2-1: トラクタ用オウトウシェーカの設計とほ場試験

トラクタ用オウトウシェーカの設計とほ場試験
山形大学農学部
赤瀬 章,鈴木 洋,○水野泰輔
(株)美善
備前和博
[キーワード]オウトウシェーカ,トラクタ用,落果率,果梗付き果率
1.はじめに
これまで加工用オウトウの収穫には小型(背負い型)シェーカを使用してきた。これはオウトウ
の小枝を対象としたもので,小型エンジン,振動発生部,ブーム,クランプからなる。またこのシ
ェーカは大きな振幅(設定ストローク:8cm)を発生させることができるため,オウトウ果実を果
梗付きで収穫することが可能である。このシェーカによって収穫された果実は加工着色処理するこ
とにより商品として問題がないことが確認された(農業機械学会誌,59 巻1号,小枝を対象とした
オウトウシェーカの開発(第1報)
)
。さらに一人で一貫して収穫作業ができることが確認された(農
業機械学会東北支部報,第 44 号,試作オウトウシェーカによるほ場試験(第2報)
)
。
しかし小型のため対象となる枝は小枝で,1本の木で収穫できる果実量が少ない。またエンジン
を背負うことから動力を大きくすることができず,疲労も大きい。
そこで対象となる果実量を増やし,作業を能率化するためトラクタ用シェーカの製作を試み,そ
れを使ってオウトウ収穫実験を行った。
2.トラクタ用オウトウシェーカの設計
25~45 馬力級のトラクタに搭載するためのシェーカを設計した。トラクタの3点リンクにシェー
カ本体を搭載し,本体上部後方に梁を伸ばしその先端に振動発生部を載せ,枝を掴むクランプを取
り付ける。トラクタを操縦することによってクランプを枝に接近させ,3点リンクのポジションコ
ントロールによってクランプの上下位置を調整し枝をクランプする。
設計条件:クランプの地上高さは最大約 2.5m,クランプのストローク 8cm,10cm,振動数 7~12Hz
3. ほ場試験実験方法
ストローク,振動数を設定する。クランプの 5cm 先に加速度計を取り付ける。対象とする枝にあ
るオウトウ果実すべてに通し番号をマジックインキで付け,その位置を確認する。地上に果実回収
用シートを敷く。約3秒間の振動後,落下果実,不落下果実を回収する。
4. 実験結果および考察
表1に供試枝の条件を示す。表2に加速度計で測定された振動数,振動時間,加速度を示す。枝
に与えられたストローク,振動数は設定値に近いと考えられる。なお枝2は2回振動された。落下
果実および不落下果実の個数,質量,糖度の平均値を表3に示す。落果率は枝1については 90%,
枝2については2回の振動で 58%であった。枝2で値が低いのは枝1に比べて枝垂れた枝が多かっ
たことと果実密度(単位枝長さ当たりの果実個数)が枝1に比べ高かったためである。果梗付き果
の割合は枝1では 88%,枝2では 81%であった。枝2で値が低いのは果実密度が枝1に比べ高い
ためであると考えられる。落下果実と不落下果実を比較すると,落下果実の質量および糖度が共に
高く,熟度が進んだ果実がよく落下したことがわかる。落下果実中の果梗付き果と果梗抜け果を比
較すると,後者が質量,糖度が共に高く,熟度が進むと果梗抜け果が多くなることを示している。
図2は枝2の果実位置と果実の収穫状態の関係を示している。枝垂れた部分に不落果が多い。枝垂
れの甚だしい枝は,徐々に剪定を加えれば落果率が改善されると思われる。
図1 トラクタ用シェーカ
表1 供試枝の条件
枝1
枝2
品種:ナポレオン
全長 基部直径 クランプ部
クランプ部 枝の規模係数
l (cm)
d (cm)
位置 lc (cm) 直径 dc (cm)
(cm3)
250
5.8
67
4
8470
279
6.5
95
3.7
11800
lc/l
0.27
0.34
表2 枝に加えられた振動数,加速度
エンジン回転数 振動数 振動時間 加速度
(rpm)
(Hz)
(s)
(g)
枝1
2000
7.5
2.8
8.31
枝2 加振1回目
2000
‐
‐
‐
加振2回目
2200
8
2.1
8.83
表3 落果,不落果別の果実個数,質量,糖度
(1)枝1
個数
(%)
落果
果梗付き果
果梗抜け果
不落果
56
49
7
6
90
10
質量
(g)
5.7
5.4
7.3
4.3
糖度
(度)
11.2
11.1
12.3
9.7
質量
(g)
6.7
6.6
7
6.1
5.7
7.1
6.3
糖度
(度)
13.8
13.9
13.8
12.8
12.5
13.5
12.4
(2)枝2
個数
(%)
落果(1回目振動)
果梗付き果
果梗抜け果
落果(2回目振動)
果梗付き果
果梗抜け果
不落果
68
57
11
25
18
7
68
42
16
42
○:1回目振動 果梗付き果
●:1回目振動 果梗抜け果
○:2回目振動 果梗付き果
●:2回目振動 果梗抜け果
×:不落果
図2 着果位置と果実の収穫状態の関係