市立千歳市民病院 市民健康講座 平成25年4月27日 循環器科主任

足の大切さ
市立千歳市民病院 市民健康講座
平成25年4月27日
循環器科主任医長 竹内 剛
足は何のために必要であろうか。
当たり前のことであるが、歩くために必要である。
足があることは、人間にとってごく当たり前の
ことであり、普段はそのことを考える機会もない。
ところが、病気・けがなどにより、一時的でも
大変だが、永久に喪失する事態となったとき、歩
けなくなるだけでなく、心の傷となり、さらには
生命を脅かすこともある。
出典:西田壽代 「フットケア~基礎的知識から専門的技術まで~」医学書院
2~5P
足の役割
人間の足は立つ、歩く、走るだけでなく、私たちの生命活動にかけがえのない役割を持
っています。
また、足の骨・筋肉は第二の心臓としてのポンプの役割やショックを受け止めるクッシ
ョンとしての役割も兼ね備えています。
フットケアとは
大切な「足」を守り、最後まで自分の足で歩けることで、心や体といった「自分自身」
すべてを守るケアです。
フットケア診療の流れ
1.足のアセスメント(足の診察)
足のケアを行う前に、必ず視診・問診・嗅診といった五感を使ったフィジカルア
セスメントを行います。足病変のリスクや重症度を簡単に把握することができます。
2.診断の確定・担当科への紹介
原因となる疾病や症状によって対応する診療科が変わります。
疾病
症状
担当科
糖尿病
足のしびれ・痛みなど
内科・循環器科
足白癬(水虫)
皮膚の炎症、爪肥厚など
皮膚科
閉塞性動脈硬化症(PAD)
歩行障害、冷感・痺れ
循環器科・血管外科
うおのめ・たこ
一部角質の増殖・肥厚
皮膚科・整形外科
巻き爪
爪の陥入やそれに伴う
痛みや炎症
皮膚科・整形外科
骨・関節の変形
外反母趾、内反小趾、
外反扁平足など
整形外科・靴職人
義肢装具士
3.足変形・爪変形の改善
靴やインソール(足底板)を改善することで、外反母趾や内反小趾などの足変形の進
行を防ぐことができます。
また、爪の切り方を全体に丸く切る「バイアス切り」でなく、まっすぐ切って角を落
とす「スクエアオフ」の切り方が巻き爪を予防できるといわれています。
4.リハビリテーションの紹介
足に障害を持っていると、痛みなどのために、動かさないようにしてしまう。
しかし、動かさないと、筋力低下(1週間で20%)、関節が固まってしまい、ますま
す動けなくなり、最悪寝たきりに至ることもある。
それを予防するためにトレーニングが必要です。1 日数分でもリハビリでトレーニング
することで筋力は維持され、関節も動くようになります。
5.足の清潔保持・爪処置・切り方の指導
足を洗ったり、拭いたりすることで、足を清潔に保つことは、感染予防の効果がありま
す。また、フットケアをしながら、それを患者様にみてもらうことで、自分自身で足を守
れるように、学ぶことができます。
重症下肢虚血について
足の動脈血流障害が存在すると、足の指先まで血流が十分に行き渡らないため、足が冷
たくなり、歩くことにも支障を来します。さらに悪化すると、傷ができても治すことがで
きないくらい血流が悪くなります。すなわち、足の小さな傷が治らず、かえって傷口が広
がり、難治性潰瘍となります。
そのような状態を「重症下肢虚血」といい、血流を改善させなければ、潰瘍・傷は治す
ことができないため、これまで、外科的なバイパス手術が主流として行われていましたが、
最近ではより侵襲の少ない手術法として、カテーテル治療が用いられております。
さらに近年、糖尿病・人工透析患者の激増により、動脈硬化疾患も同様に増加。心血管
疾患・脳血管疾患ばかりでなく、足の動脈血流障害の最大の原因である、「下肢閉塞性動
脈硬化症」も増えてきている状況です。
当院でも「下肢閉塞性動脈硬化症」に対する、末梢血管カテーテル治療(EVT)は増え
てきています。
当院では、2013年4月から、足トラブルを抱えた患者様のために、『フットケア外
来』を立ち上げました。
足の冷感やしびれ、歩くと足が痛くなる、歩くと太もも・ふくらはぎが張る、黙ってい
ても足が痛い、足の傷がなかなか治らない、足の先が黒くなってきたなどの症状がありま
したら、当院フットケア外来・循環器外来を受診いただければ、と思います。
よろしくお願いします。