
ていた。
3.介入の質に関する記載
身体疾患を有する者を対象にした効果研究は
介入の質に関する記載内容を,「介入前」と
7 件であった。単群・前後比較を用いた 3 件で 「介入開始後」に分類した(Table 4)。事例研
は,個人療法やセルフヘルプによる CBT が,
究 54 件では,「介入前」と「介入開始後」とも
患者の気分や QOL,そのほか,塩分摂取量や
に介入の質に関する記載は少なく,特に「介入
体重コントロールなどの保健行動を改善させる
開始後」に関しては 4 件(7.4%)のみであった。
効果研究 18 件では,「介入前」に関する記載が
結果が示された。一方,群間比較デザインを用
11 件(61.1%)で,「介入開始後」に関しては
いた 4 件では,比較対照群に対して,CBT の優
5 件(27.8%)であった。
越性を示したものが 2 件と,介入の効果が同程
度であったものが 2 件であった。
「介入前」に関する記載内容には,「専門家に
健常者を対象にした研究は 3 件で,そのすべ
よるクローズドな短期間のトレーニング受講」
てが看護師を対象として,集団療法の形式で実
が 8 件と最多で,次いで「専門家により作成・
施されていた。デザインは,単群・前後比較が
検討された治療マニュアルやプログラムの準
2 件とランダム化割付・群間比較が 1 件であっ
備」の 7 件があった。「介入開始後」に関する
た。その結果,介入の前後,または対照群と比
記載内容には,「集団スーパービジョンの実施」
— 103 —
不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
Table 3 看護職のみによって認知行動療法が実施された効果研究(13 件)の概要
対象
著者(発表年) 認知行動療法の目的
精神疾患 岡田(2013)
研究方法
女性うつ病患者の抑 対象者:単極性うつ病を有する女 抑うつ症状(BDI-II)は,介入前後で改
うつ症状と重要他
者との関係の改善
性患者
実施者:精神科看護師 1∼2 名
方法:単群前後比較(78 名)
「女性のための集団認知行動療法
國方(2013)
主な結果
善(p<.05)
。非機能的認知(DAS24)
は,介入前と介入終了後 6 カ月の時点
間で改善(p<.05)
。インタビューデー
タからは,日常生活や重要他者との関
プ ログ ラム」を,週 1 回 90 分,
係に関して,認知・行動上の肯定的な
計 8 回実施。
変化が読み取れた。
地域で生活する精神 対象者:地域で生活する精神障が 自尊心(RSES)と気分(POMS)につ
障がい者の自尊心
の向上
い者
いては,介入前後で有意な変化なし。
実 施 者:看 護 師 1 名 と フ ァ シ リ
テータ 1 名(看護師)
方法:単群前後比較(6 名)
精 神 的 な コ ン ト ロ ー ル 感(WHOSUBI 下位尺度)と精神症状(BPRS)
が,介入前後で改善(p<.05)。
「自尊心回復グループ認知行動看
護療法プログラム」を集団療法
で,隔週 1 回 2 時間,計 12 回実
施。
熊谷ら(2003) 統合失調症圏の入院 対象者:統合失調症圏の入院患者 対照群と比較して,介入群では疾患自己
患者の疾患自己管 実施者:看護師
管理の知識が向上し,言語・社会的活
理の知識と行動獲 方法:ランダム化割付・群間比較
動(REHAB 下位項目)が改善(p<.05)
。
得;精神病症状と 介入群(16 名)―対象者は,集団
QOL(WHOQOL-26)は両群間で有
日常生活行動の改
作業活動の参加に加えて,「地
意差なし。
善と悪化予防
域生活への再参加プログラム」
を集団療法で,一回 2 時間,週
2 回の計 16 回受ける。
対照群(15 名)―対象者は集団作
業活動にのみ参加。
身体疾患 Komatsu et al. 外来化学療法を受け 対象者:外来化学療法を受ける乳 うつと不安症状(STAI, CES-D)は,介
(2012)
る乳がん患者の不
がん患者
安・抑うつ症状の 実施者:看護師 13 名
発生予防
入群・対照群ともに,介入前後で改
善したが(p<.05),群間差はなし。
方法:非ランダム化割付・群間比
較
介 入 群(46 名)― 対 象 者 は,「ガ
イド付きセルフヘルプキット」
を 12 週 間 実 行 し,さ ら に 1 回
70 分の「ガイド付きサポート
グループ」に 2 回以上参加。
対照群(36 名)
―化学療法の教育資
料のみを用いた通常ケアを実施。
金子(2009)
炎症性腸疾患を抱え 対象者:炎症性腸疾患を抱えて社 介入前後で気分(POMS)や QOL(SFて社会生活を営む
会生活を営む患者
患者のストレスマ 実施者:リエゾン精神看護専門看
ネジメント
護師
方法:単群前後比較(4 名)
認知行動療法を,個人療法で 1 回
平均 112 分,2∼3 カ月の期間内
に計 6 回実施。
— 104 —
36)が改善(p<.05)。
吉永ほか:看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向
Table 3 続き
対象
著者(発表年) 認知行動療法の目的
研究方法
身体疾患 廣瀬ら(2009) 妊 婦 の 体 重 コ ン ト 対象者:妊娠 5 カ月以降の妊婦
ロールと自己効力 実施者:助産師
感の向上
方法:ランダム化割付・群間比較
主な結果
対照群と比較して,介入群では分娩時に
目標体重を達成した割合が高かった
(p=.012)
。また,対 照 群と比 較して,
介入群(17 名)―対象者は,妊娠
介入群では介入開始 4 カ月目と 5 カ月目
5 カ月健診時から「セルフモニ
の時点で,体重コントロールの自己効力
タリング法」を開始し,その後
感が向上した(p<.05)
。
出産までの妊婦健診時に,個人
療法の形式で振り返りを実施。
対照群(21 名)―体重コントロー
ルに関するテキストを用いた従
来の指導。
Nozaki et al.
(2005)
血液透析を受ける患 対象者:血液透析を受ける外来患 一日体重増加率は,ベースライン期間と
者の塩分摂取量と
体重増加量の減少
者
比較して,介入期間での両群ともに減
実施者:看護師 2 名(介入群)と
看護師 3 名(対照群)
少(p<.05)
。この効果は,介入終了 8
週間後まで持続し,介入群では 12 週後
方法:非ランダム化割付・群間比較
まで持続。1 日塩分摂取量は,ベースラ
介入群(11 名)―患者は「セルフ
イン期間と比較して,両群ともに介入
マネジメントプログラム」を 6
期間で改善し(p<.05)
,介入終了 12 週
週間実施。
後まで持続。
対照群(11 名)―パンフレットを
用いた標準的な患者教育を実
施。
神崎ら(2002) 胃切除を受ける早期 対象者:胃切除を受ける早期胃が 対 照 群 と 比 較 し て,介 入 群 に お い て,
胃がん患者のセル
ん患者
フエフィカシーの 実施者:看護師 1 名
強化と心理的スト 方法:非ランダム化割付・群間比
レスの軽減
較
退院時点・退院後 1 カ月時点で気分
(DAMS)や 心 理 的 ス ト レ ス 反 応
(SRS-18)が 改 善(p<.05)。自 己 効
力感(GSES)に対する介入効果は,
介入群(9 名)―認知行動療法を,
両群ともに認められなかった。
個人療法で,週 1 回の頻度で入
院期間中(平均 27.8 日)に実施。
対照群(11 名):介入なし(平均
入院日数 27.8 日)。
Sagawa et al.
(2001)
血液透析を受ける患 対象者:血液透析を受ける外来患 一日体重増加率は,ベースライン期間
者の体重増加量の
減少。
者
と比較して,介入期間・フォローアッ
実施者:看護師 1 名とアシスタン
プ期間で改善(p<.05)。
ト2名
方法:単群前後比較(10 名)
対象者は「セルフマネジメントプ
ログラム」を 6 週間実施。
張替(1998)
インスリン非依存型 対象者:インスリン非依存型糖尿 介 入 前 後 で,体 重・肥 満 度・BMI・皮
糖尿病を有する肥
病を有する外来肥満患者
満患者の生活習慣 実施者:看護師
行動の改善および 方法:単群前後比較(30 名)
体重減少
「Learn Program を も と に し た 行
動療法プログラム」を個人療法
で,月 1 回,計 6 回実施。
— 105 —
下脂肪厚・生活習慣行動(生活習慣
行動得点)が改善(p<.05)。
不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
Table 3 続き
対象
健常者
著者(発表年) 認知行動療法の目的
研究方法
主な結果
香月ら(2013) 精神科看護師の精神 対象者:精神科勤務の看護師・准 精神的健康度(K6)は両群で有意差な
的 健 康 度 と 気 分,
看護師
し。対照群と比較して,介入群で気
および患者ケアの 実施者:看護師 1 名とアシスタン
態度の改善
分・緊張や不安・抑うつや落ち込み
(POMS および POMS 下位項目)が介
ト 1∼2 名
方法:ランダム化割付・群間比較
介 入 群(14 名)―「ス ト レ ス マ ネ
ジメント・エンパワメントプロ
入後に改善し(p<.05),また,怒り
や 敵 意(POMS 下 位 項 目)は,介 入
後 1 カ月に改善(p<.05)。
グラム」を,集団療法で,隔週
1 回 2 時間,計 4 回実施
対照群(16 名)―待機
畑山ら(2011) 一般病棟で働く看護 対象者:一般病棟勤務の看護師
師のストレス軽減
実施者:臨床心理士資格を有する
心理的ストレス反応(SRS-18)の無気
力(下位項目)が,介入前後で改善
(p<.05)。その他の SRS-18 下位項目
看護師 1 名
方法:単群前後比較(6 名)
は有意差なし。
「集団認知行動療法」を,週 1 回
60 分,計 6 回実施。
香月ら(2010) 精神科看護師の精神 対象者:精神科勤務の看護師・准 介入前と比較して,精神的健康度(K6)
的 健 康 度 と 気 分,
看護師
と敵意(NAS 下位項目)が,介入後
および患者ケアの 実施者:看護師 1 名とアシスタン
態度の改善
ト1名
と 介 入 1 カ 月 後 の 時 点 で 改 善(p
<.05)。
方法:単群前後比較(15 名)
「精神科看護師のストレスマネジ
メント・エンパワメントプログ
ラム」を,集団療法で,隔週 1
回 2 時間,計 3 回実施。
Table 4 事例研究(54 件)と効果研究(18 件)の介入の質に関する記載
介入前 *
介入開始後 **
n(%)
事例研究
記載あり
記載なし
13(24.1)
41(75.9)
4(7.4)
50(92.6)
効果研究
記載あり
記載なし
11(61.1)
7(38.9)
5(27.8)
13(72.2)
注:* 介入実施者の臨床経験や認知行動療法の経験年数,認知行動療法に関
する資格やトレーニングの経験等の報告,** 介入開始後の個人・集団スー
パービジョンや,尺度を用いた質評価等の報告
が 7 件,「専門家による個人スーパービジョン
評価」しており(Komatsu et al., 2012),もう 1
の実施」が 5 件であった(Table 5)。また,客
件は「介入開始後」に「セッションの録画記録
観的指標を用いて質の評価を行った報告が 2 件
を元に,介入の質を『認知療法評定尺度改訂版』
あり,そのうち 1 件は「介入前」に「介入に関
に よ り 評 価」し て い た(Yoshinaga et al.,
する知識・理解度をコンピュータテストにより
2013)。
— 106 —
吉永ほか:看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向
Table 5 介入の質に関する記載の内容
介入前
介入開始後
記載内容
n*
専門家によるクローズドな短期間のトレーニング受講
専門家により作成・検討された治療マニュアルやプログラムの準備
認知行動療法の実践経験
専門領域での臨床実践経験
専門家を含まない自主的勉強会の開催
専門家による学会等のオープンな短期間のトレーニング受講
専門家による長期間のトレーニング受講
認知行動療法に関わる資格取得 **
8
7
4
3
3
2
2
2
集団スーパービジョンの実施 ***
専門家による個人スーパービジョンの実施
7
5
注:*2 件以上のものを記載,** 認定行動療法士のみ,*** ピアスーパービジョンやミーティング,カンファレ
ンスを含む
れについて,厚生労働省は 2004 年に「入院医
【考察】
療中心から地域生活中心へ」という改革ビジョ
1.CBT の対象と実施のセッティングについて
本邦の看護領域において,CBT は主に統合
失調症やうつ病などの精神疾患を有する者を対
ンを打ち出し,それ以降,入院患者数の漸減と
在院日数の短縮化が進められてきた。また,
2014 年度からは,精神科領域に限らず,外来
象に実施されており,その他にも身体疾患を有
での看護活動が保険点数化されたため,今後は
する者などさまざまな領域で活用されていた。
CBT のセッティングも,外来や地域に移行し
欧米諸国でも,CBT は多様な看護領域で活用
ていくことが推測される。
されているが,不安障害に対して積極的に用い
られている点で本邦とは異なる(Currana &
Brooker, 2007 など)。それら欧米諸国には,特
に不安障害において CBT が薬物療法をしのぐ
2.入院環境で実施されるCBTの構造化について
治療効果を有するというエビデンスに基づき,
「CBT を構造化したが,記載が少なかった場合」
国家として重点的に取り組んできたという背景
も想定されるが,本研究では「CBT を構造化
が あ る(Roshanaei-Moghaddam et al., 2011 な
しなかったため,記載も少なかった」と仮定し
ど)。本邦では,不安障害の罹患費用はうつ病
て,以下に考察を述べる。入院環境における看
入院環境下で実施された CBT では,治療構
造に関する記載が少なかった。この理由には
を上回っているため(佐渡,2011),今後は欧
護職の特性には,① 24 時間に及ぶ患者との接
米諸国と同様に不安障害への積極的活用が望ま
触の機会に恵まれていることと,②さまざまな
れる。CBT のセッティングは,入院環境下で
日常生活場面に関わっていることが挙げられて
実施されたものが多かった。一方,英語圏では
いる(岡田,2013)。しかし,入院環境で CBT
入院環境下で実施された研究が少ないことから
を実施する際は,この特性を活かすことに利点
(岡田,2002 など),本邦の実態とは異なって
と欠点がある。利点としては,患者の言動を多
いる。この理由として,本邦では,特に精神科
面的に観察・分析することが可能で,介入の際
病床患者の在院日数が諸外国と比較して長期に
には,一貫した強化子を与える機会とともに,
及ぶため(WHO, 2011),入院環境下が看護実
般化を促す機会にも恵まれることが挙げられる
践の中心になっている可能性が考えられる。こ
(山内ら,1996 など)。欧米諸国では,精神科
— 107 —
不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
入院患者に対する CBT を看護職が実施してお
否定できないこと,が挙げられる。国外で実施
り,その役割の独自性と重要性がうかがえる
されたランダム化比較試験を対象にした系統的
(Drummond et al., 2007 な ど)。欠 点 と し て,
レビューによると,看護職による CBT が統合
外来と異なり入院環境では,患者は医療者と
失調症や不安障害などさまざまな精神疾患に対
24 時間にわたって接触することが可能である
して有効であることが,数多くの研究で示され
ため両者が接触する時間や場面を限定すること
ている(Currana & Brooker, 2007)。そのため,
が難しく,CBT の構造化が困難になることが
本邦でもさらなる効果研究,特にエビデンスレ
ある(山内ら,1996)。このような特性が,入
ベルが高いランダム化比較試験による検証が必
院環境下で実施された CBT の多くで,治療構
要と考えられる。また,認知行動療法の効果に
造に関する記載が含まれていない背景になって
関するメタ解析を行った過去の研究では,出版
いると考えられる。また,構造に関する記載が
バイアスの調整の有無によって効果の大きさが
少なかった理由として,介入の「構造化」を試
変わることが報告されている(Cuipers et al.,
みていない可能性も否定できない。実際,海外
2014 など)。このような出版バイアスの影響を
のみならず,本邦においても,構造化された個
最小限にするためには,①メタ解析を行う際は
人形式による CBT を入院環境下で実施・報告
潜在的な出版バイアスを検討すること(ファン
し た 研 究 が 複 数 存 在 し て い た た め(古 閑,
ネルプロット法など),②効果研究を実施する
2009; 三上,2008 など),「看護職が入院環境下
で CBT を構造化する」ことは不可能ではない
と考えるからである。前提として CBT は,比
際 は「臨 床 試 験 登 録 シ ス テ ム(International
Committee of Medical Journal Editors; ICMJE,
2014)」に事前登録・情報公開を行うこと,な
較的短期間の問題解決的療法であるため,治療
どの対策が必要である。
セッションの「構造化」が重視される。Beck
et al.(2005)は,「構造化」の意義として,①
4.介入の質に関わる報告について
限られた時間の中で,扱うべき重要な問題や優
CBT や外科的手術などの非薬剤性の介入を
先すべき話題に焦点を当てることができる,②
用いる場合は,介入の再現性を評価するため
患者と治療者がセッションを通して学んだ内容
に,①治療者の介入技術に関する訓練方法や,
を整理しやすくなる,③セッション間の連続性
②質の担保方法を明記することが,国際的な臨
を持たせることが可能となる,などを挙げてい
床研究報告ガイドラインで定められている
る。このような意義を踏まえ,看護職が入院環
(CONSORT, 2008)。一部の研究では,海外と
境下で CBT を実施する際には,その職種特性
同様に,CBT の専門家による継続的なスーパー
を最大限生かすとともに,介入を構造化する試
ビジョンを受けるなどの対応があったが,事例
みが必要と考えられる。
研究,効果研究ともに「介入開始後」に関する
質の担保方法の記載が少なかった。本邦では,
3.看護職が実施する CBT の効果について
学会や研修会などのワークショップを通した学
看護職のみによって CBT が実施された効果
習の機会は増えてきているが,CBT を実践す
研究では,その介入が効果的だったと報告した
る段階になると,治療に並行したタイムリーな
ものが多かった。しかし,本研究において看護
スーパービジョンを受ける機会が限られている
職による CBT の効果に言及することには限界
こ と が 指 摘 さ れ て い る(Kobori et al., 2014)。
があり,その理由には,① CBT の対象が多岐
そのため,治療者各々が我流で CBT を実施せ
にわたっていたこと,②ランダム化比較試験に
ざるをえない国内の現状を,本結果が反映して
よる検証が少なかったこと,③出版バイアスが
いるものと推察される。また,本レビューの対
— 108 —
吉永ほか:看護領域における認知行動療法の実践・研究の動向
象となった論文では報告が少なかったが,治療
の「質」と「有害事象
注 1)
」を評価することも,
ラ ム の 実 験 的 運 用 を 始 め て い る(白 石 ら,
2014)。今後は,上記のようなシステムの運用
認知行動療法の質を担保・維持するために重要
を通し,スーパービジョンの実施形式や研修の
と 考 え る。「質」の 評 価 に は, Yoshinaga ら
手順・構成要素の検討,治療の質や有害事象の
(2013)が用いた「認知療法評定尺度改訂版」
評価,そして,客観的指標を用いた研修効果の
などの評価尺度・指標を用いる方法がある。こ
検証を行い,より効果的な研修システムを構築
の尺度(認知療法評定尺度あるいは改訂版)は,
し,普及させていく必要がある。
英国の認知行動療法トレーニングシステム
第二に,看護職養成課程において,CBT に
(Improving Access to Psychological Therapies;
関する基礎教育を実施することである。看護領
IAPT)や,国内でも認知行動療法センター(国
域において CBT はさまざまな分野において活
立精神・神経医療研究センター)や千葉大学な
用されているにも関わらず,国内の看護職の
どで広く採用されている。「有害事象」の評価
CBT に対する認知度は依然として低い(堀越・
大江,2014)。一方,欧米や他のアジア圏諸国
には,UE-ATR Checklist(Linden, 2013:英語
版のみ)などが参考になるだろう。このチェッ
クリストでは,「治療者 – 患者関係」「理論の適
(香港,韓国,タイなど)では,看護職が身に
用」「治療の焦点」などに問題がなかったかを
やその関連技法が位置づけられ,養成課程にお
評価する項目があるため,実施した認知行動療
いて体系的に教育されている場合が多い
法をモニタリング,または,見直す上で有用な
(Lambert et al., 2003 など)。国内でも今後,資
つけるべき基本的な心理学的介入として CBT
ツールになりうると考える。
格取得後のトレーニングに加えて,養成課程に
5.教育・研修システムの整備と効果研究の実
が必要と考えられる。
おける CBT の基礎教育実施に向けた取り組み
施に向けた提案
第三に,看護職が実施する CBT の効果を明
本レビューで得られた知見を元に,教育・研
らかにするために,ランダム化比較試験を実施
修システムの整備と効果研究の実施に向けた提
することである。本レビューで同定された効果
案を以下に述べる。第一に,看護職向けの「継
研究では,看護職のみによって CBT が実施さ
続的なスーパービジョン」を含む教育・研修シ
動療法センター(国立精神・神経医療研究セン
れたランダム化比較試験は 2 件のみであった。
Gunter and Whittal(2010)が提唱するように,
CBT の効果的な普及のためには,ランダム化
ステムの整備である。これについては,認知行
ター)が実施しているものがあるが,2014 年 5
比較試験を用いた実証による専門家ならびに一
月現時点では医師に限定して行われている。多
般市民への周知・啓発が必要であり,またその
職種向けでは,千葉大学が 2010 年から実施し
ことにより,さらなる公的資金の投入による教
ている英国のトレーニングシステムに基づいた
育・研修システムの整備にもつながる。本邦で
2 年間の教育プログラムがある(Kobori et al.,
2014)。看護職に特化したものでは,「看護の
ための認知行動療法研究会」が 2014 年から,
は,CBT 実施者の職種や対象疾患が診療報酬
上限定されているため,これはなおさら重要と
いえる。
継続的なスーパービジョンを含めた教育プログ
【結論】
注 1)
介入との因果関係がはっきりしないものを含め,
介入が実施された対象者に生じたあらゆる好ま
しくない,あるいは意図しない徴候,症状,ま
たは病気を指す。
本レビューにより次のことが明らかになっ
た。① CBT は,精神疾患を中心にさまざまな
看護領域で活用されていた;②セッティングと
— 109 —
不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
しては入院環境で実施されたものが多かった
(2007). Specialised in-patient treatment for severe,
chronic, resistant obsessive-compulsive disorder.
Psychiatric Bulletin, 31, 49–52.
が,特に事例研究では治療構造に関する記載が
少なかった;③効果研究では対象や研究デザイ
ンが多岐にわたっていたため,その効果につい
藤澤大介・中川敦夫・佐渡充洋・坂本真士・山内慶
太(2006).精神療法の実施方法と有効性に関する
て言及することは限界があるが,CBT が効果
研究 平成 17 年度厚生労働省科学研究費補助金総
的だったとする研究が多かった;④看護職のみ
によって CBT が提供されたランダム化比較試
験は少なかった;⑤事例研究と介入研究とも
に,CBT 開始後の質の担保方法に関する記載
が少なかった。
これらの知見から,看護職による質の高い
CBT の提供と普及に向けては,①継続的なスー
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雑誌,8
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不 安 症 研 究 Vol. 6 No. 2
Nursing Practice and Research Trends Pertaining to
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Naoki Yoshinaga1 Akiko Nosaki2 Kimie Unozawa3 Yuko Urao4 Yuta Hayashi5 Eiji Shimizu3
1
Organization for Promotion of Tenure Track, University of Miyazaki
2
Division of Psychiatric and Mental Health Nursing,
Chiba University Graduate School of Nursing
3
Department of Cognitive Behavioral Physiology,
Chiba University Graduate School of Medicine
4
Department of Nursing, Chiba Prefectural University of Health Sciences
5
Inpatient Psychiatric Unit, Chiba University Hospital
Abstract
This study systematically reviewed case studies and outcome research relating to nurse-delivered
cognitive behavioral therapy (CBT) in Japan. The review revealed the following findings: (1) CBT was
used in various nursing areas, but mainly for mental disorders; (2) In many of the cases, nurse-delivered
CBT was provided to hospitalized patients; (3) The majority of existing outcome research has reported
positive outcomes following the use of CBT; however, the target groups and research designs varied
widely across the studies; (4) Most studies did not report the quality control methods taken during
CBT, such as the manner in which therapy sessions were supervised during interventions. These
findings suggest a need for the development of an education or training system that includes ongoing
supervision, the inclusion of basic education about CBT in the curricula of nursing education
programs, and outcome research aimed at examining the effectiveness of nurse-delivered CBT.
Key Words: nurse, cognitive behavioral therapy, Japan, systematic review
— 112 —