2 年 2 組 国語科 つたえよう しごとのすごさ-『どうぶつ園のじゅうい

2 年 2 組 国語科
つたえよう しごとのすごさ-『どうぶつ園のじゅうい』-
佐藤 直子
1 子供と単元
(1) 問題追求の状況と子供への願い
前単元「はっけんしょくぶつのちえ」では,教材文『たんぽぽのちえ』を読み,知恵がいくつあるかについて
話し合い,調べた植物を「しょくぶつのちえカード」に表した。その際,主語に着目して 2 種類の知恵に色分け
したり,
「 時間を表す言葉」,生長と理由の記述を基に短冊を並べ替えたりして読みを深めてきた子供たちである。
本単元では,仕事を伝える筆者の工夫について話し合う。「時間を表す言葉」に加え,仕事の内容と理由の記
述にも着目して根拠や理由を考えることで,時間的な順序で記述する筆者の意図をとらえながら内容の大体を読
み進める姿を期待する。
(2) 教材の価値とはぐくみたい資質・能力
本単元では,『どうぶつ園のじゅうい』を取り上げる。 この教材文は,獣医の仕事について書かれており,学
校周辺のお店や施設の人の仕事に目を向けた子供たちにとって興味をもって読み進めることができる。
「 始め(話
題提示)-中-終わり」の文章構成で,
「中」は,
「時間を表す言葉」を用いて一段落に一つの仕事が書かれている。
これらのことから,時間的な順序を考えながら説明的文章の内容の大体を読む姿が期待できる。
本単元では,子供の仕事に対するとらえと実際の違いを取り上げて読み進める。多くの子供は,獣医の仕事を
動物の治療ととらえており,動物と直接関わらない仕事に目を向けていない。そこで,話題提示の段落や「毎日」
「必ず」などの叙述を基に獣医の仕事を種類分けする。すると子供は,動物の治療だけでなく,
「毎日する仕事」
があることをとらえる。「毎日する仕事」を書く必要があるのかないのかといったところで考えの違いが出てく
る。自他の考えの違いを可視化すると,一日の順序で仕事を伝える筆者の工夫をはっきりさせたいと考えるであ
ろう。そこで,自分のとらえた筆者の工夫について根拠と理由を訊き合う対話的活動を組織する。その際,2 種
類の仕事を並べ替えたり,「もし,~なら」と仮定したりして互いの読みを交流する。この ことにより,一日の
順序で書くことが,よりよい治療のための仕事を伝える筆者の工夫であることをとらえる姿が期待できる。
そこで,本単元の中核となる学習内容を「時間的な順序を考えて内容の大体を読むと,仕事のすごさを伝える
工夫が分かること」とおさえた。また,本単元ではぐくみたい資質・能力は以下の通りである。
第 2 ステージ
小 1・2 年生
本単元
価値をとらえること
とらえを訊き合うこと
仲 間 の 読 み・表 現 に 関 心 を も ち , 仲 間 の 考 え や そ の 根 拠 に つ い て
語や文のつながりを考えなが
後まで聞き,共通の目的に向
ら,自他の読み・表現のよさや 最
かおうとする関係を築く。
不十分さを考える。
新たに創り出すこと
自他の 読み・表現の 内容 や簡単 な構
成を読 み取り ,学習 した 内容を 経験
と結び 付けて ,感じ たり 考えた りし
たこと をまと め, 表現す る。
語や文を根拠に,事柄の順序につ
いて説明したり,仲間の考えを否
定せずに受け止めたり聞いたり
して読み深めようとする。
事柄の順序をとらえるための読み
を基に,調べたり考えたりしたこと
を経験と結び付けてまとめ,学習し
た文章構成を生かして表現する。
仕事の順序や構成に着目し,自他
の考えのよさや不十分さを考え
る。
2 「協働型学習」の構想
(1) 本単元における「協働」場面の位置付け
本単元では,「時間を表す言葉」や仕事の内容と理由の記述に着目して,自分の考える筆者の工夫を訊き合う
ことで,筆者の意図をとらえることを目指している。そのために,なぜ一日の順序で仕事を伝えているのか,根
拠と理由を明らかにするところに「協働」場面を位置付ける。
(2) 本単元の問題解決のサイクルにおける「協働」場面の位置付け
本単元では,問題解決のサイクルの「解決する」の過程に「協働」場面を位置付ける。
問題をもつ
見通しをもつ
解決する
新たな問題を見いだす
(3) 「協働」場面をつくる手だて
1 場面・目的意識に関わる手だて 2 交流相手に関わる手だて 3 交流させるものに関わる手だて 4 交流方法・形態に関わる手だて 5 記録方法に関わる手だて
『どうぶつ園のじゅうい』の筆者は,なぜ一日の順序で仕事を伝えているのかについて仲間と考えが異なり ,根拠
1
と理由を基にして仲間とはっきりさせたいといった不確かさを感じる状況。そのために,筆者の工夫に対する自他
の考えの違いや根拠と理由を板書上で示す。(思考の可視化)
2
筆者の工夫に対するとらえに違いがある子供同士や,根拠や理由に違いがある子供同士。
3
自分のとらえた筆者の工夫を記述したワークシート。
4
2,3 人のペアで,自分が考えた筆者の工夫について互いの考えの根拠と理由を訊き合う対話的活動を組織する。そ
の後,ペアで話し合ったことを基に ,全体で話し合う活動を組織する。
共通のワークシートに,ペアの話合いで根拠となる記述に線を引いたり,理由を書き込んだりする。
個人のワークシートに,全体での話合い後,自分のとらえを変更したり,根拠や理由を付け加えたりする。
5
3 単元の目標
『どうぶつ園のじゅうい』の仕事のすごさを伝える筆者の工夫を仲間と検討する中で,時間的な順序を考えて
内容の大体を読むと,仕事のすごさを伝える工夫が分かることを理解し,モデルとして取り上げた仕事を事柄の
選択と順序を考えて「ミニしごと図かん」に表すことができる。
4 単元計画(全 6 時間 本時 5/6)
1 次 「わたしたちの町のしごと図かん」をつくる学習計画を立てよう
〈留意点〉
仕事をイメージマップに表す。
・仕事に対するイメージをイメ
社会創造科「町探検にいこう」で学校周辺を探検し,お店や施設の人の仕事に興味・関
ージマップに表す場を設定す
心をもつ。そして,もっと詳しく調べて,見付けた仕事のすごさをまとめて伝えていき
る。
たいと意欲を高める。
・社会創造科「町探検にいこう」
〈抽出児A さん〉
〈抽出児B さん〉
で探検した中で,もっと詳し
自分と仲間の考えを比べ,よさを取り入れなが 自分の考えにこだわりをもちながら,叙述を根
く知りたいお店や施設を一人
ら自分の読みを深める子。
拠に自分の読みを深める子。
一人が決める場を設定する。
醸成活動
①
◎仕事のすごさを伝える図鑑はどうつくればよいか。
図鑑にして,お店を知らない仲間にすごさを伝 図鑑には絵や図を入れて,楽しくて分かりやす
えたい。
図鑑にどんなことを書くとよいか,
『ど くしたい。どうやって図鑑をつくるとよいか,
うぶつ園のじゅうい』の書き方の工夫を読んで 『どうぶつ園のじゅうい』の書き方の工夫を読
いこう。
んでいこう。
〇お店や施設で見付けた仕事の
すごさをまとめて「わたした
ちの町のしごと図かん」をつ
くる学習計画について話し合
う活動の組織
「わたしたちの町のしごと図かん」をつくるために,
『どうぶつ園のじゅうい』の仕事のすごさ
を伝える筆者の工夫を詳しく読んでいきたい。
2次
獣医の仕事のすごさを伝える筆者の工夫を詳しく読もう
②
・『どうぶつ園のじゅうい』で,自分が一番すごいと思った仕事は何か。
見回りの仕事がすごいと思う。
毎日しているな ペンギンの治療がすごいと思う。
ボールペンを
んて知らなかったから。
飲み込んだペンギンをすぐ助けたから。
○自分が一番すごいと思った動
物園の獣医の仕事について話
し合う活動の組織
③
・『どうぶつ園のじゅうい』にはどんな仕事があるか。
「始め」を見ると,見回り,日記,お風呂は「動 見回り,日記,お風呂には,
「毎日」
「必ず」と
物が元気に暮らせるようにする仕事」の仲間, いう言葉がある。見回り,日記,お風呂は「毎
いのしし,にほんざる,ワラビー,ペンギンは 日する仕事」で動物を治療するのは「ある日に
「動物が病気やけがをしたときには治療する 起きた特別な仕事」の二つの仲間に分けること
仕事」の二つの仲間に分けることができる。
ができる。
○動物園の獣医はどんな仕事を
しているのか仲間と話し合う
活動の組織
・
「始め」の役割を考えさせる。
・出てきた仕事を仲間分けし,
色分けして可視化する。
④
・『どうぶつ園のじゅうい』の筆者は,獣医の仕事をどんな順序で伝えているか。
「見回りが終わる頃」と書いてあるから,その 朝,お昼前,夕方などの「時間を表す言葉」を
前に「見回り」が来る。言葉のつながりを見る 見ると,仕事を一日の順序に並べ替えることが
と順序が分かる。仕事が「毎日する仕事」
「あ できる。獣医の仕事で大事なのは治療なのに,
る日に起きた特別な仕事」
「毎日する仕事」の どうして「毎日する仕事」を書いているのだろ
順になっているのはなぜだろう。
う。
○仕事を紹介する順序について
仲間と話し合う活動の組織
・小見出しを並べ替える。
・既習の「時間を表す言葉」
「つ
ながり言葉」
を振り返させる。
・
「毎日する仕事」を伝える必要
があるのかどうかについて,
その根拠や理由を個人のワー
クシートに記述する。
⑤
本
時
◎『どうぶつ園のじゅうい』の筆者は,なぜ一日の順序で仕事を伝えているのだろうか。
「毎日する仕事」は大事だから理由を書いてい 見回りや日記の理由を読むと,見回りや日記を
る。
「始め」に「動物が元気に暮らせるように 生かして,動物を上手に治療することができる
する」ともつながっている。一日の順序の方が と書いてある。だから「毎日する仕事」も大切
「毎日する仕事」のすごさが伝わる。自分ん図 だと伝えたいんだ。自分の図鑑にも「毎日する
鑑にも理由を書いていこう。
仕事」を書いていこう。
○一日の順序で仕事を伝える筆
者の工夫についての根拠と理
由を仲間と訊き合う対話的活
動の組織
「協働」場面
・
「毎日する仕事」
「ある日に起
きた特別な仕事」
を短冊にし,
並べ替えて考えられるように
する。
□追求問題に対する考えに偏り
が見られた場合は,グループ
や全体に形態を変える。
〈複線化〉
一日の順序で仕事を紹介することや,
「毎日する仕事」と「ある日に起きた特別な仕事」の 2
種類の仕事を紹介することで,2 種類の仕事が関係し合っていて仕事のすごさを伝えているこ
とが分かった。仕事のすごさを伝える筆者の工夫を使って図鑑が書けそうだ。
⑥
3 次 『どうぶつ園のじゅうい』の学習を生かして「ミニしごと図かん」をつくろう
◎仕事のすごさを伝える筆者の工夫を用いて「ほけんしつの先生のしごと図かん」をつくろう。
仕事の大事さが伝わるようになぜこの仕事の 「毎日する仕事」と「ある日に起きた特別な仕
するのか理由を書くとよいんだな。
事」の二つを一日の順に並べるとよいんだな。
『どうぶつ園のじゅうい』の仕事のすごさを伝える筆者の工夫を生かして「ミニしごと図かん」
が書けた。学校の周りのお店や施設の人の仕事もこの工夫を使って書いていこう。
○仕事のすごさを伝える筆者の
工夫を用いて全体で「ミニし
ごと図かん」をつくる場の設
定
・3 次後に社会創造科で店や施
設を見学し,インタビューす
る場を設定する。
・図鑑を書くことは社会創造科
に移譲する。
(5 時間)
5 評価
○「価値をとらえること」
:仕事に対してのとらえ方(観察,イメージマップ)
○「とらえを訊き合うこと」
:仲間とともに仕事の大事を伝える工夫について説明したり聞いたりしている様子(観察,ワークシートなど)
○「新たに創り出すこと」
:仕事前の準備,仕事,仕事後のまとめという一連の流れが仕事であるという考え方(観察,ワークシートなど,実際に表現したもの,イメージマップ)