第9回

第9回の講義の内容
第9回の講義の内容
2016年6月13日(月)4時限
1.東日本大震災における情報通信技術が果たした役割
2.東日本大震災の経験からのGISを利用した地域知データ
ベースの構築
災害対策
担当 経営・社会情報学プログラム
准教授 山本佳世子
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1-1.阪神・淡路大震災における情報通信の状況
1-2.東日本大震災における情報通信の状況
電話や交通機関が途絶し,ドーナツのように被災地中心部の情
通信インフラに対する被害も甚大であったため,発災直後は,
報が空白になった
情報伝達の空白地域が広範囲で発生したが,「情報空白域」を
最小化しようとする取組が行われた
情報発信は,主に新聞,ラジオ,テレビなどマスメディアを通じて
被害が広域的かつ甚大であったこともあり,マスメディアでは限
行われた
界のある,きめ細やかな情報を送ることが可能なソーシャルメ
ディアなどの新たなメディアも用いられた
発災直後の情報はラジオやテレビを通じて報道され,インター
インターネットなどを活用して,震災直後から様々な情報発信が
ネットは主に救出・救護期以降に使われた
行われるとともに,ボランティアなど後方支援を行う取組なども
行われた
災害時におけるインターネットの利活用については,通信の途
絶の課題や,いわゆるデマ情報,チェーンメールへの対処など
様々な課題も浮かび上がった
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1-4.コンテンツの流通手段の多様化
コンテンツの流通手段の多様化
1-3.東日本大震災における情報通信の状況
(%)
放送事業者による情報発信手段の多様化
・NHKや民放各社によるインターネットへの同時配信
・radikoによる情報提供
公共機関のソーシャルメディアによる情報発信
公共機関のソーシャルメディアによる情報発信
・国,地方公共団体等がソーシャルメディアを公式な情報発信手段
の一つとして活用
・福島民報によるTwitter
・ネイバージャパン 全国放射能情報
・自動車通行実績情報の発信
総務省「平成23年度版情報通信白書」
1-5.被災地域の自治体アカウントのツイート数等の推移
総務省「平成23年度版情報通信白書」
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1-6.被災地域マスメディアのフォロワー数の推移
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総務省「平成23年度版情報通信白書」
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1-7.震災直後
震災直後からの被災地情報の発信
直後からの被災地情報の発信
1-8.一般の人々が情報の発信主体
一般の人々が情報の発信主体
臨時災害放送局等が,被災地
臨時災害放送局等が,被災地の情報源として
が,被災地の情報源として活躍
の情報源として活躍
震災直後から,映像・文字により被災地情報が多様なメディアを
通じてリアルタイムに発信
・けせんぬまさいがいエフエム
・住民からの要望を受け,気仙沼市が3月22日に免許を取得,登
米市の支援を受けて,23日に消防局内で開局した
発災直後から,ソーシャルメディア上で個人が被災状況や救援
要請を投稿したり,動画中継サイト上で被災地の様子がリアルタ
イムに配信
・震災当日の3月11日,Twitterでは救援を要請するハッシュタグ
「#j_j_helpme」をつけたコメントが多数投稿された
・ニコニコ生放送では,ニコニコニュース「地震速報」という番組名で,
被害の状況をインターネットでリアルタイムに配信された
マスメディアが現場に入る前に,被害の状況がインターネットを通
じて伝えられた事例もあった
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1-9.情報の抽出,整理
情報の抽出,整理及び
抽出,整理及び配信
及び配信(1)
配信(1)
各種連携による被災地支援プロジェクトの立ち上げ
・官民連携による「助けあいジャパン」
・内閣官房震災ボランティア連携室と連携しながら,ボランティア
による救援を支援していくという趣旨に賛同した有志と,運動を
サポートする企業によって展開
・地域SNSの全国連携による「大震災「村つぎ」リレープロジェクト」
・盛岡市の地域SNS「モリオネット」が「学び応援プロジェクト」を立
ち上げ,兵庫,尾道,春日井,宇治,掛川,葛飾など全国約20の
地域SNSが連携
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1-10.
10.情報の抽出,整理
情報の抽出,整理及び
抽出,整理及び配信
及び配信(2)
配信(2)
インターネット上の情報を整理する「まとめサイト」 sinsai.info
・OpenStreetMap Japanの有志やボランティア参加のメンバーによ
り被災地エリアに関する口コミ関連情報をまとめたサイト
クラウドサービスを期間限定で無償提供
・東日本大震災 ICT支援応援隊
ICT支援応援隊
・ICT支援体制を確立するため,被災者へパソコン等を無償で提供
し,現地の支援機関とも連携してネットワーク接続の設定も含め
た支援等の活動
各メディアが発信した幅広い情報源から安否情報を取得
Googleパーソンファインダー
・Googleが開設した家族や友人の安否を確認できるサイト
インターネットを活用して情報弱者を対象に震災情報や支援情報
などを発信 遠隔手話サービス
・特定非営利活動法人シュアールにより,Skype,MSN Messenger
等のビデオチャット機能を活用して遠隔手話を提供するサービス
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・(独)防災科学技術研究所
「ALL311:東日本大震災協働情報プラットフォーム」
・東日本大震災ICT支援応援隊と連携して,被災地支援のための
各種クラウドサービスの無償提供メニューを提供
・
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1-11.
11.東日本大震災における情報通信の課題
東日本大震災における情報通信の課題(1)
通信の課題(1)
1-12.
12.東日本大震災における情報通信の課題
東日本大震災における情報通信の課題(2)
通信の課題(2)
(1)災害に強いICT
)災害に強いICTインフラの
ICTインフラの必要性
インフラの必要性
(3)震災に関連したチェーンメールや悪質なメール等への対応
)震災に関連したチェーンメールや悪質なメール等への対応
・緊急時の輻そう状態への対応
・基地局や中継局が被災した場合における通信手段確保
・今回の震災を踏まえた今後のネットワークインフラ,インターネット
活用の在り方
(2)デジタル・アナログの情報
デジタル・アナログの情報変換
・アナログの情報変換
・紙ベースのアナログ情報がデジタル化され,インターネット等を通
じて発信・共有されたが,情報弱者にも十分に伝わったのか?
・情報弱者へのリテラシーの向上,高齢者等にも使い勝手のよい
端末・サービスの開発,インターネットの利用が困難な場合にそ
の他の多様な手段を併用した情報伝達
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総務省「平成23年度版情報通信白書」
1-13.
13.東日本大震災における情報通信の課題
東日本大震災における情報通信の課題(3)
通信の課題(3)
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2-1.被災地の地域特性と被災状況
(4)情報発信活動の周知
情報発信活動の周知
地域特性
・新たに様々な情報発信活動が立ち上がったが,それらは広く周知
され,十分に有効利用されたか
・特に関連情報が必ずしも一元化されていない中,被災者を含めた
関係者が必要とする情報に容易にアクセスできたか
↓
・様々な情報を連携させるための基盤を構築することや,有事の際
にも円滑に有効活用できるよう,平常時の利活用を含めた取組を
行うなどの対応が必要
・独特の歴史的背景や文化
・美しい景観を形成する自然環境が豊かな地域
・わが国有数の穀倉地帯,漁業および水産業の盛んな地域
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被災状況:阪神・淡路大震災(1995年)とは大きく異なる
・2011年3月11日にM9.0の大地震
・地震被害だけではなく,大津波によって多大かつ広域に及ぶ被害
「まちづくり復興」ではなく,「地域再生」を目的とした復興
・福島第一原発も被害を受け,放射能汚染の危険性
→ICTにより拡大した風評被害によって,わが国の農業や水産業
だけではなく各種産業も大きな悪影響
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GISの役割
GISの役割
2-2.ICTを利用した地域知の利活用
ICTを利用した地域知の利活用
情報収集
多様なデータ
ソースの利用
データの入力と
データベース
作成
現実世界への
反映
意思決定
支援機能
現実世界
データベース
構築機能
関係主体間
の議論の場
ソーシャル
メディア
との統合
データを総合的に
管理,加工,更新
コミュニケー
ション機能
仮想世界
本学で開発
するシステム
情報提供・
最大の独自性 共有化機能
意思決定の議論の場
への情報提供
被災地に関する背景
・「形式知」として,自然災害の「地域知」が現在まで伝えられてきた
・地域復興・再生計画では,将来の自然災害に備えて災害に強い
地域づくりを中心に位置づけることが必要不可欠
学術的・社会的意義
・被災地全域での土地利用・空間利用の再検討
・災害対策としてのICTの利用を目的とした情報インフラの整備
ファイル
地域知の利活用の目的
データの利用
地図
・地理情報システム(GIS)を基盤とした東北地方の被災地の地域
復興・再生活動支援を行うこと
情報解析機能
視覚的な表示,解析,シミュレーション
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銚子市:銚子漁港(上)・マリーナとその周辺(下)
2011年5月
松島海岸
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2011年5月
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釜石市:釜石川周辺(上)・商店街(下)
南三陸町(歌津地区)
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2011年5月
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2011年5月
宮古市港
「地域知」の例
陸前高田市郊外
仙台市浪分神社
2011年5月
2011年5月
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西伊豆・沼津:戸田港(上)・沼津御用邸跡地とその周辺(下)
西伊豆:田子漁港
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2011年4月
紀伊半島東部:串本
2012年12月
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2011年4月
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