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’05. 9.29.
www.sakura-catv.ne.jp/~yamasoft
昨年、イラクで日本人の人質
事件が報じられたとき、すぐさ
まカタールのテレビ局のホーム
ページを見ました。アラビア語
は全く解せないけど、写真を見
れば最新の状況がわかるだろう
という魂胆︵※1︶。検索は日
本語で簡単でした。テレビ局の
アラビア語のホームページは当
り前ですが右横書きです。普
段、左から書く横書きしか見ま
せんから、とても新鮮でした。
パソコンもお国お国の文化に溶
け込んでいるんだ、と感心もし
きり。ああ、そう言えば小さい
頃、日本語でも右横書きをよく
見かけましたねぇ⋮。
ものの本︵※2︶によると、
横書きは右か左かの政治的な論
争が明治維新から戦後まで続い
たとのことです。右横書きは伝
統的・国粋的、左横書きは近代
的・西欧的、というのが論点。
右か左かは、本の表紙や新聞の
見出し、標語や題目など単文を
めぐってです。特に戦時体制に
なったころ鉄道の駅の看板がも
めたそうです。
ですが、長い本
文はすべて縦書
きであることは
論争になってい
ません。そもそ
も江戸時代以前の文献は、奈良
時代に遡るもすべて縦書き。横
に書き進むという感覚は、わが
文化の伝統にはなかったので
す。右横書きに見えたのは、実
は﹁一行一文字の縦書き﹂にす
ぎなかったのです。戦後、政治
的論争を度外視して、いつのま
にか本文まで左横書きが定着し
ちゃいました。かの政治的な物
議をかもしている国粋的歴史教
科書でさえ、本文までもが左横
書きです。
学習塾を経営するお客様から
ホームページの作成をお請けし
ました。最初は﹁国語力を育て
る﹂という学習方針や入会の案
内。続いて子供たちの俳句や作
文を載せました︵※3︶。原稿
をみると、俳句や作文は縦書き
です。ホームページも縦書きに
と試みたのですが、これが難
題。句読点︵、。︶の位置が違
うのです。縦書きでは右上隅、
横書きは左下隅。促音の小さい
文字︵っ・ゃ・ゅ・ょ・ぁ⋮︶
も位置が違います。長音記号
︵ー︶は縦書きと横書きでは向
きが違います。かぎかっこにい
たっては形が違います。単純に
文字を縦に並べればよいという
わけにはいかなかったのです。
ワープロ・ソフトや文書作成
ソフトでは、縦書きに設定する
と、文字の入力から印刷まで縦
書きで、句読点や促音、記号も
ちゃんと縦書きの位置・形にな
1
ら右下方向へ読み進むか、右上
から左下へ読み進むかという違
いがあります。ですから綴じか
たも違います。ブラウザ・ソフ
トでいえば、横書きなら上から
下へスクロール、縦書きなら巻
物のように右から左へスクロー
ルするようにしてほしいもので
す。
身の回りには縦書きがたくさ
んあります。書道はもちろん、
新聞・雑誌・小説・選挙の投票
用紙も縦書きです。なにより漫
画のセリフが縦書きです。コマ
の流れも右上から左下へ、コマ
の中の絵も右から左へと流れて
います。縦書きの流れにそって
描いているのです。作家たちは
意識せずそう描いているので
しょう。二人の登場人物の会話
は、時間的に右側の人物が先
で、左側の人物が後です。単に
横書きにしたら、四コマ漫画と
いえども、読みづらいく、見づ
らいでしょうね。
横書きしかできないアルファ
ベットの西欧言語に比べると、
横書きも縦書きもできる日本語
とその文化は、表現力がとても
豊かなのですね︵※6︶。
2
ります。縦書きの習慣や客層が
あるからでしょう。なのにホー
ムページを見るブラウザ・ソフ
ト︵※4︶には縦書き設定があ
りません。しかたなく横書きで
勘弁してもらいました。わが国
のパソコン・メーカーさん、縦
書きブラウザを開発して、無料
でプレ・インストールぐらいし
てくださいよ、儲けばっかり考
えてないで︵※5︶。
先日、はがきが縦書き用だと
いうことに気付きました。往復
はがきに横書きで印刷をしたの
ですが、しっくりきません。
﹃はがき﹄﹃日本郵便﹄という
標題は左横書きなのにです。原
因は右綴じのせいでした。横書
きなら左綴じです。郵便局で
﹁横書き用の往復はがきをく
れ﹂と言うと、職員は不思議な
顔して﹁ありません﹂。民営化
するまで待つか⋮。
横書きと縦書きでは、左上か
※1 湾岸戦争の時は英語が読めなくてパソコンの電源
を慌てて切ったっけ 第13報「ポチっとな」
※2 『横書き登場』屋名池誠著 岩波新書863
※3 悠愉学舎(ゆうゆぜみなぁる) http://www.sakura-catv.ne.jp/ yamasoft/yuyu
※4 代表的なのはマイクロソフト社の
Internet Explorer
※5 縦書きブラウザ・ソフトに挑戦している方々もい
ます。が、横書きの中に縦書き部分をいれるとい
うもの。縦書きが基調ではないようです。
※6 というわけで、この原稿は文書作成ソフトで縦書
きで書いてみました。つでに当社のソフトも縦書
きに挑戦してみますかな…