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住まいのワンポイント
「シックハウスについて」
シックハウス症候群とは、新築、リフォーム、家具の購入、シロアリ駆除などを契機
に、住居などで起こる、倦怠感・めまい・頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患など
の症状があらわれる体調不良の呼び名です。主として住宅室内の空気質に関する問題
が原因として発生する体調不良を指す場合が多いようです。
シックハウスについて正しく理解し、自分でできる対処方法で予防しましょう。
シックハウスって何?
国民生活センターの資料によると、症状で最も多いのが、「体調がすぐれない」「吐き気がする」
「気分が悪い」などの「その他の傷病及び諸症状」が 59%、次いで「咳き込む」「息苦しい」などの
「呼吸器障害」が 21.8%、「湿疹」「かゆみ」などの「皮膚障害」が 13.5%でした。主な事例は次の
とおりです。
(2002 年 12 月 6 日付発表資料より)
1.住宅関連が要因と考えられる事例

家の全面的改築をした後、台所に入れず外で炊事をしている。

新築の戸建住宅へ入居直後から湿疹が出て、病院でみてもらった。

賃貸マンションに住んでから、午後になると目のまぶたが痛くなり、動機が激しくなっ
て、入院した。

3 年前に建築された高気密性の建売住宅に入居後、具合が悪くなった。頭痛、目ま
いがしてとてもいられない。

床暖房のフローリング工事終了後に床暖房のスイッチを入れたところ、ものすごい
刺激臭がした。トルエン濃度を調べると、基準値の 10 倍もあった。
2.家具類や害虫駆除関連などが要因と考えられる事例

子供の入学前に学習机を購入した。配送してもらった翌日から、子供の目が赤くな
るなどの症状が出始めた。

健康に配慮した材料を使用した食器棚を購入したが、刺激臭と目に違和感がある。

防蟻剤を散布し、床下換気扇を設置した。屋内は薬品臭がひどく、母は翌月には立
ち上がれない状態で、現在も身体中が痛くてだるいと言っている。

テレビコマーシャルで見てよいと思い、殺虫剤を購入した。寝室へ吊るしたら、翌日
から足と手の筋肉が硬くなり、痛くて力が入らない。

床下換気扇と配管の修理をしたが、においがきつく気分が悪い。業者に聞くと、「床
下の木材に防虫剤のホルムアルデヒドを使用している」といわれた。中和剤を撒け
ばよいというので、撒いてもらったが臭いはなくならない。
NPO法人住まいの学習館
1
知っておこう!シックハウスの原因となる物
住宅室内の空気質により引き起こされるシックハウス・・・。
建材や建具が原因になることはもちろんですが、日用生活品や食生活などのライフスタイルが原
因でシックハウス症候群になってしまう場合もあります。
正しく対処するためにも、他にはどんなものが原因となるのか知っておきましょう。
衣類など :
衣類、布団、カーペット、カーテン、衣類のドライクリーニング剤など
食品 :
食品添加物(化学調味料)、農薬など
洗剤・クリーナー類 :
食器洗剤、洗濯用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、ワックス、ガラスクリーナーなど
殺虫剤 :
防蟻剤、家庭用殺虫剤、防虫剤、蚊取り剤など
美容品 :
化粧品、香水、整髪料、うがい薬、ボディシャンプー、染毛剤など
家電製品など :
テレビ、パソコン、コピー機、電子レンジ、電磁調理器、ガス・石油暖房器具など
その他日用品 :
トイレ芳香剤、おもちゃ、ぬいぐるみ、防水スプレーなど
空気質を汚染するものが健康を害する
建材や建具、日用生活品がシックハウスの原因となるのは、そこに含まれている様々な物質や住
居内にあるアレルゲンが室内の空気を汚染するからです。
空気質を汚染する具体的な物質には、下記のようなものがあります。
1.
化学物質 (ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど)
シックハウス症候群の最も大きな原因とされるのが化学物質。特に、室内空気を汚染する化学物質と
して、VOC (Volatile Organic Compounds = 揮発性有機化合物)があげられます。
「揮発」とは「常温で液体が気化すること」を意味します。つまり、「常温でも空気中に気化しやすい有機
化合物」のことを総称してVOCと呼んでいるわけです。ホルムアルデヒドなど主なVOC13 種について
は、厚生労働省で室内濃度の指針値を定めています。指針値は次ページをご参照ください。
2.
ダニ
ダニが一匹もいない家というのは現実的にはありえません。どんなに清潔にしていても、ダニは生息し
ているものです。ダニのフンや脱皮殻、亡骸などが風化し砕けて小さくなり、
空気中に舞うことで空気質を汚染するアレルゲンとなります。ただし、ダニを
気にするあまり多用する防ダニ剤や駆除剤には、多くの化学物質が含ま
れています。
3.
カビ
カビには人の生活に欠かせない大事なカビもありますが、人の健康を
脅かすカビもあります。カビは、カビが生み出す毒素により中毒症や感
染症を引き起こしますし、空中に舞ったカビやカビの胞子はシックハウス症候群の原因となります。
ただし、カビを防ぐための防カビ剤や除去剤には、多くの化学物質が含まれています。
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VOC13 種の厚生省指針値
揮発性有機化合物
室内濃度指針値
設定日
化学物質の主な発生源
ホルムアルデヒド
100μg/m3(0.08ppm)
1997.6.13
合板、壁紙、施工用接着剤、家具等
トルエン
260μg/m3(0.07ppm)
2000.6.26
塗料、施工用接着剤等
キシレン
870μg/m3(0.20ppm)
2000.6.26
塗料、施工用接着剤等
パラジクロロベンゼン
240μg/m3(0.04ppm)
2000.6.26
衣類防虫剤、トイレ芳香剤等
エチルベンゼン
3800μg/m3(0.88ppm)
2000.12.15
塗料、内装材接着剤等
スチレン
220μg/m3(0.05ppm)
2000.12.15
断熱材、浴室ユニット、畳芯材等
クロルピリホス
1μg/m3(0.07ppb)但し小児の
2000.12.15
防蟻(シロアリ駆除)剤等
場合は0.1μg/m3(0.007ppb)
フタル酸ジ-n-ブチル
220μg/m3(0.02ppm)
2000.12.15
塗料、接着剤等
テトラデカン
330μg/m3(0.04ppm)
2001.7.5
灯油、塗料等
フタル酸ジ-2-エチル
120μg/m3(7.6ppb)
2001.7.5
壁紙、床材等
ダイアジノン
0.29μg/m3(0.02ppb)
2001.7.5
殺虫剤等
アセトアルデヒド
48μg/m3(0.03ppm)
2002.1.22
接着剤、防腐剤等
フェノブカルブ
33μg/m3(3.8ppb)
2002.1.22
防蟻(シロアリ駆除)剤等
ヘキシル
Q.昔はシックハウス症候群なんてなかったのに、問題化したのは何故なんでしょうか?
A.それは「家づくりの変化」による、住環境の変化につきます。
◇家づくりの変化その1・住宅の高気密&高断熱化
昔の木造住宅は、いい意味でも悪い意味でも隙間が多かったので通気性が良く、室内の空気は新
鮮で、汚れにくい環境にありました。しかし、現代の住宅は省エネ対策が重視されて
いることで、隙間がなくなり、気密性が高められています。その反面、しっかり
換気をしないと、すぐに空気が汚れてしまうリスクも高くなったわけです。
◇家づくりの変化その2・建材の高機能化&高性能化
昔ながらの「伝統家屋」では、無垢の木材に土壁、畳や障子という具合に、木や草、土、紙などの天
然素材が用いられていました。しかし、現代の住宅建材のほとんどは人工的に加工されています。
つまり、材料の機能や性能を上げるために製造過程で多種類の化学物質が用いられているので
す。たとえば、強度を高めるための接着剤、燃えにくくするための難燃剤、長持ちさせるための防腐
剤、防カビ剤・・・など。さらに建材だけでなく、家の中に持ち込むカーテンやじゅうたん、家具などに
も多くの化学物質が使われています。
化学物質をたくさん含んだ新建材を用いて造った建物が高気密なわけですから、しっかり換気しな
ければ必然的に室内の空気は化学物質で汚れてしまいます。
3
すぐできるシックハウス対策
1.
換気不足の解消
換気は最も手っ取り早くできるシックハウス対策の一つです。高い温度下で化学物質の揮発は促進
されるので、日当たりのよい部屋や暖房器具を使う部屋では濃度が高くなりますのでなおさらです。
換気には、窓などを開けて換気する「自然換気」と、換気扇などを使って換気する「機械換気」があり
ます。現在は、建築基準法が改正され、居室には原則として機械換気設備の設置が義務付けられて
います。
【換気のコツ】
・ 大きく一箇所の窓を開けるよりも、対角線上になるように2箇所の窓を開ける。
・ 空気の出口となる方の窓を全開にし、入り口となる方の窓を15cmくらい開ける。
・ 空気が流れにくく、よどんでしまう場所がある場合は扇風機なども使う。
・ 晴れた日の湿度の低い時間帯(春・夏:12~16時、秋・冬:12~14時)に行う。
・ 換気扇を回すときは、必ず窓を開けて空気の入り口(給気)を確保する。尚、 空気の入り口
(給気)は、なるべく換気扇から離れている方がより効果的に換気が行える。
・ 換気扇を回す場合、給気窓は全開にするよりも15cm 位開ける方が空気の流れがよくなる。
・ 入浴中や調理中には必ず換気扇を止めない(入浴後もしばらく止めない)。
2.
化学物質を吸着・分解・封じ込む
最近、化学物質を吸着・分解してくれる建材や、化学物質を封じ込めてくれる塗料などがあります。こ
れらだけに頼りすぎることは危険ですが、上手に取り入れるのはひとつの対策でしょう。例えば、化学
物質を吸着する壁材として知られているのは、シラス壁や珪藻土壁。また、光触媒反応を起こす物質
として有名な酸化チタンは、化学物質分解材料でもあります。ただし、光触媒を起こすには一定以上
の紫外線量が必要ですので、室内では光触媒反応が起こりにくいという弱点があります。他にも特殊
な塗料やアルミシートで、化学物質の揮発を封じ込めるという方法もあります。
3.
安全な建材を選ぶ
リフォームや新築を考える場合、無垢材や天然材料を選ぶ、またはJISやJASなどによって表示され
ている「F☆☆☆☆」(最もホルムアルデヒドの放散が少ない等級)のものを選ぶようにしましょう。「F☆
☆☆☆」という表示は、ホルムアルデヒドのみの発散量を示していますので、他の物質が心配な場合
は、製品安全データシート(MSDS)を業者から提出してもらう方法もあります。
4.
ダニ対策
基本は、清潔に保つことです。高性能なフィルターの掃除機でダニやホコリを除去し、且つダニが好む
環境を排除すること。ダニは25℃~30℃、湿度は60%以上の環境で活発に活動するといわれてい
ます。換気や除湿機を上手に使って、湿度を適度に保つようにしましょう。
5.
カビ対策
温度20℃~35℃、湿度60%以上を好み、80%以上になると大繁殖するといわています。カビを減
らし発生を防ぐには、十分な換気、こまめな清掃、結露の防止が大切です。結露が起こってしまったら
放っておかずに、早めにふき取るようにしましょう。シラス壁や珪藻土壁などは、除湿効果があることで
も知られています。
6.
ライフスタイルの改善
シックハウス症候群は外的な要因だけでなく、内的な要因も大きく関わっています。シックハウス症候
群にならないために、日頃からストレスを減らし規則正しい生活、適度な運動を心がけましょう。
NPO法人住まいの学習館
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