2012.03 農薬(殺虫剤)の使い方 (1)殺虫剤の種類 ①有機合成殺虫剤 科学的に合成された殺虫剤。「殺虫剤」「殺ダニ剤」「誘引剤」等がある。 ②天然殺虫剤 石油、硫黄、植物成分等、自然に存在する物質が主成分。「石灰硫黄合剤」「マシン油」 などで、有機合成殺虫剤に比較すると、使用場面や対象害虫が限定される。 ③昆虫フェ ロモン剤 昆虫が体外に極微量分泌して同じ種類の昆虫の行動に影響を与える物質。交尾の相手を 誘引する性フェロモンホルモン、集合フェロモン等がある。化学合成された性フェロモン が交尾行動の妨害や誘引剤として使用されている。 (2)殺虫剤の系統別特色 ①有機リん系殺虫剤(スミチオン、エルサン、マラソン、ダイアジノン、オルトラン等) 多種類の害虫に対して優れた接触・食毒作用があり、即効性で浸透性がある。環境中で 分解しやすいので、蓄積性が無く、魚毒性も概して低い。アルカリ性製剤と混用しない。 抵抗性の出現が顕著のため、連用を避け、他の系統薬剤と組み合わせる。 ②カーバメイト系殺虫剤(ランネート、オンコル、ラービン等) 作用性は、有機リん系と似ているが、防除可能害虫の種類は、有機リん系と比べて限ら れる。接触剤で浸透性があるが、残効性は小さい傾向があり、使用適期の幅も小さい。天 敵のクモに対する影響は少ない。ローテーションに組み入れ、連用はしない。 ③ピレスロイド系殺虫剤(トレボン、アディオン、マブリック等) 接触毒で即死させたり、即死しなくても食欲を無くして弱らせたり、産卵能力を無くし て増殖を防ぐ。散布後の忌避性が強く害虫が寄りつかなくなる。食毒作用もあり、安定で 耐雨性、残効性があり、多種類の害虫に効果がある。蚕に対する影響に要注意。有機リん 系やカーバメイト系に抵抗性の害虫に有効。ダニに効果がない(マブリック、ロディー、 テルスターは除く)ばかりか、ダニが異常増殖する場合がある。抵抗性がつきやすい(一 作一回程度の使用)。ネライストキシン系、BT剤、脱皮阻害剤とローテーションを行う。 ④ネライストキシン系剤(パダン、エビセクト等) 接触・食毒作用があり、食毒性の害虫に有効。やや遅効性だが、虫は直ぐに食害活動を 停止する。抵抗性もつきにくく、残効もあり忌避性もある。リン翅目の害虫中心の薬剤。 カイガラムシを異常発生させるので、有機リん系やアプロードなどの併用が必要。蚕への 影響も大きい。 ⑤ネオニコトノイド系剤(アドマイヤー、モスピラン、ダントツ、アクタラ等) 吸汁性害虫に優れた効果がある。リン翅目(蝶)半翅目(カメムシ)甲虫、アザミウマ 類と広範囲の害虫に卓効を示す。即効性で浸透性、残効性もある。粒剤で四から七週間、 水和剤で三週間残効が続く。 ⑥脱皮阻害剤(IGR)(アタブロン、カスケード、ノーモルト等) 幼虫の脱皮を阻害したり、卵の孵化を阻止する農薬。発生初期に散布するのが鉄則。成 虫は死なず、すぐには害虫が減らない。卵・幼虫が死滅し、一週間後くらいから効果が出 る。蚕に長期間影響与えるので注意が必要。 ⑦生物農薬(BT剤)(トアロー、ゼンタリー、デルフィン等) 蚕につく天敵の毒素を合成したもの。散布して直ぐに死なず(二から三日要する)食欲 不振となって死ぬ。リン翅目以外に効果が無い(コナガ、ヨトウガ、イラガ等の専門薬)。 幼虫にしか効果がないので、見つけたら早めに防除する。有機リん系、カーバメート系を 補う薬。
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