はじめに 建設産業は、これまで道路・鉄道・ダム等の社会資本整備や住宅・事務所・ 工場等の建設活動を通じて、わが国の飛躍的な発展を支えてきました。しか し、バブル崩壊後は建設投資が減少し、3K等のイメージダウンや賃金水準 の低下等も加わり、建設業は次第に若者から敬遠されるようになりました。 その結果、就業者数の減少や高齢化が進み、このままでは技術の継承もまま ならず、先々担い手不足に陥るおそれがでてきました。 しかし、現在では、建設現場も安全管理が最優先されており、品質管理や 工程管理もコンピューター等でスマートに行われています。本書ではこれら の様子とともに、建設業の社員はどんな仕事をするのか、どうすれば一人前 の現場監督になれるのかを、 「まんが」のストーリーにのせて分かり易く描 いています。また、 「まんが」で表現し切れないことは、 解説ページを要所々々 に挟み込み補足説明しています。 主役は、工業高校を卒業し建設会社に入社したての若者(東山翼)と、入 社 3 年目の女性(西園寺ルミ)の 2 人。舞台は横浜市郊外のマンション現場。 現場に初めて配属された東山は、最初は戸惑い・失敗の連続ですが、職長(猫 車留吉)や先輩社員のプロ意識に触発され励まされながら成長し、次第に一 人前の現場監督らしくなっていく姿を描いています。一方のルミも、明るく 元気な「けんせつ小町」として少し先輩のお手本を示しています。また、現 場所長(北大路開)や副所長(青葉裕介)は、ベテランの技と豊かな人間性 を示し、東山とルミを一人前の現場監督に育てるべく日々奮闘します。 本書は「まんが」とはいえ、解説ページも多くしっかりとした技術図書で す。建設業の社会的使命や仕事のやりがいを伝えながら、これからの建設業 界を担っていくのは若者や女性たちであると呼び掛けています。新人・若手 社員やこれから建設業を目指す学生さんたちに、ぜひ読んでいただきたい一 冊です。 一般財団法人 建設物価調査会 CONTENTS 1.建設業の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 解説 1 建設業就業者の減少と高齢化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2.現場チーム結成!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 解説 2 現場所長の資質と品格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 解説 3 現場所長(現場代理人)の基本的な業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 解説 4 現場社員の配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 3.現地調査とあいさつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 解説 5 現場乗り入れ時の諸業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 4.新人・若手社員の心構え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 解説 6 新人・若手社員の心構え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43~45 解説 7 現場社員に必要な知識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 解説 8 協力業者の手配と発注業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 解説 9 主要資材の発注 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 5.施工計画の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 解説 10 施工管理業務の概略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 解説 11 工程管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54~55 資 料 全体工程表、月間工程表、作業指示書・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56~61 6.解体工事に着手!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 解説 12 解体工事の管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 7.近隣住民説明会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 解説 13 近隣問題対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74~75 8.本工事がスタート!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76 解説 14 各種資格の取得・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 解説 15 建築関係法令の会得・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 9.実行予算書の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 解説 16 原価管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94~95 解説 17 実行予算書の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96~98 10.主な工事の管理ポイント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 解説 18 杭打ち工事の管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 解説 19 コンクリート打設の管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112~113 コラム 世界に誇る日本の建設技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 11.現場監督のある 1 日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 解説 20 品質管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132~133 解説 21 現場監督の 1日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134~135 12.事故が起こった!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 解説 22 安全管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144~147 解説 23 事故発生への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148~150 13.マンション完成!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151 解説 24 竣工検査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・159 解説 25 竣工引渡し時の注意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・160 14.あれから 20 年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・161 解説 26 新入社員から所長へのステップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165~166 建設現場でよく使われる用語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167∼174 登 場 人 物 紹 介 K B 建 設 現 場 事 務 所 くつ き げん ぞう 朽木 元造 ひがしやま つばさ さい おん 東山 翼 西園寺 ルミ (建築担当)入社2年目 一見頼りない奴だったが… きた おお じ かい あお 北大路 開 ば (建築担当)入社3年目 明るく元気なけんせつ小町 ゆう すけ 青葉 裕介 (現場所長) 入社16年目 (現場副所長) 入社11年目 み よし じゅん ねこ ぐるま とめ きち 一見怖そうな協力 業者・山田組の職長 みどり かわ 緑川 ヒロシ 川崎鉄筋の職人 たち ばな MM建機レンタル の営業マン み ば かず や 稲葉 和也 (事務担当) 入社10年目 (設備担当) 入社8年目 周 辺 住 民 な ど 立花 マモル つる いな 三好 潤 協 力 業 者 猫車 留吉 (東京支店建築部長) じ さとし 鶴見 智 鴇田建材の営業マン かな ざわ けん ご 金沢 健吾 自治会長 と つか に かい どう とら ぞう つ 二階堂 虎造 現場真向いに住む 建設反対派住民 きょう いち ろう 戸塚 恭一郎 近所のうるさい住民 みなみ づき 都筑 マキ 近所の住民 アラフォー、独身 せつ こ 南 節子 仕出し弁当屋のおばちゃん 1.建設業の役割 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 解説 1 建設業就業者の減少と高齢化 1.建設投資と建設業就業者数の推移 わが国の建設投資は、ピーク時である平成 4(1992)年度の 84 兆円から22(2010)年度には41兆円 まで落ち込んだ。その後、 東日本大震災からの復旧・復興事業や景気回復等により増加に転じ、26(2014) 年度には48兆円になる見通しである。一方、建設業就業者数は26(2014)年度は501万人で、ピーク時 である9 (1997) 年度の685万人から約27%減少している。 建設投資及び就業者数の推移 (兆円) 建設投資のピーク 90 84.0 兆円 (平成 4 年度) 建設投資額 (兆円:名目) 就業者数 (万人) 就業者数のピーク 685 万人 (平成 9 年度) 80 (万人) 900 800 700 70 就業者数ピーク時比 ▲26.9% 501 万人 (平成 26 年度) 60 600 50 500 40 400 30 300 20 200 10 100 0 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 建設投資のピーク時比 ▲42.4% 48.4 兆円 (平成 26 年度) 0 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (年度) 出典:国土交通省 「建設投資見通し」 ・総務省 「労働力調査」 注 1 投資額は平成 23 年度まで実績、 24 年度・25 年度は見込み、 26 年度は見通し 注 2 就業者数は年平均。 平成 23 年度は、 被災 3 県 (岩手県・宮城県・福島県) を補完推計した値。 2.建設業就業者の高齢化 建設業就業者の問題には、人数の減少のほかにもう1つ高齢化がある。建設業就業者の年齢別割合 を見ると、平成10(1998)年度前後から若年層が減少する一方で高年齢層が増加し、特に13(2001) 年度以降はその傾向が顕著となっている。このままでは今後10年程度以内に建設現場を支える技能労 働者・技術者の不足が恒常化する懸念がある。 建設業就業者の高齢化 (%) 37 35 建設業:約 3割が55 歳以上 33 31 29 全産業(55 歳以上) 27 25 23 21 19 17 全産業(29 歳以下) 15 13 11 9 建設業:29歳以下は約1割 2 3 4 5 6 7 8 出典:総務省 「労働力調査」 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 (年度) 17 4.新人・若手社員の心構え 37 38 39 40 41 42 解説 6-1 新人・若手社員の心構え(1) 建築工事は、何もない場所に数多くの資材・労働者・機械等を用いて、巨大な建築物を作り上げる。 その建築物は、施主の要求を満たし、法律・基準に適合し、工事は近隣・環境・安全に配慮し、工期 内に竣工させ、かつ利益を出さなければならない。しかも工事は屋外作業のため天候の影響を受けや すい。このような厳しい条件下でも目的物を完成させるのが現場監督の仕事であり、そこには確固た る技術力はもちろん、現場仕事に対する厳しい姿勢や豊かな人間力が必要不可欠である。そして、こ れらは若い頃からの地道な努力があって初めて身に付くものである。 仕事に対する姿勢 1日の仕事の区切りが現場の終業 他部署の人達の役割を認識しよう 現場の仕事は、終業時刻が来たからではなく、 工事は現場で行うが、それだけで工事はできな 分の仕事や職人の作業が想定時間内に収まるよ のため頭を下げ放しの営業、図面とにらめっこ 区切りが付いたら終える。早く仕事に慣れ、自 う、段取り上手になることが肝要である。 い。支店で事務をこなす総務や経理、工事受注 の設計、積算に奮闘する見積、さらには労務安 全担当から社有車の運転手まで、多くの人々の 支えがあってこその現場である。 良好なチームワーク作りに参画 現場社員は現場内で長時間を過ごす。その時間 をいかに楽しく過ごすかが大事。現場内が明る く快適な場であれば、能率が上がりアイデアも 浮かぶ。そのためには、良好なチームワーク作 現場社員は施主から大事にされ、「利益を出し ているのは自分だ」という意識が強く、他部署 の苦労を忘れがちだ。しかし、これら縁の下の 力持ちがいることを忘れず、感謝の念を持たね ばならない。 りに積極的に参画することが大切である。 学び続ける気持ちを持つ OFF-JT で人間力を磨く 若手社員は常に勉強する意識を持ち、努力する 所長ともなれば、直属部下のみならず、協力業 り、もう1つは人間形成(他人から信頼され、 出る。また、所長にとっては施主や監理者、役 ことが大切である。1つは建築技術の勉強であ 尊敬されること)である。技術の勉強の目的は、 各種資格を取るためと、現場の仕事を支障なく 遂行するためである。 ①終業後10分ずつでも毎日勉強する習慣が大切。 ②現場の仲間達と一緒に勉強会を開く。 ③読書、美術・音楽鑑賞等多くの趣味を持つ。 者の職人からの人望も無ければ、業務に支障が 所や近隣住民との折衝も大事な業務である。そ の際、重要となるのが豊かな人間性、人望であ る。しかし、これらは OJT だけでは身に付かず、 OFF-JT で現場とは異なる場所で異なる人々と、 様々な世界を見ておくことが肝要で、若い頃か らの地道な努力と習慣が必要不可欠である。 43
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