情報科学 2005 Ⅳ デジタルデータの著作権 Ⅳ-1.知的所有権(無体財産権) 人間の知的な創作活動から生産されたものに対する権利の総称 (1) 知的所有権の構成 ①著作権 - 無法式主義(出願や登録は不要) 著作権、著作隣接権 ②工業所有権 - 特許庁に出願して登録 特許権・実用新案権 意匠権・商標権 ③その他 半導体集積回路配置に関する権利 不正競争防止法 など Ⅳ-2.著作権法 著作物とは、「人の思想や感情を創作的に表現したもの」であって、「文芸、学術、美術または音楽の 範囲に属するもの」である。すなわち、人の創造的個性が見受けられた精神活動の表現である。 著作物の範囲 言語 小説、脚本、講演、論文 音楽 歌謡曲、ジャズ、交響曲 舞踏・無言劇 振り付け 美術 絵画、版画、彫刻、漫画、生け花 建築 城、教会、モニュメント、寺社 図形 地図、学術的図面、図表、模型、機械の設計図 映画・写真 二次的著作物 編集著作物 データベース、プログラム 著作物でないもの 画風、書風 化粧紙、メニュー、時刻表、株価指数に記載の事実 自動車や椅子のデザイン、新聞や雑誌の記事 Ⅳ-3.著作者の権利 (1) 著作者人格権 ①公表権(公表の可否) ②氏名表示権(氏名表示の可否と内容) ③同一性保持権(改変拒否) (2) 著作権(著作財産権) ①複製権 (図書館での複製、論文への引用、教科書への掲載、試験問題としての複製、 政治演説への利用、報道への利用 ②上演権・演奏権 ③放送権・有線放送権 ⑥上映権・頒布権 ⑦貸与権 などは許諾不要) ④口述権(朗読) ⑧翻訳権・翻案権 (3) 著作隣接権 ① 実演家に与えられる権利 - 録音・録画権、放送権、貸与権 ② レコード制作者に与えられる権利 - ③ 放送事業者に与えられる権利 複製権、放送権、再放送権 - ④ 有線放送事業者に与えられる権利 - 複製権、貸与権 ③に同じ 13 ⑤展示権 ⑨二次著作物利用権 など など など 情報科学 2005 Ⅳ-4.マルチメディア時代の著作権法上の問題点 (1) マルチメディアの定義 ①デジタル信号によっての多様な情報(文字、図形、映像、音楽)を統括した伝達 ②情報を受ける側においても、選択、加工、編集等を可能にした双方向な情報伝達 ③情報はコンピュータ上で稼働するマルチメディア・ソフトにより伝達・供給される。 (2) マルチメディアの特徴 ①双方向性 - 放送、有線放送に該当しない通信の登場 ②プログラム付き ③デジタル - - ユーザによって、表現の現れ方が異なる 複製・改変が容易。複製による品質劣化が無い。 ④多様な素材の活用 - ⑤著作者が多い 共同著作の登場、関与者の特定できない場合もある。 ⑥国境がない - - 他の著作物を改変しつつ創作する。 どの国の法律を適用するか判断が難しい (3) 問題点 ①情報の伝達・提供形態に関する問題 (a) 「放送・有線放送」という範疇からの逸脱 - (b) 著作隣接権の漏れ ②複製の問題 - (2)-① - マルチメディア事業者には、放送権等による保護がない。 - (2)-④・⑤ (2)-③ ③ソフトの特性上の問題 ④権利処理への概念における問題 (4)展開と課題 ①著作権法改正 (a) 新しい技術を活用した権利の実効性の確保(平成 11 年 10 月 1 日施行) 1. コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制 2. 権利管理情報の改変等の規制 (b) 著作者等の権利の充実(平成 12 年 1 月 1 日施行) 1. 著作物等の譲渡に関する権利(譲渡権)の新設 2. 上映権の拡大 (c) 障害者の利用および著作権侵害対策(平成13年1月1日施行) 1. 視聴覚障害者のための著作物の利用について、著作権者の許諾を得なくても利用できる場合 を定めた 2. 権利侵害に対する救済措置の強化のため、裁判手続等に関する規定を整備した 3. 権利侵害に対する抑止力の強化のために、法人による侵害に対する罰金刑の上限を、1 億円 以下(現行300万円)に引き上げた 4. 著作権に関する世界知的所有権機関条約(WIPO著作権条約)の締結に伴う形式的な規定 の整理を行った。 (d) 教育等の利用に関する対応(平成 16 年 1 月 1 日施行) 1. 視覚障害(弱視)者のための拡大複製に関する規定を新設 2. 学校教育機関および試験における複製について、授業を受ける者についての許諾と公衆送信 についての規定を追加 [複製]①営利を目的としない ④授業の過程における使用を目的とする ⑤必要と認められる限度内 ⑥著作者の利益を不当に害しない [送信]①非営利 ②公表物 ⑥主会場での著作物 3. ②授業の担任または児童生徒が複製 ③公表された著作物である ③遠隔授業の形態 ④生中継 ⑦著作者の権利を害しない 映画の著作権を 50 年から 70 年に延長 14 ⑤受講者のみ 情報科学 2005 ②ホームページ作製に関わる問題 (a) 他人の著作物、素材の利用 (b) リンク ③電子透かし技術 人間の目や耳で知覚できない形で著作権情報をコンテンツに埋め込んで著作権管理を行う方法 Ⅳ-5.ソフトウェアと著作権 (1) 著作権からみたソフトウェアの分類 ①パブリックドメイン(PDS : Public Domain Software) ②フリーソフト(Free Software) ③シェアウェア(Shareware) ④商用ソフト(Commercial Software, パッケージソフト) ⑤デモソフト、試用ソフト (2) 違法な利用 ①(組織内)違法コピー ②海賊版、偽造版 ③販売店による違法インストール ④ネットワークを利用した違法配布 ②ソフトウェアレンタル 《参考》 1.引用(著作権法第32条第1項) 公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲で行われる場合は、自己の著作物の中に他人の著作物を引 用して利用することができる。 ア 既に公表されている著作物であること。 イ 括弧でくくる、字体や文字色を返るなどして、「引用部分」を「その他の部分」と明確に区別すること。 ウ 分量的、内容的に「その他の部分」が主で、「引用部分」が従となるような「主従関係」があること。 エ 「出所の明示」を行うこと。 2.教育機関における複製(著作権法第35条第1項) 学校その他の営利を目的としない教育機関において、教育を担任するもの及び授業を受ける者は、その授業で 使うために著作物を複製することができる。 ア 既に公表されている著作物であること。 イ 実際に授業等を担当する教員等及び生徒等自身が複製すること。 ウ 授業の過程において使用することを目的とすること。 エ その著作物の種類や用途、複製部数や様態などから判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと。 オ 「出所の明示」を行うこと。 15
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